振動吸収は素材に、剛性はフレーム形状に分担選手が「劇的に速くなった」と口を揃える ビアンキの革新的素材「カウンターヴェイル」の実力に迫る

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 イタリアの名門ロードバイクブランド「ビアンキ」は、振動を除去する革新的な素材「カウンターヴェイル」をロットNL・ユンボが駆る「オルトレXR4」、「スペシャリッシマ」に採用している。以前のモデルから劇的な進化を果たし、選手から高評価を受ける。ジャパンカップサイクルロードレースで来日したチームと、本国のビアンキマーケティングマネージャー、クラウディオ・マズナータさんにカウンターヴェイルの優位性を語ってもらった。

本国のマーケティングマネージャー、クラウディオ・マズナータさんが、カウンターヴェイルの優位性を語る Photo: Shusaku MATSUO

振動除去機能で包括的に性能を向上

 カウンターヴェイルとはマテリアル・サイエンス社が開発した新素材。ロードバイクでは2013年に発表された「インフィニートCV」を皮切りに、「オルトレXR4」、「スペシャリッシマ」、「オルトレXR3」、「アクイラCV」のフレーム内部に組み込まれている。また、マウンテンバイクの「メタノールCV」にも採用された。

 カーボン素材に組み込まれ、振動を最大80%減少させる効果があると発表されているが、詳細は明らかにされていない。テニスのラケットなどにも使用されている素材だが、ビアンキが使うカウンターヴェイルは、長年の自転車作りのノウハウを設計に反映。素材の効果を最大限発揮できるチューンが施されているという。

初来日を果たしたロットNL・ユンボ。ビアンキのバイクを駆り、ワールドツアーで活躍している Photo: Naoi HIRASAWA

 振動除去性能はライダーの疲労に直結する極めて重要な性能の一つだ。フレームの剛性や推進力が高くても、ライダーの疲労が積み重なったしまってはレースで求めるリザルトは獲得できない。では、なぜカウンターヴェイルが採用されたフレームが劇的な進化を実現したのか。本国イタリアのマーケティングマネージャー、クラウディオ・マズナータさんはこう語る。

ビアンキブースに並ぶカウンターヴェイル使用バイク Photo: Shusaku MATSUO

 「バイクの剛性と推進力、振動吸収性はどれも重要でおろそかにできない項目です。今まではフレームの形状を工夫し、両者のバランスをとってきました。剛性が必要な部分は太く、振動を吸収させたい部位は薄くしたり、細くしたり、振動を“いなす”形状が求められました」

 「しかし、カウンターヴェイルは振動を除去するマテリアル(素材)です。フレームに組み込むだけで性能を発揮できる。今まで考慮していた“形状による振動吸収性能”を考慮する必要は少なくなりました。結果的に剛性や推進力を求める形状を優先して設計できるようになりました」と説明した。

選手たちのバイクがセットアップされる Photo: Shusaku MATSUO
レース前、リラックスする選手たち Photo: Shusaku MATSUO

「まるで別物になった」

 ロットNL・ユンボのアレクセイ・ヴァーミューレン(アメリカ)は「チームは以前、オルトレXR2をメインバイクで使用していました。もちろん悪いバイクではなかったよ。けど、オルトレXR4はまるで別物。平地の巡航速度やスプリントはもちろん、上りでも抜群の登坂性能を発揮したよ。しかも長時間乗っても疲れない。まさにオールラウンダーバイクだね」と言い切る。

高いレベルでオールラウンドな性能を持ち、選手から評価される「オルトレXR4」  Photo: Shusaku MATSUO

 オルトレXR4はツール・ド・フランス2017の第17ステージ、超級のガリビエ峠を含む難関ステージをプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)が独走で勝利。エアロロードバイクながら山岳ステージで優勝を飾ったことも、フレーム性能の高さを証明する結果だ。

古賀志林道の急勾配を駆け上るアントワン・トルホーク(オランダ) Photo: Naoi HIRASAWA

 ジャパンカップ・サイクルロードレースでもアントワン・トルホーク(オランダ)がレース開始早々に逃げを決め、厳しい上り区間の古賀志林道を駆け抜け、山岳賞を獲得した。トルホークは「チームはスペシャリッシマとオルトレXR4のどちらも好きなバイクを選手に選ばせています。僕はXR4をいつもチョイスしています。どんなコースプロフィールでも結果を残せるバイクですよ」と太鼓判を押す。スプリンターのファンホセ・ロバト(スペイン)はジャパンカップ・クリテリウムを2位でフィニッシュ。シチュエーションを選ばない万能性を日本でも披露した。

レース序盤からレースをリードし、山岳賞を獲得したアントワン・トルホーク(オランダ) Photo: Naoi HIRASAWA
スプリンターのファンホセ・ロバト(スペイン)は得意のスプリントでクリテリウムでは2位となった Photo: Naoi HIRASAWA

 マズナータさんは「XR4はカウンターヴェイルの効果を最大限生かせるバイクです。剛性、推進力は随一ですが、ライダーが上半身を伏せた深い姿勢の状態で優れたエアロ効果を発揮できることが最大の特長です。深く上半身を伏せるエアロポジションを取ると、バイクに伝わる振動などの外的な要因で腰が痛くなったり、長い間同じ姿勢を保てなくなります」

「カウンターヴェイルを使用したバイクは、剛性を求めた設計でも快適にライディングができる」と言い切るマズナータさん。彼自身もトラック競技でイタリアナショナルチャンピオンを3回獲得した経験を持つサイクリストだ Photo: Shusaku MATSUO
極限のレースを戦うワールドチームとのリレーションシップを持ち、フィードバックを製品開発に反映する Photo: Shusaku MATSUO

 「しかし、フレームにカウンターヴェイルを採用し、コンフォート性能を高めたことで、長い時間空気抵抗が少ないポジションが可能になります。いくらフレームがエアロでも、ライダーが疲労し、頭が上がってる時間が多ければ空気抵抗になり意味がありません」と設計の狙いを明かした。

 チームのエース、エンリコ・バッタリーン(イタリア)は名選手マルコ・パンターニがダブルツール(同じ年にツール、ジロを総合優勝)の記念に制作された特別カラーのスペシャリッシマでジャパンカップに挑んだ。スペシャリッシマは山岳コースに向いた軽量バイクで、カウンターヴェイルも採用されている。

エンリコ・バッタリーン(イタリア)は“パンターニカラー”の「スペシャリッシマ」でレースに臨んだ Photo: Shusaku MATSUO

 「オルトレXR4を選ぶレースもありますが、今回の宇都宮はスペシャリッシマで勝負することにしました。オルトレXR4もよく上るのですが、より厳しい斜度での登坂性能はスペシャリッシマのほうがフィーリングが合う」とバッタリーンはレース前にコメントしていた。

パンターニのダブルツール20周年記念に用意された特別カラーで、イタリア国内でハンドペイントが施される Photo: Shusaku MATSUO

 ビアンキは選手やチームからフィードバックを受け、一般サイクリストが手にする製品作りに生かしているという。「UCIワールドチームにスポンサーをするのは2つの理由があります。1つはプロモーションのため。もう1つはワールドチームに供給することで、考えうるすべてのシチュエーションをテストできるからです。強度、耐久性など、ワールドチーム以上にデータを集められる環境はありません。過酷な環境でのテストが、より良いモノづくりに繋がっています」とマズナータさんは理由を述べた。

 イタリアの老舗ブランドとして伝統をそのままに、ロードレースの最前線で機材を供給。新素材を惜しみなく投入し、常にコンペティティブで攻めの姿勢を示している。ビアンキは現在、同国でフェラーリと技術協力関係を結び、新たな製品を開発中だという。今後もチェレステカラーのバイクから目が離せない。

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