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雨中の激しい攻防はNIPPOに軍配カノラが完勝、地元・雨澤毅明が“悔しい”3位表彰台 ジャパンカップ・ロードレース詳報

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 スタート直前のレース距離短縮が、“本気”の選手たちの心に火をつけた。超大型で非常に強い台風21号が接近する雨中のサバイバルレースは、前半から激しい攻防が繰り広げられ、最後5人による競り合いをマルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)が制覇。前日のクリテリウムに続く、大会史上初の2冠となった。

「2017ジャパンカップ」ロードレース表彰式。(左から)2位のベンジャミ・プラデス、優勝のマルコ・カノラ、3位の雨澤毅明 Photo: Naoi HIRASAWA

荒天でスタート直前にレースが短縮に

 一日のレースで勝者が決まる「ワンデーレース」としてはアジア最高ランクに位置付けられる、HCクラス(オークラス=超級)のジャパンカップ。世界最高峰カテゴリーのUCIワールドチームが4チーム参戦し、全14チーム・69選手がエントリーした。コースは1周10.3kmの周回コースを14周回する全長143.2km。周回前半には、このレースの名物である上り「古賀志林道」があり、その後の下りもテクニカル。長い平坦区間も特徴で、例年オールラウンダーが上位を占める。

前日にジャパンカップクリテリウムを制したマルコ・カノラ(右から2人目)は史上初の2冠がかかるレースに臨んだ Photo: Naoi HIRASAWA
地元チームとして期待された宇都宮ブリッツェン Photo: Naoi HIRASAWA

 今大会は、数日前から台風21号の接近により、悪天候の中でのレース開催になることが見込まれた。前日のクリテリウムは雨が降ったり止んだりを繰り返す中で実施されたが、メインイベントであるロードレースが行われる22日は予報通り未明から強い雨が降り続く状況。朝になっても天気が回復する兆しは見えなかった。

 このため、スタート約1時間前にレース距離を短縮する判断が下された。10周回、103kmに変更され、山岳賞は2、4、6、8周回目と、偶数周回に設けられることが決まり、各チーム・選手へと伝達された。

スタートラインに並んだ69人の出場選手。最前列中央にはディフェンディングチャンピオンのヴィレッラが収まる Photo: Ikki YONEYAMA
雨が降りしきるなか、午前10時にレーススタート。当初予定の14周から10周に短縮された Photo: Ikki YONEYAMA

序盤から有力チームが攻撃

1周目の古賀志林道で山本元喜(右)ら多くの選手が攻勢をかける Photo: Naoi HIRASAWA

 そうして迎えたレースは、スタートの号砲直後から逃げを狙う選手たちがハイスピードで最初の上りである古賀志林道へと突っ込んでいった。はじめは10人を超える逃げグループが形成されたが、2周回目に設けられたこの日最初の山岳賞を前に3人が飛び出した。アントワン・トールク(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)、初山翔(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)が快調に飛ばしたまま、山岳ポイントへ。ここをルバが1位で通過した。

 先頭の3人を見送った選手たちは、そのまま追走グループを形成。別府史之(トレック・セガフレード)ら、実力のある9人が前を追う。いっぽうメイン集団は、第2グループまでにワールドチームを含む有力チームのほとんどが強い選手を送り込んだことで、逃げを容認するムードに。2周目を終えた時点で先頭から2分、第2グループからも1分30秒と一気にタイム差が開いた。

協調体制の整った3人の逃げグループ Photo: Naoi HIRASAWA
別府史之ら有力選手を含んだ追走集団 Photo: Naoi HIRASAWA

 この展開に待ったをかけたのが、地元の宇都宮ブリッツェンだ。1周目にエースの雨澤毅明がトラブルで若干遅れたため、先行グループに選手を送り込めておらず、レース序盤ながらアシスト選手総動員でメイン集団をペースアップした。

メイン集団は後手に回った宇都宮ブリッツェンが、アシスト総出で先行グループを追走 Photo: Ikki YONEYAMA

 必死の追走は1周回以上に及んだが、第2グループのペースがさほど上がらなかったこともあり、4周目に第2グループを吸収。先頭を逃げる3人は残ったものの、ブリッツェンが圧倒的不利となっていた状況を打開し、レースをリセットすることに成功した。

 快調に逃げ続ける先頭では、4周目に再び山岳賞争いが展開され、ここはトールクとのスプリントを制した初山が獲得した。

長い下りを終えての左コーナーを通過する先頭の3人。先頭は初山翔 Photo: Naoi HIRASAWA
一つになった集団が逃げの3人を追う Photo: Naoi HIRASAWA
古賀志林道から下りきると、コーナーに観戦エリアが設けられている Photo: Naoi HIRASAWA

2連覇狙うヴィレッラ、意地のアタック

 レース中盤は、逃げ3人とメイン集団とは1分30秒前後の差で推移した。やがて集団では2連覇を狙うダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)擁するキャノンデール・ドラパックがコントロールを開始。しかし、雨と寒さの影響からか思うように先頭3人とのタイム差を縮めることができない。レースを活性化させるべく、6周目には前日のクリテリウム覇者カノラがアシストのイヴァン・サンタロミータ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)に率いられ、メイン集団の前に4人の追走グループを形成した。

6周目にメイン集団から抜け出した4人の追走グループの先頭をアイラン・フェルナンデスが引っぱる。最終決戦に向けての動きが加速 Photo: Ikki YONEYAMA
追走集団に入ったマルコ・カノラ Photo: Naoi HIRASAWA
メイン集団先頭はキャノンデール・ドラパックがコントロール Photo: Ikki YONEYAMA

 先行する第2グループの形成で、さらなるペースアップが必要となったのは、メイン集団を率いるキャノンデール・ドラパック。必死の追走をみせるが、徐々にヴィレッラを支えるアシストを減らしていった。後方の動きが盛んになっている間、先頭では6周回目の山岳賞をトールクがトップで通過した。

残り3周のコントロールラインを通過する先頭の3人 Photo: Ikki YONEYAMA
キャノンデール・ドラパックのアシストが懸命にペースアップ。メイン集団は縦長に伸びる Photo: Ikki YONEYAMA

 7周回目の終わりには、追走グループは6人に人数を増やす。しかしキャノンデール・ドラパックが引っ張るメイン集団も、スピードをさらに上げてその差を縮めてきた。スピードが上がりきったまま迎えた8周回目の古賀志の上りでは、アシストを使い切ったエースのヴィレッラが、やや早い局面ながらも、自らアタックを仕掛けた。集団は猛烈な勢いで追走グループを飲み込み、同時にいくつかのグループへと粉砕された。

 8周回目を終えて、先頭3人は変わらないが、追走に25秒差でヴィレッラとジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、その5秒後ろにNIPPO・ヴィーニファンティーニが先頭を固めて追いかける27人の集団が続いた。

追走を形成したジャスパー・ストゥイヴェン(左)と前年覇者のダヴィデ・ヴィレッラ Photo: Naoi HIRASAWA
NIPPO・ヴィーニファンティーニが逃げを捕まえるため集団を牽引 Photo: Naoi HIRASAWA
ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)がチームメートのマルコ・カノラ(イタリア)を引き連れ、先頭を追う。カノラの後ろを雨澤毅明がマーク Photo: Shusaku MATSUO

 9周回目の古賀志の上りでヴィレッラらは吸収され、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)が先頭でスピードを保ったままの集団から、ついにカノラがアタック。これにベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO)と地元期待の雨澤が反応する。下りと平坦区間でさらに加速し、ついに先頭の3人合流。先頭グループは6人となり、9周回目を終了、ラスト1周の鐘を聞いた。

6人になった先頭集団が最終周回へ Photo: Naoi HIRASAWA

カノラが会心のスプリント

 最後の古賀志の上りでは、ペースアップを図るプラデスをカノラがしっかりマーク。一方、スタート直後から逃げ続けてきたトールクとルバも少し離れて2人に追随。さらに数秒差で雨澤が続き頂上を通過。初山は遅れ、メイン集団に吸収された。

最終周回の古賀志林道をクリアする3人 Photo: Shusaku MATSUO
雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)は最終回、トップからわずかに遅れて山岳ポイントを通過 Photo: Shusaku MATSUO

 下りを経て、上りで遅れ気味だった雨澤が復帰し、先頭は5人でフィニッシュを目指す。懸命に追っていたメイン集団だったが、先頭とのタイム差を縮小することはできないまま最終局面が近づく。

 そして勝負はそのまま、トップを守った5選手による争いになった。最後の直線に入って、先頭で加速したのはカノラ。その後ろからプラデスと雨澤が続くが、スプリント力の差は一目瞭然。前日のクリテリウムも制したスピードマンが、フィニッシュ手前数十メートルで優勝を確信し何度もガッツポーズ。強まる雨の中で鮮やかに優勝のフィニッシュを決めた。

ハードなレースを制し何度もガッツポーズするマルコ・カノラ Photo: Naoi HIRASAWA

 2位はプラデス。3位に雨澤が入り、日本人トップと同時にアジア最優秀賞、さらにヤングライダー賞を獲得した。また序盤から逃げ続けたトールク、ルバも粘りを見せてそれぞれ4位と5位に続いた。

今季絶好調カノラがジャパンカップも制覇

 優勝したカノラは、今シーズンNIPPO・ヴィーニファンティーニ入りした28歳。バルディアーニ・CSFに所属していた2013年と2014年にはジロ・デ・イタリアを完走し、2014年の第13ステージでは勝利している実力者。今シーズンも5月のツアー・オブ・ジャパンでもステージ3勝を挙げるなど、そのスプリント力と勝負強さは高く評価されていたが、クリテリウムとロードレースをともに制するジャパンカップ史上初の快挙を達成してみせた。

NIPPO・ヴィーニファンティーニのキャプテン、ダミアーノ・クネゴ(右)はチームの勝利を大いに喜んだ Photo: Naoi HIRASAWA
2本指を立て、クリテリウムとロードレースの連勝を喜んだマルコ・カノラ Photo: Naoi HIRASAWA
優勝したマルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)が表彰台に飛び乗る。クリテリウムとロードレースのダブル制覇は史上初だ Photo: Naoi HIRASAWA

 レース後の記者会見では、「非常に難しいレースだった」としながらも、「チームのサポートが大きな力になった」とチームメートに感謝を述べた。ウェットな路面状況ながらコーナーでは可能な限り攻めてロスを最小限に抑え、チーム一丸で走ることで、フレッシュな状態で最終周回を迎えることができ、勝利につながったという。

 勝利まであと一歩に迫りながら2位だったプラデスは、表彰台で笑顔。レースを振り返って「2位という結果には満足している」と口にした。一方で、「もう少し距離が長ければチームにアドバンテージがあったと思うが、この結果は短い距離だったことが影響している」と距離の短縮がレース内容を左右したことに触れた。

マルコ・カノラが2日続けてのシャンパンファイト Photo: Naoi HIRASAWA
山岳賞は(左から)初山翔、トマ・ルバ、アントワン・トールクと、序盤から逃げた3人が分け合った Photo: Naoi HIRASAWA

 3位の雨澤は、「負けだから悔しい」と複雑な表情。序盤の展開では一時、自身を含むチーム全体が取り残される難しい状況に陥ったが、「やばいと思ったけど、チームメートがカバーしてくれた」とアシスト勢へ感謝の言葉を述べた。

 地元の宇都宮ブリッツェンとしては、これまで山岳賞などで表彰台に登ることはあったものの、レース自体の表彰台(3位以内)は雨澤が初めて。ブリッツェンの清水裕輔監督は「無線では状況が入ってこなかったが、選手が自分たちで動いてくれた」と選手の働きを称えた。そして「ついに3位、また(来年の)ハードルを上げてしまった!」と念願のジャパンカップ表彰台に満面の喜びをみせた。

2017ジャパンカップサイクルロードレース結果(103km)
1 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) 2時間45分37秒
2 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +0秒
3 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +0秒
4 アントワン・トールク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +0秒
5 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム) +0秒
6 ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) +34秒
7 ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チームグスト) +34秒
8 エンリーコ・バッタリン(イタリア、ロットNL・ユンボ) +34秒
9 ダニロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム) +34秒
10 畑中勇介(チームUKYO) +34秒

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