渡辺航先生と白熱対決『Cyclist』編集部が「砂地獄」に挑戦 シクロクロス東京「エンデューロ90分」をリポート

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 2月11日にお台場海浜公園で開催された「シクロクロス東京2018」2日目、チーム対抗「エンデューロ90分」に『Cyclist』編集部が初挑戦した。取材側でレースを観戦するものの、実はお台場名物「砂地獄」を体験したことがない我々。東京五輪に向け、いったん(?)姿を消す本大会を「一度は体験しておかなくては」とチームで出走することに。シクロクロス特訓中の編集長を筆頭に、元プロロードレーサー部員、レース観戦専門部員、体力自慢女性部員というデコボコチームの90分におよぶ奮闘劇をレポートする。

『Cyclist』編集部がシクロクロス東京のチームエンデューロに初参戦。ライバルは渡辺航先生とキクミミさん?! Photo: Naoi HIRASAWA

エントリー開始後数分で埋まる人気ぶり

 多くの人が悶絶するにも関わらず、一度走るとその楽しさにハマるというシクロクロス東京。その理由は砂浜をめいっぱい使って設定されたサンドコース。かなりテクニカルではあるが、進むライン(轍)の見極めや波打ち際などをうまく走ることができれば攻略できるというなんともニクいコース。とにかく早く走り切れば良いので、自転車を担いだり押し歩いたりする判断や見極めも勝敗のカギとなる。

67チームの第一走者がスタートラインに並んだ Photo: Naoi HIRASAWA

 というとハードに思えるシクロクロスだが、走り切る自信がなかったりビギナーでも参加しやすいのが「チームエンデューロ」だ。2人以上最大5人までを1チームとし、交代しながら全員で90分間を走って周回数を競う。本気で優勝を狙うチームがあれば、走力の個人差を埋めて総力戦で臨むチーム、仮装してイベント参加を楽しむチームなど、その思惑は多種多様。そのユニークさから、チームエンデューロは同大会のエントリー開始後数分で埋まるほどの人気を博す。

「ミニオン」、自転車乗れるんだ… Photo: Kyoko GOTO
なつかしの(?)“レディース”も今日はオートバイてはなくて自転車で戦う Photo: Kyoko GOTO

 我々『Cyclist』編集部は優勝を狙…いたいところだが、どちらかというと総力戦チーム。自らのトレーニングを「シクロクロス中年記」として連載している編集長・澤野健太、元ロードのプロ選手の松尾修作を主戦力に、乗るよりもレース観戦をこよなく愛する平澤尚威と、とにかくシクロクロスを体験してみたいという好奇心だけの後藤恭子という2人の“おまけ”がついた格好だ。

やる気だけは見せようとするエース松尾修作。心なしかにやけ顔 Photo: Naoi HIRASAWA

 そんな我々を慮り、大会事務局が出走順を漫画家・渡辺航先生率いるチーム「総北高校自転車競技部OB」と並んで最前列に据えてくれたにも関わらず、第一走者の松尾が遅刻。せっかくの厚意を無にする形で最後尾に近い場所からのスタートとなった。「重要なのは順位じゃないから」といいつつ、後々この位置取りが命取りになるのを我々はまだ知らない。

個性派揃いの『Cyclist』チーム

 午前9時55分、一瞬の沈黙の後スターターの音が鳴り響き、一斉にスタートを切った。スタート直後は公園の木立を利用した林間コースに入る。クイックなカーブが連続する抜くに抜けないエリアだが、ここが終わるといよいよサンドコースへと突入する。

当初予定よりだいぶ後列からスタート。果たしてここから巻き返せるのか? Photo: Kenta SAWANO
好調に飛ばす松尾。元選手の脚力は止まることを知らない Photo: Kenta SAWANO

 そこから松尾は“遅刻”を取り戻すように追い上げを開始。ラインどりがうまくできている、のかどうかはわからないが、走りやすい波打ち際を選んでパワーで乗り切る上手さに、思わず「さすが元選手」と唸る。こういった仕事以外(?)で株が上がるのも“同僚エンデューロ”の良さかもしれない。

 1人が走る周回数も戦略だ。例えば速い人が2周ずつ、体力に自信のない人は1周ずつで交代することで順位をキープしつつ回すことができる。我々『Cyclist』チームはその作戦で臨み、エース松尾が2周、その後は3人で一周ずつ回すことにした。

サンドセクションで「シャンシャン」(?)と死闘を繰り広げる松尾 Photo: Naoi HIRASAWA

 2周目に入り、調子をつかんだエース松尾はさらにペースを上げ、サンドコースで『弱虫ペダル』のジャージを着た走者をとらえた。我々が肩を並べてスタートするはずだった渡辺先生だ。すかさずチームは「松尾ーっ!いけーっ!先生抜いてーっ!」と声援を送る。すると松尾はそれに応えるようにトルクを上げ、水しぶきをあげ一気に渡辺先生を抜き去った。渡辺先生には申し訳ないが、すごくうれしい。

2周目のビーチエリアで渡辺航先生と並び… Photo: Kyoko GOTO
抜いた! Photo: Kyoko GOTO
走者交代を行うピットエリア Photo: Kyoko GOTO

 走者交代はサンドコースの途中に設けられたピットエリアで行われる。計測チップが内蔵されたバンドがバトン代わりで、走者はこれを足首に巻いてピットを出る。自分たちの居場所を知らせようと叫ぶチームメイトとそこをめがけて突進してくる走者たちで、ピットインは団子状態。転倒しながらバンドを託す人や、焦ってバンド交換がスムーズに行えないチームなど、楽しむ余裕はもはやない。

大騒ぎの走者交代。倒れ込みながら計測チップ入りのバンドを託す人も Photo: Kyoko GOTO
松尾から第2走者の澤野健太へバンドが渡される Photo: Naoi HIRASAWA

 第2走者は編集長・澤野。特訓の成果を発揮するときといわんばかりに意欲満々でスタートを切った。バイクを担ぐ姿は今季始めたばかりとはいえない素早さ。「男は黙って担いで走る」と、走り去る背中が語っていた。

⇒澤野健太の「シクロクロスダイアリーズ/シクロクロス中年日記」

“男気”編集長・澤野。男は黙って担ぎ走り Photo: Naoi HIRASAWA
砂浜も揺るぎなく漕ぎ続ける編集長・澤野。これぞ特訓の成果! Photo: Naoi HIRASAWA
漕ぐ脚を止めず、ピットインへ。迎える方も力が入る Photo: Shusaku MATSUO

 続く第3走者は、編集部紅一点の後藤。ロードバイクは普段から乗り慣れているが、シクロクロスはまったくの初心者。コースの試走もままならないなか、まさしく「当たって砕けろ」状態での出走。持ち前の体力と湧き出るアドレナリンを頼りにピットを飛び出した。

第3走者、後藤恭子。人生初のシクロクロスレースに緊張と不安が混ざる Photo: Naoi HIRASAWA

 砂のラインどり、シケインの飛び越え方、バイクの乗り降り。知識として知っているのと実際にやるのとではこれほどまで違うのかと痛感。コーナリングなど少しの間の使い方で徐々に差が付き、後方にいた渡辺先生にも抜かされた。

もちろんシケインも初体験。バニーホップのすごさを改めて痛感 Photo: Naoi HIRASAWA
4周目、交代せずに走り続ける渡辺航先生に抜かされる Photo: Shusaku MATSUO

 前走者の編集長・澤野が順位を落とさずつないでくれたバトンの重みを感じ、疲れるというよりも悔しさがにじむ。それでも「Cyclistがんばって!」という嬉しい声援や、「(つらいのは)気のせい気のせい!」という不思議な(?)応援に背中を押され、楽しい気分で初出走を終えた。

轍、波打ち際を意識して進もうとするが、バイクのコントロールが利かない Photo: Shusaku MATSUO
初の出走で心身ともにダメージをくらった後藤。平澤尚威に選手交代 Photo: Shusaku MATSUO

 第4走者は、編集部のレースマスター・平澤。“歩く選手名鑑”という異名をもつが、逆にバイクに乗るのはあまり得意ではない。予想通りのフォトジェニックな面持ちで、頑張っている感はピカイチ。

公私ともにレース“観戦”が好きな平澤。心なしか表情が引きつっている Photo: Shusaku MATSUO
やっとの思いでフライオーバーを越える Photo: Shusaku MATSUO
一周で撃沈。「砂ってすごい…」 Photo: Kyoko GOTO

 「心拍が最初から上がりっぱなしだった」という平澤はバトンを渡したところでピットエリアに倒れ込んだ。初めてのサンドコースに面喰ったようで、「(サンドコースを抜けたとき)こんなにも自転車が快適な乗り物だとは思わなかった」と一言。それでもうまく曲がれなかった悔しさを噛みしめつつ、「2周目はもっとうまくやりたい」と語った。そう、走った人がハマる“シクロクロス沼”の理由はここにあるのだ。

いつの間にか「打倒、渡辺先生!」

 チームが2巡目に入り、再びエース松尾が出走。周回も6、7周目に入り、全体的にばらついてきた。しかし、渡辺先生との抜きつ抜かれつの位置は依然として続き、もはやチームの目標は(勝手に)「打倒、渡辺先生」と化していた。

2巡目に突入。笑顔はいらない。順位をあげて! Photo: Kyoko GOTO
再び渡辺先生の集団を追い上げる松尾 Photo: Kyoko GOTO
やっぱり担ぐ編集長・澤野 Photo: Kyoko GOTO
渡辺先生を抜き返した! Photo: Kyoko GOTO
最後の力を振り絞る平澤 Photo: Kyoko GOTO
渡辺先生に抜き返され、さらには“ガングロ女子高生”にも抜かれた! Photo: Kyoko GOTO

 しかし…我々は気付いた。「待てよ、これはエンデューロ。なぜ渡辺先生はずっと交代せずに走っているんだ?」

一向に交代する気配が見えない渡辺先生。さすがに疲労の影が… Photo: Noi HIRASAWA

 あとで確認したところ、渡辺先生は2人でエントリーしていた。しかし、なんらかの理由でパートナーがDNSとなり、1人で走ることになったようだ。それにしても90分間、このコースを1人で走り続けるのは過酷。周囲の声援にわき目もふらず、黙々と走り続ける渡辺先生は、どこか修行僧のようなオーラを放っていた。

走りやすさを求めてついには海の中へ… Photo: Kyoko GOTO
疲れ果て、お散歩モードのなすびとサイクリスト Photo: Kyoko GOTO
レースの厳しさを物語る「ミニオン」 Photo: Kyoko GOTO

悔しさが次の挑戦をかき立てる

 優勝したのはゼッケンナンバー42「ボンさんの手下たち」。平均時速14.3km、90分で12周を走った。我々「Cyclist」チームはというと23位。平均時速11.3kmで10周という結果だった。そしてライバル(勝手に)の渡辺先生はというと、我々と13秒の差をつけ、22位でゴールしていた。1人でこの順位をたたき出した渡辺先生に、観客からは惜しみない拍手が送られた。未熟な我々は「松尾が遅刻しなければ渡辺先生に勝てたかもしれないのに…」などと悔しさが拭いきれない。

ついにゴール。1人で90分間を走り続けた渡辺航先生 Photo: Kyoko GOTO
続いて『Cyclist』平澤もゴール。渡辺先生に追いつこうとしてスプリント Photo: Kyoko GOTO

 レースを終えて意外だったのは1周目で倒れ込んでいた平澤の発言。「砂浜のあるシクロクロス東京はレース慣れしている人ともわりと平等なレベルで楽しめるのがいい。これだけきついコースを走ったらどこでも走れると思えた。他のレースにも出たらどんなレースができるのかな」と意欲的。1周目を終え、悔しさから芽生えた2周目の挑戦心はどうやら本物だったようだようだ。

『Cyclist』編集部メンバー(左から後藤恭子、澤野健太、平澤尚威、松尾修作)。結果は23位! Photo: Akiko KOBAYASHI

 まだシクロクロスを走ったことのない人はシクロクロッサーを、シクロクロッサーはビギナーを誘ってチームエンデューロに挑戦してみてはいかがだろう。“食わず嫌い”だった自分を発見する人は、意外と多いかもしれない。

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