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つれづれイタリア~ノ<111>モゼールも取り組んだ食事トレーニング アスリート向け最新トレンド食材10選

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 “土日の楽しいサイクリング”以上のパフォーマンスを目指す人にとって食事はとても気になるものです。どれだけのカロリーを取っているか、消化にどれだけ時間がかかるのか、疲労回復や筋肉増加につながる食材はないのか。サプリメントを真剣に調べるといった行動も、スポーツに真面目に取り組んでいる人に共通している傾向です。

ロードレースのプロチームに用意された食事の一部。フルーツがたくさん Photo: Marco FAVARO

食事をトレーニングに取り入れたモゼール

 食材が体にどんな影響を与えるか、近代的な意味での研究が始まったのは19世紀からですが、本格的に進化したのはおよそ80年前です。第二次世界大戦が影響しています。戦地まで大量の物資や食料を運ぶ必要があるので、経費がとてもかかります。最低限の食事でどれくらい兵士が戦えるか、食事と経費カットはどの国も悩んでいました。アメリカの生理学者のアンケル・キーズの研究が世界的に大きな影響を与えました。

アワーレコードに挑戦したフランチェスコ・モゼール ©enervit

 しかし、スポーツ界では本格的に科学的な研究が始まったのは1980年代と言ってもいいでしょう。当時イタリアのチャンピオンだったフランチェスコ・モゼールは、1972年にエディ・メルクスが確立したアワーレコードの壁を破るために、前例のない研究チームを発足しました。ミラノ大学教授だったエンリコ・アルチェッリの率いるグループがバイクとウエアを開発し、エネルヴィット社は効率的なエネルギーの摂取に必要な体づくりの研究に集中しました。エネルヴィット社は現在、スポーツ用サプリメントやドリンク、エナジーバーを作るイタリアを代表する会社です。

科学的にトレーニング法を解析した ©enervit

 エネルヴィット社の研究グループは、最初は食事の改善に取り組みました。「これがいい」と思われた自己流食事を科学的に研究し始めました。モゼールは世界で初めて近代的な食事トレーニングを始めたと言えます。そして体改造につながるプロテインドリンクが開発され、最新の研究が大好きだったモゼールは喜んで協力しました。当時、自転車業界は過去への強いこだわりがあり、この研究に対して誰もが半信半疑でした。当時としてはかなり挑戦的な取り組みだったでしょう。

 エネルヴィット社はさらに当時の医学界、栄養学や化学トレーニングに関する精鋭を40人集め、トレーニングから得た心拍数、食事と体調をデータベース化し、初めてコンピューターよる体調管理システムが生まれました。端末の開発に協力したのが、イタリアのオリヴェッティ社でした。この研究の成果が実り、12年ぶりにアワーレコードの壁が破られ、その記録はフランチェスコ・モゼール社が発売するワイン「51,151」の名前にもなっています。

現在、フランチェスコ・モゼール一族はワイナリーを営んでいます(フランチェスコ氏は一番左) ©moservini.com
モゼール社のブドウから人気のMoser Trento DOC 51,151が作られます。このワインの名前はアワーレコードの記録から名付けられています ©moservini.com

定番から意外な食材まで

 各メーカーが開発したサプリメントのほか、最近の自然志向の高まりを受けて、食卓の上でも肉体改造につながる食材の研究が続いています。プロのアスリートは敏感に最新の研究に耳を傾けながら、スポーツに挑んでいます。最新トレンドの食材は次の通りです。

トレック・セガフレードの食事の一部。野菜たっぷりのカレーに、全粒粉パスタ Photo: Marco FAVARO

1.全粉入り炭水化物(シリアル、玄米、全粉入りパスタ)
 以前から注目されている食材類。エネルギーの源である炭水化物でありながら、血糖値ゆっくりあげる働きがある。継続的にエネルギーが得られます。

2.さつまいも
 自転車競技の選手は茹でジャガイモをよく食べます。腹持ちもいいし、満腹感が得られます。しかし、さつまいもの方が腹持ちが良く、抗酸化作用があるとわかってきました。普通のジャガイモより血糖値が急に上がりません。

3.青魚
 体にいいとされるDHC、オメガ3脂肪酸などといった多価不飽和脂肪を豊富に含む魚。サーモン、鯖、イワシといった青魚です。なぜ体にいいのか。練習後の筋肉の炎症を抑える効果があるとされています。

4.赤カブ(レッドビート)
 赤カブジュースは比較的に最新のトレンド。土臭い味で嫌がる選手も少なくありません。一方、多くのマグネシウムとカリウムを含み、乳酸の分解を助ける働きがあるので、自転車競技を目指す人のための天然サプリメントといえます。ほうれん草からも同様の効果が得られます。

ビタミンCやベータカロテンの入っている新鮮な野菜は選手たちにデトックス効果をもたらす Photo: Marco FAVARO

5.ブロッコリー
 ローマ時代からイタリアで古くから愛用され、現在は注目の野菜。「万能スーパー野菜」と言われ、その理由は、ビタミンA, C, Kのほか、多くのタンパク質を含み、体の毒素排除機能を助けるから。疲労感を緩和する働きがあるとわかってきましたのでスポーツマンが好んで食べる野菜です。

6.柑橘類、キウイ
 いうまでもなくビタミンCの宝庫。トレーニングや大会後、細胞内の正常なpH(酸素度)バランスを取り戻し、デトックス効果もある。強い抗酸化作用と活性酸素除去作用を持ち、肝臓を強化する働きもあります。イタリア南部には、暑い時期にストレートのレモンジュースを飲む習慣があります。一気に疲労感が解消されます。

7.アボカド
 アメリカで愛され、現在世界中に食べられている野菜のようなフルーツ。ビタミンE、カリウムの宝庫であり、エネルギー源でもあります。満腹感を感じさせるので、食べ過ぎ防止効果もあります。

8.アーモンド
 数年前から注目され、アーモンドジュースは日本でも一般的に見られます。脂肪酸を多く含み、天然エネルギー源となります。細胞にダメージを与えるフリーラジカルを抑え、体重増防止にもつながります。選手たちが好んでおやつ代わりに食べています。

9.緑茶
 緑茶、特に日本茶は世界的に人気になりました。緑茶に含まれている茶カテキンの働きが脂肪燃焼を助け、フリーラジカルの発生を抑える効果があるとわかってきました。コーヒーの代わりに飲まれ始めています。

10.オリーブオイル
 オリーブオイルは非常にカロリーが高い食品ですが、脂肪酸の一種、不飽和脂肪酸を含み、血をさらさらにし、悪玉コレステロール値を低下させる。もう一つの重要な働きはビタミンの摂取を助けることです。加熱すると化学変化を起こすので、生の状態、エクストラバージンオイルと呼ばれる種類を摂取すると効果的です。

 何を隠そう、私も好んで食べている食材が多いです。しかし度重なる海外出張で食事サイクルが狂ってしまうと、せっかく絞ってきた体が一気に崩れてしまうことがあります。仕事が忙しいサラリーマンの苦難がよくわかります。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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