熊本地震から復興中も会場にはおもてなしの心井手川直樹が特殊な路面の吉無田高原を完全制覇 「ダウンヒルシリーズ」第6戦

  • 一覧

 マウンテンバイク(MTB)ダウンヒルのシリーズ戦、「DOWNHILL SERIES」(ダウンヒルシリーズ)の今季第6戦が11月11、12日、熊本県御船町の吉無田高原DHコースで開催された。最上位のPROクラスではタイムドセッションでトップタイムをマークした井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)が、本戦でも驚異的な走りを見せ優勝を飾った。 (SL MEDIA/平野志磨子)

本戦、難コーナーのイン側ギリギリを飛んでいく井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER) ©Hiroyuki NAKAGAWA

取り戻した「いつも通り」の雰囲気

 春先から始まったレースラッシュのMTBシーズンが終わり、ダウンヒルシリーズは3カ月ぶりの開催。これからは、スキー場以外のMTBコースを使ったレースの時期となる。

他のダウンヒルコースとは一線を画する吉無田の全景 ©Hiroyuki NAKAGAWA

 第6戦の会場・吉無田高原がある御船町は1年7カ月前の熊本地震で震度7を観測した地域。昨年は屋根にブルーシートを被った家が立ち並んでいたが、今年は新しい家を建築している光景が目立った。今回のレースも、昨年の「がんばろう熊本!」というテーマから一歩進んだ、いつも通りの吉無田高原らしい雰囲気を取り戻しての開催となり、東は東京、西は宮崎から今年も多くのライダーたちが集まった。

 今大会は、CJ(クップ・ドュ・ジャポン)富士見大会にも協賛をしているFDA(フジドリームエアラインズ)が特別協賛し、エキスパートクラスの優勝者にペア往復航空券が送られることとなった。エリートクラスへの昇格をかけて毎回白熱するエキスパートクラスが、ますます盛り上がった。

コース上部、スタート直後のストレートを走る ©Hiroyuki NAKAGAWA
太陽の光を浴びてススキの中を走る ©Hiroyuki NAKAGAWA

 そんな今回の協賛は、名古屋小牧空港から熊本空港への就航便があること、今年5月からスポーツ用自転車の搭載サービス(事前予約で自転車梱包用の専用ケースを無料貸出)を行っていること、静岡を拠点としカラフルな機体で知られるFDAの「日本中の空をカラフルに」という理念と、ダウンヒルシリーズの地方活性の理念がマッチしたというもの。大会受付ではオリジナルグッズや機内誌が配布された。

 昨年の大雨とは打って変わり、土曜日は朝から快晴。阿蘇の外輪山にある標高約600mの会場は風が強く、阿蘇の外輪山特有のクマザサとススキの草原がサラサラと鳴く。

上部ジャンプを軽やかに飛ぶ福地楽人(Nu Style 吉無田MTBクラブ) ©Hiroyuki NAKAGAWA
吉無田の空をいい色に染めに来た松下壽(S-TRAIL) ©Hiroyuki NAKAGAWA

 火山灰が混ざった真っ黒な土は柔らかく、ローカルライダーは晴れていてもマッドタイヤしか使わないというほどの特殊な路面。今回はレースのために用意された特設コースを使用した。昨年よりもコースは短く、ワンミスが命取りとなる。

過去のDHS全戦に参戦し、皆勤を続ける阿藤寛(Acciarpone bikes) ©Hiroyuki NAKAGAWA

 タイムドセッションは、井手川が43秒704で1位。阿藤寛(Acciarpone bikes)が44秒447で2位、田丸裕(Acciarpone bikes)が45秒915で3位となり、全ライダーでの総合ランキングでは、第3戦でエリート男子クラスに昇格したばかりの河本章(ちゅう吉福山DH部)が47秒418、エキスパート男子クラスでローカルライダーの中学生・井ノ一涼介(吉無田MTBクラブ/nu style/CLEAT)が5位と続いた。

 タイムドセッション後の定番、PROライダーによる参加者交流企画「コースウォーク」は今回も大好評。井手川、阿藤、田丸、井本はじめ(Sram/Santacruz)、けがで休養中の浦上太郎(Transition Airlines/Cleat)らPROライダーが参加し、ライン取りや走り方など参加者たちの質問に答えながら1時間ほどのコースウォークを行った。

夕方、コースウォークを終えて談笑する富田敬子(Acciarpone bikes)と松下壽(S-TRAIL)。メインエリアにはRedBullのイベントカーも登場 ©Hiroyuki NAKAGAWA
コーナーの数は少ないが走行ラインは無数に存在した。国武正一(焚き火スターズ☆彡) ©Hiroyuki NAKAGAWA

新しいバイクのデビューウィン

 日曜日も朝からスッキリと晴れた。風もない。この会場の搬送は「恐竜リフト」と呼ばれる、ハンドルを紐で引っ張るスタイル。(このリフトのファンも多い!)このリフトにはお昼休憩があるため、その間も押し上げでの練習は可能といえどもライダーも必然的に休憩をとる。メインエリアでは毎年出展してくれる、地元の「上田代ばぁば会」や「母ちゃん会」「そらのもり」の飲食ブースエリアが賑わう。カレーや巻き寿司、温かいミネストローネを振る舞ってくれるお母さん方の「毎年レースを楽しみにしてるんですよ!」という言葉もうれしい。

吉無田名物である「恐竜リフト」降車したあとには恐竜の像がお出迎え ©Hiroyuki NAKAGAWA
本戦ではホットシートが登場、中盤以降、ライダーが丸見えのコースに緊張感も高まる ©Hiroyuki NAKAGAWA

 そんなまったりとしたダウンヒルシリーズならではのランチタイムを挟んで、本戦が始まった。XC BIKE Classでは、CJにも参戦する福岡県の若手・岡山優太(MASAYA YOUNG RIDERS)が52秒412のタイムで優勝。ファーストタイマーは佐賀県の大里昌真が54秒528、40人がエントリーした大混戦のスポーツ男子クラスでは、福岡県の館正倫(takebow-tune Gravity republic)が47秒232で優勝を飾った。エキスパートクラスでは木村宏一が46秒338で優勝し、FDAの往復ペア航空券を手にした。

スタートに鳴り物を用意する盛り上げ役、三浦勉(Van-Quish)。今回はレースにも参戦 ©Hiroyuki NAKAGAWA
ダウンヒルでは一人ずつ、単独でスタートしていく ©Hiroyuki NAKAGAWA
安定の当日入りにして、念願のエリート初優勝を決めた本村貴之(desol/cleat/十種ヶ峰) ©Hiroyuki NAKAGAWA

 エリート男子では、「九州の帝王」と呼ばれながらもダウンヒルシリーズが始まって以来4年間、なかなか優勝には手が届かなかった本村貴之(delsol/cleat/十種ヶ峰)が44秒792で初優勝、PROクラスに挑戦する「下克上」の権利を得た。

 PROクラス。阿藤はスタートでミスがあったようで43秒991、下克上システムで再走となった本村がタイムを延ばして44秒062、田丸は44秒313。井本はじめは観客が一番集まるジャンプで弾かれ、ワンフットからの大クラッシュ。けがはなかったものの5位に沈んだ。

半袖にノーグローブ、良い子は真似してはいけません。プロクラスで走る田丸裕(Acciarpone bikes) ©Hiroyuki NAKAGAWA
誰もが苦戦した溝つきの左コーナー、そこをまさかのラインで溝を全カットした井本はじめ(Sram/Santacruz)の本戦。直後のジャンプにズレた角度で進入しクラッシュした ©Hiroyuki NAKAGAWA

 そして、前日のタイムドセッションに続いて井手川が42秒509という驚異的なタイムで優勝。「1カ月前のレース以降MTBに乗れていないうえに、今回持ってきたバイクは、最新モデルのPROCESS 153CRで、このレースが初乗り。それでも、来季に向けたトレーニングをすでに始めていることもあって体はよく動いてくれました。新しいバイクで無事にデビューウィンを飾れて安心しました!」と話してくれた。

黄金に輝くススキの中を走る井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER) ©Hiroyuki NAKAGAWA

 そして今回は、御船町役場から入賞者に「御船町特産品セット」が送られた。馬油製品や御船川そうめん、地元の陶芸家さんの作ったカップなど地元のものがたっぷり入っていた。また、御船町在住のローカルライダーの井ノ一兄弟の祖父からも「御船町のお米を食べて欲しい!」と賞品が提供され、豪華な表彰台となった。

 1年7カ月前の震災で大きな被害を受け、復興まっただ中の熊本。それでも今年も、地元の方達の声援やおもてなしの心が溢れる雰囲気に、私たちが元気をもらった。これぞ吉無田。今年も素敵な大会となった。

今回、最も攻略要素のあったコーナー。観客もコース脇の参加者も、全員のラインをチェック ©Hiroyuki NAKAGAWA
ラストジャンプをクリアしたらフィニッシュは目前にある ©Hiroyuki NAKAGAWA

 また今回は、カナダ・バンクーバー在住で2カ月間日本中をMTBで旅しているEric Testroeteさんと有香さん夫婦の参加があった。カナダから日本に来る際、MTBで走れる場所を探していたらダウンヒルシリーズを見つけたとのこと。こんな風に気軽にエントリーできることも、登録制ではないダウンヒルシリーズの特徴だ。「2日かけてひとつのコースを乗り込むことはなかなかないので楽しいです。雰囲気も最高!」と話してくれた。夜は、ダウンヒルシリーズ常連組が泊まる宿で楽しく一夜を共にしたよう。日本人ライダーたちにとってもいい出会いになったようだった。そんなエリックさんはユーチューバー(アカウント名:BCpov)。吉無田でのレース参戦動画がUPされるのが今から楽しみだ。

 第7戦菖蒲谷森林公園(兵庫県)は12月16、17日に開催される。

本戦表彰式終了後の集合写真。また来年、集まりましょう ©Hiroyuki NAKAGAWA

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ダウンヒル ダウンヒルシリーズ マウンテンバイク

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載