観て、走って楽しもう「シクロクロス東京」挑戦へ Cyclist編集部員がオフロード攻略へ直前特訓
東京・お台場海浜公園を舞台に2月10、11日に「シクロクロス東京」が開催される。さまざまな競技が行われるなか、Cyclist編集部員全員が90分のエンデューロへ出場が決定した。シクロクロス経験が乏しい平澤尚威、松尾修作がC1で活躍する安藤光平さん(ビチクレッタ シド)を先生に迎え、大会へ向けて特訓。大会の見所も安藤さんに聞いた。(場所・クロスコーヒー)
ポイントは砂浜対策

今回、指導をお願いした安藤さんは東京都狛江市にある「ビチクレッタ シド」で代表を務めている。Jプロツアーに参戦経験もあり、シクロクロスではカテゴリー「C1」に登録。走りもメカも得意なプロショップスタッフだ。もともとロードレーサーだった安藤さんだが、新しいステップに挑戦しようとシクロクロスを始めたという。「ゼロからのスタートだったので伸びしろがあり、技術向上に楽しさを感じました。ロードしか乗ったことない人がハマる理由ですね」と自身の経緯を話してくれた。同じく、ロード専門の平澤と松尾にとってうってつけの先生だ。
シクロクロス東京は、なんといっても砂浜の距離が長い。レース未経験でテクニックのない平澤は、バイクに乗らずに砂浜攻略を目指す。バイクを押すだけなら誰でもできそうなものだが、砂浜を速く走るとなれば、可能な限りスムーズにバイクを押していきたい。

押す時にどこを持つかというと、ハンドルバーかブラケットを両手で持つか、ステムを右手で持つかのいずれか。この選択は、次の「乗る動作」へ移りやすい方がいいので、ライダーの感覚によって違ってくるだろう。「ロードバイクに乗っている人ならブラケットを持つのがやりやすいと思う」というのが安藤さんのアドバイスだ。
押して走る時に気をつけた方がいいのは、ハンドルに体重はかけないこと。体重をかけると埋もれてしまい進みにくくなるので、抵抗を受けないように少し持ち上げるくらいでもいいという。また、レースが進むにつれてコース上には轍ができる。当然のようだが、バイクを轍に乗せて自分はその横を走るようにした方がスムーズに進むことができる。
押す方が簡単だが、バイクから降りて進みたいときに「押すか、担ぐか」という選択肢があるのと「押すしかない」のでは幅が変わってくる。

一般的な担ぎ方は、まず右手でダウンチューブをつかんで持ち上げ、トップチューブを肩に乗せる。次にハンドルを左に切り、右手をダウンチューブの下から通して左ドロップエンドのあたりを持つ。重要なのはバイクがふらつかないように、ハンドルを身体に引き寄せ脇をしめること。ジャンプしてもバイクと身体が一体になっているくらい固定できるのが理想だ。
担いで走る時は、前かがみ気味の姿勢で、重さを推進力に変えるのが効率的。前に重心がかかって、自然と足が出るようなイメージだ。後に重心がかかると、それを支えながら進むのはかなり負担が大きくなる。また、前かがみでもしっかり目線を前に向けることも忘れてはならない。
次は乗る動作。ドカッとサドルに飛び乗るのではなく、スルッと座るイメージだ。まずは立った状態で右ひざの少し上あたりをサドルに乗せ、腿をサドルに沿って滑らせていく。そうすると、そのままお尻がサドルに乗ってくれる。これをゆっくり押し歩きながら練習すれば、少しずつ走るペースに近づけることができる。
またバイクから降りる時は、バイクの左側に半身になった状態を作ってから降りるのも一つのテクニックだ。こうすることで、降りてから何歩か歩いてしまうということを防ぎ、ちょうどいい所で降りて次の動作に移りやすくなる。
バイクに乗れるエリアでも、林の中はでこぼこな地面や、左右に傾いた斜面を走る箇所もある。ここでバランスを保つには、ほんの少しだけ腰を上げるのがコツ。体重をサドルに預けてしまうと、振動や傾きの影響が直接身体にかかってしまう。また、逆にダンシングすると重心が上がるためふらついてしまうので、わずかにサドルからお尻を浮かせて、バランスを取りながらペダリングするといいだろう。


ロードとは違う上半身の使い方
ロードレース経験が豊富な松尾だが、オフロード走行はほぼ皆無。タイヤが滑る感覚に慣れておらず、実際にグリップやトラクションがかからない状況はオンロード時に即クラッシュに繋がるので苦手な分野だ。そこで安藤さんはシクロクロス練習では基本中の基本、「八の字走行から始めましょう」と提案した。
ポイントとなるのはブレーキをかけずにコーナーをクリアすることだという。ブレーキをかけるとタイヤに制動力がかかり、グリップ力が減る。よってタイヤが滑ってしまうリスクが高まるので、スピードが出ていてもコーナーをクリアできる技術を身につけようという狙いがある。
一方でリアブレーキをかけながら、ペダルを止めずに曲がる方法も重要だと説明した。ペダルを回し続けることで、タイヤへの一定のトラクションを確保。バイクを安定させつつも、スピードが上がりすぎないようリアブレーキをかけて調整していく。こうすることで、コーナー中に多少フロントタイヤが滑っても車体が安定した。慣れてくるとコンパクトに、なおかつ素早く旋回できた。
ロードバイクに親しんでいる松尾はサドルに深く座り、やや後方にポジションをとっていた。しかし、安藤さんは「体が硬いね」と指摘。後方に座ると上半身の自由度が限られてしまうが、前方にポジションをとることで障害物に対して腕の稼働域や、重心移動に余裕が持てるという。ブラケットの位置を“しゃくる”ことでも解決できるとアドバイスをくれた。
最後に、お台場でキーポイントとなる砂場を走行してみた。トライしたところ海の砂浜と違い、川辺の砂だったためサラサラでタイヤが埋まり全く進まない。一方の安藤さんは「この砂は難しいね」と言いつつ、体全体を駆使して前へと進む。松尾はどうあがいても前に進めなかったので、ここで心が折れた。本番はランがメインになりそうだ。
カウベルや野次で盛り上げよう

特訓が終わり、一行はチャンピオンシステムが手掛けるコーヒーショップ「クロスコーヒー」で一休み。店内ではチャンピオンシステムやラインエイトのウェアが並び、実際に手に取って試着することも可能。ボトルやサコッシュといったオリジナル商品も並んでいる。名物はこだわりのホットチョコレート(ドリンク)と、バケットで作られたサンドウィッチだ。店の外には自転車を止めるスペースもあり、サイクリングや練習の合間に気軽に立ち寄れるスポットとして人気を博している。
安藤さんにシクロクロス東京の魅力を伺うと、「都心での開催なので、観戦もしやすく応援される側も楽しいレースです。特に砂浜区間の折り返しポイントは選手が最もツラいスポット。体力が限界になっているのでカウベルや野次で盛り上げてください」と話す。会場では飲食や、各自転車、パーツブランドがブースを出展しお祭りのように盛り上がりをみせる。「電車でも自転車でも来やすい場所なので、ぜひ足を運んでみてください」とアピールした。