13のライドと2つのイベントを開催「Rapha RIDES OSAKA」街を知る人と、街の魅力を巡った3日間
ハイパフォーマンスなサイクリングウェアを展開しているラファが、世界20カ所の地域で「Rapha RIDES」というイベントを開催している。「街」とそこに繋がるストーリーに焦点を当てたライドイベントは、シドニーをスタートし東京、ニューヨークなどを経て、大阪へと舞台を移した。11月10日~12日で13のライドと2つのオフバイクイベント。大阪の様々な文化と、そこに繋がる人物をフィーチャーした3日間を紹介したい。

暖かい日差しとひんやりした空気。街はちょうど秋の真ん中といった装いで、ゆったりとしたライドを楽しむには程良い気候だ。イベントは、フォトグラファー辻啓さんがアテンドするライドと共に幕を明ける。オフィシャルのインタビューでも語った通り、探究心豊かな彼ならではのルート選択と明るい人柄が参加者を強く魅了した。
13にも及ぶライドの中心には、必ずキーとなる表情豊かな人物が登場する。辻啓さんのライドとは相反する都会のど真ん中、アメ村の三角公園をスタート地点にしたのは、女性サイクリストのチャンヌさんによるシティライド。カジュアルな装いの賑やかなメンバーが集まり、難波の雑踏を抜け四天王寺を通る。この界隈の台地には程よい坂道が多く、参加者を楽しませる。
自らのニックネームを冠したヴィンテージの古着ショップを営むチャンヌさん。お店は心斎橋・アメリカ村のど真ん中に位置する。自転車との出会いも街中と語る彼女、競技歴こそ短いものの持ち前のキャラクターで自転車界隈では知れた存在だ。その土台になっているのは、自分たちのローカルを大事にし、そこへ身を置き、集う仲間たちと一緒に楽しむことを大切にしているスタイル、だろう。
「彼女をラファとしてフィーチャー出来たことは本当に喜ばしいことです。人々を魅了する人物には考えがあって哲学がある。またそういった人たちが大事にしている街には、思わず誰かに紹介したくなる文化があります。ライドを通してそれらを知る良い機会が生まれました」そう語るのは、ラファ代表の矢野大介さん、自らもライドをアテンドした。参加した人たちが拠点となるクラブハウスへ戻ると、ライド途中で見つけた出来事を、次のライドへ参加する人に語り出したという。



確かに、大阪という街を見渡すと新旧様々な文化が交差していることに気付く。ハルカスのような真っ新な商業施設もあれば、中央公会堂のような文化財も街の外観としてそこに鎮座している。大大阪と言われた時代から高度成長期にかけ、大阪がとても元気だった頃の建築物に着目した大阪アーキテクチャライドや、水路を基盤に組み立てられた都市大阪に多く架かる橋を巡るライドでは、実際に自分の足でその橋を掛け上がりながら文化に触れることが出来た。
筆者が担当をしたコーヒーワークショップライドでも、10kmほどの短い距離ながら市内をぐるりと巡った。大阪城から路地を抜けて文教地区として栄える玉造へ。住宅地にひっそり佇むロースターでは、焙煎度合の違うコーヒーを用いて飲み比べに挑戦した。
一行はさらに繊維街として栄えた南船場をくぐり抜ける。下町の雰囲気が徐々にファッションエリアへ入れ替わった先では、隠れ家的ロースターで実際に焙煎の現場を見受けることとなる。
大通りを上れば京町堀、ビジネス街と緑豊かな公園が調和する都会のオアシスだ。ここでは窒素を注入したコーヒーをタップで注ぐ、なんともモダンな飲み物を楽しんだ。ひとえにコーヒーと言え、訪れる地域によってマッチするスタイルは様々である。その街、その地域の人々や文化に馴染む一杯が必ず存在する。


終着地点のクラブハウスではオールプレスコーヒー主宰の座学会という、充実の内容であった。参加者のひとりは「普段山の中を走っていたりアクティブに自転車を楽しんでいたが、街でこんなに魅力あるライドが出来ることに驚いた。ぜひ仲間を誘って同じようなライドをしたい」と語った。


いままでラファは、ロードサイクリングの過酷さや美しさを鮮やかに表現し、自転車という競技を最もポピュラーなスポーツにすることに尽力してきた。一変して身近な場所へスポットを当てた今回、私たちが住む街の知られざる魅力に出会う機会となった。
100kmを超えるようなロングライドでなくとも、またはピッチリとしたレーパンを履かずとも、まだそれを知らぬ仲間に魅力を伝える新しい方法は街にたくさん潜んでいる。今回Rapha RIDESに参加した人たち自身が、次の案内人になる日も近いはずだ。