国府田正司の「もう1つのツール」 stage11全26都府県、2564kmを走破! 「落し物」で有終の美を飾る

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 ネットカフェを巡る日本縦断自転車旅行「ツール・ド・ネットカフェ2012」に挑戦してきた“コーチャン”こと国府田正司さんによる連載。北は岩手から南は鹿児島まで、今年6月のスタートから26都府県を巡ってきた。今回、四国で最終ステージを迎えた。

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 これまでで最長ルートとなる11月28日は、香川県高松市から愛媛県松山市まで約160km。祈りがつうじたのか、前日苦しめられた強風はだいぶ収束していた。

愛媛県松山市で「坊ちゃん」になってみた。マドンナがいないのはご愛嬌愛媛県松山市で「坊ちゃん」になってみた。マドンナがいないのはご愛嬌

 しかし、一筋縄には行かない。信号待ち、食事、休憩、観光、ルートミスなどのちょっとした時間を含めたすべてがツール・ド・ネットカフェである。それに加えて旅の前半では、よく忘れ物をしていたっけ…。

 半年の間にわかってきたテンポをもとに走行時間を計算すると、次の営業先までは、8時に出発すれば余裕で到着できる…はずだった。出発前にブログの修正やら何やらやっていたせいで、ホテルをチェックアウトしたのが8時30分。自転車を見ると後輪がペチャンコ。夜の間に完全に空気が抜けてしまったらしい。やれやれ。

香川県高松市から愛媛県松山市までの道中香川県高松市から愛媛県松山市までの道中

 30分程度なら問題ないが、予定より1時間以上遅れてスタート。マージンが無くなって、カツカツな状態だったものの、風が弱いためペースは維持しやすい。国道11号線をひた走る。

 四国と言えば“八十八ヶ所巡り”だ。私はいわゆる「逆打ち」(反時計回り)ルートをとっているため、「順打ち」(時計回り)で巡るお遍路さんとたびたびすれ違った。年配の方だけでなく若い女性や外国の方がひとりで巡っている姿が興味深く、頭の中で想像を膨らませる。

 要は“暇”なのである。

 私は、あまりロングライドが得意ではない。ブルベ(ノーサポートの長距離サイクリング)も200kmが限界である。途中で飽きてしまい、集中力が持たないのだ。

 そんな状態なので、国道11号線を走るだけのルートをミスしようがないのに、何故か道を外れ、タイムロスをしてしまった。しかも、昼過ぎからまた風が強くなってきた。道程はやっと半分ほど。気合を入れ直す。

明治の風情漂う道後温泉本館。長距離走行の疲労もしっかり癒された 明治の風情漂う道後温泉本館。長距離走行の疲労もしっかり癒された

 松山市の手前に桜三里(さくらさんり)という山がある。勾配4~5%とそれほどの山道でもないが、約10kmをだらだら上り続ける。ざっと計算すると、ちょうど日が暮れ始めたころ山頂だ。そこからは、松山市内までずっと下りなので、ガンガンペースを上げる。気分は、ステージ優勝を狙い、山岳で単独逃げ切りを決めようとする選手! …しかし、営業先に到着したのは予定より1時間遅れてしまったため、逃げは失敗だったと言わざるをえない。

 160kmしっかりと走った疲れを、道後温泉の湯が癒す。翌日は、いよいよ最終日である。

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山頂を過ぎたあたりから雨粒が落ち始めた山頂を過ぎたあたりから雨粒が落ち始めた

 11月29日、愛媛県松山市から高知県高知市への約140km。国道33号線を南下していくと30分もしないうちに三坂峠に差し掛かる。標高720m、頂上まで12.2kmの峠だ。

 天気予報では午後から雨とのことだったので、降り出す前に山を越えたいところ。道後温泉のおかげか、脚は軽くクルクルと回る。小一時間かけて上りきった。

 頂上からは、ウィンドブレーカーを着て麓を目指す。しかし、スキー場もある久万(くま)高原。気温表示板が「7℃」であっても、下りで風を切れば凍えるほど寒い。しかも、ポツポツと雨粒が落ち始めていた。

 6月にスタートしたツール・ド・ネットカフェでは、夏用ジャージしか制作していない。厚手のインナーを着ているものの、たまらずコンビニへ立ち寄り、雨具を着こんだ。幸い雨は本降りになることなく直ぐに止んだため、それ以上身体が冷えることはなかった。

 峻険な渓谷の景色を楽しみながら、高知市を目指し走る。細かいアップダウンを繰り返すワインディングロードは、楽しい。こういう道ならば、長距離でも集中力を保ったまま走ることができる。

財布を落とし、補給ができなくなった時に救ってくれたのが、この愛媛みかん財布を落とし、補給ができなくなった時に救ってくれたのが、この愛媛みかん

 
下り切り、防寒用の雨具も必要なくなったため、バッグにしまう。ついでにバッグの中を整理していて、愕然。財布が見当たらない! どこかで落としたとして、考えられるのは先に立ち寄ったコンビニしかない。すぐさま電話番号を調べ、問い合わせると…ありました。

 私が着替えていたであろう場所に落ちていた財布。ここまで「次のコンビニで補給を」と思いながら、50kmも走ってきてしまっている。無事であったことに感謝しつつ、ひとまず預かってもらうことにした。きっと私の背中はどんよりとした影に覆われていたに違いない。

 悪いことは重なるものである。高知市は市内を路面電車が走っているのだが、交差点を曲がる際、そのレールにタイヤがハマり、落車してしまったのだ。スピードは出ておらず、立ちゴケに近い感じだったため、被害はなかったが、最後の最後になんとも情けない。

 その後は、これ以上“落ち”がつかないように、慎重に最後の店を目指した。

落車をレールのせいにしていたら、路面電車が謝ってくれた落車をレールのせいにしていたら、路面電車が謝ってくれた

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 初めての本格的な自転車旅。しかも、営業としての仕事をこなしながらのツーリング。計2563.66kmの道のり(※)は正直キツかったが、終わってみれば楽しかった。サイクリストなら、必ずわかるであろうこの感覚「やっぱり自転車が好き!」。

※NC Japanでは、「東日本大震災みやぎこども育英募金」(宮城県)をつうじて「走行距離×300円=約77万円」を寄付する。

何はともあれ、無事終了できてよかった! 名物の鰹のたたきとクエ鍋で自分にご褒美何はともあれ、無事終了できてよかった! 名物の鰹のたたきとクエ鍋で自分にご褒美

 ツーリングは、自由なペースで旅をしても、時間に追われていても、それぞれに楽しい。ひとりでもみんなでも、プライベートでも仕事でも。

 さらに言えば、ツーリング、ポタリング、トレーニング、レース…どんな乗り方でも、自転車は楽しい。そこに道があって、自転車にまたがる。ペダルを回しさえすれば、前へ、未来へ進む。

 最近マンネリ気味なあなた。たまには無茶な自転車旅を企画して、ふらり出かけてみるのもいいのでは?

ツール・ド・ネットカフェ2012

stage10・いよいよ旅の最終行程 徳島ラーメン・讃岐うどんを食べて強風にめげずに進め

stage9・九州を縦断 金木犀香る道で自転車旅ならではの出会い

stage8・本州を“ほとんど”縦断! 歴史の舞台あり、うまいもんありの瀬戸内

stage7・水を摂らずに足が攣り… 100円ラーメンを補給し瀬戸内を西へ

stage6・福島から岩手へ 被災地を走り抜ける意味

stage5・旅の途中で若者たちを“救援” 夏本番、自転車旅も真っ盛り

stage4・人力で長距離を移動するって素晴らしい! 忘れ癖は継続中…

stage3・ヘルメットを忘れ、足に痛み…トラブルを乗り越えて

stage2・一緒に走ってくれた仲間が、激坂へと…

stage1・箱根で出会った「茄子男」にもらったパワー

「ツール ド ネットカフェ2012」公式サイト

国府田正司国府田正司(こうだ まさし)
2008年よりダイエットのためロードバイクに乗り始め、現在では実業団レースなどへ積極的に出場。オンラインゲーム会社「NC Japan」社員。日本全国のインターネット・カフェを巡る企画を思いつき、単身、自転車旅に出る。好きなゲームは「タワー オブ アイオン」、好きな補給食はアンパン。特技は愛娘と特訓した「スマイルプリキュア!」ダンス。1977年生まれ、栃木県在住。

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