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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<232>デュムランを筆頭にタレントがそろう チーム サンウェブ 2018年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 新シーズンに向けたトップチームの戦力分析を行う「2018年シーズン展望」。今回はチーム サンウェブをお届けしたい。今シーズンはスーパーエースのトム・デュムラン(オランダ)がジロ・デ・イタリアで悲願のグランツール総合初優勝。その後もマイケル・マシューズ(オーストラリア)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ)らの活躍が光った1年となった。すでに来季陣容を固め、エースクラスの目標も決まりつつあるチーム状況を見ていこう。

2017年のチーム サンウェブにとってハイライトとなったジロ・デ・イタリア。来季もトム・デュムラン(左から2人目)がチームを引っ張る =ジロ・デ・イタリア2017第21ステージ、2017年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

デュムランはマイヨジョーヌを次なる目標に

 今シーズンのサイクルロードレースシーンにおいて、出色の活躍を見せた1人がデュムラン。早くからジロの総合制覇をターゲットにすると宣言し、シーズン序盤はストラーデ・ビアンケやティレーノ~アドリアティコ、ミラノ~サンレモ(いずれもUCIワールドツアー)と、意識的にイタリアでのレースをスケジュールに組み込み、いずれもまずまずの結果で終えた。

頂上フィニッシュが設けられたジロ・デ・イタリア第14ステージを制した時のトム・デュムラン。最終的なマリアローザ獲得の可能性を高めた瞬間だった =2017年5月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 満を持して臨んだジロでは、39km個人タイムトライアルで競った第10ステージを圧勝しマリアローザを手に入れると、第14ステージでは頂上フィニッシュで快勝。一時はナイロ・キンタナ(コロンビア)にジャージを明け渡したが、“予定通り”最終日の29km個人タイムトライアルで逆転し、初のグランツール王座に輝いた。

 シーズン後半には、オランダとベルギーを舞台にするビンクバンクツアー(UCIワールドツアー)で総合優勝。そして、9月にはUCIロード世界選手権個人タイムトライアルで初のマイヨアルカンシエルを獲得。

 近年のデュムランは、狙ったレースを外さない勝負強さと調整のうまさが光る。かねてから高く評価されてきたタイムトライアルをバックボーンに、急峻な山岳でも一定ペースで押し切ることができる安定感。そして、ライバルが消耗したと見るや一発で決めに行くアタック。グランツールで台頭した2015年から、常にアシストの手薄さを指摘され続けているが、確立した自身のスタイルでこれまでは見事に局面を打開してきた。

個人タイムトライアルではマイヨアルカンシエルを獲得したトム・デュムラン。グランツール王者として、世界王者として新シーズンを迎える =UCIロード世界選手権2017個人タイムトライアル、2017年9月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツール王者として、そして世界王者として新たなシーズンへの準備を進めているこのオフ。今のところは、来シーズンの目標をツールに設定する方針だ。現役ツール王者のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)にして、「最大のライバルとなり得るのはデュムラン」というほど、山岳とタイムトライアルのバランスに長けた走りは他の選手たちにとっては脅威。デュムラン自身も「打倒フルーム」を意識しているといい、来年のツールではこの2人が完全マッチアップする状況が生まれる可能性も大いにありそうだ。例年と比較してもより戦術的な走りが求められる山岳や、チームタイムトライアル、パヴェ、そして最終日前日の31km個人タイムトライアルと、両者の力の見せどころは多分に待ち受ける。

 また、タイムトライアルでの2連覇がかかるUCIロード世界選手権もシーズン後半に狙うレースとなるだろう。次回開催地はオーストリア・インスブルック。山がちで、登坂力がものをいうコース設定は優位に働きそう。また、獲得標高が4670mにも及ぶロードレースでもチャンスがめぐってくるかもしれない。シーズン前半の走りや結果によって最終判断することになるだろうが、デュムランクラスであればこれらのコースはすでにチェック済みだろう。

 今のところシーズンインの時期や、レーススケジュールに関する具体的な言及はないが、11月29日に行われるジロのコースプレゼンテーションを受けて何らかのアナウンスをすることが考えられる。明らかになるコース次第では、ジロ2連覇狙いにシフトする可能性もわずかながらあるとしており、どんなコメントを残すかが楽しみだ。

 なお、今年6月に2022年までの契約に合意。チーム アルゴス・シマノ時代の2012年にチーム加入して以来、相思相愛の関係にある。レースに集中できる環境を整えると同時に、絶対エースとしてのチーム内での立場も改めて明確にした形だ。

ステージ、ワンデーで勝利量産をねらうマシューズ

 デュムランのジロ制覇に沸いたチームは、続くツールでも躍動。大会後半にステージ2勝を挙げたマシューズがポイント賞のマイヨヴェールを獲得した。これまで高い壁となっていたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)がともに大会途中に離脱したことも関係したが、平坦ステージを中心にポイントを稼ぎ続けた結果として、ツールでは自身初となるビッグタイトルに手中にしたのだった。

マイケル・マシューズは2017年、ツール・ド・フランスでマイヨヴェールを獲得した =ツール・ド・フランス2017第21ステージ、2017年7月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 プロトンにおける「上れるスプリンター」の代表格の1人でもあるマシューズ。今シーズンはワンデーレースでの勝利はなかったが、コンスタントに上位に進出。なかでも、これまでクライマーやクラシックハンターが主役だったリエージュ~バストーニュ~リエージュで4位となったのは、スプリンター系の脚質の選手にもチャンスがあることを印象付ける鮮烈な走りだった。繰り返されるアップダウンをクリアし、最終局面まで生き残ることができれば、フィニッシュ前のスプリント勝負で圧倒できる可能性が一気に広がる。これまでアルデンヌクラシックで中心となっていた選手たちにとっても、その存在に恐れることとなるだろう。

 例年ゆっくりとシーズンインするあたりも特徴的。来年も同様であれば、3月あたりから本格的にレース始動し、アルデンヌクラシックに最初のピークを持っていく格好だ。そして、次に狙うのはツールとなるだろう。来年はマイヨヴェール2連覇がかかる。雪辱を期すサガンやキッテルが、ジャージ争い最大のライバルとなるだろう。

マイケル・マシューズにはトム・デュムランとの共闘も期待される =ツール・ド・フランス2017第14ステージ、2017年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 もっとも、デュムランとの共闘となる可能性が高く、総合成績を優先するとなれば、登坂力のあるマシューズにもアシストとしての役割が求められることになる。その場合は自身の賞ジャージは二の次に、デュムランを盛り立てる仕事に従事しなければならない。そこは経験豊富なマシューズだけに、チームオーダーを理解し、状況に応じてステージ優勝狙いに切り替えるなど臨機応変に走ると見られる。

 さらに、ツール後に控える秋のクラシックシリーズにも期待がかかる。ワンデーレースを中心にどれだけのタイトルを取ることができるか。好調であれば、いくつもの勝利をチームにもたらすことだろう。

ケルデルマン、トゥーンスらが適材適所の働きへ

 チームとしても、今年はUCIロード世界選手権チームタイムトライアル初制覇など、大きな飛躍を遂げた。その背景として、個々のレベルアップがやはり挙げられる。ツールで山岳賞とスーパー敢闘賞を獲得したワレン・バルギル(フランス)は移籍するが、デュムラン、マシューズに続く選手が続々と力をつけており、ロードシーンきってのタレント集団となる可能性を秘める。

今年のブエルタ・ア・エスパーニャ総合4位のウィルコ・ケルデルマン =ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第20ステージ、2017年9月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合4位と大健闘を見せたウィルコ・ケルデルマン(オランダ)は、デュムラン次第ではあるものの現状ではジロの総合を狙う構え。2014年には総合7位となるなど、イタリアでの3週間は相性がよい。ここ数年はプレッシャーを避けるため、山岳アシストに回ることが多かったが、デュムランのアシストとして今年加入した現チームでエースとしての復活を果たした。同時に、1歳年上のデュムランとの信頼関係が深まったこともあり、ジロの後はツールでエースを支える心積もりだ。山岳はもとより、タイムトライアルの走りも魅力。チームタイムトライアルではメンバーを引っ張る立場になりそうだ。

 ケルデルマンとならんでブエルタでリーダーを務めたサム・オーメン(オランダ)にも期待が膨らむ。そのブエルタでは体調を崩して途中離脱となったが、世界選手権ではチームタイムトライアル初制覇に大きく貢献。山岳・タイムトライアルのバランスのよさはデュムラン、ケルデルマンと同様の脚質とみてもよいだろう。チームを率いる2人のスケジュール次第にはなるが、どこか空いたグランツール総合エースの席に就くのは、将来を嘱望される22歳の彼になるだろう。

トレック・セガフレードから加入するエドワード・トゥーンス(右から2人目)は北のクラシックで活躍が期待される =パリ〜ルーベ2017、2017年4月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 これまであまり目立つことのなかった北のクラシックでの走りは、トレック・セガフレードから加入するエドワード・トゥーンス(ベルギー)によってひとまずは方向性が固まった。今年はパリ~ルーベで優勝争いに加わり、最終的に8位。スプリンターとしてもシーズン2勝を挙げ、平地での走りは計算できそうだ。ツールではパヴェステージのアシストやリードアウト要員として、デュムランやマシューズを支える存在となり得る。

 小集団での争いを得意とするセーアンクラーウ・アナスン(デンマーク)や、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージで金星を挙げたスプリンターのフィル・バウハウス(ドイツ)、UCIロード世界選手権アンダー23ロードで銀メダルを獲得した本来はTTスペシャリストのレナード・ケムナ(ドイツ)なども、来シーズンは数回にわたって名前を聞く選手となりそう。そして、シモン・ゲシュケ(ドイツ)といったおなじみの顔ぶれもチームに残留。いぶし銀の走りを見せてくれることだろう。

 チームは10月20日に来季陣容を確定させ、男子エリートチーム24人、女子チーム10人、デベロップメントプログラム(20歳前後の選手が所属する育成チーム)12人を正式に発表。女子チームには、エレン・ファンダイク(オランダ)やコリン・リベラ(アメリカ)といったワールドクラスの選手たちが、デベロップメントプログラムにはセルジオ・トゥ(台湾)といった有望なアジア人ライダーなども名を連ねている。そして、年明けの1月4日にドイツ・ベルリンでチームプレゼンテーションが行われる。

チーム サンウェブ 2017-2018 選手動向

【残留】
セーアンクラーウ・アナスン(デンマーク)
ニキアス・アルント(ドイツ)
フィル・バウハウス(ドイツ)
ロイ・クルフェルス(オランダ)
トム・デュムラン(オランダ)
ヨハンネス・フレリンガー(ドイツ)
ジモン・ゲシュケ(ドイツ)
チャド・ハガ(アメリカ)
クリス・ハミルトン(オーストラリア)
レナルト・ホフステデ(オランダ)
レナード・ケムナ(ドイツ)
ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)
マイケル・マシューズ(オーストラリア)
サム・オーメン(オランダ)
トム・スタムスナイデル(オランダ)
ローレンス・テンダム(オランダ)
マイク・トゥニスン(オランダ)
アルバート・ティメル(オランダ)
マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ)

●加入
ジャイ・ヒンドリー(オーストラリア) ←ミケルトン・スコット
マイケル・ストアラー(オーストラリア) ←ミケルトン・スコット
エドワード・トゥーンス(ベルギー) ←トレック・セガフレード
マルティン・トゥースフェルト(オランダ) ←ロームポット・ネーデルランゼロタレイ
ルイス・ヴェルヴァーケ(ベルギー) ←ロット・ソウダル

●退団
ワレン・バルギル(フランス) →フォルトゥネオ・サムシック
ベルト・デバッケル(ベルギー) →チーム ヴィタルコンセプト
シンドレショスタッド・ルンケ(ノルウェー) →フォルトゥネオ・サムシック
ゲオルク・プライドラー(オーストリア) →エフデジ
ラモン・シンケルダム(オランダ) →エフデジ
ジーコ・ワイテンス(ベルギー) →ヴェランダスウィレムス・クレラン

今週の爆走ライダー−シモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム サンウェブ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 「夢がかなった」といって涙した2015年のツール第17ステージの勝利。あの頃はまだ自由に動ける日がグランツールの3週間のうち、数日はあったけれど、最近はそうもいかなくなってきた。デュムランがグランツールを制覇するまでに強くなったからだ。ゲシュケに与えられた役割は、山岳を中心としたアシストだ。

ミラノ〜サンレモでトム・デュムランを従えて走るシモン・ゲシュケ。2カ月後のジロ・デ・イタリアでもデュムランを再三にわたって救った =2017年3月18日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツールでデュムランをアシストしたのは、今年のジロが初めて。ステージが進むごとに手薄と言われたアシスト陣にあって孤軍奮闘。その働きぶりには幾分の波があったとはいえ、要所ではしっかりと任務を果たしてみせた。

 ハイライトはジロ第19ステージ。集団分断で後方に取り残されたエースを前へと引き上げ、山に入ってもどこか力の入らないマリアローザを引っ張り続けた。その甲斐あって、デュムランを総合争いにとどめることができた。2日後にやってくる結末は、もはや説明する必要がないだろう。

 大きなタイトルを獲得する派手さはないが、どんなコースレイアウトでも堅実に働くから、エースクラスからの信頼度も高い。その仕事ぶりが長くプロトンに居場所を確保できる理由だ。

 プロ入り以来ともに歩んできたチームとは来年で10年目を迎える。3月に32歳を迎えるが、まだまだ老け込む年齢ではないし、いくらレース数をこなしても疲れを感じさせないタフな姿ももうしばらく見せてくれることだろう。次のシーズンもトレードマークであるひげを蓄えた顔を目にすることが多々やってきそうだ。

ツール・ド・フランス さいたまクリテリウムで来日したシモン・ゲシュケ。この風貌とキャラクターは日本でもおなじみだ =2017年11月4日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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