人気3モデルを自転車ライター安井行生さんが比較スラム・レッドeタップか機械式デュラエースか キャニオン・ディスクロードお勧めの1台は?

by 安井行生/Yukio YASUI
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 ロードバイクや機材について日本有数の知識と意見を持つ自転車ライターの安井行生さんが、ドイツのバイクブランド「CANYON」(キャニオン)の3種のディスクロードを2回に渡って徹底解剖する企画。第2弾はスラム・レッドeタップHRDで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0SL」と機械式変速&油圧ディスクのR9120系デュラエースで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0」についてインプレッションする。シマノ・デュラエースDi2仕様の「アルティメットCF SLXディスク9.0Di2」を含め、最終的に安井さんがお勧めする1台は?

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スラム・レッドeタップディスクで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0SL」をインプレッションする安井行生さん Photo: Masami SATOU

注目コンポ、レッドeタップディスクの実力

 シマノ・デュラエースDi2仕様の「アルティメットCF SLXディスク9.0Di2」を乗り終え、無線式変速システムが売りのスラム・レッドeタップHRDで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0SL」に乗り換える。ブラケットはシマノDi2よりやや太いがフィット感は悪くない。制動力はコントロール性を重視したと思しきシマノよりガツンと利く。パッドがディスクに当たった後も発生する制動力は大きめ。ディスクブレーキらしいといえばらしいが、リムブレーキから乗り換えるなら慣れが必要だろう。各社の思想の違いが感じられて興味深い。

スラム・レッドeタップのブラケット Photo: Masami SATOU
「アルティメットCF SLXディスク9.0SL」のハンドル回り Photo: Masami SATOU

 シマノやカンパとは異なり、一つのレバーにスイッチは一つ。左のスイッチを押すとリヤがシフトアップ、右を押すとリヤがシフトダウン、左右同時に推すとフロント変速というeタップ独自の変速方法は意外にも悪くない。10kmも走れば自由自在に使いこなせるようになるだろう。ただ、ブラケット形状がシマノ系と似ているため、シマノと併用する場合は乗り換えるたびに脳が混乱するかもしれない。

スラム・レッドeタップディスクの変速をチェック Photo: Masami SATOU

 操作方法が異なるシマノとカンパを併用していても不思議と操作を間違えにくいのは、シマノとカンパのブラケット形状が大きく異なるからである。シマノのブラケットを握った瞬間に脳と手先が「シマノ仕様」になる。カンパのブラケットを握ったその瞬間に脳が自然に「カンパモード」に切り替わるのだ。スラムはシマノと握った感じが近いため、脳が「シマノモード」から「eタップモード」切り替わりにくいのかもしれない。

スラム・レッドeタップで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0SL」。カラーはJET SILVER-GREY Photo: Masami SATOU

 スイッチのクリック感は明確で安物感がなく、操作がなかなか楽しい。ただ、変速スピードはデュラエースにはわずかに劣る。スイッチを押してから一呼吸置いて変速する感じ。そのかわりeタップにしかないものもある。「モノとしての面白さ」だ。とんがったデザイン。機械好きのツボを突くカタチとグラフィック。なにより変速を無線で行うという新しさ。

 今回は長時間のインプレではなかったため、寿命や耐久性、バッテリー関連、アップデート関連における運用面の良し悪しは判断できないが、「無線」という単語から連想しがちな危うさは全くないし、知り合いのeタップオーナーに聞くと雨の中でも危なげなく動いているという。

ULTIMATE CF SLX DISC 9.0 SL(アルティメットCF SLXディスク9.0SL)

価格:669,000円(完成車、ドイツ付加価値税不要送料・梱包料別)
サイズ:2XS、XS、S、M、L、XL
カラー:STEALTH-ASPHALT GREY、JET SILVER-GREY
問い合わせ先:キャニオンバイシクルズhttps://www.canyon.com/ja/about-us/contact/
スペック
フレーム:Canyon Ultimate CF SLX Disc R049
フォーク:Canyon One One Four SLX Disc F38
変速機:SRAM RED ETAP
ギヤ:SRAM RED 22 52-36T、11-28T(11s)
ホイール:MAVIC COSMIC PRO CARBON DISC BRAKE CL
重量:7,4 kg (Mサイズ完成車)

機械式変速ならではの「操作する快感」

 最後は機械式変速&油圧ディスクのR9120系デュラエースで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0」に乗る。ブラケットは太い。レッドeタップHRDより大振りだ。変速ユニットとブレーキ用のシリンダーを詰め込む必要があるためだ(これまでのモデルに比べると細くはなっており、メーカーの努力はうかがえるが)。ルックスも、R9170やレッドeタップに比べるとボテッとして野暮ったい。重量もある。では、価格以外にDi2に対するメリットはないのか。ある。変速操作感だ。

機械式変速&油圧ディスクのR9120系デュラエースで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0」 Photo: Masami SATOU

 電動変速システムの操作感が洗練されてきたとはいえ、やはり「単なるスイッチを押している」という無機質な印象が拭えない、という人もいるだろう。変速する度にマウスをクリックしているような味気なさを感じてしまう。そういう偏屈なサイクリストにとっては、ワイヤーで変速機を動かす機械式変速がお勧めだ。

 このR9120には、いかにも「精密な機械を操っている」という生々しい実感がある。コーナー手前で減速しながらレバーを倒してカカッと2段シフトダウンする。コーナーをクリアしたら加速しながら変速レバーを弾き「カツーンカツーン」とシフトアップ。そういう「シフトチェンジの楽しみ」は、今のところは機械式変速にしかない。

試乗したアルティメットCF SLXディスク9.0Di2(XSサイズ)は前後ともローター径が160mm Photo: Masami SATOU
機械式仕様の「アルティメットCF SLXディスク9.0」。XXSサイズのローターは140㎜ Photo: Masami SATOU

 ところで今回の試乗車、この「アルティメットCF SLXディスク9.0」だけ2XSサイズだった(他の2台はXS)。キャニオンのパーツアッセンブルは面白く、XS以上はローター径が前後160mmだが、XXSのみ前後140mmとなる。ライダーの体重を考慮したものだろう。

 前後140mmのディスクロードには初めて乗ったが、コントロール性という点ではピカイチだ。ただ激坂の下りではもう少し制動力が欲しいと思う人もいるだろう。よく整備されたデュラエースのリムブレーキのほうが絶対的な制動力では上かもしれない。ローター径でここまで制動特性が変わるとは思わなかった。ローターの径だけでなく、ローターの種類やパッドの素材でも制動性能を調整できる。ディスクロードには、このようなチューニングの余地が残されていることを忘れてはならない。

ULTIMATE CF SLX DISC 9.0(アルティメットCF SLXディスク9.0)

価格:599,000円(完成車、ドイツ付加価値税不要送料・梱包料別)
サイズ:2XS、XS、S、M、L、XL
カラー:STEALTH-ASPHALT GREY、JET SILVER-GREY
問い合わせ先:キャニオンバイシクルズ https://www.canyon.com/ja/about-us/contact/
スペック
フレーム:Canyon Ultimate CF SLX Disc R049
フォーク:Canyon One One Four SLX Disc F38
変速機:SHIMANO DURA-ACE
ギヤ:SHIMANO DURA-ACE 52-36T、11-28T(11s)
ホイール:DT SWISS PRC 1400 SPLINE DB 35
重量:7,5 kg (Mサイズ完成車)

ディスクロード、そろそろ買いどき

 最後にフレームとホイールの相性について。デュラDi2完成車にはDTスイスPRC1400スプラインDB65(65mmハイトのカーボンクリンチャー)が、機械式デュラ完成車にはDTスイスPRC1400スプラインDB35(35mmハイトのカーボンクリンチャー)が、レッドeタップHRD完成車にはマヴィック・コスミックプロカーボンディスククリンチャー(45mmハイト、アルミリムにカーボンカウルを被せたクリンチャー)が付属する。

デュラDi2完成車には65mmのハイトのDTスイスPRC1400スプラインDB65が装着 Photo: Masami SATOU

 最もバランスがいいのは当然PRC1400スプラインDB35だ。加速、上り、快適性、扱いやすさ、全てがハイレベルにまとまっている。しかしPRC1400スプラインDB65も悪くなかった。もちろん高速巡航性はコイツが一番だが、65mmハイトから想像するほど加速性も快適性も悪化しない(横風に注意する必要はあるが)。

スラム・レッドeタップで組まれた「アルティメットCF SLXディスク9.0SL」はホイールに45mmハイトのマヴィック・コスミックプロカーボンディスククリンチャーを採用 Photo: Masami SATOU

 1800g近くもあるコスミックプロカーボンはさすがに加速も上りも重いが、俊敏性に長けるアルティメットにこのホイールを組み合わせると、いい意味での重厚感・安定感が生まれる。意外にも相性は悪くはない。どのホイールでも、そのホイールの個性がそのまま表れていた。これはフレームの性格が素直で出来がいいからである。

平地での巡航性なら「アルティメットCF SLXディスク9.0Di2」

 そろそろまとめにしよう。3台の中で最も完成度が高いのはデュラDi2完成車だ。現状、ここまでスキのないフレームとコンポーネントはそうそうない。ただ、65mmハイトのホイールが用途を狭めてしまう。このホイールの空力性能が活きるのは高速域。平地での巡航性を重視する人、横風でも65mmハイトを御せる自信のある人には向いているだろう。

“無線で電動変速”の特別感はスラム・レッドeタップでしか味わえない Photo: Masami SATOU

 レッドeタップHRDにビビッときたなら、迷わずレッド完成車「アルティメットCF SLXディスク9.0SL」にいくべきだ。変速スピードではデュラにやや劣るが、“無線で電動変速”という特別感はこのコンポにしかない。ホイールは重いが、そのうち軽いホイールを手に入れればいい。数年後もこのフレームの戦闘力は一級のままだろう。どんな尖がったホイールでも履きこなすはずだ。

安井さんお勧めは機械式「アルティメットCF SLXディスク9.0」

 個人的なお勧めは、優秀な油圧ディスクブレーキシステムを持ち、かつ機械式変速の味わいがあり、しかもホイールが万能な35mmカーボンクリンチャーで、しかも60万円を切る「アルティメットCF SLXディスク9.0」だ。このバイクなら、完成車スペックのまま山岳縦走からロングライド、各種レースまで何だってできる。

キャニオンのディスクロード「アルティメットCF SLXディスク9.0」シリーズならスラムもデュラエースも好みに合わせたチョイスができる Photo: Masami SATOU

 朝から夕方まで、いつもの練習コースで3台をとっかえひっかえ乗り比べた今回の試乗。ディスクロードの進化を実感した一日となった。職業柄、「ディスクロードってどうなんですか」と聞かれることも多い。昨年なら「買うならもうちょっと待ったほうがいいかもしれません」と言っていたところだが、ここにきてコンポとフレームの進化が著しい。ディスクロードに最適化された高性能ホイールが出揃うのはもう少し待つ必要があるだろうが、今年からは「もういっちゃってOKでしょう」と答えることにしよう。

安井行生
インプレッションライダー・安井行生

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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