腰山雅大さん選出・サイクリストへお勧め図書⑦継続的に強くなりたい人におすすめ『超一流になるのは才能か努力か?』

by 腰山雅大 / Masahiro KOSHIYAMA
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 BMXパーク競技を経て、シクロクロスへ参戦し関西を拠点に活動する自転車歴20年の社会人アスリート、腰山雅大さんが「この冬おすすめしたい一冊」は、アンダース・エリクソン教授とロバート・プール氏の共著『超一流になるのは才能か努力か?』(文藝春秋)。超一流と呼ばれる人たちがどのような取り組みをしてきたのかを探る一冊で、壁に当たったり、寒い冬にインドアトレーニングするサイクリストにも参考になる話題が散りばめられています。

最近はほとんど電子書籍で読んでいます、という腰山さんオススメの一冊『超一流になるのは才能か努力か?』(文春e-book)著者:アンダース・エリクソン / ロバート・プール 訳者:土方奈美 Photo : Masahiro Koshiyama

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「人間として強くなるには」

 自転車愛好家が増える昨今、とりわけご自身のレース結果やセグメントでのタイムに強く目を向けられておられる方も少なくないと思う。いわゆるトレーニングというものを大人になってから始められた方にとっては、自分自身が数値的にどんどん強くなっていく事実や、それに伴って肉体が変化したり、生活水準的なものまで変化してしまうのであるから面白いはずだ。

 数年前、その垂れ下がったハンドルを握ることへすら臆病になっていた自分を思い返して、ニヤリとする。

 自慢ではないが僕自身も、その、大人になってからトレーニングにハマってしまった一人である。人生の半分以上の年月を自転車競技(BMX)に捧げてきたにも関わらず、数年前から乗り始めた700Cの自転車に取り憑かれている。

 初めは郊外を爽快に走り抜けることへ魅力を感じ、そのうち途中の峠で力試しを始めた。その力試しがエスカレートした挙句はパワーメーターを手にし、今では立派なインドアサイクリストである(これで良いのか、本当に)

 で、いま興味の矛先は「人間として強くなるとは」という漠然とした疑問に向けられている。もう少し噛み砕いて述べると、自転車の軽量化やペダリングフォームなどの競技特化したものではなく、とにかくアスリートとして継続的に強くなっていくにはどんな思考理論が必要なのか、そこである。無いとわかっていながらも、無限に強くなれる法則が欲しいのだ。

 そんな欲張りな自分にうってつけだったのが、アンダース・エリクソン教授とロバート・プール氏の共著『超一流になるのは才能か努力か?』だ。

チェスのプレイヤー、バイオリン奏者の例も

泥の中でさえ、心的イメージで一番効率の良いラインを選択することが出来る Photo : Kensaku SAKAI(FABtroni+camera)

 本書では、様々なジャンルで超一流と呼ばれる人たちがどのような取り組みをしてきたのかを探索している。一般的に「才能に恵まれた」と評されるアスリートや芸術家たちが、いかに才能 ”ではなく” 、努力によって成果を出してきたかを紐解いている。著者は、様々な技能を向上させるための最も有効な方法として「限界的練習」の重要性を主張していて、これはいわゆるコンフォートゾーンを飛び出した、自分の能力に対して常に一定の負荷が掛かる練習のことを指す。その対象はアスリートのフィジカルのみならず、チェスのプレイヤー、バイオリン奏者、医療従事者など、非常に広範囲で有効だということが書き示されている。

 僕はこの書籍に自分のフィジカル向上のみを期待したのだが、つまるところ自転車を扱うテクニック面や、もしくは社会人としての働き方にまで応用が利く話が展開されていた。

心的イメージの発達

 特に興味深いのは、第三章で登場する「心的イメージ」の話。もしあなたが経験を積んだシクロクロス競技者であれば、泥に覆われたコースでさえ ”直感的” に効率の良いラインを探り当てられるし、手で触れたことすら無い土でも、どの程度タイヤがグリップするのかそれとなしに判断出来るものだ。この直感というのは、自分が過去に見た(路面)状況や起こった事実(実際に転倒したとか)または手のひらで感じた振動などの情報が脳の適応性によってパターン化されたものを指し、それこそが心的イメージなのだ。

 つまりテクニックを向上させるということは、この心的イメージをより発達させることであり、そのためにトライ&エラーを反復することが重要だと著者は述べている。ひとえにテクニックと聞くと身体の使い方ばかりに目が向けられるが、それを指示しているのは脳みそなのだ。

 日々のトレーニングにフィードバックは欠かせない。そうであればあるほど打破できない壁が現れ、頭打ちしてしまう。そうなったときには本書を思い出していただきたいし、とりわけ今からトップアスリートを目指そうとする若き競技者ならば、今日の練習を始める前にぜひ読破していただきたい内容である。

腰山雅大
腰山雅大(Kossy)

自転車歴20年の社会人アスリート。BMXパーク競技を経て、数年前からシクロクロスへ参戦、ボーダーレスな自転車競技活動が注目される。All-City Cyclesのライダーとしてシングルスピードで国内トップカテゴリーを走っている。コーヒーやクルマの造詣も深い。

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