title banner

つれづれイタリア~ノ<108>「イーバイク」が欧州で空前の大ブーム 拡大するサービスと激化する市場争い

  • 一覧

 忘年会など飲み会が続き、そろそろお腹周りを気にする方が多いと思います。しかし外は寒いし、体は重い…。そんな春先まで自転車に乗ることを先延ばしする傾向が強い人ほど、今日の記事を参考にしてください。きっと外に出たくなります。今回のテーマは「e-bike」(イーバイク)と呼ばれる電動アシスト自転車です。

ヨーロッパではいま、イーバイクが空前のブーム © altabadia.org

サイクリストの可能性を広げるイーバイク

 イタリアを含め、現在ヨーロッパでイーバイクが空前のブームとなっています。正直に申し上げますと、個人的にイーバイクは今まで目にも入りませんでした。いや、その存在を否定していました。自転車は自分の脚力で漕ぐものだ!速いスピードで走るためにトレーニングをきちんとするべきだ!とずっと思っていました。

 しかし今年の9月、仕事のためイタリアを訪れた際にイーバイクのイメージが一変しました。数の多さとデザイン性、使い方などを見て、硬かった考えが180度変わったのです。

チポッリーニが発表したeロードバイク © MCipollini

 まず、イーバイクを購入している人は、ロードレースやプロを目指す人ではなく、自転車やサイクリングを純粋に楽しみたいと考えている人がほとんどだと気づきました。印象的だったのが、大荷物を積みながらイーバイクでアルプス越えをし、イタリアを目指す50~60代のドイツ、オランダやオーストリアのグループの数でした(写真を撮ればよかったと悔やんでいます)。

イーバイクの登場で幅広い年齢層で自転車旅が楽しめるようになった © MCipollini

 北ヨーロッパでは、アルプス越えは憧れのサイクリングスタイルで、今まで若者(特に若い男性)の特権でした。しかし、イーバイクの登場でこの長旅は体力が衰えた人たちの間でも瞬く間に広がりました。特に夫婦の数も多かったです。これまでは男女の体力の差は越えられない壁でしたが、イーバイクがその大きな壁を取っ払ってくれるものとなりました。

電動アシストの売れ筋はマウンテンバイク

Haibikeはドイツのイーマウンテンバイク人気メーカー © Cosmo Bike Show 2017

 ヴェローナで行われたイタリア最大のスポーツ自転車見本市「コスモバイクショー」では電動アシストマウンテンバイク(MTB)の展示の多さに驚きました。施設内に作られた専用コースの上でおびただしい数の電動アシストMTBが走っていました。日本でよく見かける、お世辞でもかっこいいと言えないママチャリ風の電動アシスト自転車ではなく、ほとんどがスタイリッシュで斬新なデザインのMTBでした。

MTB専用コースで疾走するイーバイク © Cosmo Bike Show 2017
見た目は普通のMTB © Cosmo Bike Show 2017
人気の試乗コーナー © Cosmo Bike Show 2017
幅広い年齢層の人々が訪れています © Cosmo Bike Show 2017

 ヨーロッパでは最先端の技術を積んだ電動アシストMTBは売れ筋のようです。今までの自転車は軽量化との闘いだったのに対し、電動アシストの登場でデザインの制限が解放され、近未来的なデザインの自転車が一気に増えました。

イタリアの老舗メーカー、コルナゴもイーマウンテンバイク市場に参入 © Cosmo Bike Show 2017
2018年に販売開始する予定のビアンキ社の電動アシストロードバイク、インプルソ。販売価格は4790ユーロ © Bianchi

 そのため、自転車メーカー以外の新規業者は相次いで市場に参入し始めました。イタリアメーカーでいうと、ヴェスパの製造元のピアッジョ社やフェラーリのデザインを手掛けるピニンファリーナ社などです。

フェラーリ、高級車、飛行機などのデザインを手掛けるイタリアを代表するデザイン事務所、ピニンファリーナ社もイーバイクに参入。販売価格未定 © Pininfarina S.p.A.
© Pininfarina S.p.A.
© Pininfarina S.p.A.
イタリアのヘルメット老舗メーカー、モモデザインが販売する折り畳みイーバイク。斬新なデザインが目を引く © MOMODESIGN
ヴェスパの販売元、ピアッジョ社が手掛けるイーバイク「Wi Bike」。販売価格は2980ユーロ © Piaggio & C. S.P.A.

 さらに今年の夏からイタリア側のアルプスで、電動アシストMTBの貸し出しが開始され、利用者が急増(参考イタリア語サイト:Alta Badia in Dolomites)。砂利道や厳しいアップダウンを気にしない乗り物として、冬のファットバイクに続き、山での新しいサイクリングスタイルが誕生したわけです。2017年はまさにイーバイク元年といえるでしょう。

© altabadia.org

イーバイクが自転車市場を牽引する

 具体的にどれだけすごいものかを見てみましょう。ANCMA(イタリア自転車・オートバイパーツ協会)の調べによると、2016年におけるイタリア国内のイーバイクの販売は12万4000台に上り、前年の伸び率が148%を記録しています。2017年上半期の販売数はすでにこの数字を超えています。

シマノ製のモーター  © Cosmo Bike Show 2017

 2016年にEUに加盟している28カ国で販売されたイーバイクの数を見ると、さらに驚きます。135万台に上っています。2015年と比べて、+1285%の伸び率を記録しています。そのうち、40%はドイツで購入されたものです。

 実はあまり知られていませんが、イーバイクの一番重要な部分は日本の産業が支えています。ヨーロッパのメーカーは主に4社のモーターを使っています。ドイツのボッシュとブロース、日本のシマノとヤマハです。

EUと中国との新たな火種

 イーバイクは楽!そして楽しい。負荷が少ないし、スピードが出ることが人気の秘密のようです。環境にも配慮され、自転車とスクーターの良さを備えています。一方で、水面下で大きな問題も発生しています。10月2日、重大なニュースがヨーロッパを駆け巡りました。EUで中国製の電動アシスト自転車があまりにも激増し、業界団体がダンピング(不当廉売)の疑いで提訴したのです。

 報道によると、欧州自転車製造者組合(EBMA)は、中国が電動アシスト自転車を不当に安い価格で欧州に輸出しているとして、欧州連合執行機関の欧州委員会にダンピング訴訟を起こしたそうです。

 問題視されたのが、中国からヨーロッパへの電動アシスト自転車の輸出がほぼゼロだった2010年から、17年には推定80万台へと激増したこと。中国のメーカーは中国政府から補助金を受け、製造コストを下回る価格で欧州向けに販売しているとEBMAは主張しています。

 性能とデザイン性が低いものの、実際の販売価格を見てみると、中国製の電動アシスト自転車の平均価格が450ドル(約5万円)であるのに対し、欧州製の製品はMTBタイプで1000~1500ユーロ(13~20万円)。ロードバイクタイプだと6000~10000ユーロ(80~135万円)にもなります。

 なぜ中国はイーバイクの輸出に踏み込んだのか。理由は2つあります。まず、国内の市場はすでに飽和状態にあるということ。中国国内で現在使われている電動アシスト自転車は推定1億5000万~2億台に上っていると言われ、新しい市場の開拓が必要となりました。

 そしてもう一つの理由は、11月に中国政府が「脱炭素社会」と称する企画を発表し、2025年までに新しい分野であるイーバイクや電気自動車の製造販売として世界的なリーダーシップを取りたいというものです。その実現のために中国政府が自国の企業に補助金を提供し、アメリカやEUではダンピングされています。こうした中国の国策の波に飲まれて、EUのメーカーは危機感を抱き、提訴に踏み切ったのです。すでに中国製の自転車は1990年から反ダンピング課税(税率48.5%)がかけられています。

 これから経済戦争に発展するイーバイク市場。確かにネガティブな側面を持っていますが、それとは関係なく、ユーザーとしてぜひ乗ってほしい楽しい乗り物です。食べ過ぎで膨らんだお腹を減らすための第一歩です。

 それではよいお年を。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

関連記事

この記事のタグ

つれづれイタリア~ノ

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
CyclistポケットTシャツ

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載