小径フォールディングバイクの生みの親アレックス・モールトン博士が死去 独創的な小径スポーツ自転車を開発

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アレックス・モールトン博士アレックス・モールトン博士

 独創的なサスペンション付き小径スポーツ自転車の開発者として知られるイギリスのアレックス・モールトン氏が12月9日、死去した。92歳だった。

 モールトン氏は1920年4月9日生まれ。祖父の代からのゴム製造会社に技術者、経営者として携わり、1950年代にはイギリスの名車「オースチン・ミニ」のためにラバーを用いたサスペンションを開発。その後、液体やガスを用いたサスペンションも開発するなど、20世紀後半の自動車開発に大きな足跡を残した。

 一方で、1962年にモールトン・バイシクル社を設立し、サスペンション付き小径スポーツ自転車の開発・販売を本格化。以後、10万台以上のモールトン型自転車が生産され、世界各国に輸出された。

AM Super Speed(非分割 20インチ)AM Super Speed(非分割 20インチ)

 モールトン型自転車の特徴は、小径ホイールと前後フルサスペンションを搭載することで、通常のスポーツサイクルとはまったく異なるアプローチで走行効率とハンドリングを追及していることにある。サスペンションは乗り心地をの向上させるにとどまらず、タイヤの路面追従性向上によって推進力の伝達効率を改善する狙いがある。また小径ホイールによる軽量化、低重心化、空気抵抗の低減が製品コンセプトに生かされている。

◇           ◇

 アレックス・モールトン自転車の日本総代理店、ダイナベクター(東京都千代田区)は、1986年に初めてアレックス・モールトン車の正規代理店となり、一貫して輸入を手がけてきた。同社の富成太郎社長は、モールトン博士と家族ぐるみの親交があったという。

AMエスプリのBB周辺部分。トラス構造のフレームが独創的だAMエスプリのBB周辺部分。トラス構造のフレームが独創的だ

 もともとダイナベクター社はオーディオ機器の専門商社で、国産製品の輸出や、英国製品の輸入を手がけていた。1980年代、英国現地法人が事業拡大を模索する中で、先代社長の故・富成襄(のぼる)氏が独創的な自転車に着目してモールトン博士を訪問。2人はともに機械工学の博士であり、意気投合したことから日本での販売が決まった。

 以来、2000年頃までの間にモールトン博士は何度も来日し、ダイナベクターのスタッフらと一緒にサイクリングするなど滞在を楽しんだ。新モデルの発表会を東京の英国大使館で開き、マスコミや多くのモールトンファンの前で自慢の“作品”を披露したこともあった。

 モールトン車の日本への輸入が始まった26年前、富成社長はダイナベクターの英国法人社長を務めており、モールトン博士の邸宅である17世紀に建てられた古城「The Hall」を何度も訪れたという。

自転車の生産工場を兼ねたモールトン博士の自宅「The Hall」自転車の生産工場を兼ねたモールトン博士の自宅「The Hall」

 ロンドンの西約150kmのブラッドフォードに建つ城は、博士の自宅であり、研究所であり、モールトン車の生産工場でもある。富成社長は、「ビジネスの話は秘書やスタッフとの間で済ませ、博士とは自転車のコンセプトや製品作りについて語り明かした」と当事を懐かしむ。

 高品質・高性能を追求するモールトンの自転車作りは、日本のユーザーから熱い支持を集め、やがて日本はモールトンにとって最大の市場となった。自転車愛好者だけでなく、クルマやオートバイが好きな人からも、モールトンのサスペンション機構は関心の的となり、多くのファンを獲得している。

 モールトン博士は80歳を迎えてから、長旅の負担もあって日本を訪問する機会はなくなったが、富成社長らにはいつも「日本から来てくれた人は大歓迎する」と話していたという。博士の訃報を受けた富成社長は、ダイナベクターのホームページへ、博士の遺影とともに「家族と友人に見守られながらの安らかな旅立ちでした。生前の博士への皆様の御厚情に篤く感謝いたします」との一文を掲載した。

博士への90歳の誕生祝いとして企画され、後に限定販売されたM-60博士への90歳の誕生祝いとして企画され、後に限定販売されたM-60
分割可能なモデルは車載や輪行に便利分割可能なモデルは車載や輪行に便利

 日本ではダイナベクターが英国製モールトンを輸入しているほか、ブリヂストンサイクルとモールトン社との共同開発による「ブリヂストン/モールトン」ブランドの製品も販売されている。

■ダイナベクター「アレックス・モールトン」  ■「ブリヂストン/モールトン」
 

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