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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<240>有力選手を獲得しチーム全体の底上げへ ディメンションデータ 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 1月14日から21日までオーストラリアで開催されたサントス・ツアー・ダウンアンダーでは、多くの選手・チームが成功を収めたが、その中でも幸先のよいスタートを切ったチームの1つにディメンションデータが挙がる。トムイェルト・スラフテル(オランダ)が個人総合3位に入ったほか、ニコラス・ドラミニ(南アフリカ)が連日の逃げで山岳賞を獲得するなど、チームの勢いを感じさせる活躍を見せた。そこから見えるのは、既存メンバーと実績豊富な新加入組との融合により全体の底上げを図ろうというチームの方向性だ。今回は、チーム力大幅アップをもくろむ“アフリカ大陸の雄”を見ていく。

トレインを組んで進むディメンションデータの選手たち。サントス・ツアー・ダウンアンダーで一定の成果を残した =2018年1月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

チームランキング最下位脱却へ

 ダウンアンダーでは、ウィランガ・ヒルの頂上にフィニッシュした第5ステージでスラフテルが3位でフィニッシュ。総合でも3位となり、その座を最後までキープした。もっとも、ベルキン プロサイクリング(現ロットNL・ユンボ)時代の2013年に個人総合優勝を挙げており、相性のよいレースで再び結果を残してみせた。

サントス・ツアー・ダウンアンダーで個人総合3位に入り、総合表彰台に上がったトムイェルト・スラフテル =2018年1月21日 Photo : Yuzuru SUNADA

 この大会を終えて、チームはUCIワールドツアーポイントで合計395点を獲得。スラフテルだけで335点を稼いでいるが、ベン・オコーナー(オーストラリア)が個人総合18位で30点、同23位のスコット・デーヴィス(イギリス)が20点、同47位のラクラン・モートン(オーストラリア)が10点をそれぞれゲット。

 チームは昨シーズン、UCIワールドツアーチームランキングで最下位に終わり、今年はその地位からの脱却を目指すと宣言している。これまでも実力者がそろっていながら、どこかマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のスプリントや、ステージレースなどでの逃げに頼っていた面は否めなかった。だが、ダウンアンダーでスラフテルやデーヴィス、さらには山岳賞を獲得したドラミニといった新戦力が結果を残したあたり、今シーズンはこれまでと違ったディメンションデータの姿が見られるかもしれない。長いシーズンを戦ううえで、計算できる選手たちが台頭している点は首脳陣にとって朗報といえるだろう。

カヴェンディッシュもシーズンインに向け着々

 ダウンアンダー組とは別に、セレクトされた主力選手10人が現在スペイン・カルペでトレーニングキャンプを行っている。その中には、昨年11月の「ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」で優勝を飾ったカヴェンディッシュの姿もある。

ツール・ド・フランス2017第4ステージでのスプリントで落車した直後のマーク・カヴェンディッシュ。肩を負傷し戦線を離脱した =2017年7月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

 カヴェンディッシュといえば、昨年のツール・ド・フランス第4ステージ。スプリントで落車し、サイドバリアーに激突。肩を負傷し、無念のリタイアとなった。このきっかけを作ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も失格でレースを去り、この大会を象徴する“大事件”となった。それでも9月にはレースに復帰し、目立った結果こそ残していないが走りの勘を取り戻すことはできている。

 かつては「マン島エクスプレス」といわれ勝利を量産したが、32歳となり、そのスピードに陰りが出ているのではないかとの見方もある。それでも、経験に裏打ちされたテクニックやリードアウトトレインとのコンビネーションによって、持ち味の勝負強さを生かし続けてきた。昨年はツールでの負傷があったとはいえシーズン1勝と、数字のうえでも不本意な形で終わっているだけに、復活をかける今年が正念場となりそうだ。

マーク・カヴェンディッシュ(中央)ら主力選手がスペイン・カルぺでトレーニングキャンプに励んでいる Photo: Scott Mitchell

 このキャンプでは、長年アシストとして勝利に貢献しているベルンハルト・アイゼル(オーストリア)のほか、自国の後輩であるスコット・スウェイツ(イギリス)、ニック・ドゥーガル、ヨハン・ファンジル(ともに南アフリカ)といったリードアウトマン候補も参加。さらには、2015年まで所属したエティックス・クイックステップ時代に信頼を寄せていたジュリアン・ヴェルモート(ベルギー)を、カヴェンディッシュ直々の指名により獲得。もちろんキャンプにも臨んでいる。ここに、ダウンアンダーに参加していた発射台のマーク・レンショー(オーストラリア)や、腹部の手術で離脱しているエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)が加わる。

 出場するレースやチーム事情、レース時のチームオーダーなどによって変化は出るだろうが、大事なレースでカヴェンディッシュが誰をしたがえてスプリントを狙うのかは、注目すべきポイントだろう。

 現時点ではレースプログラムについて具体的な言及は行っていないが、ここ数年は2月に行われる中東でのレースでシーズンインする傾向にある。今年も同様であれば、中東で走った後は3月にイタリアで開催されるティレーノ~アドリアティコとミラノ~サンレモ(ともにUCIワールドツアー)、さらに北のクラシック数レースを経て、ツールを目指すことになる。

 ツールでは2008年の初勝利以来、ステージ通算30勝。この記録をさらに更新すべく、リスタートのシーズンを送る。

課題は総合系ライダーの強化

 年々戦力を整えているチームだが、前述したUCIワールドツアーでのチームランキング順位アップに不可欠なのは、ステージレースでの総合エースの活躍。現行のシステムはグランツールを筆頭に、ステージレースで総合上位に入れば大量のポイントが付与される形にあり、オールラウンドに力を発揮できる選手を抱えているチームほどランキング上位に名を連ねている傾向にある。

UAE・チームエミレーツから移籍のルイス・メインチェス。3年ぶりの古巣復帰はグランツールでの活躍に期待がかかっている =ツール・ド・フランス2017第18ステージ、2017年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チームにとって切り札になるのが、3年ぶりに戻ってきたルイス・メインチェス(南アフリカ)。2015年以来、グランツールでは必ず総合トップ10入りを果たしており、25歳にして3週間の戦い方を熟知している強みがある。ツールでは昨年、一昨年と個人総合8位でフィニッシュ。どちらも新人賞のマイヨブラン獲得にあと一歩まで迫るなど、存在を大きくアピールした。

 脚質的には典型的なクライマーで、大崩れせずあらゆる展開に対応ができる。山岳での安定感は十分だけに、あとは個人タイムトライアル(TT)をまとめられればステージレースでの総合表彰台にも手が届くだろう。そろそろ大きなレースでの勝利もほしいところ。自国が誇るチームで派手な活躍といきたい。

ベテランのセルジュ・パウェルス。ツール・ド・フランスで過去2回総合10位台を経験している Photo: Scott Mitchell

 ベテランのセルジュ・パウェルス(ベルギー)も、過去2回ツールで総合10位台でのフィニッシュを経験するなど、実績は豊富。メクセブ・ドゥバサイとメルハウィ・クドゥスのエリトリア勢も高い登坂力を誇り、次期エース候補としての期待が高まっている。ともにここ数年は経験を積むためのシーズンとしてきたが、その才能を披露する時期がやってきつつある。

 こうした選手たちを、イゴール・アントン(スペイン)やジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)といったベテランの山岳職人がサポートしていくことになるだろう。加えて、ダウンアンダーで活躍したスラフテルやドラミニらが、この先どのようなスタンスで戦力となるのかも楽しみなところ。

クラシックやスプリントで実力を発揮するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン。腹部の手術を行なったが、シーズンインには影響なさそうだ =ツール・ド・フランス2017第19ステージ、2017年7月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのほか、逃げや個人TTを中心にいぶし銀の走りを見せるスティーヴン・カミングス(イギリス)も健在。また、ボアッソンハーゲンは2月にもレース参戦ができる見通しで、北のクラシックではこれまで通りエースを務められそうだ。

 チームは、自転車による教育や環境保全のプロジェクトである「クベカ」の取り組みにも力を入れる。下部組織「ディメンションデータ・フォー・クベカ」では、アフリカ系ライダーを中心に選手の育成を進め、トップチームへ選手を送り出すことを目指す。トップチームは、主に勝利に応じてアフリカの子供たちへ自転車を寄付する。この活動を通じて1人でも多く自転車が届くよう、選手たちは活躍を誓っている。

ディメンションデータ 2017-2018 選手動向

【残留】
イゴール・アントン(スペイン)
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
スティーヴン・カミングス(イギリス)
マクセブ・ドゥバサイ(エリトリア)
ニック・ドゥーガル(南アフリカ)
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)
ライアン・ギボンズ(南アフリカ)
ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)
レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)
ベンジャミン・キング(アメリカ)
メルハウィ・クドゥス(エリトリア)
ラクラン・モートン(オーストラリア)
ベン・オコーナー(オーストラリア)
セルジュ・パウェルス(ベルギー)
マーク・レンショー(オーストラリア)
ジェイロバート・トムソン(南アフリカ)
スコット・スウェイツ(イギリス)
ヨハン・ファンジル(南アフリカ)
ジェイコブス・フェンター(南アフリカ)

【加入】
スコット・デーヴィス(イギリス) ←チーム ウィギンス
ニコラス・ドラミニ(南アフリカ) ←ディメンションデータ・フォー・クベカ
アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア) ←ディメンションデータ・フォー・クベカ
ルイス・メインチェス(南アフリカ) ←UAE・チームエミレーツ
トムイェルト・スラフテル(オランダ) ←キャノンデール・ドラパック
ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー) ←クイックステップフロアーズ

【退団】
タイラー・ファラー(アメリカ) →引退
オマール・フライレ(スペイン) →アスタナ プロチーム
ネイサン・ハース(オーストラリア) →カチューシャ・アルペシン
エイドリアン・ニヨンシュチ(ルワンダ) →未定
ユーセフ・レグイグイ(アルジェリア) →ソバック・ナチュラフォーエバー
クリスティアン・ズバラーリ(イタリア) →イスラエルサイクリングアカデミー
ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア) →未定

今週の爆走ライダー−スコット・スウェイツ(イギリス、ディメンションデータ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 絶対的エーススプリンターのカヴェンディッシュが高く評価するアシストの1人。同じイギリス人という縁もあり、2017年に現チーム入りする際にはカヴェンディッシュの推薦もあったという。

2017年のストラーデ・ビアンケで10位と健闘。クラシックレーサーとして着実に成長しているスコット・スウェイツ =2017年3月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

 デビューして以来しばらく無名だった彼が一躍評価を高めたのは、2014年のコモンウェルスゲームズ(イギリスとかつての植民地だった国々による総合スポーツイベント)。悪条件下のサバイバルレースで生き残り、銅メダルを獲得。翌年からはUCIロード世界選手権のイギリス代表にも抜擢されている。

 厳しいコンディションになればなるほど力を発揮できる。昨シーズンは、未舗装路がコースに組み込まれるストラーデ・ビアンケ(イタリア、UCIワールドツアー)で10位と健闘。今年は北のクラシックを中心にエースの座をうかがおうという構えだ。

 クラシックのほかにもステージレースでのアシストなど、チームでの貢献度も高まっているが、今シーズンは復活をかけるカヴェンディッシュをどう盛り立てるかがポイントになりそうだ。「リードアウトだけでなく、ボトル運びやトラブルがあった際の引き上げなど、彼のために何でもやるつもり」とモチベーションは高い。

 2014年にツールの開幕地となるなど、イギリスの中でも自転車熱の高いヨークシャー地方の出身。イギリス人選手として初のツールステージ優勝を果たしたブライアン・ロビンソンに始まり、同国に初めてマイヨジョーヌをもたらしたトム・シンプソンなど、名選手を輩出している地域でもある。今では、女子プロトンのトップライダーであるリジー・ダイグナン(ブールス・ドルマンスサイクリングチーム)と並び、ヨークシャーにおけるロードレースの伝統を守る使命を担う選手とまで言われるほどになった。

 本人はそれをポジティブに捉える。「いつかはツール・デ・フランドルやパリ~ルーベといったレースで勝てる選手になりたい」。先人たちと同様に歴史に名を刻むことができるか。高い志を持って、新しいシーズンを迎えようとしている。

イギリスの中でも自転車熱の高いヨークシャー地方出身。先人たちが築いてきた伝統を守る存在として地元からの期待も高まっている =ツール・ド・フランス2017第11ステージ、2017年7月12日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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