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栗村修の“輪”生相談<119>30代男性「アルミフレームからカーボンに乗り換えましたが、しっくりきません」

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 最近、アルミフレームからカーボンフレームに乗りかえましたが、しっくりきません…。

 疲れるだけで進む感じが無く、楽しく感じません。

 カーボンは初めてですが、アルミより走りが軽いとかいろいろ聞きますが、こんなことってあるのでしょうか?

(30代男性)

 奥が深い質問ですね。カーボンフレームが全盛の今、とても逆説的で、しかし重要なご質問です。

 ところで、進むバイクを考える上で、フレーム素材を問わず重要なのは、なんといってもジオメトリです。カーボンフレームにはオーダーフレームがほぼないので、今は忘れられがちなんですが、実は一番大切なところです。

 お手元にジオメトリ表を用意してください。走りの「感覚」に大きく関わるのは、まずはヘッド角とフロントフォークのオフセットですね。一般的にヘッドが立つほど、またオフセットが少ないほど、ハンドリングはクイック(直進安定性が弱まる)になる傾向があります。ハンドリングのクイックさは、ダンシングの感覚にすごく影響するので、どうもダンシングがイマイチだと感じる場合、ここに原因があるかもしれません。あとは、BBハイトも大きいですね。低いほど走行感は安定するといわれていますが、ダンシング時にバイクを振りにくくなるかもしれません(このあたりの感覚は個人差や慣れの要素が大きく関係するので一概にはいえませんが…)。

 但し、ジオメトリの世界は奥が深すぎてすぐに結論はでないので、次の要素に移りましょうか。フレームの剛性です。どのメーカーも「剛性●●%アップ」と謳う時代が続いていますが、硬ければいいというものではありません。もちろん、柔らかければいいというものでもないのが難しいところですが…。

 思うに、進むフレームと進まないフレームの差は、剛性のバランスが大きいんじゃないでしょうか。必要なところでは必要な程度の剛性を出し、しなりが必要なところでは適度にしならせる。この塩梅を絶妙に調整しているフレームが、進むフレームです(完全に企業秘密の世界ですが…)。

軽量性だけでなく、緻密な剛性設計が可能な点がカーボンフレームのメリットだ Photo: Yuzuru SUNADA

 そして重要なのは、剛性は、カーボンなら硬いとか、アルミなら柔らかいとか、素材で切り分けることはできないということです。推測ですが、「疲れるだけで進まない」という感想から判断すると、以前乗っていらしたアルミフレームは、乗り手のフィジカルに合った適度なしなりがあったのかもしれません。

 柔らか目のフレームに長く乗っていると、しなりを使って前に進ませる習慣が身につきます。フォームやペダリングなどですね。また、多少重めのギアを踏んでも良い意味で力が逃げるので、脚にきにくく感じる部分もあるでしょう。釣竿やゴルフクラブなどをイメージしていただけるとわかりやすいかもしれませんが、しなるものを長く使っていれば、当然人間はそれに合った使い方というものを無意識に習得していきます。でも、その状態でカチカチな、スパルタンなカーボンフレームに乗り換えてしまうと、しなりを生かしにくいので進まない…という感覚に陥る可能性がありえます。もちろんその逆パターンもありえるでしょうが。

 対策は2つ。ひとつは、慣れることです。ペダリングやフォームを変えれば、今のフレームでも楽に進ませることができるようになるかもしれません。

 もうひとつは、ちょっとお金がかかってしまうんですが、ホイールを柔らか目のものに変えることです。フレームが硬すぎる場合、ホイールなどで剛性を調整することはうまくすれば可能かもしれません。この場合、フレームが硬すぎるなら、柔らかめのホイールを入れてバイク全体の剛性を落とすわけです。しかし、そもそもなにを基準に硬いとか柔らかいとかを判断するのか自体が難しく、ある意味で組み合わせは無限大であり、「ドツボ」にハマってしまうリスクもあります。

 剛性バランスは非常に奥が深く、明確なお答えは難しいんです。でもはっきり言えることは、「カーボンは…アルミは…」という区別はできないということ。素材のことはいったん忘れて、「慣れ」や「クセ」というキーワードを頭に置いて、フォームや各種セッティングなどを調整し、いま乗っているカーボンバイクに「順応」してみてはいかがでしょうか。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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