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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<234>ジロ・デ・イタリア2018は史上初のイスラエル開幕 フルームの参加宣言に沸く

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 11月29日にイタリア・ミラノにて、ジロ・デ・イタリア2018のコースプレゼンテーションが行われた。第101回大会の開幕地は、ヨーロッパ圏外としては初となるイスラエル・エルサレム。3日間をイスラエルで過ごしたのち、イタリア本土での戦いへと移っていく。そして、今年ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでの2冠を達成したクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が自らの口で、ジロ次回大会への参加を宣言。開幕前はもちろん、期間中、さらには閉幕後にわたって話題に事欠かない大会となりそうだ。

イタリア・ミラノで行われたジロ・デ・イタリア2018コースプレゼンテーションに出席した4名。左からアルベルト・コンタドール、ファビオ・アル、ヴィンチェンツォ・ニーバリ、トム・デュムラン Photo: LaPresse/Fabio Ferrari

フルームが参加宣言

 プレゼンテーションには、今年の覇者であるトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)、個人総合3位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、今年はけがのため無念の欠場となったファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム)、そして今シーズン限りで現役を引退したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が並んだ。

次々と明らかになるコースに真剣な視線を送る選手たち Photo: LaPresse -Stefano De Grandis

 次々と明らかになるコースを見守った4人は、それぞれに好印象を受けたよう。出場するとなれば2連覇がかかるデュムランは、「個人タイムトライアル(TT)での開幕は大歓迎。マリアローザを手にするチャンスも大きくなりそう」と笑顔。ニーバリはイタリア本土最初の舞台が地元シチリア島になることを喜び、「地元のみんなの声援を受けて走ることができる」と述べる。

 アルは「山岳で大きな差がつく可能性がある」と、上級山岳ステージの難易度を指摘。一方でコンタドールは、エルサレムでの個人TTコースがテクニカルであることを強調した。

会場内にクリストファー・フルームのビデオメッセージが上映され、ジロ2018への出場を宣言した Photo: LaPresse/Fabio Ferrari

 さらに、プレゼンテーション内でフルームによるビデオメッセージが上映され、2018年開催の第101回大会への出場を宣言した。「チームと複数回にわたる話し合いの末に決定したことだ」とし、2018年シーズンはジロとツールの2冠「ダブル・ツール」を狙うことも表明。今シーズン、ツールとブエルタで2冠を達成したが、レース間の調整方法や各レースでの力の配分など、今回の成功から学んだことが多く、それらを今度は来年のジロとツールにぶつけたいとしている。仮にジロを制するとなれば、シーズンを越えてのグランツール3連勝。さらにその後のツールも制すれば前人未到のグランツール4連勝ということになる。

 フルームのジロ参戦は、2010年以来3度目。初出場の2009年は個人総合35位、2010年は第19ステージの山岳でチームカーにつかまって上ったとして失格処分になっている。

 フルームの参加宣言を受けて、プレゼンテーションに臨んでいたコンタドール以外の3選手は、一様に「最大のライバルになる」と口をそろえた。

 なお、現時点でジロへの参戦意思を固めているのはフルームのほかに、アル(来シーズンはUAE・チーム エミレーツ)、エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)、ルイ・メインティス(南アフリカ、UAE・チーム エミレーツ、来シーズンはチーム ディメンションデータ)あたり。また、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)も有力視されている。このプレゼンテーションに臨んでいたデュムランやニーバリは明言を避けているが、欠場の可能性が高いと見られている。

総合争いはイタリア入国後

ジロ・デ・イタリア2018 ルートマップ ©︎RCS

 コースを見ていこう。まず、9月に発表された通り第101回大会の開幕は、イスラエル東部・パレスチナ自治政府の都市エルサレム。過去、イタリア国外でのジロ開幕は12回あったが、ヨーロッパを飛び出しての幕開けはこれが史上初。イスラエルはスポーツ界においては、多くの競技でヨーロッパの連盟に籍を置いているが、地理的な見方としては中東にあたる。

 第1ステージは、9.7kmの個人タイムトライアル。細かなアップダウンがあるものの、それ以上にいくつものコーナーが選手たちの気を休ませない。バイクテクニックも重要となりそうだ。第2ステージ、第3ステージはともにスプリンターが主役候補。第1ステージで好スタートを切ったスプリンターが、この2日間でマリアローザを奪うシチュエーションが発生するかもしれない。

ジロ・デ・イタリア2018第6ステージ ルートマップ ©︎RCS

 移動日を1日挟んで空路で向かうはシチリア島。第4ステージからイタリア本土での戦いへと移る。いきなり中級山岳が連続し、同島最終日の第6ステージは名所・エトナ火山の頂上フィニッシュ。ここで総合争いに大きな動きが起こりそうだ。なお、チームプレゼンテーションでニーバリが「今までとは異なるルートで頂上へと向かう」と説明しており、初めて採用される上りが選手たちを待ち受けるものとみられる。

 第7ステージからは、イタリア半島を北上。第8ステージ、第9ステージと連続して山頂フィニッシュとなる。難易度的には中級山岳扱いになっているが、フィニッシュに近づくにつれて急勾配となり、レース距離から見てもクライマー向き。ここまでに総合争いの有資格者が見えてくる可能性は大いにある。

ジロ・デ・イタリア2018第8ステージ ルートマップ ©︎RCS
ジロ・デ・イタリア2018第9ステージ ルートマップ ©︎RCS

 2回目の休息日を経て、第10ステージ以降も中級山岳ステージが連続。久々のスプリントステージは、第12ステージ。モータースポーツでおなじみの「イモラ・サーキット」にフィニッシュ。続く第13ステージもスプリンターのための1日だ。

ジロ・デ・イタリア2018第14ステージ ルートマップ ©︎RCS

 実質第2週のヤマ場は、第14ステージ。名峰モンテ・ゾンコランの頂上フィニッシュが選手たちをふるいにかける。ゾンコランまでに上級レベルのカテゴリー山岳を4つ越えたのち、登坂距離10km、最大勾配22%の上りへと挑む。続く第15ステージもドロミテ山脈の山々をめぐるステージ。この2日間でマリアローザ争いは両手で数えられるほどに絞られているに違いない。

個人TTと未舗装区間、難関山岳が勝負を分ける

 最終週のスタートとなる第16ステージは、34.5kmの個人TT。ここで総合順位にシャッフルが起こるか。TTが得意かどうかによって、分単位のタイム差がつくことも考えられ、総合争いにおける重要なステージとなる。

 第18ステージからは、運命の頂上フィニッシュ3連戦。プラート・ネヴォーゾの頂上に始まり、第19ステージは中盤に今大会の最高標高地点「チーマ・コッピ」が設けられるフィネストーレ峠(標高2178m)を通過。未舗装区間でもある難所を通過し、最後はバルドネッキアにフィニッシュ。そして、事実上の最終決戦となる第20ステージは、2つの山を経て、チェルヴィーナの頂上へとフィニッシュ。このステージを終えた時点で、個人総合首位に立っている選手が、マリアローザ獲得を濃厚とする。

ジロ・デ・イタリア2018第19ステージ ルートマップ ©︎RCS
ジロ・デ・イタリア2018第20ステージ ルートマップ ©︎RCS

 最終日は大急ぎで首都・ローマへと移動し、市街地周回による第21ステージが行われる。1周11.8kmを10周する平坦路でのレースとあり、総合順位を動かそうと躍起になる選手は現れないと見られる。3週間の戦いをねぎらい合いながら、選手たちは凱旋レースを行う。

ジロ・デ・イタリア2018

5月4日 第1ステージ エルサレム~エルサレム 9.7km個人TT ★★★
5月5日 第2ステージ ハイファ~テルアビブ 167km ★
5月6日 第3ステージ ベエルシェバ~エイラート 229km ★
5月7日 休息日(移動日)
5月8日 第4ステージ カターニア~カルタジローネ 191km ★★★
5月9日 第5ステージ アグリジェント~サンタ・ニンファ 152km ★★★
5月10日 第6ステージ カルタニッセッタ~エトナ 163km ★★★★
5月11日 第7ステージ ピッツォ~プラーイア・ア・マーレ 159km ★
5月12日 第8ステージ プラーイア・ア・マーレ~モンテヴェルジネ・ディ・メルコリアーノ 208km ★★★
5月13日 第9ステージ ペスコ・サンニータ~グラン・サッソ・ディターリア 224km ★★★
5月14日 休息日
5月15日 第10ステージ ペンネ~グアルド・タディーノ 239km ★★★
5月16日 第11ステージ アッシジ~オージモ 156km ★★★
5月17日 第12ステージ オージモ~イモラ 213km ★★
5月18日 第13ステージ フェラーラ~ネルヴェーザ・デッラ・バッターリア 180km ★★
5月19日 第14ステージ サン・ヴィート・アル・タリアメント~モンテ・ゾンコラン 181km ★★★★★
5月20日 第15ステージ トルメッツォ~サッパーダ 176km ★★★★
5月21日 休息日
5月22日 第16ステージ トレント~ロヴェレート 34.5km個人TT ★★★
5月23日 第17ステージ リーヴァ・デル・ガルダ~イゼーオ 155km ★★
5月24日 第18ステージ アッビアテグラッソ~プラート・ネヴォソ 196km ★★★★
5月25日 第19ステージ ヴェナリア宮殿~バルドネッキア 181km ★★★★★
5月26日 第20ステージ スーザ~チェルヴィニア 214km ★★★★★
5月27日 第21ステージ ローマ~ローマ 118km ★

総走行距離 3546.2km(ステージ平均168.9km)
※星の数は主催者発表の難易度

今週の爆走ライダー−ファビオ・サバティーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ここ数年はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、現チーム ディメンションデータ)、マルセル・キッテル(ドイツ)といったチームのエーススプリンターを支えるべく、リードアウトトレインを統率。2人が勝利を量産した陰には、サバティーニの安定した走りがあった。

数々のビッグスプリンターを率いてきたファビオ・サバティーニ(右)。今年のツール・ド・フランスでもマルセル・キッテル(左)を勝利に導いた =ツール・ド・フランス2017第2ステージ、2017年7月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな彼も今年の夏は悩んだ。自分が思っていた以上に「必要としてくれる人たち」が多かったからだ。特に、カチューシャ・アルペシンへの移籍を決意したキッテルからの誘いには心が揺らいだ。「ファビオがいれば何が起こっても不安がない」というほどに信頼を寄せてくれるエースからのオファーに、本当は断る理由はなかった。

 一方で、新加入するエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チーム スカイ)の存在が気になったことも事実。ツール出場中に、ヴィヴィアーニが来季合流する可能性を聞かされ、驚きとともに自らの使命を再認識することとなる。リクイガス時代の2014年以来のホットライン復活を決断した。

 一時は現チームを離れる可能性があったとはいえ、「ここは愛すべき家族」と表現し、居心地の良さを感じている。だから、今シーズン精神的に苦しんだヴィヴィアーニを温かく迎えたいと考えているという。そして目指すところは、来年のジロ。イタリア人である以上、ターゲットにしなければならないレースでもある。

 「どう機能するか自分でも楽しみ」というヴィヴィアーニとのコンビネーション。今度のジロは平坦ステージが少ないが、そんな時こそサバティーニのような選手が、数少ないスプリントチャンスをエースにもたらすのだろう。経験に裏打ちされた走りは決して嘘をつかない。

リザルトに現れない職人としての働きに徹するファビオ・サバティーニ。来シーズンはエリア・ヴィヴィアーニを支えることになる =アブダビ・ツアー2017第2ステージ、2017年2月24日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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