2018年新春インタビュー<2>東京五輪メダル候補、BMXフリースタイル女子・大池水杜選手「金メダルへ、もっと技を、もっと高さを」

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 2020年東京五輪の新種目にBMXフリースタイル・パークが採用されたことは、2017年の自転車界のビッグニュースの一つだった。BMXのレースに続いて、スケートボード、スノーボードのようなエンターテーメント性の高い競技が選ばれ、自転車界は盛り上がった。当初15歳の男子・中村輪夢選手が五輪メダル有力候補として注目を浴びたが、女子でも世界トップレベルの日本人選手がいる。それが21歳の大池水杜(おおいけ・みなと)選手だ。Cyclist編集部がこれまでの活動、そして東京五輪にかける思いを聞いた。(聞き手・Cyclist編集部・澤野健太)

慣れ親しんだ愛車と五輪を目指す大池水杜選手 Photo: Kenta SAWANO

「信じられなかった」五輪競技採用

 国際オリンピック委員会(IOC)が2017年6月9日、2020年東京オリンピックの正式追加種目としてBMXのフリースタイル・パークを正式追加種目とすることを発表した。大池選手は全日本フリースタイルBMX連盟(JFBF)の出口智嗣理事長から知らされたが、全く寝耳に水だったという。

「出口理事長から電話が掛かってきて、まったく信じられませんでした。それまではX GAMES(アメリカのケーブルテレビネットワークESPNが開催するエクストリームスポーツの競技大会)がオリンピック的な最高峰の位置で、それを目指してきたので、もう一つ目標ができた感じです」

 そして数日後の6月13日、15歳で東京五輪・同種目で男子のホープ・中村輪夢(りむ)選手が、会見と演技を披露。テレビでも放映され、少しずつだがフリースタイルパークの認知度が広まっていった。男子選手がほとんどのBMXフリースタイル界だが、数少ない女子の大池選手は、9月のUCIワールドカップ(中国)で5位、続くUCIアーバンサイクリング世界選手権で予選2位、決勝で4位と、メダルに手が届く成績を残し、東京五輪のメダル候補選手として注目を浴び始めた。

 「UCIアーバンサイクリングでは4位でしたが、絶対表彰台に行けたと思いました。決勝は3位と0.06ポイントでしたが、何で届かなかったか正直わかりませんでした。でも自分の長所は技の確実性。競技役員からミーティングで、『この大会は技を見る大会』と言われたので自分の得意な技をしっかり決め、高さは世界的にも認めてもらいました。ルーティン組み(技の構成)は負けたかもしれないけれど、技の数や技の難易度など、絶対的な何かがあれば勝てたし、表彰台に上れたと思います。東京五輪でメダルを目指すには、そこで圧倒的な何かを身に着けないといけないので」

11月のワールドカップでバックフリップ(後方宙返り)を決める大池水杜選手 Photo:Naoki Gaman 提供:全日本フリースタイルBMX連盟

中学2年で競技開始

 「BMXフリースタイル・パーク」は、BMXフリースタイル種目の中でも「パーク」と呼ばれる木やコンクリートでできたジャンプ台などのセクションが設置されたエリアで、様々なトリック(技)を決めて採点する種目。採点は、難易度、高さ、流れ、独創性などを基準に行われる。日本での競技人口は約1000人だが競技登録者はまだ50人ほどだという。女子選手はほとんどいないのが現状だ。大池選手が競技を始めたきっかけは始めたのが中学2年生の時だった。

Cyclistのインタビューに答える大池水杜選手 Photo: Kenta SAWANO

 「父親の影響で小学校に上がるころにオートバイのモトクロスを2年ほどやっていました。そのあと自転車のトライアル競技に移ったのですが、バイクで猛スピードを出していた世界から一転して、審判から『足ついちゃダメ』という世界になってしまい、すぐに嫌になって辞め、いったん2輪のスポーツから離れてしまいました。中学2年のころ、父にスケートパークに連れて行ってもらったところ、楽しそうな様子に惹かれBMXを自分で購入し、すぐ始めました。静岡県島田市で育ち、中学校では女子サッカー部に所属し、BMXと両立しながらどちらも練習していました」

 すぐにBMXにのめりこみ、休みの日は朝から晩まで練習。ほどなく日本ではライバルがいなくなり、2013年に初めて世界大会(Simple Session Sister Session)に出場し5位に入った。

 「日本人女性ではじめてバックフリップを決めた・澤田早希選手(現在引退)に負けたくないという気持ちでエントリーしました。ところがもうその年には引退されていて、日本人選手は私一人でしたが、初出場で世界5位となり自分がびっくりしました」

 2016年に2度目の海外遠征。そこで作ったネットワーク、経験が2017年の飛躍につながっていった。2016年にはエクストリーム系選手の目標でもある、X GAMES(アメリカで開催)に招待された。

 「ガールズは大会じゃなくてエキシビション、海外から何人か招待されているものです。X GAMESはこちらから出たいといっても出られる大会じゃない。インスタグラムでつながっていたアメリカのトップライダーから、メッセージで「X GAMESに出ない?」と連絡がきたんです。1週間会社を休んで、ずっと彼女の家に泊まらせてもらっていた。朝から晩までつきっきりで面倒を見てもらって良い経験ができました。世界トップクラスの女の子たちとひさしぶりに会って技を見て、すごく刺激を受けました」

BMXフリースタイル・パークで東京五輪を目指す大池水杜選手 Photo: Kenta SAWANO

世界も認める大技「ノーハンド」

 そして2017年。大きく世界が変わった。2016年の米遠征が認められたこともあり、2年連続でX GAMESに招待。さらには同等の大きな大会「VANS・US OPEN」にも招待された。

 「US OPENは各地域で行われた予選の優勝者と、招待選手で構成されていました。X GAMESは7月、US OPENは8月に開催されました。一般企業に勤めて自費で遠征しており、その間に1回日本に帰ってくるのもお金がかかり、戻らずに会社を1か月休むこともできず、会社を辞めることにしました」

11月のワールドカップでノーハンドを決める大池水杜選手 Photo:Naoki Gaman 提供:全日本フリースタイルBMX連盟

 五輪採用が決まっているものの、遠征は自費だったため、渡航費を作った。そして米遠征、11月の中国遠征という貴重なシーズンを過ごした。世界の女子トップクラスは20~30人。Xゲームズに出場できるのは12人という狭い門だが、海外選手に負けない169センチの身長を生かした大技は世界でも認められている。

 「武器はノーハンド(両手を広げジャンプ)。その技に関しては中村輪夢選手のお父さん(元選手の中村辰司さん)から『男子選手にも負けていない』とお墨付きをもらいました。両手やヒジを伸ばすのはもちろん、指先まできれいに伸ばすことが重要です。中でも一番がこころがけているのは、手を伸ばしている時間。一瞬離すのではなくて、着地のギリギリまで離していようと思っているし、そのほうが大きく見えます。大会でも最初にこの技を持ってきます」

フォークがへこむほどトリックを重ねている Photo: Kenta SAWANO
クランクの傷も練習量の多さを物語っている Photo: Kenta SAWANO

 東京五輪まで、あと2年。BMXフリースタイル・パークの出場人数は男子9人、女子9人の計18人ということは決まっているが、開催国枠ができるかなどは未定だ。これまでは、ぶっつけ本番で大会に臨むことが多かったが、2017年の中国遠征から技の組み合わせ(ルーティン)を日本代表チームのメンバーと決めるようになったという。

 「一つの技で崩れると、そこで焦ってしまうので、以前はルーティンを組みませんでした。出口理事長から『上を目指すためにルーティンを組んでみよう』と言われ、中国遠征から取り入れました。選手経験もジャッジ(審判)経験も豊富な理事長は、自分では考えつかないようなルーティンを考え出したりしてくれた。結果的に今まで無理だと思っていたもの(技)ができて本当に良かったです」

駒沢公園で技を磨く大池水杜選手 Photo:Naoki Gaman

 昨年のアメリカ遠征のため、会社員を辞めたため、自分の力でスポンサー集めを頑張っている。新技に積極的に取り組み、動画サイトでもその様子を公開。自分をPRするためのポートフォリオやyoutubeチャンネル(以下)も作っている。

 今年(2018年)は2016年から行われているワールドカップが初めて日本で開催される。五輪採用が決まってはじめて本格的に迎える1年で、出場はもちろんメダル獲得に向けて重要な1年になる。
 
 「世界戦で足りなかった圧倒的な技数、圧倒的な高さなどを五輪までに合わせていきたいです。今までの技を認めてもらったからの世界4位なので、それをベースに重ねていけたらいい。ワールドカップ全5戦やUS OPENなど、海外の試合にたくさん出場予定です。(五輪の表彰台のためには)そこで世界トップ9に入っていないといけないので、今年はそこをまず目指します。W杯は1試合20~30人出場するので、まずは出場大会全部でトップ9にはコンスタントに入るようにするのが目標です」
(撮影協力・Mr.FARMER 駒沢オリンピック公園店)

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