MTBライダーの布袋田沙織さんがリポート「見えている」という先入観は危険! トラックの死角体験で痛感したサイクリストとしての自衛策

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 街中で走行するトラックのドライバーから並走する自転車がどのように見えているのか、そして見えていないのか─。トラックの「死角」とその危険性を体験するイベントが、1月13日に自転車のマナー向上と安全意識の啓発などの活動に取り組む団体「グッド・チャリズム宣言プロジェクト」(通称・グッチャリ)等によって開催されました。トラックからの死角を初体験し、思わず「本当に見えないんだ!」と衝撃を受けたMTBライダーの布袋田沙織さん。「見えているという先入観を捨てなければ!」という強い自戒がこもったリポートです。

運転席から、左側後方をミラーで確認し、視界からスタッフが消える範囲の広さに驚く Photo: Keisuke SETO

◇         ◇

 どれほどのサイクリストが、交通事故や走行中にヒヤッとした経験があるかは不明ですが、私の周りには何かしらの経験をした人が多いです。そんな私も以前、対向車線から曲がろうとしたタクシーにはねられて救急車に乗った経験があります。

会場となった「スポーツバイクデモ」会場。多くのサイクリストが訪れていた Photo: Keisuke SETO
トラック死角体験に大阪の自転車利用者は興味津々、希望者が列を成しスタッフも大忙し Photo: Keisuke SETO

 トラックなどの大型車による左折時の巻き込み事故は数多く発生し、事故にならなくても死角に入ってしまった自転車が、大型車に幅寄せをされたと感じるトラブルも多いと聞きます。もちろんドライバー側の安全確認の認識の向上も大切ですが、同じように自転車利用者がトラックの死角を知り、安全意識と注意レベルを向上させることができれば、事前のリスク回避へとつながっていくはずです。

死角体験のスタッフ一同、グッチャリと「らくもび」のメンバー。東京からも応援が駆けつけた Photo: Keisuke SETO

 そうした啓蒙活動の一環として、グッチャリとワイインターナショナル、そして「らくもび」(楽で快適でわかりやすいモビリティを考え、実践する企画集団)との共同企画として、大阪市の花博記念公園鶴見緑地で開かれた「スポーツバイクデモ」会場で、トラックの「死角体験会」が開催されました。

先入観を捨てる事が事故防止の第一歩

この「死角」のパネルが見えない事を運転席に座って認識し、誰もが驚く Photo: Keisuke SETO

 今回は3tトラックを使い、直接目視及びミラーで見える範囲とそうでない範囲に線を引き、それぞれの範囲にロードバイクを設置しました。

 実際にトラックのドライバー席に座りその視覚を確認すると、「本当に見えないんだぁー」と思わず声が漏れました。実際に外からセッティングを見てみると、見えない範囲、つまり「死角」は疑ってしまうほど広く存在します。

らくもびスタッフの説明で、ミラーで見える視界の範囲を確認中 Photo: Keisuke SETO

 死角が存在することは知っていても実際にトラックのドライバー席に座って確認するという経験はないので、大きな認識のズレに気付かされました。親子で体験してくださったお母さんはお子さん達に「ここは見えていないんだよ〜」と熱心に伝えていたのがとても印象的で、子供も大人も改めて「死角」を認識するのは良いですね。

 さぁ、いよいよ死角体験!「らくもび」メンバーの方からドライバーの視界や視点、運転時に注意していることや心がけていること、実際にあった状況などを教えてもらいつつ死角についての説明も受けます。

ミラーで見えていなかった死角を直接目視で確かめる Photo: Keisuke SETO

 直接目視及びミラーで見える範囲に立っているスタッフをミラー越しに確認。次に窓から顔を出して目視で確認。乗用車よりも座席が高く視界は広い印象です。そしてそのままスタッフは見えない範囲に移動。ミラーに顔を戻すと「まぁ不思議!」と言いたくなるほど見事に見えません。トラックから離れた距離はわずか1.6mですが、窓から大きく顔を出して覗きこまないと見えない。なるほど、これが死角なのです。

車体にはポスターを貼り付け、トラックやバスと自転車が互いに安全確保する必要性を説明 Photo: Keisuke SETO

 ちなみに乗用車のサイドミラーがある位置に、トラックにはサイドミラーとサイドアンダーという計2つのミラーがあります。サイドミラーは全体が見渡せる大きなミラーで、サイドアンダーは広角で見えるミラーです。カメラで表現すると上に「iPhone」、下に「GoPro」がついているようなもの。同時にシャッターを切っても絶対写らない場所、それが死角です。実際、死角に移動したスタッフは見えない。そしてこれは右側も左側も同様です。

 両サイドの死角以外に、もちろん真後ろにも死角は存在します。最近のトラックにはモニターが付いていて、モニター越しに確認をする事も可能ですが、搭載されていないトラックもあります。サイクリストが真後ろの死角に入った場合、トラックが知らずに急ブレーキなどを行う危険があります。車と自転車ではブレーキ力に差があり、自転車側も前方の視界をふさがれた状態では、このような時に対応する事ができません。

トラックの後方にはコーンで大型バスの大きさを表現し、さらに死角が大きくなることを表現 Photo: Keisuke SETO

 ここまでは車内からの確認でしたが、今度は外に出てロードバイクの位置で確認します。近すぎず遠すぎずの死角の位置は、サイクリストが無意識に入ってしまいそうな場所。「近すぎると巻き込まれるのが怖いからちょっと離れて追い抜かそう!」と気を遣って走るラインが意外にも死角だったりして、「見えている」という先入観を捨てる事が、事故やリスク防止の第一歩であることを痛感しました。

バス運転手の「見えない」話に納得

 説明をしてくれる「らくもび」メンバーは、実は全員がバス運転手の経験があり、中には現役のバスドライバー兼サイクリストもいます。こうしてバスドライバーからのリアルな話が聞けるというのはこの体験会の大きな価値の一つだと感じました。

参加者には、まずドライバーがどのように安全確認をしているかを説明し、自分でも確認してもらう Photo: Keisuke SETO

 実際に教えてもらった中で印象に残っている話があります。それはバス停から出発しようとバスの扉が閉まった後に、バスに手を振りながら「乗せて〜」と追いかけるが無情にもバスは出発してしまうというよくある話。これは手を振りながら近寄っても、死角によって「見えていない」という状況が引き起こしてしまっていることが多いそうです。

 普段からバスを利用する機会がある私にとって、何度も経験のあるシチュエーションなだけに驚きました。こちらとしては見えていて当たり前と思う距離や位置で、私にはそのドライバーに無視されたという嫌な気分だけが残っていました。頭の片隅にもなかった「見えていない」という事があるかもしれない…。私にとっての当たり前は相手にとっての当たり前ではなく、先入観は危険だなぁと改めて認識しました。

死角の大きさ 体験者の9割が「想像以上」

 今回体験された方へアンケートを行った結果、今回の体験を通じて、「死角は今まで考えていたよりもどうだったか」という問いに「多かった」と答えた方は、なんと全体の9割以上に。20代女性の方は「自動車免許を持っておらず運転席に乗ることがないので死角が多くて驚いた。とても良い経験になった」と話してくれました。

身を乗り出してミラーを確認するも、それでも死角が残ってしまう Photo: Keisuke SETO

 50代男性の方は「こんなに死角があるとは思わなかった。無理な追い越しや接近はせず安全に自転車を楽しみたい」と話してくれました。また、40代女性の方は「特殊大型の免許を持っているので死角は分かってはいたものの、改めて体験すると忘れている部分も多かった。自分も改めて気をつけようと思うが多くの方に知ってもらいたいと感じた」と話してくれました。さらには自転車店の店長をしているという男性は「この死角体験ができて、今日のイベントに来て本当に良かった。今後の仕事においても生かしたい」と話してくれました。

マナーアップ啓発チラシを参加者に配り、ルール遵守を呼びかける Photo: Keisuke SETO

 私自身も、先入観の恐怖に気付かされました。子供や女性のサイクリストが増える中で、トレーニングの方法や美味しいお店までのルートを共有するように、死角や事故の事前回避の為に出来ることも共有してもらい、お互いが楽しく、安全に、永く自転車を楽しむことができたらと思います。心地よく公道を走れるというサイクリストの数と同じ分だけ、心地よくサイクリストと公道をシェアできるドライバーがいるのかなぁ〜とも思います。

 今後もグッチャリと「らくもび」の活動として、各地で様々な死角体験会を実施していくそうです。ぜひ多くの方に体験いただきつつ、安全意識の向上が事故やヒヤッとする経験の予防策になればと思っています。

布袋田沙織 布袋田沙織(ほていだ・さおり)

大学を卒業後、IT企業に務め2010年に独立。2012年に表参道にてパーソナルスタジオmiao(ミャオ)を開始。現在はその後身としてamity fitstudio(アミティフィットスタジオ)を開始。モデル、アナウンサー、スポーツ選手、一般の方に体幹トレーニングを指導。MTBは2013年より始め、最速でエリートカテゴリ昇格を果たす。2017年よりamity mountaincrew(アミティマウンテンクルー)というチームを立ち上げ、海外レースやフィールドへ挑戦している。MTBアスリート、バイシクルライフアドバイザー、ピラティス・体幹トレーナー、パーソナルスタジオamity fitstudio代表。instagram : @mtc_sao。ブログ:http://ameblo.jp/saoringo825/

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