title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<238>ツール・ド・フランス2018出場全22チームが決定 ワイルドカード選出の背景に迫る

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 ツール・ド・フランスなどビッグレースの数々を主催するフランスのスポーツメディアグループ「アモリ・スポル・オルガニザシオン(A.S.O.)」は1月8日、今年7月7~29日に開催されるツールに出場するチームを発表した。例年通り、UCIワールドツアーを主戦場とする18チームと、ワイルドカード(第2カテゴリーにあたるUCIプロコンチネンタルチーム)4つを選出。全22チームが確定し、フランス・バンデ県での開幕のスタートラインにつくことが決まった。今回は、出場決定チームと合わせてワイルドカード選出の背景に迫る。

ツール・ド・フランス2018に出場する全22チームが決定。フランス・バンデ県でのスタートラインにつく =ツール・ド・フランス2017第21ステージ、2017年7月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

人気チームや実力派チームが順当に選出

ツール・ド・フランス2018ルートマップ ©︎A.S.O.

 例年と同じく、22チームが出場することとなったツール2018。シーズンイン間近のこの時期に発表することは、ワールドチームはもとより、選出されるまで出場の保障がなされないプロコンチネンタルチームにとっても、レースプログラムや各レースの出走メンバーを編成していくうえで好都合といえる。どのチームも、最高の調子でツールに臨めるよう、これからシーズン前半と中盤を送っていくことになる。

 晴れてワイルドカードで出場が決定したのは、コフィディス ソリュシオンクレディ、ディレクトエネルジー、チーム フォルトゥネオ・サムシック(以上フランス)、ワンティ・グループゴベール(ベルギー)。自動選出となる18のUCIワールドチームと合わせ、昨年と同じ顔ぶれとなった。その背景や、考えられる要因については後述するが、ひとまずは人気・実力・知名度・実績といった面を総合すると順当な決定といえそうだ。

ツール・ド・フランス2018出場チーム

●UCIワールドチーム
アージェードゥーゼール ラモンディアル(フランス)
アスタナ プロチーム(カザフスタン)
バーレーン・メリダ(バーレーン)
BMCレーシングチーム(アメリカ)
ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
エフデジ(フランス)
ロット・スーダル(ベルギー)
ミッチェルトン・スコット(オーストラリア)
モビスター チーム(スペイン)
クイックステップフロアーズ(ベルギー)
チーム ディメンションデータ(南アフリカ)
チーム EFエデュケーションファースト・ドラパック(アメリカ)
チーム カチューシャ・アルペシン(スイス)
チーム ロットNL・ユンボ(オランダ)
チーム スカイ(イギリス)
チーム サンウェブ(ドイツ)
トレック・セガフレード(アメリカ)
UAEチーム・エミレーツ(UAE)

●UCIプロコンチネンタルチーム
コフィディス ソリュシオンクレディ(フランス)
ディレクトエネルジー(フランス)
チーム フォルトゥネオ・サムシック(フランス)
ワンティ・グループゴベール(ベルギー)

実力と地域性がワイルドカード最後の決め手に

 4つの枠が設けられていたワイルドカードについて、大会の総合ディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏が、出場決定全チームが発表されたのちに説明を行っている。

 真っ先に選出が決定したのは、コフィディス ソリュシオンクレディとワンティ・グループゴベール。

ツール初勝利を狙うナセル・ブアニがコフィディス ソリュシオンクレディを引っ張る =ツール・ド・フランス2017第10ステージ、2017年7月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 コフィディスは、名実ともにツールの常連チーム。現状で所属が24選手と、UCIワールドチームに匹敵するだけの戦力を有する。長年、ツールのみならず数多くのビッグレースで結果を残し続けており、近年では地元フランス開催のレースのほか、ブエルタ・ア・エスパーニャでもその活躍ぶりは光っている。そして何より、エーススプリンターのナセル・ブアニ(フランス)の存在が大きい。過去3度のツール出場でいまだステージ優勝はゼロ。それでも、プリュドム氏が「ブアニに再びチャンスを与えたい」と言及しており、その期待は大きい。ジロ・デ・イタリアとブエルタではステージ優勝経験があり、ツールで勝つことができれば、3大ツールすべてで勝利を収めることになる。

2年連続のツール出場が決まったワンティ・グループゴベール Photo: Wanty - Groupe Gobert

 ワンティ・グループゴベールは、昨年に続く2度目のツール出場。初出場だった前回は、出走した9選手が全員完走し、パリ・シャンゼリゼに到達。ステージ優勝こそ挙げられなかったものの、全選手が3週間を走り切り、グランツールでも戦えることを証明した点が大きく評価された形だ。また、プリュドム氏は注目選手としてギヨーム・マルタン(フランス)を挙げる。昨年のツール総合23位で、チームのエース格に成長した自国の有望株に期待を寄せる。

 なお、HCクラス、1クラス、2クラスのレースで付与されるポイント合計で争われるコンチネンタルツアーにおいて、ワンティ・グループゴベールとコフィディス ソリュシオンクレディが昨年のUCIヨーロッパツアーの1位と2位を占めているあたりも押さえておきたい。

ツール2017第8ステージで劇的勝利を挙げたリリアン・カルメジャーヌ。新星ディレクトエネルジーの顔となる =2017年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 この2チームに続いて選出されたのが、ディレクトエネルジー。ブイグテレコム、チーム ヨーロッパカー時代も含め、長年フランスのロードレース界を引っ張ってきた実力派チームだ。ツールでも十分な実績を誇るだけでなく、今年はお膝元であるバンデ県での開幕とあって、何としてもよいところを見せなければならない。文句なしの選出のなかには、大会を盛り上げる存在として、さらにはバンデ県の人々に喜びを与える意味も込めた、主催者側の意図も見られる。長きにわたりチームの顔であったトマ・ヴォクレール(フランス)は、昨年のツールをもって現役を引退。代わって、同大会第8ステージで劇的勝利を挙げた、リリアン・カルメジャーヌ(フランス)が牽引する。

チーム フォルトゥネオ・サムシックは移籍により地元凱旋となるワレン・バルギルがリーダーを務める見通しだ =ツール・ド・フランス2017第18ステージ、2017年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 スポンサーが変わりながらも5年連続の出場が決定したチーム フォルトゥネオ・サムシックは、バンデ県から北西に進んだブルターニュ地域圏が拠点。ツールでは10年ぶりとなるブルターニュステージが行われることとあって、ディレクトエネルジー同様に地元チームとしての役割が求められている。さらに特筆すべきは、昨年のツールで山岳賞とスーパー敢闘賞を獲得したワレン・バルギル(フランス)が加入したこと。ブルターニュが生んだプロトン有数のクライマーが、移籍により晴れて凱旋。バルギルを盛り立てるアシストも充実し、大幅な戦力アップが見込めるところも見逃してはならない。

 一方で、プリュドム氏はワイルドカード選考で最終候補に挙がったのは5チームだったことを明かしている。惜しくも落選したのは、今シーズン発足のヴィタルコンセプト(フランス)。

ブライアン・コカールが移籍のヴィタルコンセプトはチーム実績に乏しくツール選出はならなかった =アムステルゴールドレース2017、2017年4月16日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ブイグテレコムやクイックステップなどで活躍したジェローム・ピノー氏がチームを率い、立ち上げメンバーとしてディレクトエネルジーから移籍したスプリンターのブライアン・コカール(フランス)ら、力のある選手たちが加わったが、チームとしての実績が不足していることが選考された4チームとの差となった。だが、プリュドム氏はそれを指摘しつつも、かつてのスキル・シマノ(現・チーム サンウェブ)やボーラ・ハンスグローエ、ブルターニュ・セシェ アンヴィロヌモン(現・チーム フォルトゥネオ・サムシック)を例に挙げ、「段階を経て成長するプロジェクトを望んでいる」として、今後の活躍に期待を寄せた。

 その他、出場を目指しながらも選外となったのは、アクアブルースポーツ(アイルランド)、デルコ・マルセイユプロヴァンス・カテエム(フランス)、ガズプロム・ルスヴェロ(ロシア)、CCCスプランディ・ポルコヴィチェ(ポーランド)、カハルラル・セグロスRGA(スペイン)とみられている。

 こうした背景から、チームとしての実力と地域性がツール2018ワイルドカード選出の大きな決め手となったことがうかがえる。商業的価値とともに、ハイレベルなレースを実現させるための決定であるといえるだろう。また、ワイルドカードで選出されたチームからニューヒーローが誕生することも多いだけに、観る者としても楽しみな顔ぶれがそろった印象だ。

パリ~ニース、ドーフィネの出場チームも決定

 A.S.O.はツールと合わせて、主催するパリ~ニース(3月4~11日)とクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(6月3~10日)に出場するチームも発表。ワールドチームは自動選出となり、プロコンチネンタルチームから4チームがワイルドカードで選ばれている。

パリ〜ニース、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネも22チームが出場する =パリ〜ニース2017第6ステージ、2017年3月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 パリ~ニースには、コフィディス ソリュシオンクレディ、デルコ・マルセイユプロヴァンス・カテエム、ディレクトエネルジー、チーム フォルトゥネオ・サムシックが出場。

 ドーフィネには、コフィディス ソリュシオンクレディ、チーム フォルトゥネオ・サムシック、ヴィタルコンセプト、ワンティ・グループゴベールが出場する。

 それぞれ“ミニツール”、“ツール前哨戦”といった別称があるように、ツール出場チームにとっては本番を見据えてのレースが繰り広げられることになる。

今週の爆走ライダー−ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 昨年のツールで名を売ったフランス人クライマー。第8ステージでは3位に入ったほか、果敢に逃げにもトライ。最終的に総合23位で3週間を終えた。

ギヨーム・マルタンにとって飛躍のきっかけとなったツール・ド・フランス2017。アタックを試みた第8ステージでは3位でフィニッシュした =2017年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのツールが彼を変えた。昨シーズンは8月以降にプロ初勝利を含む5勝。9月下旬のイタリアのステージレースでは、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)らを抑えて総合優勝を挙げた。

 今でこそツールをまとめるプリュドム氏が名指しするまでになったが、決して順風満帆のキャリアではなかった。ジュニア時代からタイトルに恵まれてきたが、プロの世界が目前に見えてきた段階でつまずいた。2013年にはソジャサン、翌年にはエフデジでトレーニー(研修生)として走ったが、プロ契約には至らず。故障がちな体質がマイナスイメージになってしまった。それでも2015年にリエージュ~バストーニュ~リエージュのアンダー23部門を制し、ツール・ド・ラヴニールでもステージ1勝を挙げ、プロを目指す強い意志を表した。

 トップチームからも声がかかるまでになっても今の環境で走るのは、「チームにクライマーがいないからチャンスだと思って」とのこと。大学時代に哲学を専攻し修了したというインテリジェンスな一面は、現実路線を進む冷静な判断にも表れているよう。その判断はチームのツール出場がかなったという意味では大正解だった。

 今ではツールをチームに呼び込む重要な立場となった。そして、今年で25歳を迎える彼には、ツールでのマイヨブラン(新人賞)を獲得する大きな可能性も見えてきている。パリ・シャンゼリゼの総合表彰台への道筋は、まもなく始まるシーズンインから続いていく。

今年で25歳になるギヨーム・マルタン。ツールでは新人賞のマイヨブラン候補の1人に名乗りを挙げる =ツール・ド・フランス2017第10ステージ、2017年7月11日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

ツール・ド・フランス2018 ツール2018・レース情報 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
新春初夢プレゼント2019

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載