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東日本大震災復興支援イベント開催6年目「サイクルエイドジャパン2017 in 郡山 ツール・ド・猪苗代湖」 125kmの健脚コースに挑戦

by 大星直輝/ Naoki OHOSHI
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 福島県猪苗代湖の周回をメインのコースに組み入れた「CYCLE AID JAPAN 2017 in 郡山 ツール・ド・猪苗代湖」が、10月14日に開催された。東日本大震災被災翌年に始まり、今年で6年目を迎えた同イベント。復興支援を目的として福島・宮城・岩手の東北3県で開催されていたが、2014年以降は福島県のみでの開催となった。今までの大会で寄せられた「もっと走りたい」という声を受け、今年は125kmのコースを新設。前半に3つの峠を越え、後半に猪苗代湖を一周するという走り応え十分なハードコースだ。今回はその新コースを中心に、大会の模様を写真とともに紹介する。

猪苗代湖沿いの湖畔を走る参加者 Photo: Naoki OHOSHI

脚に合せて選べる3コース

125キロコースに参加の「チーム女川」は宮城県から参加。男女混合の健脚チーム。「同じ被災地同士、復興頑張るぞ!」<br /> Photo: Naoki OHOSHI

 昨年まで55kmと90kmだったコースは、50kmと85kmに変更され、新たに裏磐梯の山岳を含む125kmコースが追加された。参加者はそれぞれ50kmコースは30人、85kmコースは700人、125kmコースは400人と過去最多。13歳から80歳まで幅広い年代のサイクリストが秋のライドを楽しんだ。

 昨年の大会は大雨だったが、今年も前日から雨模様。大会当日の雨が心配されたが、なんとか大会当日の朝には止んでくれた。

参加者による、復興への応援メッセージコーナー Photo: Naoki OHOSHI
大会前とゴール後にストレッチサービスを行なってくれる、福島医療専門学校のスタッフ Photo: Naoki OHOSHI
125キロコースのスタート前の参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 郡山市の温泉地でもある磐梯熱海駅近く、郡山スケート場を午前8時にスタート。すでに稲の収穫が終わった田んぼを眺めながら、緩やかなアップダウンを経て、「母成グリーンライン」を進む。5kmも走らないうちに本格的な上りが始まった。

号砲と共にスタートする125kmの参加者 Photo: Naoki OHOSHI
スタートする125kmコースの参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 「石筵(いしむしろ)ふれあい牧場」の脇を抜け、会津戦争の舞台にもなった母成峠を抜ける頃には、すでに集団は完全にバラバラとなり、皆マイペースにペダルを踏みしめていく。

前半のアップダウンをグループで走る参加者。まだまだ余裕の笑顔 Photo: Naoki OHOSHI
参加者と走る、Khodaa Bloomのサポートカー Photo: Naoki OHOSHI
母成グリーンラインの登り途中にある、湧き水を汲む地元の参加者。「水がおいしいので、いつもここで給水します Photo: Naoki OHOSHI
母成峠に近づくと、木々が紅葉で色づき始める Photo: Naoki OHOSHI
畜産研究所・給水所で休憩する参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 給水所で水をもらい、“昭和レトロ”な雰囲気が漂う中丿沢温泉を抜けたあたりで最初のエイドステーションに到着。中丿沢温泉は泉質が酸性硫黄泉で、その噴出量は毎分13,400Lにもなるそうで、単一の涌き出し口の噴出量としては日本一だ。温泉宿で人気の日乃出屋さんがふるまってくれた自慢の「天ぷらまんじゅう」の優しい甘みが、峠を越えた体に心地よい。

日乃出屋さん自慢の天ぷらまんじゅう。粒あんとこしあんと2種類ある Photo: Naoki OHOSHI
中丿沢エイドステーションにて、天ぷらまんじゅうを配る日乃出屋さんのご夫婦。「真心込めて、全部手作りです」 Photo: Naoki OHOSHI

絶景とグルメがお出迎え

裏磐梯・秋元湖のビューポイント Photo: Naoki OHOSHI

 国道115号を右折すると2つめの上りにさしかかる。ここは自動車用の登坂車線の区間があり、車が多く坂も急だ。道路脇には収穫した野菜などを販売しているお店が並び、初秋の土曜日ということもあって、多くの方が買い物を楽しんでいるようだった。自転車でなければ自分も是非寄りたいと思いながら、黙々と国道を上っていく。

紅葉で有名な中津川渓谷を覗き込む観光客 Photo: Naoki OHOSHI
鮮やかな紅葉と、川の流れのコントラストが美しい中津川渓谷 Photo: Naoki OHOSHI
紅葉の山々に囲まれた秋元湖。1888年に磐梯山の噴火によってできた Photo: Naoki OHOSHI
3つ目の上りの頂上には悪魔おじさんが参加者を応援。ママチャリで125kmコースに参加する健脚 Photo: Naoki OHOSHI

 やがて左に曲がると「磐梯吾妻レークライン」に入った。「レークライン」という名の通り、秋元湖と小野川湖にはさまれた道なのだが、数カ所の湖を眺められる場所があるのみで、基本的にはアップダウンの続くサイクリストに厳しい山道である。晴天であれば見える磐梯山も残念ながらこの日は顔を見せてはくれなかったが、標高が1000m近く気温が低いため、色づき始めた紅葉を眺めながら、美しい自然の中を走る事ができた。

手前の櫛ヶ峰(1636m)は見れたが、奥の磐梯山(1819m)は雲の中 Photo: Naoki OHOSHI
裏磐梯の下り道。最も紅葉がきれいだったポイント Photo: Naoki OHOSHI

 3つめの上りをなんとか走り切った所で2カ所目のエイドステーションに到着。まだ45km程しか進んでいないが、ここまでの上りですでに体は疲労困憊だった。このエイドでは、会津の郷土料理「こづゆ」をクリームシチュー風にアレンジした温かい食べ物がふるまわれた。さといも、キクラゲ、ごぼう、人参などが小さく刻まれ、さらに下にはご飯も入っており、優しい味わいのドリアのようで参加者たちにも好評だった。

会津の郷土料理「こづゆ」をクリームシチュー風にアレンジしたもの Photo: Naoki OHOSHI
会津の郷土料理「こづゆ」を笑顔でふるまってくれた、エイドステーションの皆さん Photo: Naoki OHOSHI
「こづゆ」のおいしさに笑顔がこぼれる参加者 Photo: Naoki OHOSHI

静かな癒しの湖畔ライド

 ここからゆるやかに下っていくと、今までの山の景色は田園風景へと様変わり。車通りも建物も増え、久しぶりの平坦路を走り続けると、ついに猪苗代湖に到着した。信号待ちで一緒になった参加者が、「すでに両脚がずっとつっていて、もうヘトヘトです」というように、かなりのハードコースだ。ここまでの距離は約60km。まだ半分にも達しておらず、完走への不安がよぎる。なぜならこれから走る猪苗代湖は日本で4番目の大きさを誇る湖なのだ。

会津レクリエーション公園・チェックポイント Photo: Naoki OHOSHI
東京から6年連続で参加の、大友さんの愛車「丸石エンペラー」。秋田県出身で東北のイベントにはよく参加するそう Photo: Naoki OHOSHI

 湖畔沿いの道は、車は多いものの、平坦で走りやすい道が続いた。猪苗代湖は別名「天鏡湖」とも呼ばれ、かつては水質日本一にも輝いた事もあるが、連日の雨で残念ながら濁り気味。それでもやはり雄大な湖を眺めながらのサイクリングは気持ちがいい。「会津レクリエーション公園」内の給水所兼チェックポイントを過ぎると、湖畔からはなれて、のどかな田園風景を進む。

猪苗代湖の西側。すすきが咲き、すっかり秋景色 Photo: Naoki OHOSHI

 稲刈りの時期とあって、田んぼが鮮やかなパッチワークのように広がっている。ひたすら続く平坦な道だが、わずかな向かい風が、疲れた脚にきつい。前後に参加者が見えなくなり、完全にマイペースで走る。途中「黒森トンネル」を過ぎ、引き続き田園風景の中を進むと、青松浜湖水場近くの湖畔に出た。

エイドステーションや給水所には、フロアポンプやスペアチューブの販売。ファーストエイドキットなども揃う Photo: Naoki OHOSHI
スチールバイク好きにはぐっとくる名前の黒森トンネル。車線1幅分くらいの歩道が確保してあり、自転車でも安心して通行ができる Photo: Naoki OHOSHI
猪苗代湖を撮影する悪魔おじさん Photo: Naoki OHOSHI

 ここからの道は穏やかで雄大な猪苗代湖を左手に眺めながら、まさに湖面に手の届きそうな程の近さで走る事ができる。

 その景色の美しさに、疲れ果てていた体にわずかな元気が戻り、ママチャリ参加の「悪魔おじさん」グループと共にゴールを目指すこととなった。

一日中曇りだったが、一瞬猪苗代湖に日が射して湖面を照らしてくれた Photo: Naoki OHOSHI

 少年湖畔の村エイドステーションでは、地元・湖南高原産の新そばや、野菜がふるまわれた。ボランティアの桑名秀一郎さん(62歳)は「おいしいそばを食べて、残り約2kmを頑張って!」と参加者を応援してくれた。ここには30人以上のボランティアの方がいて、活気にあふれていた。

湖南高原の新そば。疲れて冷えた体に、温かいそばが嬉しい Photo: Naoki OHOSHI
少年湖畔の村・エイドステーションの地元ボランティアスタッフの皆さん Photo: Naoki OHOSHI
少年湖畔の村・エイドステーションの、採れたて野菜 Photo: Naoki OHOSHI
採れたての新鮮な野菜を堪能する参加者 Photo: Naoki OHOSHI
左より東京から参加の菅波翔太郎さん(24歳)と、いわき市より参加の高橋侑矢さん(23歳)は高校の同級生。「あまりのハードさに景色を見る余裕がありません。フードはおいしいです!」 Photo: Naoki OHOSHI
宮城県の病院・リハビリ科の仲間で参加。左より工藤尚哉さん(45歳)、菅野良さん(32歳)、大友康平さん(29歳)、岩渕皓平さん(26歳)。「紅葉がきれいで疲れが吹っ飛んだ。」「そばがおいしくて、エイドのみんなが優しい」など、125kmコースを満喫 Photo: Naoki OHOSHI

「ヘトヘト」でも大満足!

上戸・エイドステーションの酪農カフェオレ。地元のソウルフードならぬ“ソウルドリンク”とのこと Photo: Naoki OHOSHI

 国道9号を湖畔沿いに進み、最後の上戸エイドステーションに到着。残り時間に余裕がないため、自転車に乗ったまま「酪農カフェオレ」をいただくと、ついに猪苗代湖畔を離れた。国道49号・越後街道を東へゴールへと向かう。9km程の長い下りが続き、磐梯熱海の温泉街を抜けると、ゴールまで約1kmの最後のとどめのような上りが待っていた。

 文字通り“最後の力”を振り絞り、大会終了17時の少し前に、ようやく郡山スケート場にゴールすることができた。

やっとの思いで125kmコースをゴールしたという高城勝さん(52歳、写真中央)は「疲れ過ぎてガッツポーズもできません。満足を通り越して、限界の向こう側も見えました」。笑顔で迎えてくれた85kmに参加のお友達と Photo: Naoki OHOSHI

 東京から参加の高城勝さん(52歳)は「限界の向こう側が見える程ヘトヘトです」と疲れ切った表情を見せながらも満足そうで、一緒に訪れた85kmコースの参加者に出迎えられていた。GPSのログを見ると、獲得標高は1840mであったが、そのほとんど全てが前半3分の1の区間に集中しているため、いかに上り区間で後半に備えて体力を残すかが、余裕を持って走るための鍵となるだろう。

ゴール後に配られた記念Tシャツ Photo: Naoki OHOSHI

 その前半の母成峠と裏磐梯の緑と紅葉の山々と、後半の猪苗代湖や田園風景の両方が楽しめるバラエティに富んだコースで、“脚自慢”のサイクリストにおすすめ。ゴール近くの磐梯熱海温泉に宿をとって、ゆっくり疲れを癒せば、きっとまた訪れたくなる大会となるはずだ。
 

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