2018年新春インタビュー<3>史上初・女子トラックW杯連覇の梶原悠未 東京五輪は「オムニアムで金」目指す

by 平澤尚威 / Naoi HIRASAWA
  • 一覧

 2017年12月。トラックワールドカップ(W杯)第3戦オムニアムで、女子トラック史上初の金メダルを日本にもたらした梶原悠未は、続く第4戦で連覇という快挙を成し遂げた。1997年生まれの20歳。東京五輪での活躍が期待される梶原を、Cyclistが単独インタビュー。「金メダルを目指している種目はオムニアム」と答えた梶原は、目標に向けてさらなるレベルアップを目指している。

レース内外の話を生き生きと語った梶原悠未 Photo: Naoi HIRASAWA

後悔したことは未来で変えられる

――まずは、自転車を始めたきっかけを教えてもらえますか?

 1歳になる前から水泳を始めて、中学3年までやっていました。3年の時に全国大会出場を逃して、他にも自分に才能がある競技がないかなと考え始めたのが、最初のきっかけでした。高校受験の時、水泳部のない筑波大学附属坂戸高校に入学して、たまたま自転車競技部があったんです。インターハイにいくことが夢だったので、自転車競技なら高校からでも間に合うと思って始めました。

新デザインになった日本代表ジャージ(ロード)を着た梶原悠未 Photo: Naoi HIRASAWA

――目標がインターハイから世界に変わったのはいつ頃でしょう?

 自転車競技を始めて10カ月でレースで優勝できて、そのままナショナルチームに入って、トラックアジア選手権の2種目で銀メダル、そのあとトラック世界選手権で銀メダルを獲得しました。その時、すぐに悔しい気持ちになって「来年は絶対金」と思うようになりました。「世界には上がいる」と思ったことがモチベーションになりました。

 あと一歩で金メダルや表彰台を逃すことがあって、その度に信じられないくらい悔しくて泣いたりしますけど、報われたときに「あの時に2位でよかった」「4位でよかった」と思えます。後悔したことは未来で変えられる。悔しい思いもよかったと思えます。

――トラックW杯でついに金メダルを獲得して、悔しい思いを変えられましたね。

 去年のW杯の1戦目で4位だったときは一晩中泣いていましたが、今年それが報われました。(W杯第2戦の)女子チームパーシュートで銅メダルを取ったとき、すごくうれしかったけど、表彰台で悔しさがこみあげてきました。やっぱり個人で取りたいって。

 死ぬほど取りたかった金メダルですが、うれしいのはあるけど、表彰台に立った時には気持ちが次の目標に向いていました。次は、世界選手権を取りたいです。切り替えが早いのが、自分がモチベーションを高く持ち続けられる理由だと思います。

UCIトラック・ワールドカップ第3戦、オムニアムで1位となりウイニングランをする梶原悠未 Photo: Takenori WAKO / JCF

 目標はいつでも金メダルだけど、現状は一つでも上の順位に入ることが目標です。W杯で金メダルをとっても反省点がたくさんあるので、それをクリアしていかないといけません。レースの映像、自分の感覚、周囲のアドバイスをすべて考慮して次に生かすという繰り返しが必要です。

誰もが驚くような成績を

――自分の成長のスピードをどう捉えていますか?

 4月のトラック世界選や、ロードレースでは学連のレースでも納得のいく結果が残せず苦しかったし、自分のやっていることは合っているのかという不安もありました。

 でも、一歩一歩進んでいるという感じで、立ち止まってはいないなと思っていました。進んでいれば、誰もが驚くような成績を残せると自分は信じています。それが今回の結果につながったと思っています。

――東京五輪での金メダルや表彰台が近づいたという実感はありますか?

インタビューに応じた梶原悠未 Photo: Naoi HIRASAWA

 去年は優勝できそうなオムニアムの試合でも、最後の1種目で落ちてしまった経験もあったので、チャンスのあるレースで取りこぼさないような走りをするという面では成長したと思います。今回の第4戦で勝ったイタリアの選手より上の順位に入れたことがなかったので、着実に成長しています。

 でも大きくレベルアップしたとは思っていません。世界選手権でトップ5に入る選手たちは本当に強いし、今回は出場していなかったので、次の世界選でトップ5に入るにはもう一段階レベルアップしなければいけない。そういう領域だと自覚しています。

――金メダルの壁になる選手が5人もいるんですね

 トップ5人は次元が違うので、そこに入っていくには自分からアクションを起こさなければいけません。また、W杯と世界選は違うレースだと、2年目になって感じました。W杯は、自分の方がフィジカルが勝っているか同じくらいの選手が出てくるので、自信をもって、自分でレースを作ることができます。

 世界選は強い選手たちが集まっていて、その選手たちの流れを利用して、自分が前にいくというレースをしなくてはいけません。一つでも上の順位を取らなくてはいけないので、全然違う走り方になってきます。スクラッチ(7.5kmで着順を競う種目)のゴールスプリントであったり、テクニック面だったり、一つのことが命取りになる。そういった面はもっと経験を積んで、うまくなっていかないとと思っています。

パリ五輪も目指したい

――世界のトップを目指す梶原さんですが、自分のことをどんな選手だと思っていますか?

 直感とか感覚でレースするタイプではないです。走っている間にも考えながらやっています。経験して、聞いて、教えてもらったことを使ってレースをしているので、いろんな人のおかげで走れています。

――得意種目のオムニアムでは、梶原選手の強みはどこにあるんでしょうか?

 テンポレース(周回ごとに先頭の選手に点が与えられる種目)は自分のなかでも得意だと思っていて、大きく順位を落とすことがありません。レースの展開が自分としては読みやすい。レース中は常に誰かが先頭でもがいていて、ペースが速くて体力を消耗していく中で、終盤で勝負できるのが強みだと思っています。

 スクラッチではゴールスプリントの位置取りも模索しています。そこを失敗すると、表彰台圏外になってしまう。今年度中には、どの大会でも6位以内に入れるようにしたいです。エリミネーション(周回ごとに最下位が脱落する種目)でのふみ遅れも目立っていて、無駄足になったり、脱落したりしてしまう。どんな相手がいても、5番手以内に入っていられるようにしたいと思います。

――今回はトラックで大きな成果を挙げましたが、五輪での目標は? 梶原さんはトラックの選手なのか、ロードの選手なのかどちらでしょうか?

2017年のUCIロード世界選手権にも出場した梶原悠未(提供写真)

 東京五輪に出られるなら、オムニアム、マディソン、チームパーシュートで出場できればと考えています。でも五輪の目標がトラックだからといって競技を絞るわけではなく、どちらにも出ながら、それぞれで培ったものを生かせればいいなと思っています。普段はロードで練習しているし、トラックの練習メニューにロードもたくさん入っています。海外の選手も中距離とロードをやっている人が多いし、ロードをやめるつもりはありません。金メダルを目指している種目は、オムニアムです。

――では、東京五輪以降の進路・目標は?

 パリ五輪も目指したいのですが、その前に大学を卒業してしまうので、今度は自分で環境を整えなくてはいけません。それは東京五輪の成績次第だと思っています。活躍して、スポンサーがついてもらえるように。スポンサーが見つからなければ、自分で資金を集めなくてはいけないので、競輪選手という選択肢もあります。ですがロードをやりたい気持ちもあるので、(競輪メインではなく)自分で競技活動をして、自分の行きたいタイミングで海外のレースに出られるようにしたいです。そのために、東京五輪までの過程から、成績とともに環境を整えていきたいと思っています。

大学に行くなら学びたい

――いまは筑波大学に所属していて、どのような練習をしているんですか?

梶原悠未 Photo: Naoi HIRASAWA

 サイクリング部の競技班に所属していますが基本的に1人で走っています。いろんな選手と練習したいときはサイクリング部員を誘ったり、高校の後輩の選手と一緒に練習したりしています。練習場所は筑波山だったり、霞ヶ浦の周辺だったり。

 練習メニューは、イアン(・メルビン)中距離コーチからはこの期間にこのメニューをやるようにという指示はくるので、それを参考にしつつ自分で考えています。

――どうして自転車競技の強豪校ではない筑波大学にしたのでしょうか?

 学びたい学部に進めないのがイヤだなと思っていました。私立の大学で、自転車競技で忙しいのを考慮してもらって、大学に行かずに卒業してしまうのはどうなのかなと。何も学ばないならプロになればいいと思って。自分は大学に行くなら学びたいし、知識を自分に生かしたいので、アスリートとして生きていくうえで必要な知識を得られると思って進学しました。

――いまはお母さんに活動をサポートしてもらっているんですよね?

 高校では顧問の先生のサポートがあったけれど、大学は強豪ではない学校で、自転車競技を続ける環境になりました。競技活動をするのは誰かのサポートが必要なので、母がサポートしてくれれば一番ストレスがないですし、一緒にレースに行けたらいいなと思ってお願いしました。

――お母さんはどんな存在ですか?

 母がいなかったら競技を続けられないくらい、全面的にサポートしてもらっています。ものに例えるなら太陽みたいな存在。なければ自分も輝けない。母だけじゃなくて、父や弟にも理解してもらっているし、家族は自分に必要不可欠なもの。一番に感謝したい相手です。

手帳には未来の自分へのメッセージ

――色々なことを考えて、決断しているんですね。

 考えることが大好きで、何をやるかを、早い段階から考えています。1年後、2年後、10年後、失敗した時のこと、成功した時のこと。レースのことを考えるのも大好きで、ひたすら戦略を考えたりしています。

 未来のことを考えるのも好きで、何カ月も先の自分へのメッセージを手帳に書いてます。レースがある日には「オムニアム優勝おめでとう」とか、他にも自分のモチベーションを上げるような褒め言葉や、「テストも大変だけど両立していこう」「インフルエンザがはやるから手洗いうがいしよう」とか。

 それとは別に、過去のことは日記形式にしてます。2016年から2020年まで、同じ日のことを1ページにかける日記を使っていて、「去年よりも練習をこなしてるな」とか一目でわかります。それを書くのも見返すのも楽しみです。

 将来は本を書きたいんです。自転車界だけじゃなく全部のスポーツの中でも目立つ選手になって、メンタル面だとか「こうやってきたから、いま自分はこうなっているんだ」ということを発信していければと思っています。夢はたくさんあって、テレビCMとかバラエティー番組にも出たいです。

――けっこう目立ちたがりな方なんですか?

 昔から目立ちたがりです。小学校の時の劇で、みんなやりたがらないんですけど、セリフが多いからっておじいさんの役を志願したり(笑)。

トラックワールドカップ女子オムニアムで獲得した、2枚の金メダルを見せる梶原悠未 Photo: Naoi HIRASAWA

平井大、清水翔太、EXILE好き

――話していると、レース中と全然表情が違うように感じました。レース前と後でスイッチを入れ替えているんでしょうか?

 国際大会で気を付けているのは、20分間のウォームアップだけ音楽を聞いて、あとは聞かないこと。聞きすぎると自分の世界に入ってしまって、シャットアウトされて緊張しすぎてしまう。アップが終わったら、スタッフや選手とコミュニケーションを取って楽しむようにしてます。表情が暗いと言われたこともあるので、いい表情をつくっていこう、そうすれば楽しめるようになるのかなと思っています。

――どんな曲を聞いてるんですか?

 平井大、清水翔太、EXILEとかで、バラードが多いです。その時に気に入っている1曲を聞き続けて、飽きるまで聞いて、飽きたら一切聞きません(笑)。なので、前にハマった曲を聞くとその当時を思い出せます。

――競技としてではない自転車との関わり方は?

 サイクリングは全くしません。荷物を持って乗るのがイヤなんです(笑)。目的地を決めてそこに向かうのも苦手で、乗るなら身軽に、ぴちっとした服で、必要なものだけもっていく。メニューを組んで、目的をもって練習するのが好きです。

――それでは、自転車を離れた時は何をしてますか?趣味とか。

 水泳をやることもあります。トレーニングにもなりますね。あとは本を読むことが好き。温泉も好きで、それも疲労回復になったりしますね。友達とごはんに行ってずっと喋るとか、人と話すのは好きです。

 やっぱり、自転車が趣味ですね。トレーニングが苦じゃなくて楽しい。大会よりもトレーニングが好きで、楽しくて仕方ありません。追い込めたほうが充実したと思えるし、疲れ切ったほうが達成感があるんです。

関連記事

この記事のタグ

インタビュー トラックレース 梶原悠未

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
CyclistポケットTシャツ

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載