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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<228>2017年のUCIワールドツアーが終了 ヴァンアーヴェルマートが初の年間総合1位

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 熱戦が繰り広げられたジャパンカップ一色に染まった日本のサイクルロードレースシーンだが、海外に目を向けてみるとときをほぼ同じくしてUCIワールドツアーが終了。1月にオーストラリアでのツアー・ダウンアンダーに始まり、今年初開催された10月19~24日のツアー・オブ・クワンシー(中国)まで、長いシーズンだった。クワンシー終了後には、UCI主催の年間表彰「UCIガラ」が行われ、各種タイトルが確定。今回は、これらのタイトルホルダーに目を向け、今シーズンの戦いぶりを振り返っていくことにする。

2017年のUCIワールドツアー個人ランキング1位に輝いたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(左)。UCIウィメンズワールドツアー個人ランキング1位のアンナ・ファンデルブレッヘンとともに「UCIガラ」で表彰された ©TDWsport

パヴェで大活躍のヴァンアーヴェルマートが年間1位

 今年のUCIガラには、クワンシー出場チーム・選手をはじめ、2017年シーズンに活躍した選手たちが主に招待され、長きにわたる戦いを労いあった。そして、クワンシー終了とともに確定したポイント合算によるUCIワールドツアーランキングの表彰が行われた。

2月25日のオムループ・ヘット・ニュースブラッドで2017年初勝利を挙げたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート。ここから勢いに乗った Photo: Yuzuru SUNADA

 花形である個人ランキングでは、春に無類の強さを見せたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)が初の1位を獲得。今シーズンは、ワールドツアーに今年から昇格した石畳系レース、オムループ・ヘット・ニュースブラッド(2月25日、ベルギー)で優勝し勢いに乗ると、同じく昇格レースのストラーデ・ビアンケ(3月4日、イタリア)で2位。昨年のリオデジャネイロ五輪ロードレース金メダルが伊達ではなかったことを証明してみせた。

4月9日のパリ〜ルーベでは接戦をものにしたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート。ワールドツアーポイントを大きく稼いだ Photo: Yuzuru SUNADA

 圧巻だったのは、3月下旬から4月上旬にかけての北のクラシックシーズン。E3ハーレルベーク(3月24日、ベルギー)、2日後のヘント~ウェヴェルヘム(ベルギー)と連勝。4月2日のツール・デ・フランドル(ベルギー)では、追撃タイミングで落車するアクシデントがありながらも2位。そして、4月9日のパリ~ルーベ(フランス)で接戦を制して快勝。この時期にワールドツアーポイントを大きく稼ぐことに成功。何よりも安定したレース運びと勝負強さは、32歳となって最も脂が乗っている段階にあることを感じさせた。

 シーズン前半に調子のピークを持っていった分、その後は大きな勝利こそ挙げられなかったが、ツール・ド・フランスではアシストに回ったり、秋のクラシックレースであるGPケベック(9月8日、カナダ)では2位になるなど、まずまずの走りでポイントを加算し続けたことが奏功した。

 2位と3位には、今年のグランツールで大活躍したクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)が続いた。

ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャの2冠「ダブル・ツール」を果たしたクリストファー・フルームはUCIワールドツアー個人ランキング2位 =ツール・ド・フランス2017第21ステージ、2017年7月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 フルームは、グランツール2冠「ダブルツール」を果たしたツールとブエルタ・ア・エスパーニャで大幅にポイントを獲得。1位のヴァンアーヴェルマートとは130点差。UCIワールドツアーのポイント配分はレースの格によって変わるため、一概に「どのレースで勝てばトップに立てたか」といった見方が難しい側面があるものの、今年は例年よりもツールに目指しての調整がゆっくりだったこともあり、シーズン前半に開催されたステージレースの順位次第では違ったランキング結果になっていた可能性もあった。

ジロ・デ・イタリアを制したトム・デュムランがUCIワールドツアー個人ランキング3位となった =ジロ・デ・イタリア第21ステージ、2017年5月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロ・デ・イタリア制覇でグランツールレーサーとしての新境地を開拓したデュムランは、シーズン後半もビンクバンクツアー(8月7~13日、オランダ・ベルギー)でも総合優勝と、狙ったレースでしっかりとポイントをゲットした。

 昨年1位になったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は4位。昨年ほど大きなレースで勝利を挙げられなかったことに加え、複数のステージ勝利が見込まれていたツールでの失格(第4ステージで離脱)が響いた。

 今年から配分が変わり、下位でもポイント付与されるシステムとなり、多くの選手にチャンスが出たとはいえ、ランキングにおいてはグランツールやステージレースを得意とする選手が有利に働く点はこれまで同様。例えば、ツール総合優勝だと1000ポイントを獲得できるが、パリ~ルーベ制覇で得られるのは500ポイント。

 もちろん、さまざまな事情が絡んでの最終結果ではあるが、クラシックレーサーであるヴァンアーヴェルマートが今年グランツール2勝のフルームらを破って年間1位となった点については、今年の活躍は大いに評価されるべきものであるといえるだろう。

 これらに関連し、各選手の獲得ポイント合算によって順位が決まるチームランキングでは、フルームのポイントが効いたチーム スカイが1位。2位のクイックステップフロアーズとはわずか154ポイント差だった。ヴァンアーヴェルマートが牽引したBMCレーシングチームが3位、デュムラン擁するチーム サンウェブは4位。マルセル・キッテル(ドイツ)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア)が勝利数を伸ばしたクイックステップフロアーズを含め、“スーパーエース”を抱えるチームが軒並み上位に進出した。

UCIワールドツアー2017年シーズン 最終ランキング

●個人トップ10
1 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 3582 pts
2 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 3452 pts
3 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) 2545 pts
4 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 2544 pts
5 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 2196 pts
6 ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、チーム スカイ) 2171 pts
7 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 2105 pts
8 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) 2050 pts
9 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 2049 pts
10 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) 1987 pts

●チーム
1 チーム スカイ 12806 pts
2 クイックステップフロアーズ 12652 pts
3 BMCレーシングチーム 10961 pts
4 チーム サンウェブ 8033 pts
5 トレック・セガフレード 7934 pts
6 モビスター チーム 7399 pts
7 オリカ・スコット 7190 pts
8 ボーラ・ハンスグローエ 6516 pts
9 アージェードゥーゼール ラモンディアル 6316 pts
10 キャノンデール・ドラパック 5748 pts
11 カチューシャ・アルペシン 5619 pts
12 UAE・チーム エミレーツ 5494 pts
13 ロット・ソウダル 5466 pts
14 バーレーン・メリダ 5277 pts
15 アスタナ プロチーム 5018 pts
16 チーム ロットNL・ユンボ 4846 pts
17 エフデジ 3616 pts
18 ディメンションデータ 2530 pts

ツアー・オブ・クワンシーはウェレンスが初代王者に

 UCIガラの前に行われたUCIワールドツアー最終戦、ツアー・オブ・クワンシーはティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が個人総合優勝。大会の初代王者に輝いた。

 舞台は、中国最南部の広西チワン族自治区。この時期でも気温が高く、選手たちは一様に半袖ジャージでレースに臨んだ。

ツアー・オブ・クワンシー初代王者に輝いたティム・ウェレンス Photo: Photo News

 ウェレンスは、今大会唯一の頂上フィニッシュである第4ステージ(151km)で好走。フィニッシュ前約3kmから始まる急な上りが勝負の分け目と予想されたが、その通りに総合成績を目指す選手たちが熾烈な争いを展開。ウェレンスはバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)と抜け出し、最後はマッチスプリントの様相に。ここはスピードに勝るウェレンスに軍配が上がり、そのまま総合リーダーに立った。

 このステージ以外はおおむね平坦で、いずれもスプリントフィニッシュとなったため、トラブルなく走り切ったウェレンスの個人総合優勝が決定。2位はモレマ、3位はニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム)。戦前の予想では総合優勝候補一番手に挙げられていたジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)は4位だった。

ツアー・オブ・クワンシーでステージ4勝の大活躍を見せたフェルナンド・ガビリア。文句なしのポイント賞となった。写真は第1ステージ © Quick-Step Floors Cycling Team / Tim de Waele

 また、大会を通してガビリアが快進撃。開幕から3ステージ連続で制し、第4ステージで遅れたためリーダージャージは手放したものの、最終の第6ステージで復権をアピールする今大会4勝目。文句なしのポイント賞獲得となった。

 この大会には日本人選手も4人出場。新城幸也(バーレーン・メリダ)が個人総合38位、NIPPO・ヴィーニファンティーニの伊藤雅和が同104位、内間康平が同109位。いずれも要所でのアシストで貢献している。窪木一茂(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)は、第5ステージを前にレースから離脱している。

ツアー・オブ・クワンシー 最終成績

●個人総合
1 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) 20時間59分49秒
2 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +6秒
3 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム) +11秒
4 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) +15秒
5 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシングチーム) +18秒
6 マテイ・モホリッチ(スロベニア、UAE・チーム エミレーツ) +24秒
7 ワウト・プールス(オランダ、チーム スカイ) +24秒
8 シルヴァン・ディリエ(スイス、BMCレーシングチーム) +24秒
9 レイン・タラマエ(エストニア、カチューシャ・アルペシン) +29秒
10 メクセブ・デベサイ(エリトリア、ディメンションデータ) +31秒
38 新城幸也(バーレーン・メリダ) +2分47秒
104 伊藤雅和(NIPPO・ヴィーニファンティーニ) +21分32秒
109 内間康平(NIPPO・ヴィーニファンティーニ) +23分35秒

●ポイント賞
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)

●山岳賞
ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム)

●ステージ優勝者
第1ステージ(107.4km) フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 2時間20分1秒
第2ステージ(156.7km) フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 3時間43分54秒
第3ステージ(125.4km) フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 2時間41分57秒
第4ステージ(151km) ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) 3時間23分18秒
第5ステージ(212.2km) ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) 5時間4分21秒
第6ステージ(168.1km) フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 3時間46分30秒

今週の爆走ライダー−ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール ラモンディアル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 シーズン後半に入って、ワンデーレースで上々の結果を残し、好調をアピール。エースの1人として、10月7日のイル・ロンバルディア(イタリア)へと臨んだ。

10月7日のイル・ロンバルディアを走るヤン・バークランツ。この後激しいクラッシュに見舞われる Photo: Yuzuru SUNADA

 やる気に満ちていたレースだったが、1つのトラブルで運命は暗転。下りでバランスを崩し、ガードレールの外へと飛ばされてしまった。約7m落下し、岩場に背中を打ち付けられた。合わせて11カ所の骨折。当時の状況を振り返り、救急車で運ばれた際の苦痛が忘れられないという。ちょっとした振動で体は痛み、さらには病院までの搬送に時間を要した。

 幸い下半身は動き、今では骨の回復を待ちながら歩行リハビリに取り組む段階まできている。問題は、医師からけがをする前の状態にまで回復できるかの保証をされておらず、レースシーンへの復帰が可能かどうかが見えていない点だ。それでも本人はポジティブな姿勢を崩さない。「レース復帰は焦っていないし、決してサイクリングが人生のすべてではない。何よりも家族の存在が大切」。

 レイディオシャック・レオパード時代の2013年には、ツールで1勝を挙げ、マイヨジョーヌも2日間着用した実力者。得意とするワンデーレースのほか、グランツールでは逃げ屋としてレースを盛り上げる存在だ。31歳と老け込む年齢ではないだけに、まだまだこれからというタイミングでプロトンを去るのはあまりにも惜しい。

 けがが癒えたとき、彼自身がどんな決断を下すのか。もうしばらく見守る必要がありそうだ。チーム関係者やファンが期待するのはやはり、心身を休めてまたレースで活躍する姿を見せることだ。

2013年のツール・ド・フランスではマイヨジョーヌを2日間着用したヤン・バークランツ。けがから復活して華麗な走りは見られるだろうか =ツール・ド・フランス2013第2ステージ、2013年6月30日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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