栗村修の“輪”生相談<118>10代男性「ロードバイクに乗るのに足首が柔らかいとまずいですか?」
ロードバイクを昨年の春から始めました。しかし、僕は足首が硬くすぐ足首が痛くなってしまいます。なので、毎日ストレッチをして対処しています。
ですが、ネットのマラソンの記事を読んだところ、こんなことが書かれていたのです。それは、「足首が柔らかいほど、消費するエネルギーが増える」というものです。
この情報はロードバイクにも関係がありますか? もしあるとすれば、ストレッチはどの程度にすればいいのでしょうか?
心配で夜も眠れないということは無いのですが、気になったので質問させていただきます。答えていただけると嬉しいです
(10代男性)
足首の柔軟性というのは、自転車の世界ではそれほど頻繁には話題に上がらない要素ではありますが、サイクリストとして、ある程度重要な要素ではあると思います。
と、その前に触れておきたいんですが、体の柔らかさってかなり複雑だと思うんですよ。前屈は苦手なのに、自転車の上では深い前傾姿勢がとれる人もいたりします。単純に、前屈が深いと強いとか弱いとか、そういうわかりやすい話ではないんですね。
その上で一般論ですが、体の柔軟性が高くて困ることはないでしょう。むしろ、各部位の柔軟性を高めておいた方が、怪我や故障対策の観点からもプラス要因として機能するのは間違いありません。足首も同じで、足首が柔らかいことで不利になることはないはずです。足首がぐにゃぐにゃだとペダリングのときに力が逃げるんじゃ、と思われる人もいるかもしれませんが、ペダリング時の足首は筋力で形を保つものであって、足首の剛性(?)が問題になるのではありません。念のため。

たしかにペダルを踏み込むときは、足首をしっかり固定していたほうが力の浪費は少ないでしょう。でも、足首を固めようと体の末端に意識が行ってしまうと、ペダリングで肝心な股関節の動きが渋くなる気がします。野球のピッチャーがボールを投げるときに、手首(末端)よりも主に体幹の関節や動きを意識するのと同じですね。末端より中心を重視したい。ここはなかなか難しいところです。
ただし足首が痛いのは、困りますね。改善するために足首周りのストレッチを正しく行うことは有効だと思います。また、これは足首の硬さの問題だけでなく、足回りのポジショニングが原因の可能性もあります。クリートやサドルの位置をもう一度見直してみてください。一般的にはクリートの位置が浅い(シューズに対してつま先寄り)とアキレス腱やふくらはぎに負担がかかり、逆に深い(シューズに対してカカト寄りに)とスネの筋肉に張りを覚えたりもします。それでも改善しなければ、お医者さんに相談すべきです。自己診断はダメですよ。
ちなみに自転車で柔軟性が特に大事な部位というのは、股関節周りといわれています。正座の状態から膝と腿の内側を地面につける「女の子座り」や、その逆に、左右の足の裏をくっつけた状態で膝と腿の外側を地面につけることができるかどうか、チェックしてみてください。股関節周りが柔らかいと、深い前傾で綺麗なペダリングができるなど、優位な点が多いんです。
(編集 佐藤喬)
一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。
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