title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<236>エース格の出走グランツールを早々に内定 ミッチェルトン・スコット 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 新シーズンに向けたトップチームの戦力分析を行う「2018年シーズン展望」。今回は、メインスポンサーを新たに次なるシーズンを戦うオリカ・スコット改めミッチェルトン・スコットをクローズアップする。チームはこのほど、エースクラスが出走するグランツールを内定させ、正式に発表。好成績を狙ううえで、他チームに先駆けて方向性を定めた格好だ。グランツールレーサーからスプリンターまで幅広く実力者をそろえ、厚い選手層を誇るチームの戦い方に注目が集まっている。

新たなタイトルスポンサーを獲得し、2018年から「ミッチェルトン・スコット」として活動する。黒基調のジャージが特徴的だ Photo: GreenEDGE cycling

新メインスポンサーはオーナー所有の大企業

 チームの運営会社であるグリーンエッジサイクリングは12月11日、オーストラリアのワインメーカーであるミッチェルトン社が新たなメインスポンサーに就くことを発表。チームが発足した2012年から活動を支えてきたオリカ社は、当初の予定通り今シーズンをもって契約を終了。来シーズンからは「ミッチェルトン・スコット」の名でトップシーンを戦う。

新たなデザインのジャージを身にまとってライドする選手たち Photo: GreenEDGE cycling

 ミッチェルトン社は、チームオーナーであるゲーリー・ライアン氏が所有する企業。今年はチームの下部組織にあたる中国籍のUCIコンチネンタルチームのメインスポンサーを務めたが、来年からは晴れてトップチームのタイトルスポンサーとなる。

 新メインスポンサーと合わせて、チームジャージも発表。これまでは青系のジャージがトレードマークだったが、これからは光沢のある黒系のデザインとなる。肩回りはイエローがあしらわれるが、こちらはバイク供給を行うスコット社のイメージカラーだ。

エースクラスのグランツール“配属”が内定 ユアンがツール初出場へ

 チーム名が変わり、ジャージと合わせて装い新たに戦いへと挑むチームは、13日・15日と立て続けに若きエースたちの出走グランツールの内定を発表。力のある選手たちがひしめく中にあって、これまで選手間トラブルなどなく大きなレースで結果を残し続けてきた。そして、来シーズンに向けてもエースクラスの選手がそれぞれに納得して“配属先”のグランツールが決まった様子だ。

2018年はツール・ド・フランスに初出場する見込みのカレブ・ユアン =ジロ・デ・イタリア2017第7ステージ、2017年5月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 まず、13日にエーススプリンターのカレブ・ユアン(オーストラリア)のツール・ド・フランス参戦を発表。ここ3年はブエルタ・ア・エスパーニャに1回、ジロ・デ・イタリアに2回出場したが、まだ成長過程にあることから3度とも大会途中に離脱。いずれも当初から完走は予定に入っておらず、山岳ステージが本格化する段階で大会から離れる形をとった。そんな中でも、2015年にはブエルタ第5ステージを、今年はジロ第7ステージで勝利。出場するたびに期待を上回る走りを見せてきた。

 23歳となった今シーズンはジロでの勝利を含め12勝を挙げたが、165cmとプロトン内でもひときわ小柄な体躯から繰り出されるスピードは、トップスプリンター随一。スプリントを開始するポジションさえ整えば、独特の低い姿勢でライバルを引き離し、フィニッシュラインをトップで駆け抜けることができる。そのためには、やはりスプリントトレインの安定も求められるところ。ツールでもリードアウトマンをそろえて臨みたいところ。

チームが誇るグランツールレーサーの棲み分けも決定。左から、アダム・イェーツはツールへ、エステバン・チャベスとサイモン・イェーツはジロとブエルタに出場する Photo: Tim De Waele

 そのユアンとツールで「共闘」することになるのが、すっかりグランツールレーサーとして確たる地位を得たアダム・イェーツ(イギリス)。今年はジロとブエルタに参戦し、ジロで個人総合9位。ブエルタでは大会中盤の山岳ステージで崩れ、総合争いから脱落したが、この数年ですべてのグランツールを経験したことは今後のキャリアにプラスに働くことだろう。2016年のツールでは、粘りの走りが生きて最終的に個人総合4位。一時は総合2位につけるなど、総合表彰台まであと一歩の走りだった。それでも、新人賞(25歳以下対象)のマイヨブランを獲得。来年は26歳になるためマイヨブランの資格は失うが、自己最高位を上回りパリ・シャンゼリゼでの総合表彰台に上がることが現実的な目標となりそうだ。

 アダムの双子の兄弟であるサイモン・イェーツ(イギリス)と、2人とならぶ総合エースのエステバン・チャベス(コロンビア)は、ジロとブエルタでダブルエースを務めることが15日に発表された。

2017年のツール・ド・フランスで新人賞のマイヨブランを獲得したサイモン・イェーツ。次なるシーズンはジロ・デ・イタリア初出場に心躍らせる =ツール・ド・フランス2017第21ステージ、2017年7月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 サイモンは2016年のブエルタ総合6位を経て、今年は満を持してツールに参戦。前年のアダムと同様に毎ステージ安定した走りをみせ個人総合7位でフィニッシュ。兄弟による2年連続のマイヨブラン獲得を実現させた。来シーズンは兄弟でのグランツール競演はない見通しとなったが、初のジロ出場にモチベーションは上々のよう。これまでもダブルエース態勢でのグランツールを経験しており、それぞれに合った走りに終始してともに上位進出を狙える形を築いてきた。来年はチャベスとともに総合上位入りに期待が膨らむ。

 そのチャベスは今年、膝の故障もあり目標としていたジロへの出場がかなわなかった。何とか間に合わせて出場したツールは下位に終わり、その後調整して出場したブエルタも結果的に個人総合11位。1月にはツアー・ダウンアンダー個人総合2位と上々のシーズンインを果たしていただけに、悔いの残る1年となった。

エステバン・チャベスにとって大きな課題である個人タイムトライアル。ここでの走り次第でグランツールの頂点も見えてくる =ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第16ステージ、2017年9月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、来年は相性のよいジロとブエルタでの復活アピールを狙う。2016年はジロで個人総合2位、ブエルタで同じく3位と、シーズンで2度のグランツール総合表彰台を経験。残すところは、頂点に立つだけとなっている。登坂力はもとより、ライバルをあっという間に置き去りにする力強いアタックは、急峻な山岳では絶対的な武器になる。一方で、個人タイムトライアル(TT)の走りに大きな課題がある。タイムトライアルでは、山岳で得た貯金を失わない走りが求められる。TTでの走りがどう改善されるかは、今シーズンの見どころの1つともいえる。

エースを支えるアシスト陣も実力者ぞろい

 エースクラスを中心に方向性が定まりつつあるチームだが、脇を固めるアシスト陣も強力。本来であればエースを務めることができるだけの力を持つ選手ばかりだ。

 自らもスプリンターとして勝負できるルカ・メズゲッツ(スロベニア)は、最終発射台としてたびたびユアンの勝利に貢献。スピードマンのダリル・インピー(南アフリカ)やロジャー・クルーゲ(ドイツ)らが、スプリントトレインを率いてメズゲッツとユアンのホットラインを好位置へと導く姿が、来シーズン幾度となく見られることだろう。

チーム スカイからの移籍となるミケル・ニエべ。計算できる山岳アシストの加入は大きい =ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第17ステージ、2017年9月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チャベスやイェーツ兄弟を盛り立てる山岳アシストとしては、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)やカルロス・ベロナ(スペイン)の名が挙がる。来シーズンは、ベテランのミケル・ニエベ(スペイン)が加入。すでに若きエースをアシストすると宣言しており、経験に裏打ちされた走りがチームにもたらす影響は大きいことだろう。今シーズンは8月のツール・ド・ポローニュ(ポーランド、UCIワールドツアー)で1勝を挙げたジャック・ヘイグ(オーストラリア)も、今後が期待されるクライマーだ。

マッテーオ・トレンティンはクイックステップフロアーズからの加入。クラシックレースでの活躍が期待される =ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第21ステージ、2017年9月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのほかでは、クラシック路線の強化も着々と進行中。来季はマッテーオ・トレンティン(イタリア)がクイックステップフロアーズから加入。近年はグランツールでのステージ優勝などが印象的だが、本来得意とする北のクラシックやミラノ~サンレモでの活躍が見込まれる。北のクラシックといえば、2016年のパリ~ルーベ覇者のマシュー・ヘイマン(オーストラリア)も健在。来年4月に40歳を迎えるが、まだまだやる気は十分のよう。アルデンヌクラシックを得意とするミヒャエル・アルバジーニ(スイス)も控えており、活躍が期待されるグランツールよりも一足早く、春のシーズンに主役に躍り出る選手が現れても不思議ではない。

ミッチェルトン・スコット 2017-2018 選手動向

【残留】
ミヒャエル・アルバジーニ(スイス)
サム・ビューリー(ニュージーランド)
エステバン・チャベス(コロンビア)
ルーク・ダルブリッジ(オーストラリア)
アレクサンダー・エドモンドソン(オーストラリア)
カレブ・ユアン(オーストラリア)
ジャック・ヘイグ(オーストラリア)
マシュー・ヘイマン(オーストラリア)
マイケル・ヘップバーン(オーストラリア)
ダミアン・ホーソン(オーストラリア)
ダリル・インピー(南アフリカ)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク)
ロジャー・クルーゲ(ドイツ)
ロマン・クロイツィゲル(チェコ)
ルカ・メズゲッツ(スロベニア)
ロバート・パワー(オーストラリア)
スヴェイン・タフト(カナダ)
カルロス・ベロナ(スペイン)
アダム・イェーツ(イギリス)
サイモン・イェーツ(イギリス)

【加入】
ジャック・バウアー(ニュージーランド) ←クイックステップフロアーズ
ルーカス・ハミルトン(オーストラリア) ←ミッチェルトン・スコット
キャメロン・マイヤー(オーストラリア) ←ミッチェルトン・スコット
ミケル・ニエベ(スペイン) ←チーム スカイ
マッテーオ・トレンティン(イタリア) ←クイックステップフロアーズ

【退団】
チェン・キンロー(香港) →未定
マウヌス・コー(デンマーク) →アスタナ プロチーム
ミッチェル・ドッカー(オーストラリア) →チーム EFエデュケーションファースト・ドラパック
サイモン・ゲランス(オーストラリア) →BMCレーシングチーム
イェンス・クークレール(ベルギー) →ロット・ソウダル

今週の爆走ライダー−アレクサンダー・エドモンドソン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ユアンばかりに目が行きがちなこのチームのスプリント戦線だが、もう1人ブレイクを予感させる期待のスプリンターが存在する。24歳のアレクサンダー・エドモンドソンだ。

ツール・ド・ロマンディで好走を連発したアレクサンダー・エドモンドソン。3位に入ったプロローグでは新人賞ジャージを獲得した =2017年4月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ロードシーンに本格参戦となった今シーズン、4月のツール・ド・ロマンディで好走を連発。プロローグの個人TTで3位に入り関係者を驚かすと、第2・第3ステージと連続してステージ4位。並み居るスプリンターに交じり優勝争いを演じてみせた。その後出場したジロは途中でバイクを降りたが、今シーズンは経験の1年。上手くいかないことも少なくはなかったが、チーム方針もあり重要レースに数多く参戦することができた。

 バックボーンのトラックでは、チームパシュート(団体追抜)でリオデジャネイロ五輪銀メダル。今後のロードキャリアでは、トラックのスピードを生かすべく、トラックでは個人TTやスプリントで勝負するつもりでいるという。

 プロライダーとしてのキャリアはまだまだ浅いが、高校時代からボランティア活動に参加するなど、自転車競技にとどまらない取り組みで高く評価されてきた。これからもできる限り地元でのイベントに参加して多くの人と思いを共有したいとの考えを持っているとか。そんな視野の広さは、競技生活を終えた後の人生にもきっと役に立つことだろう。

 ちなみに、彼に自転車競技を始めるきっかけを与えた姉のアネットは、現在女子ロードのトップチームであるウィグル・ハイファイブに所属。地元の南オーストラリア州では、早くから期待されていた姉弟だった。

 そんな、選手としても、1人の人間としても無限の可能性を持つ彼が、世界のトップに並ぶ日もそう遠くはなさそうだ。今年の勢いそのままに、2018年シーズンがターニングポイントになるかもしれない。

2017年は経験の1年となったアレクサンダー・エドモンドソン。人間性も高く評価されている =ツール・デ・フランドル2017、2017年4月2日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

チーム展望2017-18 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載