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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<233>若返りで新たなチームカラーに クイックステップフロアーズ 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 新シーズンに向けたトップチームの戦力分析を行う「2018年シーズン展望」。今回はクイックステップフロアーズを見ていきたい。今年はスプリントやワンデーレースを中心に、チーム最多勝となる56勝を挙げた。これまで長きにわたって中心選手だったトム・ボーネン(ベルギー)が引退、エーススプリンターだったマルセル・キッテル(ドイツ)が移籍と、来シーズンは新たなチームカラーとなることが予想されている。将来性豊かな選手たちを中心に、戦力の充実を図るチームの姿を見てみよう。

若返りを図るクイックステップフロアーズの代表格となるフェルナンド・ガビリア =ジロ・デ・イタリア2017第5ステージ、2017年5月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

ガビリアが初のツール出場へ ヴィヴィアーニとの棲み分けも注目

 今年チームが挙げた56勝のうち、ともにスプリンターのキッテルとフェルナンド・ガビリア(コロンビア)がそれぞれ14勝をマーク。チーム勝利の半数を2人で挙げたことになる。個人でも今シーズンの最多勝タイとなり、その勝負強さとフィニッシュ前での圧倒的なスピードは見る者を魅了し続ける。

ジロ・デ・イタリアでポイント賞を獲得したフェルナンド・ガビリア。2018年はツール・ド・フランスでのポイント賞獲得を目指す =ジロ・デ・イタリア2017第21ステージ、2017年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中、チームオーナーのパトリック・ルフェーブル氏は、所属選手の若返りを敢行。伝統的に狙い続けているツール・ド・フランスでのスプリント勝利を、23歳のガビリアに託すことを宣言。やはりツールへのこだわりを見せるキッテルは新たな環境へ向かうことを決意し、このストーブリーグにおけるスプリンターの玉突き移籍が発生した。

 これまでトラックとロードを並行して走ってきたガビリアは、今年からロードに集中。初のグランツールとなったジロ・デ・イタリアでは期待通りの走りを見せ、ステージ4勝。大会後半の山岳も上りきり、3週間を完走するとともにポイント賞を獲得した。ジロでは総合エースのボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)との共闘が求められたが、来年のツールではより自身の走りに特化し、ポイント賞のマイヨヴェールを狙いたいところ。ルヴェーブル氏の狙いもそこにあるようだ。

 また、ガビリアには3月のミラノ~サンレモ(イタリア)制覇も期待される。過去2回の出場では、昨年が最終局面直前での落車、今年は5位と、優勝争いに残りながらあと一歩で頂点を逃している。300km近い距離や、レース終盤の上りは問題なくクリアできており、アシスト陣との連携やスプリントに入る際のポジショニング次第といったところ。

2018年シーズンからのクイックステップフロアーズ加入が決まっているエリア・ヴィヴィアーニ =ツール・ド・ロマンディ2017第3ステージ、2017年4月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 来シーズンは、これまでライバルだったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)がチーム スカイから加入。両者の棲み分けが興味深いところだが、ともに平坦ステージでは勝利量産を見込める選手たちだけに、2人を同じレースにラインナップさせることはそう多くはないだろう。少なくとも、グランツールに関してはジロは地元となるヴィヴィアーニに任せることになるはずだ。

春のクラシックシーズンは一大勢力になるか

 クイックステップフロアーズを語るうえで、外すことができないのが春のクラシック。パヴェ(石畳)が舞台となる北のクラシック、そして丘陵地帯での勝負となるアルデンヌクラシックと、計算できる選手が多数そろう。

ドワーズ・ドアー・フラーンデレンで独走勝利を挙げたイヴ・ランパールト =2017年3月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 これまで、北のクラシックではボーネンでの勝利に固執するあまり、勝負どころでライバルを前に行かせてしまうケースも多かったが、一方で誰でも、そしてどこからでも仕掛けられる強みを持つのも事実。2014年のパリ~ルーベで独走勝利を挙げたニキ・テルプストラ(オランダ)、今年を含む過去2回パリ~ルーベ2位を経験するズデニェック・シュティバル(チェコ)といった経験豊富な選手がチームリーダーを務めることになる。また、今シーズンUCIワールドツアーに昇格したドワーズ・ドアー・フラーンデレン(ベルギー)ではイヴ・ランパールト(ベルギー)が独走で勝利を挙げるなど、次なるタレントも現れている。

ツール・デ・フランドルで驚異的な逃げ切り勝利を挙げたフィリップ・ジルベール =2017年4月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ベテランのフィリップ・ジルベール(ベルギー)の存在も忘れてはならない。念願だった自国のビッグチーム入りを果たした今年、ツール・デ・フランドル(ベルギー)で55kmに及ぶ伝説の逃げ切り勝利。その後のアムステルゴールドレースも制し、彼にとっての本番でもある春のシーズンは絶好調。アムステルで落車し、手首を骨折した関係からその後のアルデンヌ2連戦の欠場を余儀なくされたが、トラブルさえなければ来年は北のクラシックからアルデンヌクラシックまで幅広く走ることになるだろう。35歳はまだまだやる気に満ちている。

アルデンヌクラシックでの活躍に期待が高まるジュリアン・アラフィリップ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第8ステージ、2017年8月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのジルベール以上にアルデンヌでの走りに期待が膨らむのが25歳のジュリアン・アラフィリップ(フランス)。2015年のラ・フレーシュ・ワロンヌとリエージュ~バストーニュ~リエージュでノーマークからの連続2位で彗星のごとく現れて以来、ワンデーレースから1週間のステージレースまで上位進出の常連となった。

 今年も3月のパリ~ニース(フランス)で3日間マイヨジョーヌを着続け、その後のミラノ~サンレモでも3位と上々のシーズン序盤だったが、その後のブエルタ・アル・パイス・バスコ(スペイン)で落車し膝を負傷。手術を必要とするほどの大けがで、アルデンヌクラシックは全休、さらにはツールも欠場せざるを得なかった。それでも、復帰直後に臨んだブエルタ・ア・エスパーニャでステージ1勝と華麗に復活。イル・ロンバルディア(イタリア)でも2位と、実力通りの走りを見せた。来年のアルデンヌは雪辱戦となる。

ユンゲルスら総合力のある選手たちも控える

 チームのお家芸であるクラシックレースやスプリントもさることながら、グランツールの総合を狙えるタイプの選手も控えており、その戦いぶりが楽しみ。

ジロ・デ・イタリアとの相性が良いボブ・ユンゲルス。マリアローザ着用実績もある =ジロ・デ・イタリア2017第5ステージ、2017年5月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロで昨年総合6位、今年は総合8位と、2度のトップ10入りを果たしているユンゲルスは、来季も相性のよいジロで上位を狙うことになりそう。この2回ではいずれも大会途中にマリアローザに袖を通しており、一時は総合優勝争いに加わっている。かたや、どちらも大会後半にバッドデイを迎え、重要な山岳ステージで崩れており、さらなる上位進出を目指すうえでは遅れを最小限にとどめる必要性がある。11月29日にコースプレゼンテーションが行われるが、それを受けてのリアクションが注目される。

 今年のジロでユンゲルスをアシストしたローレンス・デプルス(ベルギー)も総合力の高い選手。将来性を見込まれて2016年のリオデジャネイロ五輪ロード代表になるなど、関係者からの期待も大きい。来シーズンはどこかのタイミングで総合エースを任される機会もありそうだ。

 新加入選手は7人。ヴィヴィアーニや、カチューシャ・アルペシンから加わるミケル・モルコフ(デンマーク)といった実績のある選手のほか、今年のリエージュ~バストーニュ~リエージュU23(23歳未満)で2位のジェームス・ノックス(イギリス)、UCIアメリカツアーで活躍したホナタン・ナルバエス(エクアドル)といった将来を嘱望される選手たちを獲得している。既存のメンバーとの融合がどのようにして図られていくのかも見ものだ。

 なお、チームは11月21日に来シーズン所属する27選手を正式発表。1月9日にスペイン・カルペでチームプレゼンテーションを行う。

クイックステップフロアーズ 2017-2018 選手動向

【残留】
ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
エロス・カペッキ(イタリア)
レミ・カヴァニャ(フランス)
ローレンス・デプルス(ベルギー)
ティム・デクレルク(ベルギー)
ドリース・デヴェニンス(ベルギー)
フェルナンド・ガビリア(コロンビア)
フィリップ・ジルベール(ベルギー)
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)
イーリョ・ケイセ(ベルギー)
イヴ・ランパールト(ベルギー)
ダヴィデ・マルティネッリ(イタリア)
エンリク・マス(スペイン)
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)
ファビオ・サバティーニ(イタリア)
マキシミリアン・シャッハマン(ドイツ)
ピーテル・セリー(ベルギー)
ズデニェック・シュティバル(チェコ)
ニキ・テルプストラ(オランダ)
ペトル・ヴァコッチ(チェコ)

【加入】
アルバロ・ホデグ(コロンビア) ←エキポ・デ・シクリスモ・コルデポルテス-ゼヌ
ファビオ・ヤコブセン(オランダ) ←SEGレーシングアカデミー
ジェームス・ノックス(イギリス) ←チーム ウィギンス
ミケル・モルコフ(デンマーク) ←カチューシャ・アルペシン
ホナタン・ナルバエス(エクアドル) ←アクセオンヘーゲンズバーマン
フロリアン・セネシャル(フランス) ←コフィディス ソリュシオンクレディ
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア) ←チーム スカイ

【退団】
ジャック・バウアー(ニュージーランド) →オリカ・スコット
トム・ボーネン(ベルギー) →引退
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア) →トレック・セガフレード
ダビ・デラクルス(スペイン) →チーム スカイ
マルセル・キッテル(ドイツ) →カチューシャ・アルペシン
ダニエル・マーティン(アイルランド) →UAE・チーム エミレーツ
マッテーオ・トレンティン(イタリア) →オリカ・スコット
マルティン・ヴェリトス(スロバキア) →引退
ジュリアン・ヴェルモーテ(ベルギー) →チーム ディメンションデータ

今週の爆走ライダー−ドリース・デヴェニンス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 20歳代半ばの選手たちが来シーズンは中心になるであろうチームにあって、34歳のデヴェニンスは4番目の年長者。若い選手たちの精神的支柱になることが求められる立場にある。

ジロ・デ・イタリア第4ステージを走るドリース・デヴェニンス(右から2人目)。ボブ・ユンゲルス(右から3人目)のアシストに従事した =2017年5月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 一時期はエースとして走りたくて、地元ベルギーのチームを飛び出したこともあった。2015年にUCIワールドチーム昇格を果たし、戦力補強に動いていたイアム サイクリングに合流してからは、ステージレースでの総合優勝やワンデーレースのトップ10入りなど、自他ともに満足する走りができていた。だから本当はもう少しエースとして走っていたかったけれど、チーム消滅が決まり、そうも言っていられなくなってしまった。

 そんな時に手を差し伸べたのが、古巣のオーナーであるルフェーブル氏だった。氏にして「どんな時でもリスペクトされる人物であり、その人柄を忘れたことはなかった」と高く評価される人間性。かつてのようにアシストの立ち位置に戻ってしまったが、そう言われたら復帰しない手はなかった。

 ジャイアント・アルペシン(現チーム サンウェブ)時代はキッテルを、現チームではユンゲルスをアシストするなど、平坦でも起伏のあるコースでも堅実に仕事をする。来年は誰のアシストに従事するのか、そのあたりにも注目してみるとおもしろそうだ。

 チームの勝利量産の陰に、こうした「縁の下の力持ち」がいることも決して見逃してはならないのである。

人間性も高く評価されるドリース・デヴェニンス。自分の勝利を狙って走る機会は減ったが、堅実なアシストぶりでチームメートの信頼を集める =ジロ・デ・イタリア第15ステージ、2017年5月21日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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