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つれづれイタリア〜ノ<106>アシストに生きるNIPPOのマランゴーニ「私の経験を注ぎ日本人選手をオリンピックに」

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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イタリアの英雄的選手、マルコ・パンターニ =ジロ・デ・イタリア第19ステージ、2000年6月2日 Photo: Yuzuru SUNADA

 自転車競技は終わりなき戦いです。レースの世界に生き残るために、どの選手も想像を超える厳しい練習に励み、そのなかで歴史に名を残す選手はごく一握りです。マルコ・パンターニ、マリオ・チポッリーニ、クラウディオ・キャプーチ、ミゲル・インデュライン、アンディ・シュレック、イヴァン・バッソ、カデル・エヴァンス、ファビアン・カンチェラーラ、トム・ボーネン、アルベルト・コンタドールなど、私の記憶に残る名前はそんなに多くない。

 チャンピオンと言われている選手たちは、自らの強さでレースに勝てるのですが、無数にいるアシストたちの活躍がなければ、ゴールラインにさえたどりつけません。サッカーや野球、バスケットボールとは異なり、チームプレーでありながら自転車競技の宿命は、勝つ人は一人だけです。2位、3位でさえ記憶に残らない。

 10月に行われたジャパンカップサイクルロードレースで、イタリアのUCIプロコンチネンタルチーム、NIPPO・ヴィーニファンティーニを手伝うことができたことをきっかけに、ある選手に注目しました。今シーズン初めに、キャノンデール・ドラパックから加入したアラン・マランゴーニ(イタリア)です。

NIPPO・ヴィーニファンティーニのアラン・マランゴーニ選手 Photo: Marco FAVARO

 昨年のジャパンカップでダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア)の優勝に貢献し、今年はマルコ・カノラ選手の完全優勝にも貢献した選手です。彼は自身の優勝という欲望を捨て、アシストとしての仕事に専念しています。スポットライトから離れ、地道にキャプテンのために働く道を選びました。アシストとして物足りなくないのか、率直な意見を聞いて見ました。出てきたのは、意外な答えでした。最後までお付き合いください。

優勝よりも「自転車に乗れる喜び」

――ジャパンカップ完全優勝おめでとうございます。昨年はヴィッレッラ選手の優勝に貢献しましたが、今年はカノラ選手が優勝を果たしました。今年の優勝はどのようにして生まれたんでしょうか。

チームの役割を果たし逃げに乗ったアラン・マランゴーニ =ミラノ~サンレモ、2017年3月18日 Photo: Yuzuru SUNADA

マランゴーニ:今年、カノラ選手は調子がよく、土曜日に行われたクリテリウムの優勝も彼の調子のよさを物語っています。チームの中で優勝に一番近い男だったので、チームが一丸となって彼が優勝できるように走りました。レース前のミーティングでは、逃げ集団が発生した時には私が飛び出すように指示されました。予想通り、レースの前半は逃げ集団に入ることができたので、チームは逃げを追う負担から免れることができました。結果として脚を休めていたチームメイトは、レース後半もカノラを見事に守りぬくことができました。

――マランゴーニ選手のような大柄な選手にとって、ジャパンカップのコースはきついレースですか?

マランゴーニ:確かに上りが多いコースですが、脚を回復させる区間もあります。コースはツアー・オブ・ジャパンのステージ構成に似ているので、十分に準備ができていました。チームに貢献できると、わかっていました。

――ジャパンカップのようなコースは改善すべきところがありますか。

マランゴーニ:いいえ。よくできているコースだと思います。周回レースは見ている人にとっては興奮を与え、選手を何回も見ることができるし、レース展開の変化が楽しめます。

――過去の話に戻りますと、2006年にタイムトライアルU23ナショナルチャンピオンとして成績を残し、同年に世界選手権にも出場。それ以降、アシストとして活躍しています。人々はキャンプテンの活躍にだけ注目をし、アシストの活躍にあまり目が向けられません。どのように自分の役割を考えていますか。

マランゴーニ:そうですね。今までイヴァン・バッソやエリア・ヴィヴィアーニのアシストとして働きましたし、今年はカノラ選手の優勝に5回も貢献しました。アシストという仕事は、簡単ではありません。優勝に強くこだわる選手にとって、精神的につらいことです。キャプテン格からアシストになった選手の多くは自転車から離れてしまいました。私はプロになってから、すぐにアシストに専念しました。犠牲心が要求されますし、逃げ集団にはいるなり、最初からきつい仕事をします。

 自転車競技では、レースで輝ける人はほんのわずかです。でも、個人的な優勝よりも自転車に乗れることに喜びを感じています。レースの世界に長くいたいのであれば、まずは与えられた仕事をきちんとやり遂げないとダメです。9年前にプロになりましたが、個人優勝はないものの、そこまでこだわりません。

――マランゴーニ選手は日本人と比べて大柄ですが、大きい選手はジロ・ディタリアのようなグランツールに参加するのに不利ですか。

キャノンデール プロサイクリングチーム時代に、アシストとしてチームをけん引したアラン・マランゴーニ =ジロ・ディタリア第20ステージ、2014年5月31日 Photo: Yuzuru SUNADA

マランゴーニ:そんなことはないです。まずはグランツールに挑む選手は極限まで体を絞り、残るのが筋肉と皮だけです。私のような体格も問題はありません。参加した全てのグランツールで完走することができました。アルプスの長いステージの場合、エネルギーをセーブしなければなりませんが、ほとんどの場合は逃げ集団に入り、チームを守ることができました。

――日本人選手はどのような印象ですか。

マランゴーニ:日本人選手はとても礼儀正しく、イタリア人選手に対し尊敬を払っています。我々が日本人に対し悪ふざけしているように見えることもますが、これは距離を縮めるための手段で、経験をいかに伝えることが重要です。これは私が感じる大きな責任です。

――あと何年ぐらいプロを続けたいですか?

マランゴーニ:まず、目標としているのは2020年です。NIPPO・ヴィニファンティーニが一つの目標としている東京オリンピックの年まで走り続けたいです。私がオリンピックに参加するのではなく、私の経験を多くの日本人選手に注ぎ、2~3人が出場できればとても嬉しいです。その後は何も決めていません。できることなら長く走り続けたいです。

経験を多くの日本人選手に伝えたいと話したアラン・マランゴーニ Photo: Marco FAVARO
アラン・マランゴーニ

1984年、イタリア・ルーゴ市生まれ、身長185cm。2006年にU23タイムトライアルイタリアナショナルチャンピオン。2009年プロに昇格。リクイガス、キャノンデール・ガーミンなどを経て、2017年よりNIPPO・ヴィーニファンティーニに所属。ジロ・ディタリア5回出場、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに1回出場。

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