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経済効果を生む秘策なるかしまなみ海道で「自転車・手荷物輸送サービス」実証実験 ライドで精いっぱいにならない旅を

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 日本で最も人気のあるサイクリングロード、しまなみ海道で「自転車・手荷物輸送サービス実証実験」が10月28日~11月5日までの土日4日間にわたって開催されました。中国地方5県(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)を所管する中国経済産業局による取り組みで、ロードバイク専用の箱段ボール「バイクボックス」(仮名:特許申請中)を使って自転車と手荷物を輸送するサービスの実証実験。輸送は尾道⇔今治、尾道⇔多々羅(多々羅しまなみ公園)、今治⇔多々羅の相互6パターンで行われました。その様子をライター・岡田由佳子さんのリポートでお届けします。

しまなみ海道で開催された自転車・手荷物輸送サービス実証実験 Photo: Yukako OKADA

意外に経済効果が少ないしまなみ

 今回、この実験が行われた背景には、しまなみ海道が直面している課題がある。それは、しまなみ海道でのサイクリストの滞在時間が短く、経済効果が少ないこと、四国や中国地方といった周辺地域へのライドが広がらないことだ。

 しまなみ海道は全長約80kmで、初級者には片道ライドだけでもハードルが高い距離。また、マイバイクで訪れた人は発着地点を往復する人が多く、1日で走る場合、約160kmを走らなければならない。そうなると、復路の走行を想定したライドでタイムリミットになった場合は途中で断念し、スタート地点に引き返すというケースも少なくないという。

 また、往復の場合、大半が尾道発~今治で復路につくという予定を組むが、その場合今治での滞在時間が短く、すぐに尾道へと引き返してしまう。今治側としてはもう少しゆっくり滞在し、人々と交流したり、食事やショッピング、強いて言うなら四国の他のエリアも楽しんでほしいところだが、時間もなく、荷物が増えると復路での負担が大きくなるなどの理由で、観光が難しいという現実がある。

「自転車・手荷物輸送サービス」のチラシ(表)
「自転車・手荷物輸送サービス」のチラシ(裏)

 その解決策として考案したのが、自転車と手荷物を出発地点まで輸送するサービス。中国経済産業局の稲原宏昭課長は「こういった発着地点の距離が長いサイクリングコースの要所に自転車・手荷物輸送サービスがあれば、時間・移動・体力に余裕ができる。結果、各地での飲食やショッピングによる経済効果が期待できる。また、片道ハーフライドができれば、今治あるいは尾道からさらに先の地域へと、サイクリングの幅を広げることができる」と期待を込める。

そのまま積載できるロードバイク専用の箱段ボール

 実験で使用されたのはロードバイクを分解せずにそのまま積載でき、傷つけず輸送できる箱段ボールだ。便利だが、気になるのは「本当にキズが付かないのか?」という点。まず、世界でも類を見ない最新のバイクボックスの構造を紹介しよう。

組み立て式のバイクボックス。組立前は非常にコンパクトで保管も持ち運びにも便利 Photo: Yukako OKADA

 バイクボックス自体は組み立て式になっており、組み立て前は横178cm、縦80cm、高さ21cmとコンパクトで保管も持ち運びも便利な構造にしている。組み立てると高さ105㎝になり、ロードバイク、クロスバイクの構造に合わせた設計でドロップハンドル、DHバータイプでも積載可能だ。組み立て方は前輪、ペダルを固定する部分をマジックテープによって設置。1箱に2台積載することができる。

組み立てる前の状態 Photo: Yukako OKADA
輪とペダルを固定する部分はマジックテープで組み立てる Photo: Yukako OKADA
所要時間は2~3分程度。慣れれば1分ほどで組み立てできる Photo: Yukako OKADA
1箱に2台積載することができる。実際に入れてみると、しっかりとロードバイクが固定されているのが分かる Photo: Yukako OKADA
前輪部分 Photo: Yukako OKADA
後輪部分 Photo: Yukako OKADA

 要所をしっかりと固定させているが、ロードバイク自体が軽いため、段ボールでもしっかりと固定できる。その特性を生かした箱段ボールは何度も試行錯誤してここまで完成された。上下はプラスチック製で強度もあり、防水加工も施している。

「自分でつけるキズと他人につけられるキズでは大きく違うんです!」とほとんどの人が自分でロードバイクを積載。一緒に手荷物も入れることができる Photo: Yukako OKADA

 実験開始前にはマイバイクでのテストライドが行われ、朝10時に尾道を出発。ゆっくりサイクリングしながら昼食や景色の良い場所で写真撮影を楽しみ、16時ごろに今治に到着。そこから自転車を積載し、公共バスで尾道に到着して自転車を受け取るという工程。実験当日は多々羅から今治のハーフライドを楽しんだ人もおり、今までできなかったライドが実現された。

体験者全員がサービス実現を希望

 体験後に実施したアンケート結果では、輸送サービスを利用した人は、利用していない人に比べ、時間に余裕が生まれ、周遊地でのショッピングも楽しんでいた。また、帰路が公共交通機関で自転車に乗らないため、食べ物やお酒を楽しむことができた人が多くなった。

 さらに、「このサービスを実施してほしい」という回答は100%で、妥当価格は2,000円~3,000円が最多だった。ちなみに、利用者はここに公共交通機関の移動費用約2,000円(今治~尾道)が加わるため、トータルで4,000円~5,000円であれば利用したいというところだろう。

中国経済産業局の稲原宏昭課長(右)も今回、テストライドで尾道から今治間を走行。自身はツーキニストだ Photo: Yukako OKADA

 この集計結果を踏まえ稲原課長は輸送サービスが展開された場合、しまなみに必要となるのは「人とのつながり」だという。

 「ライドに余裕が生まれ、地域や町へ意識が行くようになったとき、より多くの魅力に触れられればリピートにもつながる。そのためには、地域の人々と交流し、魅力を引き出していく取り組みが大切。理想としてはライド中にアクシデントがあっても誰かが助けてくれ、辛いことも、良い思い出になるようなところにしたい。現地での出会いや交流は心に刻まれ『あの人に会いたい』というリピートにもつながる。そしてこれからは各島の周遊に加え、今治から松山へ、尾道から松江へといったように中国地方全体がサイクリングしやすい環境へと変化してほしい」

 バイクボックスを利用した自転車・手荷物輸送サービスはしまなみだけでなく、中国地方、全国、そして海外からマイバイクを持参できるサービスとしてもニーズが高くなるだろう。サイクリングの可能性をより引き出した実証実験。しまなみは、一足先を行くサイクリストの聖地としてさらに前進していく。
 
(文・写真:岡田由佳子)

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