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「週刊サイクルワールド」<243>ニバリのマイヨジョーヌ奪還にチーム一丸 バーレーン・メリダ 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ジロ・デ・イタリア2回、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャ各1回個人総合優勝を果たしているイタリアの至宝、ヴィンチェンツォ・ニバリ。現在のプロトンでは唯一の全グランツール制覇者となり、33歳の現在も3週間の戦いでは抜群の安定感を見せる。発足2年目のバーレーン・メリダは今シーズン、2年ぶりのツール復帰を決めたニバリのマイヨジョーヌ奪還に向けて動くことで決まった。そして、主力の1人である新城幸也も順調なシーズンイン。戦力の充実度はトップシーン随一ともいえる、このチームの方向性を確認していこう。

トレインを牽引する新城幸也。今シーズンも主力の1人として期待が膨らむ =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018第2ステージ、2018年1月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

ドバイ・ツアーのクイーンステージでコルブレッリが快勝

 まずまずのシーズンインを果たしたチーム。1月のサントス・ツアー・ダウンアンダーでは、新加入のゴルカ・イサギレ(スペイン)が弟のヨンとダブルエースを務め、個人総合7位でフィニッシュ。ヨンは最終日に順位を下げたが、それでも同12位とまとめた。

 同じく1月にアルゼンチンで行われたブエルタ・ア・サンフアン(UCIアメリカツアー2.1)の第1ステージでは、ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア)がスプリントに絡み2位。スプリント路線も上々の出足となった。

ドバイ・ツアー第4ステージでソニー・コルブレッリが優勝。チームに今シーズン初勝利をもたらした =2018年2月9日 Photo: LaPresse - Fabio Ferrari

 スプリント路線といえば、エーススプリンターのソニー・コルブレッリ(イタリア)が好調だ。2月6~10日に行われたドバイ・ツアー(UCIアジアツアー2.HC)で個人総合3位。特に、例年クイーンステージとして注目される激坂フィニッシュが待つ第4ステージでは、他選手をパワーで圧倒。頂上にトップで到達し、チームに今シーズン初勝利をもたらした。

 上れるスプリンターとして活躍の場を広げているコルブレッリだが、シーズン前半はミラノ~サンレモ(3月17日、イタリア)や北のクラシックを目標にすることを明言。クラシック路線の強化を図るべくアシストや経験豊富なスタッフをそろえたチームの動きに満足しているといい、ベルギーで開催される石畳系クラシックでその成果を発揮したいと意気込む。

 ドバイでの好結果で、クラシックシーズンに向けた視界が良好となったコルブレッリ。ビッグレースでたびたびその名を耳にすることが出てきそうだ。

ニバリがツールに向け始動

 チームリーダーのニバリは、昨シーズンを終えた時点で「2018年はツールを目指す」と宣言。2014年以来となるマイヨジョーヌの奪還に向けて、着々と準備を進める。

ツール・ド・フランス2014第5ステージ、大荒れとなったパヴェステージで快走したヴィンチェンツォ・ニバリ。総合優勝を大きく手繰り寄せた会心の走りだった =2014年7月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツール初優勝時は、大会前半のパヴェステージでスペシャリスト顔負けの快走。そこで勢いに乗り、山岳でも強さを発揮してのマイヨジョーヌ獲得だった。ライバルのクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)の落車リタイアなどもあったが、隙のない走りとリーダージャージを着用してもなお攻撃的姿勢を緩めないスタンスが、グランツールの頂点に立つ大きな要因となった。それは、ジロやブエルタを制した時も同様だ。

 今年のツールでは、頂上フィニッシュが3つと少なめ。一方で、ステージによっては最後のカテゴリー山岳からフィニッシュをめがけて下るコースレイアウトが用意され、ニバリの代名詞でもあるダウンヒルが勝負を決めることも大いに考えられる。絶妙なタイミングで繰り出す山岳でのアタックに加えて、リスクをいとわない果敢な下りの走りで、ライバルとの差を構築していきたいところだ。

2017年シーズンにはイル・ロンバルディアを制したヴィンチェンツォ・ニバリ =2017年10月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 また、ツール制覇へのポイントとして、第3ステージに設定されたチームタイムトライアル(35km)と第9ステージに待つパヴェも挙げている。特にパヴェは2014年の再現なるか。今年はその“予習”として、4月1日に行われるツール・デ・フランドルに出場する意向を示している。目標はあくまでもツールであることから、フランドルでは勝負に絡むまでの走りには至らないと本人は述べているが、チームからも自由を与えられ、パヴェの感覚をつかむための機会として臨むことになりそうだ。

 昨シーズンはフランコ・ペリツォッティ(イタリア)が山岳最終アシストを務めるなど、脇を固める選手たちの充実も目を見張るものがある。今年はペリツォッティに加え、移籍加入のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)とイサギレ兄弟も入る見通しだ。特に平坦にも強いイサギレ兄弟はチームタイムトライアルでの上位進出などの切り札としても期待が高まる。

 ニバリは当初、ブエルタ・ア・サンフアンでのシーズンインを予定していたが、胃腸炎のため回避。すでに体調は回復しており、ドバイ・ツアーで今年のレース活動をスタート。この大会ではコルブレッリのリードアウトに努めたが、2月13日に開幕したツアー・オブ・オマーン(UCIアジアツアー2.HC)では、総合優勝候補の1人と目されている。

 オマーン後は、ティレーノ~アドリアティコ(3月7~13日、イタリア)、ミラノ~サンレモへの参戦を予定し、ツール制覇への階段を上がっていくことになる。

ツアー・オブ・オマーンのプレゼンテーションに臨んだ出場チームの有力選手たち。ヴィンチェンツォ・ニバリ(左から6人目)も参加した =2018年2月18日 Photo: A.S.O / K.D. Thorstad

新城もツール出場を目指す

 日本のエース、われらが新城幸也は今年もバーレーン・メリダの一員としてレースに臨む。シーズン初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーはイサギレ兄弟をアシストしながら、個人総合43位。ミャンマーで行われたアジア選手権では、チームタイムトライアルで金メダル、ロードレースは5位で終えた。

サントス・ツアー・ダウンアンダーでシーズンインした新城幸也 =2018年1月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ミャンマーでの戦いを終えて、現在は“本拠地”の1つでもあるタイでのトレーニングキャンプをスタート。しっかりと乗り込んで、クラシックシーズンへと移行していこうという段階だ。

 今シーズンのレースプログラムについては、例年と変わらずツールが最大の目標になると話す。昨年、チームは早い段階から主力選手をグループ分けし、グランツールやクラシックレースを戦った。新城はヨン・イサギレらとともにアルデンヌクラシック、そしてツールを走った。もう一方はニバリを中心としたジロ・ブエルタ組だった。

 今年もグルーピングがなされるとあれば、ニバリやイサギレ兄弟らの枠に入ることがツール出場への第1条件となる。得意とするアルデンヌクラシックも含めて、今後のスケジュールに期待と注目が集まる。ビッグレースでの逃げや勝負を賭けたアタックなど、今年もそのスピードとパンチ力で観る者を魅了することだろう。

 今シーズンは28選手が所属。ビッグレースに向けて軸となる選手がそろい、アシストにも実力者が控えている印象だ。

移籍加入のドメニコ・ポッツォヴィーヴォはジロ・デ・イタリアで総合エースを務める予定 =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018第3ステージ、2018年1月18日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツール路線では、ポッツォヴィーヴォがジロで総合エースを務める見込みとなっている。ジロの総合トップ10の常連だけに、相性のよいレースで上位進出をうかがう。山岳での強さが発揮できれば、最終的な上位フィニッシュは固い。ニバリのアシストに回るツールに向けても、自身のジロでの走りから勢いづけたいところ。

 クラシック路線では、ヨン・イサギレがアルデンヌでのエースを任されそう。昨年はリエージュ~バストーニュ~リエージュで自己最高の5位。兄のゴルカや実績十分のエンリーコ・ガスパロットやジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ともにイタリア)、そして新城ら強力メンバーがアシストを務めることによって、ワンデーレースでの上位進出も計算できる状況が整った。

エース格のヨン・イサギレはクラシックやグランツールでの活躍が見込まれる =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018第2ステージ、2018年1月17日 Photo: Yuzuru SUNADA

 コルブレッリが中心となる北のクラシックについても、故障がちのハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)が復調なれば、状況はさらに好転する。ベテランのボルト・ボジッチ(スロベニア)もレース展開次第では上位争いに加わるだけの力を持つ。

 そのほか、オールラウンダーのマヌエーレ・ボアーロ(イタリア)やカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)、心疾患から復調したラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア)、移籍加入組のマテイ・モホリッチ(スロベニア)といった選手たちが、どういったレースプログラムになるのかも楽しみ。彼らの存在がチーム力を与えていることは間違いない。

バーレーン・メリダ 2017-2018 選手動向

【残留】
ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア)
新城幸也(日本)
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア)
グレガ・ボーレ(スロベニア)
ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア)
ボルト・ボジッチ(スロベニア)
ソニー・コルブレッリ(イタリア)
フェン・チュンカイ(台湾)
イバン・ガルシア(スペイン)
エンリーコ・ガスパロット(イタリア)
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)
ヨン・イサギレ(スペイン)
ラムナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア)
アントニオ・ニバリ(イタリア)
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)
ドメン・ノヴァク(スロベニア)
フランコ・ペッリツォッティ(イタリア)
デーヴィッド・パー(スロベニア)
ルカ・ピベルニク(スロベニア)
カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)
ワン・メイイン(中国)

【加入】
ゴルカ・イサギレ(スペイン) ←モビスター チーム
クリスティアン・コレン(スロベニア) ←キャノンデール・ドラパック
マテイ・モホリッチ(スロベニア) ←UAEチーム・エミレーツ
マーク・パデュン(ウクライナ) ←チーム コルパック(アマチュア)
ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア) ←アンプラッツ・BMC
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア) ←アージェードゥーゼール ラモンディアル

【退団】
ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア) →アドリアモビル
オンドレイ・シンク(チェコ) →モンドレイ・ローター レーシングチーム(マウンテンバイク)
スガブ・グルマイ(エチオピア) →トレック・セガフレード
ヨンアンデル・インサウスティ(スペイン) →チーム エウスカディ
ハビエル・モレノ(スペイン) →デルコ・マルセイユプロヴァンス・カテエム

今週の爆走ライダー−ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 2009年のプロ入り以来、自国スペインのプロチームを渡り歩いてきたが、キャリアで初めて国外のチームとの契約。それも所属選手は多国籍にわたる。新たな挑戦ともいえるが、1年先にチーム入りしていた弟のヨンと同じチームで走ることを自ら望んで移籍を果たした。

バーレーン・メリダに加入したゴルカ・イサギレ。晴れて弟のヨンと同じチームに合流した =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018チームプレゼンテーション、2018年1月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 兄弟の関係性は良好。ヨンのもとにはチームから、兄との共闘について確認があったというが、弟も兄とチームメートになることを希望。長年のキャリアで培った兄弟のコンビネーションは、シーズン初戦から発揮された。

 サントス・ツアー・ダウンアンダーでは、兄弟そろって上位争いに加わり、最終的にゴルカが総合7位で終えた。今シーズンは1週間のステージレースでダブルエース体制を組むことが多くなる予定で、ダウンアンダーは試運転としては上々の結果。当面の目標は、4月上旬に控えるブエルタ・アル・パイス・バスコ(スペイン)。地元バスクでのステージレースで、上位を目指すと宣言した。

 また、ニバリのアシストとしてツールをターゲットにするとも述べる。特にチームタイムトライアルでチーム全体を上位に押し上げたいという。タイムトライアルが得意ゆえに、エウスカルテル・エウスカディ時代はそのスピードでチームTTの隊列を壊してしまったこともあったが、戦力が整う現チームならばそんな心配はなさそうだ。マイヨジョーヌがかかるニバリを前線へと導くというミッションは、走力だけでなくこれまでの経験も必要となってくるはずだ。

 何よりいまは、弟と同じチームで走ることができるのがうれしい。だからこそ、必要とされればどんな役割も引き受けるし、自分で勝負ができるならば全力を尽くす。

 再び始まった兄弟での歩み。2人がそろうからこそ発揮できる力によって、チームに好影響を与えることを誓っている。

移籍初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーでは個人総合7位になったゴルカ・イサギレ。1週間のステージレースで結果を追い求める =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018第6ステージ、2018年1月21日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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