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産経WEST【経済裏読み】よりスポーツ自転車にも電動化の波 シマノが市場参入、パナソニックとヤマハも本腰、ドイツ勢が来襲…

by 上野嘉之 / Yoshiyuki KOZUKE
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 電動アシスト自転車といえば、ママ・パパが子供を乗せたり、高齢者が買い物に利用したりする軽快車、いわゆる“ママチャリ”のイメージが強い。しかし今年、ついにスポーツサイクルの電動化が国内で本格化した。「えっ、スポーツするのに電動?」といぶかしむ声も聞かれるが、ヨーロッパでは「eバイク」と呼ばれる電気モーター搭載のスポーツサイクルが売れに売れている。電気自動車(EV)の台頭に続き、自転車業界も電動化によって新たな市場を切り開こうとしている。

国内最大の自転車ショー「サイクルモード」に出展したシマノのブースでは、スポーツサイクル向け電動アシストユニット「ステップス」が大々的にアピールされた =2017年11月、千葉市の幕張メッセ Photo: Kenta SAWANO

世界最大手が国内投入

 自転車パーツの世界最大手、シマノは、欧州のeバイク市場で先行販売していた電動アシストユニットを今夏、日本国内でも発表。来年早々に市場へ投入する。

 「ステップス」と名付けられたユニットは、バッテリーと、パワーユニット(モーター)、操作スイッチ、そしてサイクルコンピューター機能を持つコントロールディスプレイの4つの部品で構成される。バッテリーは自転車のフレームに装着しやすいデザインで、パワーユニットも小型軽量化されている。

 シマノは欧州で、本格的なマウンテンバイク(MTB)向けと、クロスバイクなどシティースポーツ車向けの2種類のステップスを販売しているが、国内では主にシティースポーツとしての利用を想定。部品ユニットを自転車メーカーへ供給して完成車で出荷し、部品単体では販売しない。

 すでにミヤタサイクルが、ステップス搭載の国内第1号となるシティースポーツ車「クルーズ」を来年2月に発売すると発表。価格は26万9000円(税別)で、市場の動向を占う商品として注目される。ルイガノなど他のブランドも市場投入を計画している。

パナは本格MTBを電動化

パナソニック 電動アシスト自転車 XM1(BE-EXM40)(パナソニック サイクルテック提供)

 国内自転車メーカー第3位のパナソニックサイクルテック(大阪府柏原市)は、これまでママチャリ向けの電動ユニットをシティースポーツ車に転用して販売してきたが、今年9月、本格スポーツ車向けの新ユニットを搭載したMTB「XM1」を発売した。

 フレームや変速機、サスペンション、ディスクブレーキなどに高性能部品を用い、山道で高い踏破性を発揮する。新ユニットは、スポーツ走行時に高回転でペダルを回してもスムーズなアシスト力を発揮する。価格は33万円(税別)。

 同社は売上高の9割をママチャリの電動アシスト車が占め、生産ノウハウは豊富だ。また、電動アシスト車を手がける他の自転車メーカーや部品メーカーは、モーターやバッテリーを専業メーカーに外注しているが、パナソニックはグループ内で調達できることを強みとする。このため、最適な機能のパーツを低コストで調達しやすい。今年4月にパナソニックサイクルテック社長に就任した片山栄一氏は、電動アシストのスポーツ車を強化し、電動ユニットの外販も増やす方針。今後も積極的に商品を展開する構えだ。

ヤマハは電動スポーツ「第2世代」へ

サイクルモードに出展された「YPJ-ER」。YPJシリーズにさらなる大容量バッテリーとパワーを付与した「クロスオーバーロードバイク」2017年11月、千葉市の幕張メッセ Photo: Kyoko GOTO

 電動アシストのママチャリ「PAS」(パス)を展開するヤマハは、2015年末に電動アシストの本格ロードバイク「YPJ」を発売。国内スポーツサイクル市場で電動化の先鞭をつけた。現在はロードバイクとクロスバイクの2タイプを販売し、さらに今秋の展示会では新ユニットを搭載した本格MTBや、長距離ツーリングに対応するトレッキングバイクなどの試作車も発表した。来年の発売を目指しており、ヤマハの電動スポーツ車は第2世代へと歩を進める。

 ヤマハもパナソニックと同様、電動スポーツ車向けユニットを欧州などの自転車メーカーに供給しており、トータルで売上高を増やすことが課題だ。

「黒船」ボッシュの脅威

「ボッシュ eバイクシステムズ」を搭載したeバイク Photo: Naoi HIRASAWA

 こうした国内勢に対し、先行する欧州市場では、ドイツの自動車電装部品大手、ボッシュが自転車の電動アシストユニットを大々的に展開している。そして今年11月には東京で発表会を開き、日本市場の本格参入へのろしを上げた。

 ボッシュのeバイク用のシステムはシティ向けから本格MTB向けまで4段階があり、日本にはシティー向けの次にアシスト力の高い「アクティブラインプラス」を導入する。もちろん日本の法規制に合った出力制御が施される。

 ボッシュのシステムは世界70ブランドが採用しているといい、日本導入時にはアメリカのトレック、イタリアのビアンキなどスポーツ自転車の有力4社がボッシュ搭載車を発売する。トレックでは、すでに欧州で売上高の4分の1をeバイクが占めているといい、日本市場への期待も大きい。ボッシュはシマノなどと真っ向勝負しつつ、日本で評判を高めていく構えだ。

中高年サイクリストに朗報

 そもそも、スポーツとして自転車に乗るのに電動アシストは必要か? そんな疑問を抱く人は多いが、欧州の市場では一定の理解が広まっている。

 電動化のメリットが大きいのは、力が衰えてきた中高年のサイクリストだ。モーターの力を借りれば、より遠くまで走ったり、よりスピードを上げたりすることが容易になり、サイクリングの楽しみが広がる。

 特に、自転車では平地に比べ上り坂で体力を激しく消耗するが、電動アシストなら苦もなくクリアでき、非力なサイクリストでも行動範囲を広げられる。

 また、男性と女性、大人と子供、上級者と初心者など体力差がある仲間同士でサイクリングをする際、体力が劣る方が電動アシスト車を利用すれば、体力のある人と同じように走ることができる。例えば夫婦で峠を越えるサイクリングを目指す際などにピッタリだ。

 さらに、大自然の山道を走るMTBでは、下り坂を攻略する楽しみが大きいが、上り坂で苦労をする。電動化すれば、上りで電気の力を借り、下りを思う存分楽しめる。

市民権を得られるか?

 ただし、電動アシストのスポーツサイクルが日本市場に受け入れられるかどうかは、まだ不透明だ。 最初のハードルは価格。量産が進んだママチャリの電動アシスト車は中心価格帯が8万~15万円だが、スポーツタイプはまだ生産数が少ないこともあり、30万円前後かそれ以上に跳ね上がるため、購入のハードルが高い。

 また、未舗装の山道を楽しむMTBについては、日本では自転車を楽しめる山道そのものが少なく、ここ15年ほどで市場が著しく縮小してしまった。電動化してもすぐに盛り上がるとは考えにくく、地道な需要開拓が求められる。

 さらに、欧州より制約が大きい日本特有の法規制がマイナスに働く可能性もある。道路交通法では、電動アシスト車の動力補助は、時速10キロまでは最大でペダルを踏む力の2倍まで。10キロを超えると補助力が徐々に減少し、24キロでゼロになるよう定められている。つまり、発進時は力強いが、速度が上がるにつれてアシスト力が小さくなり、高速走行を楽しむには不向きだ。道路の舗装状態がよくスピードが出やすい日本の交通環境では、メリットが小さいともいえる。

 こうした国内事情から、当面はシティースポーツタイプの電動アシスト車が増えると見込まれる。今後、本格的に普及して市民権を得られるかどうかは、自転車メーカーや小売店の販売努力に加え、実際に乗車した人たちが楽しいと感じて、口コミなどで波及するかどうかにかかっている。

産経WESTより)

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