東海地方のシリーズ戦ロードレース雨乞竜己が開幕戦飾る 津田悠義は逃げ切り優勝 キナンAACAカップ第1、2戦
東海地区を転戦するロードレース「KINAN AACA CUP」(キナンAACAカップ)の2018年シリーズが開幕し、第1戦が2月10日、第2戦が11日に国営木曽三川公園 長良川サービスセンター特設コースで行われた。メインレース1-1カテゴリーの第1戦はキナンサイクリングチームの雨乞竜己が集団スプリントを制して優勝。第2戦は中学生の津田悠義(エカーズ)が逃げ切って優勝を飾った。
2組に分かれたキナン勢がスプリント
東海地区におけるロードレースシーンのレベルアップを目的に開催されるカップ戦は、国内レースの本格的なスタートに先だって開幕。今回は開幕シリーズとして、ワンデーレースを2日連続で開催。オールフラットの長良川のコースでスピード感のある展開が期待された。

ホストチームとして臨んだキナンサイクリングチームからは雨乞のほか、山本元喜、椿大志、中西健児、中島康晴、新城雄大がエントリー。6選手を2班に分け、紅白戦ならぬ“青白戦”を実施。ジャージカラー白が山本、椿、中島、同じく青が雨乞、中西、新城と分かれ、それぞれに課題をもってスタートラインに並んだ。
レースは18周で争われ、スタート直後から激しい出入りが見られるものの、逃げグループの形勢には至らない。寒さに加え、ときおり雨粒が落ちるコンディションもあり、ペースが一定しない。緩やかな北風を利用して集団から飛び出す選手が現れるものの、いずれも厳しいチェックによって集団へと引き戻された。

変化が生まれたのは13周回目。若杉圭祐(シエルヴォ奈良ミヤタ・メリダレーシングチーム)が飛び出すと、周回賞が設けられた次の周ではプロトンが活性化。若杉が集団に捕まったものの、代わって山岸大地(チーム ユーラシア・IRCタイヤ)がアタックするなど、残り周回を減らしていくごとにレースは激しさを増す。
残り3周回に入ると、再び若杉がアタック。一時は15秒差をつけるが、さすがに集団が容認することはなく、次の周回で吸収。そのままラスト1周を迎えた。
最終局面に向けて優位な状況を作ろうと、有力選手が集団前方をうかがう。バックストレートでは椿が単独で逃げ切りを図るが、最終コーナーを前に集団へと飲み込まれ、勝負はスプリントにゆだねられた。
フィニッシュラインに向けて2番手のポジションから加速したのは雨乞。その後ろから中島が続く。青と白に分かれたキナン双方のスピードマンによる一騎打ちとなり、チームのエーススプリンターでもある雨乞に軍配。中島も2位に入った。


昨年のシリーズチャンピオンでもある雨乞が、2年連続の王座に向けて幸先のよい出足。1月のシャールジャ・ツアー(UAE、UCIアジアツアー 2.1)でシーズンインしており、中島とともに仕上がりの良さをアピールした。
■KINAN AACA CUP 2018 第1戦 1-1クラス(91.8km、5.1km × 18 周回)結果
1 雨乞竜己(KINAN Cycling Team)
2 中島康晴(KINAN Cycling Team)
3 水野貴行(INTERPRO STRADALLI CYCLING)
4 古田潤(東京ヴェントス)
5 寺田吉騎(磐田北高校& Vivace -掛川)
強風のなか先頭集団が逃げ切り

第2戦は、前日を上回る70人以上の選手が1-1カテゴリーのスタートラインに並んだ。キナンは山本、椿、中西、中島、新城が参戦。この日は全員が白基調のレース用ジャージで臨んだ。
ときおり雨が降った第1戦と打って変わって、この日は好天。しかし、前日以上の強い北風に見舞われ、午前中に実施された他カテゴリーのレースでは序盤のアタックがそのまま逃げ切りにつながるなど、風がレース展開に大きく影響。そして、1-1カテゴリーも強い風を利用した動きがレースを決定づけた。
1周回目に設けられた「ファーストラップ賞」を狙った選手たちの動きの流れから、2周回目に入って寺田吉騎(磐田北高校&Vivace・掛川)とトム・ボシス(東京ヴェントス)がリードを開始。さらに10人以上の選手が追走を試み、4周回目から5周回目にかけて、先頭集団は最大で15人に。力のある選手たちがそろったこともあり、メイン集団に対してリードを広げるべくペースを上げていく。



キナン勢からは、一度は新城が先頭集団に加わったが、追走グループに中島や椿が入っていたこともあり、両者の引き上げを狙って後方へと下がる。しかし、人数をそろえて前への合流を狙うも上手く連携が図れず、先頭集団とメイン集団との間で宙ぶらりんの状態に。安定した先頭交代で強い風にも対応する先頭集団に対して、キナン勢が入った追走グループはメイン集団へと戻ることを選択。立て直して前を行く選手たちの吸収を目指した。
それでも、タイム差は広がる一方。先頭集団は中盤以降、脚が残っている選手だけに人数を絞っていきながら、リードを確実なものにしていく。周回賞が設定された残り5周回で水野恭兵(インタープロストラダリサイクリング)が単独で飛び出したのを機に、先頭集団はさらに活性化。残り3周回までに12人となった中から、この日の勝者が決まるのが濃厚となった。
逃げ切りを狙って、津田と水野恭兵が残り3周回でアタック。さらに残り2周回では、津田と水野貴行が(インタープロストラダリサイクリング)の2人がリードを開始。そのままラスト1周回の鐘を聞いた。
そして、バックストレートで見せた津田の仕掛けが決定打となる。残り2kmを切ったところで単独でアタックを成功させると、フィニッシュを目指して懸命の独走。後続は最終コーナーを抜けて直線で追い上げるも、トップまでは届かず。津田の逃げ切り勝ちが決まった。

優勝した津田は2002年12月に15歳になったばかりの中学3年生。昨年の全日本選手権ロードではアンダー17(17歳未満)カテゴリーでロードと個人タイムトライアルの2冠に輝いたホープだ。年齢や年代別カテゴリーを問わない混走のこのシリーズにあって、中学生が年長の選手たちを下す驚きのレースとなった。
この結果、第2戦を終えてのシリーズ総合成績でも津田が首位となり、第3戦でのリーダージャージ着用資格をゲットした。第3戦は、三重県いなべ市の梅林公園で4月1日に行われる。
■KINAN AACA CUP 2018 第2戦 1-1クラス(91.8km、5.1km × 18 周回)結果
1 津田悠義(EQADS)
2 森崎英登(愛知産業大学工業高校)
3 水野貴行(INTERPRO STRADALLI CYCLING)
4 高山恭彰(シエルヴォ奈良 Miyata-MERIDA レーシングチーム)
5 水野恭兵(INTERPRO STRADALLI CYCLING)
■KINAN AACA CUP 2018 ポイントランキング(第2戦終了時)
1 津田悠義(EQADS) 512pts
1 雨乞竜己(KINAN Cycling Team) 512pts
3 中島康晴(KINAN Cycling Team) 256pts
3 森崎英登(愛知産業大学工業高校) 256pts
3 水野貴行(INTERPRO STRADALLI CYCLING) 128pts
ボトルキャッチや集団走行のテクニックを習得
キナンの選手たちが講師を務める、キナンAACAカップ恒例の「レーススキルアップ講座」。AACAカップに出場する選手だけでなく、この講座のためだけに会場へとやってくるサイクリストの参加もいるなど、恒例イベントとして定着している。

10日のテーマは「ボトルキャッチ」。今回の参加者はいずれも1-4カテゴリーのレースを終えた選手たちだったこともあり、今後の出場カテゴリーアップや暑い時期のレース出場を見据えて、補給の必要性を説くとともにボトルキャッチのスキル向上を図った。
まず、走りながら数十メートル先で待つ選手とのハイタッチから始め、慣れてきたところでゆっくりしたスピードでのボトルキャッチにチャレンジ。最初はボトルを上手くつかめなかった参加者も、次第にしっかりとつかめるようになっていった。
そして、最後はレーススピードに近い形で走りながらボトルをキャッチ。この頃には参加者全員が完璧にボトルを受け取れるようになっており、短時間で課題をマスターする姿が見られた。

また1-1カテゴリーのレース前には、恒例となったキッズ限定のオープニングランを実施。サイクリングを志す子供たちとキナンの選手たちとが交流を図りな がら、なかにはレースさながらのアタックを見せるちびっこライダーも現れ、会場は大いに沸いた。
11日は、集団走行で役に立つテクニックを参加者が選手とともに実践。肩を組んでの並列走行や、肩をぶつけ合いながらバランスをとっての走行など、集団走行時に限られたスペースの中で安定して走るためのスキルを身につけるための実践を行った。
参加者の中には、ヒルクライムをメインに取り組むサイクリストの姿もあり、集団走行を意識した講座内容が新鮮との声も聞かれた。また、実践後には即席の“座学講習”も展開され、実際のレースやエンデューロの攻略法をキナンメンバーに直接質問できる機会も設けられた。
そのほか、会場内に設けられたスポンサーブースもにぎわいを見せた。なかでも和光ケミカルの「ワコーズ」ブースでは、初めての利用する人向けの洗車レクチャーサービスが実施された。実際に洗車についてアドバイスを受けることができるとあって、レース後の参加者がバイク持参でブースを訪れるなど、さっそく新サービスが好評だった。