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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<235>ポート、ヴァンアーヴェルマートらを軸に戦う BMCレーシングチーム 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 新シーズンに向けたトップチームの戦力分析を行う「2018年シーズン展望」。今回はBMCレーシングチームについて見ていきたい。2017年シーズンに挙げた勝利数は、世界第2位の48勝。なかでも、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)が席巻した春のクラシックシーズンは印象的だった。来季に向けては、ヴァンアーヴェルマートのほか、ツール・ド・フランスでの雪辱を期すリッチー・ポート(オーストラリア)ら戦力が充実。シーズンインから勝利量産をうかがう構えだ。

チームリーダーの1人、リッチー・ポート。2018年はツール・ド・フランスでの雪辱を目指す =ツール・ド・ロマンディ2017第5ステージ、2017年4月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

新メンバーも期待の春のクラシック

 今シーズン序盤からビッグレースを次々と制し、最終的にUCIワールドツアー個人ランキング1位に輝いたヴァンアーヴェルマート。2016年のリオデジャネイロ五輪ロード金メダリストは、今年もクラシック最強の座をほしいままにした。

パリ〜ルーベを制するなど、2017年はタイトルを総なめにしたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート =パリ〜ルーベ2017、2017年4月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2月のオムループ・ヘット・ニュースブラッド(ベルギー、UCIワールドツアー)で勝つと、3月はストラーデ・ビアンケ(イタリア、UCIワールドツアー)で2位、そして“北のクラシック”シーズンに入り、E3ハーレルベーク、ヘント~ウェヴェルヘムと地元ベルギーでのUCIワールドツアーを連勝。極めつけは、4月のパリ~ルーベ(フランス、UCIワールドツアー)での混戦を制しての初優勝だった。

 その後も精力的にレースに参戦し、アルデンヌクラシックでもアムステルゴールドレース(オランダ)、リエージュ~バストーニュ~リエージュ(ベルギー)と優勝こそならなかったが、見せ場を作った。

2018年もグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(中央)とペテル・サガン(左)らとの熱い戦いが期待される =オムループ・ヘット・ニュースブラッド2017、2017年2月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 来シーズンも順調にいけば、2月下旬からベルギーの石畳系レースでエンジン全開となるだろう。今年は再三にわたりペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアル)との死闘が見られたが、来年も彼らとの優勝争いがヒートアップしそうだ。コンディション次第では、北のクラシックのみならず、アルデンヌクラシックでもトップが見える位置で走ることができそう。

 さらに、この秋のストーブリーグで心強い仲間を得ることになったのも大きい。北のクラシックではユルゲン・ルーランツ(ベルギー)をロット・ソウダルから、アルデンヌクラシックではサイモン・ゲランス(オーストラリア)をオリカ・スコットから獲得している。

 ルーランツは、2008年から3年間ヴァンアーヴェルマートとチームメートだった時期があるほか、ベルギー代表としてUCIロード世界選手権でも一緒に走ってきた間柄。2013年のツール・デ・フランドルでは3位になるなど、経験も豊富。

2014年にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュを制したサイモン・ゲランスが加入。大きな戦力アップとなった =2014年4月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 一方、ゲランスは2012年にミラノ~サンレモを、2014年にはリエージュを制するなど、プロトン屈指のクラシックハンター。近年はけがなどもあり、大きなレースでの好リザルトこそ減ってはいるものの、新天地で復活を期する。

 ルーランツ、ゲランスをそれぞれ準エースクラスの立場に据えられることは、チームにとってもプラスに働くに違いない。展開次第で彼らを動かしつつ、スーパーエースのヴァンアーヴェルマートでの勝負どころを見極める、そんなレースが春には多く見られそうだ。

 クラシックシーズンを終えてからのヴァンアーヴェルマートは、近年と同様にツールを目指すものとみられる。来年はパヴェステージもあり、ステージ優勝または総合エースのアシストと、チームオーダーに合わせて働きぶりも注目される。そして、ツール後は秋のワンデーレースを狙っていくことになるだろう。

雪辱のシーズンに挑むポート

 グランツール路線は、やはりポートがチームの主軸となる。チーム加入1年目の2016年には、大会序盤での遅れを少しずつ取り戻し、最終的に個人総合5位。前年まではチーム スカイの山岳アシストを務めていたこともあり、自身としては久々の好成績となった。

 アシスト時代から登坂力はもとより、個人タイムトライアル(TT)の走力も高く評価され、グランツールでの総合的な走りに期待が寄せられていたが、現チームに加入しエース待遇を得て以来、周囲の見方に違わない活躍を見せてきた。

ツール・ド・フランス2017第1ステージのスタートを切るリッチー・ポート。総合上位進出が期待されたが、第9ステージのアクシデントで大会を去った =2017年7月1日 Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、2017年シーズンは悔しさも経験。地元でのシーズン開幕戦であるツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)で頂点に立ち、最高のスタートを切ると、4月のツール・ド・ロマンディ(スイス)でも快勝。“ツール前哨戦”クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(フランス)でも個人総合2位と上々の仕上がりを見せていた。

 そして乗り込んだツール。上位戦線で勝負の時をうかがっていた最中の第9ステージ、スリッピーな路面にバイクを取られ落車。大会離脱を余儀なくされるほどの負傷に見舞われ、ツール上位進出の芽は絶たれた。

 以降は、シーズン後半を休みに充て、回復と来シーズンへの準備に集中。10月のジャパンカップサイクルロードレースでは来日したが、無理のない範囲で走りをとどめており、完全復活はまだまだこれから。これまで同様に、真夏の自国でのシーズンインに意欲を見せており、年明けすぐにやってくるオーストラリア選手権や、その後に控えるツアー・ダウンアンダーでの活躍を誓う。

リッチー・ポート(中央)にとって雪辱戦となる2018年のツール・ド・フランス。シーズン序盤からツールを視野に走っていく =ツール・ド・フランス2017第5ステージ、2017年7月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 新シーズンのレーススケジュールに関する具体的な言及はしていないものの、近年はほぼ同じプログラムを経てツールへと向かう傾向にある。ツアー・ダウンアンダー後は、3月のパリ~ニース(フランス)に臨み、その後はロマンディ、ドーフィネを経て、ツール本番を迎える形。雪辱のシーズンとなる2018年も大きな変化はないと見てもよいかもしれない。

 ポート以外には、ローハン・デニス(オーストラリア)もグランツールでの上位進出が期待されている。こちらも山岳と得意の個人TTとのバランスで勝負するタイプ。今年はジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャと2度にわたる途中リタイアに泣いたが、来年は改めてジロで自らの順位を狙っていく構え。

周囲の環境を変えて新たなシーズンへと向かうティージェイ・ヴァンガードレン。復調が求められる ジロ・デ・イタリア2017第18ステージ、2017年5月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 過去2回のツール個人総合5位を経験するティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)も奮起が求められる。2017年はジロでステージ1勝、ブエルタでは個人総合10位とまとめたが、これまでの実績を見るに物足りなさは否めなかった。家族全員でスペイン・ジローナへと移り住み、環境を変えて復調を目指す。チームとしては、比較的プレッシャーの少ない立場で走らせたいとの考えもあり、ポートやデニスらとの棲み分けも慎重に判断していくことになりそう。

 ニコラ・ロッシュ(アイルランド)、ダミアーノ・カルーゾ、アレッサンドロ・デマルキ(ともにイタリア)といった経験豊富なクライマーも控える。堅実なアシストもさることながら、彼らはいずれもレース巧者としての一面も持つ。エースにトラブルがあった際に、代わりに総合を狙うことや、逃げに入ってレースを動かすといった働きもできる。こうした選手たちが後ろに控えているところも大きな強みとなる。

ダウンアンダーに総合優勝経験者をそろえて参戦

 チームは10月下旬に24人の2018年シーズンロースターを発表。9選手が退団したが、即戦力となる4選手が加入。ポートやルーランツのほか、アルベルト・ベッティオール(イタリア)とパトリック・ベヴィン(ニュージーランド)をキャノンデール・ドラパックから獲得した。

BMCレーシングチーム2018年シーズンジャージ Photo: BMC Racing Team

 また、12月11日には来シーズン着用するジャージを発表。コンピュータセキュリティのソフトウェア、ハードウェアを開発・提供するベンダー企業の「ソフォス」とスポンサー契約を締結。これにより、赤・黒・白で構成されていたジャージデザインに、ソフォス社のイメージカラーである青が加わった。

 さらには同日、2018年のUCIワールドツアー開幕戦ツアー・ダウンアンダーに臨む7選手を発表。前回覇者のポートを筆頭に、過去4回総合優勝のゲランス、2015年総合優勝のデニスと、この大会の頂点を極めた選手たちをそろえた最強布陣。ここに、トム・ボーリ、ダニロ・ウィス(ともにスイス)、昨年のオーストラリアロード王者のマイルズ・スコットソン、そして新加入のベヴィンが名を連ね、大会制覇を狙っていくことになる。

BMCレーシングチーム 2017-2018 選手動向

【残留】
トム・ボーリ(スイス)
ブレント・ブックウォルター(アメリカ)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア)
ローハン・デニス(オーストラリア)
ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク)
キリアン・フランキニー(スイス)
シュテファン・キュンク(スイス)
リッチー・ポート(オーストラリア)
ニコラ・ロッシュ(アイルランド)
ジョセフ・ロスコフ(アメリカ)
ミヒャエル・シャール(スイス)
マイルズ・スコットソン(オーストラリア)
ディラン・トゥーンス(ベルギー)
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)
ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ)
ネイサン・ヴァンホーイドンク(ベルギー)
フランシスコホセ・ベントソ(スペイン)
ロイック・ヴリーゲン(ベルギー)
ダニロ・ウィス(スイス)

【加入】
アルベルト・ベッティオール(イタリア) ←キャノンデール・ドラパック
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド) ←キャノンデール・ドラパック
サイモン・ゲランス(オーストラリア) ←オリカ・スコット
ユルゲン・ルーランツ(ベルギー) ←ロット・ソウダル

【退団】
シルヴァン・ディリエ(スイス) →アージェードゥーゼール ラモンディアル
マルティン・エルミガー(スイス) →引退
フローリス・ヘルツ(オランダ) →未定
ベン・ヘルマンス(ベルギー) →イスラエルサイクリングアカデミー
アマエル・モワナール(フランス) →フォルトゥネオ・サムシック
ダニエル・オス(イタリア) →ボーラ・ハンスグローエ
マヌエル・クインツィアート(イタリア) →引退
サムエル・サンチェス(スペイン) →未定
マヌエル・センニ(イタリア) →バルディアーニ・CSF

今週の爆走ライダー−ダニロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 チームは7月の段階で数人のアシストライダーとの契約を更新。その中に、ウィスも名を連ねた。発足2年目の2008年から現チームに所属。BMCレーシングチームの新興段階から、ビッグチームの1つに数えられる今までをすべて見てきた選手である。

ツール・ド・フランス2017第3ステージ。ダニロ・ウィス(先頭)は急坂区間でメイン集団のペースを上げる =2017年7月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 選手の入れ替わりが激しいサイクルロードレース界にあって、ここまで同じチーム一筋で走り続ける選手も珍しい。アンダー23カテゴリーまではスプリンターとして鳴らしてきたものの、トップシーンで走ってみるとどれかで勝負できるほど秀でたものがないことを痛感。いままで目立ったリザルトこそ残せていないが、スプリントトレインの牽引や平地での集団コントロール、ときには山岳アシストもこなしながら、自らの地位を確立してきた。

 チーム11年目となる2018年シーズンに向けた契約延長は、ゼネラルマネージャーであるジェームズ・オショウィッツ氏が強く求めたものでもあった。これまでのアシストとしての働きぶりを最大限評価。経験を若い選手に伝えられる存在としても、チームには欠かすことのできない人材だという。

 そんなチームの屋台骨である彼の、2018年シーズン最初の仕事も決まった。6年連続となるツアー・ダウンアンダーへの参戦。今年はポートを、2年前にはデニスを個人総合優勝へと導いてみせた。今度は総合優勝経験者3人をそろえ、ほぼベストに近い布陣を組む。

 32歳となり、キャリアやこれまで出場してきたレース、そこでの働きを考えると、どんな状況下でも気負うなんてことは考えにくい。普段と変わらない仕事をしていれば、自然とエースに結果が出ていることだろう。エースが活躍する過程で、彼がどんな働きをしていたのかを知ることは、このスポーツの奥深さを学ぶ一端でもある。

ジャパンカップで来日したダニロ・ウィス。クリテリウムではスプリント賞を獲得。2018年もチームを支える働きに徹する =2017年10月21日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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