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2017ロードレース名場面プレイバック<3>ダンシング率は驚異の“80%” 破壊力抜群なリッチー・ポートのヒルクライム

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 サイクルロードレース2017年シーズンの名場面、印象的なシーンを振り返る連載の第3弾は「ヒルクライム名場面をプレイバック」は、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)に注目する。上りもタイムトライアルも得意とするステージレーサーの、破壊力あるヒルクライムの秘訣に迫る。

オーストラリア・タスマニア島出身のリッチー・ポート(パリ〜ニース第7ステージにて) Photo : Yuzuru SUNADA

 ヒルクライムはサイクルロードレースの華だ。凄まじい勾配の坂道を、とてつもないスピードで上って競り合う姿は、サイクルロードレースを初めて見るような人でも、その迫力に魅了されるだろう。

 2017年シーズンも、様々なヒルクライムでの戦いが見られた。

 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)が勝利したジロ・デ・イタリア第14ステージの戦いも見応えがあったし、ツール・ド・フランス第18ステージで見せたワレン・バルギル(フランス、チーム サンウェブ)の独走勝利もお見事だった。そして、何といってもブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージでアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)現役最後の勝利となった魔の山・アングリルでのヒルクライムは永く語り継がれることだろう。

 だが、今回はヒルクライム特集で、リッチー・ポートに注目したいと思う。なぜポートなのか?ということを、2017年シーズンの走りを振り返りながら、説明していきたい。

4年連続ウィランガヒルでの圧勝劇

 まずは、ツアー・ダウンアンダー第5ステージを振り返る。

 ポートの地元オーストラリアで開催され、ワールドツアーの開幕戦となった同レースにおいて、ポートは第4ステージまでに2位に20秒差をつけて総合首位に立っていた。

ウィランガヒルでアタックを仕掛けるリッチー・ポート Photo : Yuzuru SUNADA

 そうして、登坂距離3.5km・平均勾配7%のウィランガヒルにフィニッシュするクイーンステージを迎えた。ライバルからの攻撃を受けて立つ立場であるはずのポートが自ら攻撃を仕掛けた。

 チーム スカイのペースアップによって、先頭集団が7人まで絞り込まれた残り1.5kmで、ポートはダンシングで一気に加速した。セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)が辛うじて反応するものの、弾丸のように飛び去ったポートの背中はあっという間に遠ざかる。ポートはそのままフィニッシュまでかっ飛ばし、後続に20秒以上差をつける圧勝劇となった。これで4年連続ウィランガヒルのステージを勝利している。

 残り1.5km地点でのアタックが決まってから、フィニッシュまでは3分19秒で、平均時速は27km。そのうち、映像で確認できた範囲ではあるが、ダンシングは2分4秒間、シッティングは30秒間で、ダンシング率は80%だった。

 このようにポートのダンシングの特徴は、非常に長い時間にわたって継続することだ。そして、付き位置の選手を引きちぎるほどの破壊力も兼ね備えている。

 ポートはダウンアンダーを目標の一つにしており、春から夏のレースに向けて調整段階にあったライバルたちよりコンディションが良かった点を考慮しても、1.5kmの上り区間の大半をダンシングで加速しながら、後続を20秒以上突き放す走りは傑出していた。

パリ〜ニースでコンタドールを置き去りに

 続いて、パリ〜ニース第7ステージを振り返る。ポートは第2ステージで、集団分断のあおりを受けて14分ほど遅れてしまい、第6ステージを終えて総合15位に沈んでいたため、目標をステージ優勝に切り替えていた。

 第7ステージは、登坂距離15.1km・平均勾配7.1%の1級山岳クイヨール峠にフィニッシュする難易度の高いコースとなっていて、ポートは総合上位勢と共に先頭集団を走っていた。チーム スカイによるペースアップ、そしてヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)の強烈なペースアップを経て、先頭集団は6人まで人数を減らしていた。

 ポートは残り4.1km地点、3.8km、3.3km地点と立て続けにアタックを仕掛ける。3度目のアタックには、ライバルたちは全く反応できず、ポートは一気に差を開いた。

 アタック開始から1分間にわたって、ダンシングを続けていた。後続のアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)を映すモトカメラからは、先行するポートの姿がほとんど見えなくなっていた。ポートはダンシングを多用しながら、山頂へ到達。見事にステージ優勝を飾った。

ポートがステージ勝利を飾る時のガッツポーズは、両腕を垂直に伸ばすこのスタイルがお馴染みである Photo : Yuzuru SUNADA

 残り3.3km地点でのアタックが決まってから、フィニッシュまでは8分35秒で、平均時速は23km。そのうち、映像で確認できた範囲で、ダンシングは4分2秒間、シッティングは43秒間で、ダンシング率は83%だった。一度サドルに腰を落としても、10秒足らずで再度ダンシングをするようなリズムで、山頂までほとんどの時間ダンシングしていた。

 後続には21秒以上の差をつけていた。コンタドールは総合で48秒差ビハインドのセルジオルイス・エナオに対して、猛攻を仕掛けており、ポートを先行させたもののコンタドールたちのペースは決して遅いわけではなかった。

 15kmにも及ぶ1級山岳の最終盤でも、ポートは3kmで20秒のタイム差を生み出すようなキレ味鋭いヒルクライムを見せていた。

総合優勝を手繰り寄せるロングアタック

 3つ目に振り返るレースは、ツール・ド・ロマンディ第4ステージだ。後半には1級・2級・1級と立て続けにアルプスの難関山岳が登場し、最後は1級山岳レザンを駆け上がってフィニッシュするクイーンステージだった。

広大なアルプスを舞台に繰り広げられたツール・ド・ロマンディ第4ステージ Photo : Yuzuru SUNADA

 この日ポートが仕掛けたのは、1級山岳レザンの上りの途中残り4.6km地点だった。30秒ほど先行しているサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)らの小集団を目掛けてアタックした。

 瞬く間にイェーツらのグループに追いつくと、ポートは間髪入れずに再加速。この動きに反応できたのはイェーツのみで、レース後に「すでに体力の限界だった」と話しているように、ポートの背後をマークするので精一杯な様子だった。

 しばらくして、ポートにローテーションを促されると、ようやくイェーツは前に出た。2人は協調したまま、残り1km地点から始まる最後の上りに差し掛かると、ポートは再び腰を上げアタックを開始。

 だが、イェーツは離されなかった。最後の上り区間では、強い向かい風が吹いていて、ポートは全面から風を受ける格好になってしまっていたのだ。もちろん、ポートは不利を承知で前を引いていただろう。イェーツとのタイム差は15秒。ボーナスタイムを含めても、得意とする翌日のタイムトライアルで十分逆転可能な差だからだ。むしろイェーツよりも、後方に置き去りにした有力選手たちとの差を広げる方が重要だった。

 1kmの上り区間すべてでポートが前を引いたことで、最後はイェーツにステージ優勝を譲ったものの、後続の選手に30秒以上差をつけることができた。そして、翌日の個人タイムトライアルでステージ2位に入り、逆転で総合優勝を果たした。

最後の上りで前を引き続けたことで、ステージ優勝はサイモン・イェーツに譲る結果となった Photo : Yuzuru SUNADA
ロマンディ第5ステージ、18.3kmの個人TTでサイモン・イェーツに40秒差をつけ逆転総合優勝を飾ったリッチー・ポート Photo : Yuzuru SUNADA

 ポートが残り4.6km地点でのアタックを仕掛けてから、フィニッシュまでは9分53秒で、平均時速は28km。そのうち、映像で確認できた範囲で、ダンシングは4分8秒間、シッティングはイェーツとローテーションしていた時間も多く1分22秒間あり、ダンシング率は75%だった。

ダンシングを多用し、破壊力抜群なヒルクライム

 ポートのヒルクライムの特徴は、ダンシング率が80%前後とかなり高いことで、目標地点まで3〜4kmの距離があっても一気に駆け抜けるスピードと体力を持ち合わせているのだ。そして、一度ギアが入ると、付き位置でも千切られるほどの破壊力を合わせ持つ。射程とパワーに優れたリーサルウェポンなのだ。

 ちなみに、パリ〜ニース第7ステージでのコンタドールのダンシング率は71%だった。コンタドールも、かなりダンシングを多用する選手であり、このステージではエナオを振り切るためにラスト500mはずっとダンシングしているような状態だった。それでもポートのダンシング率には10%近く及ばなかった。

 2017年のツール・ド・フランスでは、ポートがヒルクライムで本領発揮する前に落車リタイアとなってしまったことが非常に残念だった。ポート自身も「今年は戦えると思っていたから、ああいう状況(落車リタイア)になったのは悔しい」と語るほどに、調整が順調だった様子がうかがい知れた。

 2018年こそは、ポートの破壊力抜群のヒルクライムを、ツールという大舞台で見せてほしいと願うばかりである。

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