サイクリスト

御神火ライド2018
title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<242>バルデ、ナーセンらが王座を視界に アージェードゥーゼール ラモンディアル 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 フランス自転車界の可能性と期待を一身に背負うチームリーダーのロマン・バルデ(フランス)。ツール・ド・フランスでは一昨年が個人総合2位、昨年は同3位と、パリ・シャンゼリゼのポディウムに立つ常連となった。今年のミッションはただ1つ、ツールでのマイヨジョーヌ獲得だ。同様に、北のクラシックで頂点をうかがうオリバー・ナーセン(ベルギー)もすっかりチームの顔に。しっかりとした柱に、それを支える充実のアシスト陣。ビッグレースの王座奪取の機が熟した印象のアージェードゥーゼール ラモンディアルの2018年シーズンを、今回は展望していく。

フランスの期待を一身に背負うロマン・バルデ(中央)。左は北のクラシックで活躍が期待されるオリバー・ナーセン =ツール・ド・フランス2017第18ステージ、2017年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

フランス開幕シリーズでセンセーショナルな走り

 2018年シーズン開幕戦、サントス・ツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)では、気鋭のオールラウンダーであるピエール・ラトゥール(フランス)がトップから24秒差の個人総合13位と、まずまずの出足。オーストラリアでは試運転の趣きのあったチームは、1月下旬から幕を開けたフランス国内開催のレースで徐々にエンジンを温めている。

1月28日のグランプリ・ラ・マルセイエーズを制したアレクサンドル・ジェニエス Photo: MLT

 フランス開幕戦であった1月28日のグランプリ・ラ・マルセイエーズ(UCIヨーロッパツアー1.1)で、アレクサンドル・ジェニエス(フランス)が優勝。チームに今シーズン初勝利をもたらすと、1月31日~2月4日に同じくフランスで行われたエトワール・ド・ベッセージュ(UCIヨーロッパツアー2.1)では、新加入のトニー・ガロパン(フランス)が個人総合優勝を果たした。

 エトワール・ド・ベッセージュの総合争いは、最終日に設定された個人タイムトライアル(12km)の比重が高く、ここでの走りがそのまま最終成績に反映される形にあった。そこでガロパンは、2位に20秒の差をつける圧勝。この大会では2015年から3年連続で個人総合2位だったが、ようやく雪辱した。

トニー・ガロパンはエトワール・ド・ベッセージュで個人総合優勝。最終日の個人タイムトライアルで圧勝した Photo: Journal La Marseillaise

 好走を見せているジェニエスとガロパンは、ともに今シーズンはチームの中核となるうる存在。山岳に強いジェニエスは、2015年のジロ・デ・イタリアでは個人総合9位に入った実績があり、ステージレースの総合エース候補の1人。

 一方のガロパンは、すでに3月のパリ~ニースで総合成績を狙うことを明言。その後は北のクラシック、アルデンヌクラシックと連戦する意向を示している。ツールにおいては、バルデのアシストに努めたいとしており、理想像はクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)を支えるべく獅子奮迅の働きを見せるミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)だとも。プロキャリアでは初めて、フランス籍のUCIワールドチーム所属とあって、モチベーションはかなり高まっている様子だ。

ツール制覇に向け動き出したバルデ

 チームの最大目標となるツールでは、よほどのことがない限りバルデが総合エースを務めるのは確実。過去2回、総合表彰台を獲得した実力とツール本番に合わせるピーキングは、高く評価されるところだ。

2年連続でツール・ド・フランスの総合表彰台に立ったロマン・バルデ(左)。2018年はその頂点を目指す =ツール・ド・フランス2017第21ステージ、2017年7月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 バルデの強みは、何といっても山岳での安定感と勝負度胸。狙ったレースでは確実に上位フィニッシュし、ここぞという場面でのアタックも強力。急坂区間など、ライバルが苦しむタイミングでのアタックは、ときに驚異的な走りにつながる。

 また、バルデの代名詞でもあるダウンヒルは魅力十分。下りで仕掛けて勝利に結びつけたケースも多く、上り・下りともに攻められるスタイルは今後も貫いていくことになるだろう。今年のツールは上級山岳ステージが6つに対し、頂上フィニッシュが3ステージと少なめ。ステージ最後のカテゴリー山岳からフィニッシュまで一気のダウンヒルといったコースレイアウトも想定され、そうなれば本領を発揮するチャンスが増えてくる。

ツール・ド・フランス2017では個人タイムトライアルで争われた第20ステージでブレーキ。タイムトライアルの改善が必要とされる =2017年7月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 かたや、ツール制覇に向けて課題が残されているのも事実。特に個人タイムトライアル(TT)でのブレーキが多く、どのように走りを改善していくかが頂点に立つうえでのポイントになってきている。今年のツールは第20ステージに31kmの個人TTが控える。アップダウンが連続し、バルデクラスのクライマーであれば対応が可能とみられるが、独走力が高まればタイムのさらなる短縮も期待ができる。

 加えて、バルデはチームTT(第3ステージ)やパヴェ(第9ステージ)を走る、フランス北部での大会前半を重要視。「強風がプロトンを崩す要素になる」とも分析しており、自身の走りに加えてアシスト陣もしっかりと固めることだろう。ナーセンやガロパンといった実力者のほか、ラトゥール、ジェニエス、シリル・ゴティエ、アレクシス・ヴィエルモーズ(以上フランス)、マティアス・フランク(スイス)、ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク)といったオールラウンダーがバルデのアシスト候補に挙がる。

 シーズン初戦のグランプリ・ラ・マルセイエーズを8位で終えたバルデだったが、2月4日のトレーニング中に落車し、左腕を負傷。予定していた2月14~18日のブエルタ・ア・アンダルシア(スペイン、UCIヨーロッパツアー2.HC)を回避すると発表した。とはいえ、戦線離脱は2週間の見込みで、出場の意向を示してきた3月3日のストラーデ・ビアンケ、同7~13日のティレーノ~アドリアティコ(ともにイタリア)には影響がないとしている。

山岳での走りはプロトントップクラスのロマン・バルデ。オールラウンドに力が発揮されればツール制覇が現実味を帯びてくる =ツール・ド・フランス2017第12ステージ、2017年7月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

ナーセンは北のクラシック初制覇なるか

 クラシック路線を率いるのは、パヴェのスペシャリストであるナーセン。2年前のブルターニュクラシック・ウェストフランスでの優勝をきっかけに、ワンデーレーサーとしての地位を築いた。

進境著しいオリバー・ナーセン。パリ〜ルーベなど北のクラシック制覇に期待が膨らむ =2017年4月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 真価を発揮したともいえる昨シーズンの走り。ビッグタイトルには縁がなかったものの、E3ハーレルベーケでは3位となるなど、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)やペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とならんで再三再四レースを動かす見せ場を作ってみせた。

 今シーズンの目標は当然、北のクラシックでの優勝だ。幾多のパヴェをクリアするテクニックやパワーに加え、少人数に絞られた時のスプリントにも強く、レース展開に恵まれればライバルに対して有利な状況へと持ち込める武器がある。圧倒的な勝負強さを誇るヴァンアーヴェルマートやサガンとの対峙では分が悪いが、スピードに長ける選手たちを後方へと置き去りにして、いかに得意なシチュエーションにできるかがカギとなる。

 脇を固める存在としては、ガロパンのほか経験豊富なスティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー)が控えるほか、昨年のアンダー23(23歳未満)世界王者のブノワ・コズネフロワ(フランス)が加わる可能性もある。2月下旬から始まる石畳系クラシックに向け、戦力は整っている。

アージェードゥーゼール ラモンディアル 2017-2018 選手動向

【残留】
ゲディミナス・バグドナス(リトアニア)
ヤン・バーケランツ(ベルギー)
ルディ・バルビエ(フランス)
ロマン・バルデ(フランス)
フランソワ・ビダール(フランス)
ミカエル・シュレル(フランス)
クレメン・シェヴリエ(フランス)
ブノワ・コズネフロワ(フランス)
ニコ・デンツ(ドイツ)
アクセル・ドモン(フランス)
サミュエル・デュムラン(フランス)
ユベール・デュポン(フランス)
ジュリアン・デュヴァル(フランス)
マティアス・フランク(スイス)
ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク)
シリル・ゴティエ(フランス)
アレクサンドル・ジェニエス(フランス)
アレクシー・グジャール(フランス)
カンタン・ジョレギ(フランス)
ピエール・ラトゥール(フランス)
マッテーオ・モンタグーティ(フランス)
オリバー・ナーセン(ベルギー)
オレリアン・パレパントル(フランス)
ナンズ・ピーターズ(フランス)
スティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー)
アレクシー・ヴィエルモーズ(フランス)

【加入】
シルヴァン・ディリエ(スイス) ←BMCレーシングチーム
トニー・ガロパン(フランス) ←ロット・スーダル
クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス) ←コフィディス ソリュシオンクレディ

【退団】
ジュリアン・ベラール(フランス) →未定
ソンドレ・ホルストエンゲル(ノルウェー) →イスラエルサイクリングアカデミー
ユーゴ・ウル(カナダ) →アスタナ プロチーム
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア) →バーレーン・メリダ
クリストフ・リブロン(フランス) →引退

今週の爆走ライダー−スティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 北のクラシックの切り札として8年ぶりに現チームに戻ったのは2017年。その前年までは、エティックス・クイックステップ(現クイックステップフロアーズ)の主力として活躍。中盤から飛び出し、ライバルチームをかく乱する戦法は、たびたび自らの好リザルトにもつなげた。

復活を期するスティーン・ヴァンデンベルフ。サントス・ツアー・ダウンアンダーでシーズンインを果たした =2018年1月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 自信をもって臨んだ昨シーズンだったが、いまひとつ波に乗ることができなかった。“本番”の北のクラシックはナーセンに勝負を託し、自身はアシストに専念。そして、立て直しを図っていた矢先にアクシデントに見舞われてしまった。

 5月に行われたダンケルク4日間(フランス、UCIヨーロッパツアー2.HC)の第1ステージでの大規模クラッシュ。約50人が地面にたたきつけられた中でも、ヴァンデンベルフの負傷が特に大きかった。一時は脳にも影響が出る可能性が指摘されるなど、結果的に大事には至らなかったとはいえレース復帰には3カ月以上を要した。

 無事にカムバックを果たした今年は、復活のシーズンにしようと意気込む。もちろん、ターゲットは北のクラシック。ナーセンやガロパンとの共闘となるが、牽引力とテクニックならば2人にも負けない。レース展開次第では、自らが勝利を狙うことだってあることだろう。

 さらに今年は、新たな目標にもトライする。それは、8年ぶりのグランツール出場。チームTTやパヴェが待ち受けるツールでバルデをアシストしたいと意気込む。何より、メンバーに選ばれれば力になれると確信しているとまで言い切る。

 今年からグランツールが1チーム8人編成になることや、チーム内の序列、自身の脚質などを総合し、リスクを冒してまでツールにこだわることはしないというが、それでもできうる限りのチャレンジはしていく構えだ。

 3週間の戦いに必要とされるためには、やはり完全復活を印象付けなければならないだろう。シーズン序盤のレースから高い評価を獲得し続けること、そして主戦場である北のクラシックで結果を残すこと。右肩上がりにチーム力が高まる中にあって、決してすべてが約束される立場ではないが、ベテランならではの豊富な経験で状況を好転させたい。若い選手たちとの競争に、いつになく士気が高まっている。

北のクラシックでの実績が豊富なスティーン・ヴァンデンベルフ。2018年はツール・ド・フランスのメンバー入りも目標だ =パリ〜ルーベ2017、2017年4月9日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

チーム展望2017-18 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
御神火ライド

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載