産経WEST【ビジネスの裏側】より東大阪から世界へ オージーケーカブトがNIPPOにヘルメット供給、東京五輪も「金」目指す

by 上野嘉之 / Yoshiyuki KOZUKE
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 大阪府東大阪市のヘルメットメーカー「オージーケーカブト」が今年から2年間、イタリアの自転車プロ・ロードレースチーム「NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ」に競技用ヘルメットを供給する。チームはトップレベルのレースへの参戦経験が豊富で、今季は日本人選手も7人が所属。オージーケーカブトは以前にも欧州プロチームに供給したことがあり、今回は世界の舞台への再挑戦となる。中小企業が集積する「モノづくりのまち」東大阪で培った高い技術力で頂点を目指すとともに、2020年東京オリンピックでも日本人選手をサポートして金メダルを狙う。

NIPPO・ヴィーニファンティーニ」チームカラーが施されたオージーケーカブトのヘルメット「エアロR1」 ©NIPPO Vini Fantini

精鋭揃う日伊混成チーム

オージーケーカブトのヘルメットを手にするNIPPO・ヴィーニファンティーニのダミアーノ・クネゴ(中央)、内間康平(左)、マルコ・カノラ ©NIPPO Vini Fantini

 NIPPO・ヴィーニファンティーニは、日本の建設会社NIPPOの実業団チームから発展した日伊混成のプロチーム。イタリアを本拠地とするが、選手や監督、メカニック、マッサージャーなどに日本人が多数参加している。

 所属する19選手の筆頭格は、かつて最高峰の大会の一つ「ジロ・デ・イタリア」(イタリア1周レース)を制した世界的ライダーのダミアーノ・クネゴ(イタリア)。日本人も、2016年リオデジャネイロ五輪代表の内間康平、同年の全日本U23王者の小林海ら精鋭が揃う。

オージーケーカブトのヘルメットをトレーニングライドで着用したNIPPO・ヴィーニファンティーニの選手 ©NIPPO Vini Fantini

 チームは世界自転車競技連合(UCI)の第2カテゴリーに属するが、実力が評価され、トップチームが競うワールドツアーのレースに多数招待されてきた。ジロ・デ・イタリアには2015年から2年連続出場。約300kmと一日のレースでは最長距離の「ミラノ~サンレモ」などにも常連として出場している。

 日本で行われる国際レースのツアー・オブ・ジャパン(大阪府、京都府、三重県、東京都などで8レース)、ツール・ド・熊野(和歌山県、三重県で4レース)などにも毎年参戦し、国内のファンも多い。

 今季開幕戦はスペインで1月31日から5日間開かれるレースの予定だ。

国内シェア1位

 オージーケーカブトは、1948(昭和23)年創業の「大阪グリップ化工」(現OGK技研、東大阪市)を母体とする。同社は自転車用のグリップ(ハンドルを握る部分)製造で成長し、1960年代には補助輪、ヘルメット、前かごなどへと多角化。自転車用樹脂部品で国内トップシェアを獲得した。

空力性能について語るオージーケーカブトのヘルメット開発者、吉田健氏 Photo: Shusaku MATSUO

 このうちヘルメットの事業部が1983(昭和58)年に「オージーケー販売」として独立。2006(平成18)年に社名を「オージーケーカブト」へと変更した。社員数約90人ながら、自転車競技用ヘルメット(競輪専用を除く)では日本唯一のメーカーで、国内市場シェアは海外ブランドを抑えてナンバー1。オートバイ用ヘルメットも国内シェア3位で、トップブランドの一角を占める。

 自転車ロードレース向けでは、日本の第一人者、新城幸也(バーレーン・メリダ)がかつて所属した世界トップレベルのチームに2度、ヘルメットを供給した実績がある。

「日本人選手をバックアップ」

 今回の契約には、日本人選手やスタッフが多いNIPPO・ヴィーニファンティーニと組むことで、より多くのフィードバックを得て開発を加速する狙いが込められている。

 チームの大門宏監督は「オージーケーカブトの役員や現場担当者から、なんとしても日本人選手をバックアップしたいという強い意志が伝わってきた」と明かし、「世界ランキングへ挑戦する日本人選手の強化に、さらに緊張感をもって取り組みたい」と決意を新たにしている。

ヘルメットの開発では、空気の流れをコンピューター解析で可視化している ©OGK KABUTO
ヘルメットは長時間にわたって着用するため、頭部の冷却効果も検証する ©OGK KABUTO

 自転車競技のヘルメットは、頭部を守る堅牢性と衝撃吸収性を中心に、空気抵抗の低減、通気性、軽量性、耐久性など、相反するさまざまな性能が求められる。オージーケーカブトは、コース距離や速度、気候などの条件が異なる多くのレースで国内外の選手の声を集め、製品開発に反映させてきた。さらに、実際に事故にあったヘルメットを回収・分析して安全性を向上。風洞実験やコンピューター解析、オートバイ用ヘルメットの技術導入などで空気抵抗軽減や軽量化も実現した。

金メダルに現実味

 今回の契約の先には、東京五輪で日本選手のメダル獲得に貢献することも見据えている。オージーケーカブトはこれまで15年以上にわたり、日本代表チーム側と契約し、ロードレースとトラック種目の両面で選手に製品を供給してきた。

片山右京監督率いる「チームUKYO」の畑中勇介選手は、オージーケーカブトのヘルメット「エアロR1」を着用して2017年のロードレース全日本選手権を制した =2017年6月25日、青森県階上町 Photo: Shusaku MATSUO

 現在、ロードレースでは男子の新城、別府史之(トレック・セガフレード)、内間、小林、女子の與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)、萩原麻由子(アレ・チポリーニ)らが世界の舞台で走り、東京五輪で上位進出を目指している。

 一方、トラック種目では今季、女子オムニアムで梶原悠未(筑波大学)がワールドカップ(W杯)第3、4戦で連勝。男子ケイリンの脇本雄太(競輪選手)はこの種目で14年ぶりのW杯優勝を収めた。ほかにもW杯の3種目で2位を獲得し、東京五輪のメダル獲得が現実味を帯びてきた。

2016年の「大阪府自転車安全フェア」では、府のゆるキャラ「もずやん」(左)が、オージーケーカブト製の特大ヘルメットをかぶって登場。交通安全啓発ドロイド「ケッタマン」(中央)らと交通安全をアピールした =2016年6月17日、大阪府吹田市 ©OGK KABUTO

 いずれの種目も日本代表選手はオージーケーカブトのヘルメットを着用する。

 同社企画・広報課の柿山昌範さんは、「東京五輪という目標は一番大きい。さらに将来的には、日本人選手だけの世界トップチームを作りたいという夢が(ロードレース関係者の間で)ある。それに向けて応援していきたい」と意気込む。東大阪から世界制覇へ、志は限りなく高い。

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オージーケーカブト チームNIPPO ヘルメット 日本ナショナルチーム

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