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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<227>チームTTとパヴェが復活 ツール・ド・フランス2018の全容が明らかに

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 世界最大の自転車ロードレース、ツール・ド・フランス2018年大会のコースプレゼンテーションが、フランス時間10月17日の午前から昼過ぎにかけて行われた。そこでは、来年のツールでプロトンが走行する全21ステージ、総距離3329kmの全容が明らかとなった。2018年大会では、チームタイムトライアル(TT)とパヴェ(石畳)が3年ぶりに復活。それぞれ大会前半の重要局面に設定されたほか、例年通りアルプスとピレネーの両山脈がマイヨジョーヌ争いのカギを握ることになりそうだ。

ツール・ド・フランス2018チームプレゼンテーションを終え、来年の出場が期待される選手たちが記念撮影 ©︎ ASO/Bruno BADE

チームTT、パヴェがプロトンを動かす第1週

 フランスの首都・パリ市内で行われたプレゼンテーションには、大会関係者をはじめ、来年の出場が期待される選手たちも多数招待された。なかには、今シーズン限りでの現役引退を発表し、10月21日のジャパンカップクリテリウムへの参戦を表明しているアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)の姿もあった。

 ツールを主催するA.S.O.(アモリー・スポル・オルガニザシオン)会長のジャンエティエンヌ・アモリー氏、大会ディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏のスピーチなどに続き、3D映像によってツール2018のコースが明らかとなった。

ツール・ド・フランス2018ルートマップ ©︎ ASO

 第105回ツールのグランデパール(開幕地)は、フランス北西部・バンデ県のノワールムティエ・アン・リル。189kmで争われる第1ステージは平坦なコースが設定され、ステージ優勝者が自動的にこの大会最初のマイヨジョーヌ着用者となるが、スプリンターが有力だ。

 バンデ県では4ステージ実施。第3ステージは、3年ぶりに復活のチームTT。チーム力を試す35kmのコースが用意される。

 その後しばらくは、西に臨むビスケー湾やケルト湾沿いをなぞりながら北へと進行。第6ステージは、こちらも3年ぶりとなるミュール・ド・ブルターニュの上りが待ち受ける。2015年大会でプロトンを粉砕した急坂がツールへと帰ってくる。

 大会前半のヤマ場となること必至なのが、第9ステージ。これまた3年ぶりとなるパヴェステージがツールに戻ってくる。しかも、フィニッシュ地は“北の地獄”パリ~ルーベでおなじみのルーベの街だ。アラスを出発し47km地点で最初のパヴェ区間が登場。全15セクターで、これまでは2015年大会のパヴェ総延長13.3kmが最も長い距離だったが、今度はそれをはるかに上回る21.7km。154kmのレースにあって、前半から終盤まで休みなく石畳の路面が現れる驚異の1日。マイヨジョーヌ争いに大きな変化を生む可能性が高い。

ツール・ド・フランス2018第9ステージコースプロフィール ©︎ ASO

第2週はアルプス、第3週はピレネーへ

 第2週は、空路フランス西部へ。アルプス山脈をめぐり、中央山塊を経由して南部を目指す1週間。

ツール・ド・フランス2018第12ステージコースプロフィール ©︎ ASO

 ラ・ロジエールの頂上フィニッシュとなる第11ステージは、108kmのショートステージ。4つのカテゴリー山岳を越えるが、終始ハイスピードで展開されることだろう。続く第12ステージは、おなじみアルプ・デュエズの頂上フィニッシュ。175kmのコースには、アルプ・デュエズと同等の難易度のマドレーヌ峠やクロワ・ド・フェール峠越えも控える。この2日間が大会中盤の重要ステージとなるだろう。

 アルプスを抜け、中央山塊でのステージを経て、2回目の休息日を迎える。

ツール・ド・フランス2018第17ステージコースプロフィール ©︎ ASO

 ツール2018の勝負が決する第3週の舞台となるのは、フランス南部のピレネー山脈。少しばかり隣国スペインへ通過する第16ステージに続き、翌日の第17ステージは65kmとこれまでにないユニークなレース設定がなされた。3つの山岳を越えるこの日は、スタートから上りが始まる、まさにクライマーのための1日。上りの難易度とコースの短さが、レース展開にどのような影響を与えるか。マイヨジョーヌ争いに終始する展開か、はたまた逃げや有力チームのアシスト陣がレースをかき乱すのか、興味は尽きない。そしてこの日が、2018年大会最後の頂上フィニッシュとなる。

 マイヨジョーヌを賭けた最終決戦は第20ステージ、31km個人TTに設定された。ピレネーの麓で行われることもあり、アップダウンに富んだコース。フィニッシュ手前3km地点には、平均勾配10.2%の急坂区間も待ち受ける。苦しみに抜いた先に、ツール完走の光が射すこととなる。そして、このステージを終えて個人総合首位に立つ選手が、第105回ツール・ド・フランス制覇を濃厚とする。

 最終の第21ステージは、もちろんパリ・シャンゼリゼ通りでフィナーレを迎える。

 3週間の総距離3329kmは、例年と比較しても距離が短いのが特徴。また、2018年シーズンから、グランツールにおける1チームあたりの出走人数が8人と、今年までの9人から人数が減るあたりもレース展開に関係してくるかもしれない。なお、会期は7月7日(土)から29日(日)まで。FIFAワールドカップ・ロシア大会との期間のバッティングを避けるため、いつもより1週間ほど開幕日を下げて行われることになる。

 そのほかでは、ツールと併催される女子レース、ラ・クルス・バイ・ツール・ド・フランス第5回大会の開催日も決定。ツール第10ステージが行われる7月17日、この日のステージをアレンジした118kmのコースで争われ、男子レースと同じくル・グラン・ボルナンにフィニッシュする。

ツール・ド・フランス2018

7月7日 第1ステージ ノワールムティエ・アン・リル~フォントネー・ル・コント 189km
7月8日 第2ステージ ムユイロン・サン・ジェルマン~ラ・ロッシュ・シュル・ヨン 183km
7月9日 第3ステージ ショレ~ショレ 35kmチームタイムトライアル
7月10日 第4ステージ ラ・ボール~サルゾー 192km
7月11日 第5ステージ ロリアン~カンペール 203km
7月12日 第6ステージ ブレスト~ミュール・ド・ブルターニュ 181km
7月13日 第7ステージ フージェール~シャルトル 231km
7月14日 第8ステージ ドルー~アミアン・メトロポル 181km
7月15日 第9ステージ アラス・シタデール~ルーベ 154km
7月16日 休息日 アヌシー
7月17日 第10ステージ アヌシー~ル・グラン・ボルナン 159km
7月18日 第11ステージ アルベールヴィル~ラ・ロジエール・エスパス・サン・ベルナルド 108km
7月19日 第12ステージ ブール・サン・モリス・レザルク~アルプ・デュエズ 175km
7月20日 第13ステージ ル・ブール・ドアザン~バランス 169km
7月21日 第14ステージ サン・ポール・トロワ・シャトー~マンド 187km
7月22日 第15ステージ ミヨー~カルカソンヌ 181km
7月23日 休息日 カルカソンヌ
7月24日 第16ステージ カルカソンヌ~バニェール・ド・ルション 218km
7月25日 第17ステージ バニェール・ド・ルション~サン・ラリー・スラン 65km
7月26日 第18ステージ トリ・シュル・バイズ~ポー 172km
7月27日 第19ステージ ルルド~ラランス 200km
7月28日 第20ステージ サン・ピー・シュル・ニヴェール~エスプレット 31km個人タイムトライアル
7月29日 第21ステージ ウイユ~パリ・シャンゼリゼ 115km

総距離 3329km

有力選手たちの反応は?

 コース発表を見守った選手たちも、一様にツール2018のコースへの興味を示し、攻略方法を探っているようだ。

ツール2018コースプレゼンテーションの場でフランスのサイクルアワード「ヴェロドール」の表彰を受けたクリストファー・フルーム ©︎ ASO/Bruno BADE

 個人総合4連覇を目指すクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)は、コースプレゼンテーション内で行われたフランスのサイクルアワード「ヴェロドール」の表彰を受けた。終了後にコースについてコメントし、「第1週は特に緊張感のあるレースが続くだろう」と述べ、パヴェが登場する第9ステージについても「来年のパリ~ルーベには注目しておかないといけない」と続ける。また、アルプ・デュエズを上る第12ステージがクイーンステージになると見ており、第1週は無視できないとしながらも「アルプスやピレネーのためのチーム(山岳アシスト)は妥協したくない」と意気込みを見せた。

コース発表を見守るアルベルト・コンタドール ©︎ ASO/Bruno BADE

 コンタドールは、「65kmのステージ(第17ステージ)はコントロールが難しい1日になるだろう」と分析。チーム・個人の両タイムトライアルについては、「それほど重要になるとは思わない」とも。

 フランス自転車界悲願のマイヨジョーヌに期待が膨らむロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアル)は、「多様性のあるバランスの取れたルート」と評価。大会前半のフランス北部でのステージについて、「パヴェのほか強風がプロトンを崩す要素になる」と見る。また、総合成績を狙ううえで重要となる山岳ステージでの活躍も誓った。

 今年のツールでは不発に終わり、再浮上に燃えるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)は、「自分向きのステージがそろっている。得意とする山岳のほか、タイムトライアルも長くない。パヴェや平坦ステージでは、チームがサポートしてくれるだろう」と自信を見せる。

 このように、発表直後のコースに対しての見方はさまざま。選手・チームそれぞれに研究を進め、戦い方を練っていくことだろう。ツール2018の覇権をめぐる、この先の動向にも注視していこう。

今週の爆走ライダー−マルティン・ヴェリトス(スロバキア、クイックステップフロアーズ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 シーズン終盤になると、プロトンを去る選手の話題を避けることができない。特に、トップシーンで活躍し、日本のファンにもおなじみの選手とあれば、なおのこと寂しさが募る。

兄弟でスロバキア代表入りした2014年のUCIロード世界選手権。マルティン(右)とペテル(中)が若きエースのペテル・サガンをアシストした =2014年9月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 双子のライダーとして知られるマルティンとペテルのヴェリトス兄弟。グランツールやステージレースを中心に活躍したペテルが2016年限りでキャリアを終えたが、一方のマルティンも今シーズン限りでレース活動を終えることを決断した。2014年以降は別のチームで走ることになった2人だが、ともに“持ち場”での堅実な走りは高く評価された。

 マルティンは平地でのプロトン牽引でチームに大きく貢献。2010年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合3位となったペテルのようなビッグリザルトには恵まれなかったが、仕事人としてのキャリアを歩んだ。最終シーズンとなる今年は、思うようにレースメンバー選出がなされなかったが、何よりも昨シーズンでのペテルの引退が自らの引き際を考える「一因になった」ことを認める。一緒に練習していたパートナーでもあったペテルの存在は、あまりにも大きかった。

 引退を決めた今は、「人生には他にも大切なことがある」と割り切る。シーズンが終わったら、趣味である狩りに時間を使いたいのだとか。

 そんなマルティンの最終レースは、10月19~24日のツアー・オブ・ガンシー(中国、UCIワールドツアー)。個人総合を狙えるジュリアン・アラフィリップ(フランス)や、スプリンターのフェルナンド・ガビリア(コロンビア)がリードするチームゆえ、引退だからといってあまり感傷に浸っている暇はなさそうだ。「クイックステップフロアーズで引退できることが誇らしい」と語るマルティンには、最後の最後までプロしての仕事が求められているようだ。

絶妙なペーシングのプロトン牽引が高く評価されたマルティン・ヴェリトス。現役最終レースのツアー・オブ・ガンシーでも仕事をまっとうする =ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第7ステージ、2016年8月26日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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