スマートフォン版はこちら

800kmのブルーラインを敷く「サイクリング王国」“水の国”和歌山で世界遺産・熊野古道をゆく 「WAKAYAMA800」のおすすめルートを満喫

by 平澤尚威 / Naoi HIRASAWA
  • 一覧

 全長約800kmのサイクリングルートを2017年度に完成させる和歌山県。これを「WAKAYAMA800」としてPRする和歌山県観光連盟は、自転車専門店のスタッフやメディアを招いて、「サイクリング王国和歌山」の魅力を味わえるツアーを9月に開催した。和歌山は海や川が美しい“水の国”であり、世界遺産に登録されている熊野古道など観光資源が豊か。ブルーラインの整備が進むコースの一部を、2日間のサイクリングで巡った。

熊野古道を走るトレック・ジャパンの野口忍さん Photo: Naoi HIRASAWA

絶景が満載の白浜

 和歌山県に日本最大スケールとなる約800kmのサイクリングロードが整備される。関西有数の海水浴場として知られる白浜など観光スポットも多い海沿いのルートや、熊野や高野山といった世界遺産を巡れる山間部、平坦な紀の川サイクリングロードを軸にしたコースなど、各地にコースが張り巡らされサイクリングと観光を楽しめる。

 WAKAYAMA800のプロジェクトを進めるにあたって、和歌山県観光連盟はバイクブランド「TREK」(トレック)と協力体制を結んでいる。Cyclist編集部は、WAKAYAMA800のPR動画に登場しているトレック・ジャパンの野口忍さんとともに2日間の行程を巡った。

Cyclist編集部と一緒に和歌山を巡ったトレック・ジャパンのマーケティングマネージャー、野口忍さん Photo: Naoi HIRASAWA
南紀白浜空港や展望台へ向かう上り Photo: Naoi HIRASAWA

 白浜は南紀白浜空港から近くアクセスがいいため、関西圏外から和歌山を訪れる人にとってはサイクリングのスタート地点や宿泊拠点にしやすいエリアだ。1日目に巡ったのは、南紀白浜マリオットホテルを起点にした約10kmのコース。この10kmのなかに、さまざまな絶景スポットが散りばめられている。

白浜を一望できる平草原展望台 Photo: Naoi HIRASAWA

 まず南紀白浜空港のある丘へ上っていくと、「平草原展望台」から白浜の海岸エリアを一望できる。展望台から海側へ下っていくと、「南紀白浜オリーブ&ジェラート工房」は店に併設している農園で育てた食材を使った、種類豊富なジェラートを味わえる。オリーブのほか、和歌山の名産である梅や、みかんをはじめとしたフルーツが豊富で季節によってさまざまな味を楽しめる。店の外にはサイクルラックがあるので気軽に停められるのも魅力だ。

農園育てたオリーブや「南紀白浜オリーブ&ジェラート工房」 Photo: Naoi HIRASAWA
「南紀白浜オリーブ&ジェラート工房」のジェラート。 Photo: Naoi HIRASAWA
高さ50mにも及ぶ「三段壁」 Photo: Naoi HIRASAWA

 そこから海岸沿いへ向かうと、人気の観光スポットを次々に巡ることができる。高さ50mにもおよぶ岩が突き出す崖「三段壁」、砂岩層が美しい造形を作り上げた「千畳敷」(せんじょうじき)などの絶景が広がる。野口さんは長い年月を感じさせる千畳敷の模様を見て「グランドキャニオンとか海外みたいですね」とダイナミックな地形に驚いていた。

砂岩層が積み重なった「千畳敷」 Photo: Naoi HIRASAWA
青い海と白い砂が美しい、白良浜を走る Photo: Naoi HIRASAWA

 白い砂浜と青い海が美しい「白良浜」のビーチは、関西有数の人気を誇る海水浴場だけあって気持ちのいい眺めだ。ここでも日本にいながらにして海外でのリゾート気分を味わえる。また、海岸沿いの道路から見える小さな島「円月島」は、ぽっかりと明いた洞穴が特徴。時期によっては洞穴を通して沈む夕日を見ることができ、美しい写真が撮れるスポットとして知られている。

ぽっかりと洞穴が開いた円月島 Photo: Naoi HIRASAWA

 西洋的でありながら独特な外観の「ホテル川久」では、カフェコーナーでケーキとコーヒーを堪能した。内装まで贅を尽くしたホテル川久で休憩をとってから、マリオットホテルへ戻り約10kmのサイクリングを終えた。

西洋的で独特な外観が圧巻の「南紀白浜温泉 ホテル川久」 Photo: Naoi HIRASAWA
 Photo: Naoi HIRASAWA

 南紀白浜を巡るコースは距離だけで見れば短く感じられるが、走ってはすぐに脚を止め、思わず写真を撮りたくなるような絶景スポットが続々と現れる。WAKAYAMA800のサイクリングを楽しむ時には、旅の行程のどこかで白浜エリアを組み込むのがオススメだ。

ニーズに応える「サイクリストに優しい宿」

 WAKAYAMA800では、1日でとても走り切れない広大なコースを整備するにあたり、サイクリストが泊りやすい宿を増やすことを計画。現在県内に2つある「サイクリストに優しい宿」を、2017年度中に50施設まで拡大。サイクリストに必要な設備を整えるだけでなく、サイクリストが何を求めているのかといった講習を行い、サイクリストウェルカムな環境づくりを目指していく。また、サイクルラックや修理工具を置くサイクルステーションを現在の68カ所から300カ所に増やしていく予定という。

自転車を室内に持ち込める「南紀白浜マリオットホテル」 Photo: Naoi HIRASAWA
サイクリストに優しい宿の「南紀白浜マリオットホテル」 Photo: Naoi HIRASAWA

 今回、ツアーの拠点となった宿泊施設はサイクリストに優しい宿のひとつ「南紀白浜マリオットホテル」。バイクスタンドや空気入れ、工具などが借りられるほか、クロスバイクや電動アシストの軽快車などレンタサイクルも用意されている。客室に温泉がついている豪華な部屋もあるが、スタンドやマットをフロントで借りればどの部屋でも自転車を持ち込むことができる。支配人の八田徹さん自身もロードバイクに乗るということもあり、サイクリストのことを十分理解したおもてなしが受けられる。

 Photo: Naoi HIRASAWA
白良浜を見渡せる温泉が設けられた客室もある Photo: Naoi HIRASAWA

歴史ある参詣道や温泉

 2日目に巡ったのは、熊野古道エリアの観光拠点「古道歩きの里 ちかつゆ」をスタートして熊野本宮大社を目指し、もうひとつの「サイクリストに優しい宿」である「川湯温泉 冨士屋」を目指す約30km。歴史を感じさせる建物や風景、このエリアに集中している温泉地を楽しめるルートだ。

「WAKAYAMA800」は山間部も含め広域にブルーラインが敷かれる Photo: Naoi HIRASAWA

 WAKAYAMA800が設定するサイクリングロードは、全域にブルーラインが整備される。一般的にブルーラインは市街地や海沿い、川沿いのサイクリングロードなどに標示されているのを多く見かけるが、和歌山は山間部の国道311号線にも張り巡らされているのが印象的だった。道幅も広く、上りでも下りでも安心して走ることができる。

 熊野三山への参詣道である熊野古道は、現在はアスファルトに舗装された区間と舗装されていない区間がある。そのうち世界遺産として登録されているのは未舗装路で、その区間を自転車で走ることはできない。とはいえ、登録基準はあくまで路面なので、一般道でも熊野古道の風情を味わえるポイントが各所に点在している。

荒れた路面も楽しめる熊野古道を走る野口さん Photo: Naoi HIRASAWA

 サイクリングロードは山々を貫くトンネルを通ることも多いが、そのトンネルに入らず脇道に逸れてみると、舗装路でありながら熊野古道の風情を感じさせる景色に出会うことができる。

 サイクリングロードが通る国道を離れ細い道をクネクネと上っていくと、熊野詣(くまのもうで)の人々の喉を潤した「野中の清水」という湧水があったり、「熊野古道」の道標が立っていたりと、ところどころでこの地の歴史を感じられる。道沿いには民家もあるが、荒れた路面があったりしてグラベルのようなライドを楽しめる区間も。

サイクリング中の水分補給としてもありがたい湧水「野中の清水」 Photo: Naoi HIRASAWA
熊野古道であることを知らせる標識 Photo: Naoi HIRASAWA

 さらにトンネルを迂回していくと、水面がエメラルドグリーンに輝く川に沿ったルートに入った。野口さんは思わず「ここキレイですよ!」と足を止め、想像以上の美しさに目を奪われていた。川のほかにも、ガードレールまで一帯がコケに覆われた情緒のある道もあり、多彩な風景を楽しめた。野口さんは「しっかり走りたい人はサイクリングロードを、風景をゆっくり楽しみたい人は脇道を走ってみたらいいのでは」とそれぞれの魅力を語った。

エメラルドグリーンに光る川面を横目に走る Photo: Naoi HIRASAWA
脚を止め美しい川に見入る野口さん Photo: Naoi HIRASAWA
雰囲気をコケに覆われた道 Photo: Naoi HIRASAWA

豊富に湧き出す温泉

自然の岩でできた浴槽に温泉が湧く「つぼ湯」 Photo: Naoi HIRASAWA

 熊野本宮大社の周辺では、豊富な湯が沸き、「湯の峰温泉」「川湯温泉」「渡瀬温泉」と温泉地が点在している。なかでも湯の峰温泉の「つぼ湯」は世界遺産に登録された温泉で、天然の岩でできた湯船に温泉が湧いており、その湯の色が時間によって一日に何度も変わるのが特徴。2~3人しか入れないほど小さなつぼ湯は要予約で30分交代制。つぼ湯だけでなく公衆浴場も楽しめるほか、川沿いには卵などをゆでられる湯筒が用意されている。

和歌山の温泉地「湯の峰温泉」 Photo: Naoi HIRASAWA
世界遺産に登録されている「つぼ湯」 Photo: Naoi HIRASAWA

 熊野路を走った先にたどり着く熊野本宮大社。「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社」から成る熊野三山のひとつで、1889年に水害によって高台に遷座されたが、旧社地の「大斎原」ともども、今も多くの人が訪れる。熊野本宮大社や大斎原のすぐ近くにある熊野本宮観光協会にはサイクルラックが用意されており、しっかりと施錠したうえでこちらに自転車を置いて参拝することも可能だ。

遷座される前の熊野本宮大社があった場所にそびえる大鳥居 Photo: Naoi HIRASAWA
多くの人が行き交う熊野本宮大社の参道 Photo: Naoi HIRASAWA
熊野本宮大社の神殿 Photo: Naoi HIRASAWA
湯の峰温泉の湯で炊いた薬膳粥プレート Photo: Naoi HIRASAWA

 熊野本宮大社の周辺には、温泉を使ったメニューのグルメもある。「カフェ ボヌール」は温かみのある落ち着いた店内で、植物性の食材で作られたメニューを提供している。「薬膳粥プレート」は温泉で炊いた滋味のある粥、高野豆腐のから揚げなど満足感のある品がプレートに並べられている。サイクリング中でガッツリ食べたいという人には特製グリーンカレーもオススメ。世界遺産・熊野観光で海外客が増えるなか、ビーガン(菜食主義)の人が安心して利用できる店だ。

全てのメニューが植物性の材料で作られているカフェ ボヌール Photo: Naoi HIRASAWA
特製グリーンカレー Photo: Naoi HIRASAWA

 この日のゴールであるもう一つのサイクリストに優しい宿「川湯温泉 冨士屋」はロビーにサイクルラックを常設しフロアポンプなどを貸し出している。宿泊客の自転車は、客室への持ち込みではなく鍵のかかる部屋に保管される。

サイクルラックなどが用意された「川湯温泉 冨士屋」のロビー Photo: Naoi HIRASAWA

 冨士屋には屋内の温泉に加え、川底から湧き出す温泉を川の水と混ぜ温度を調節した、川の中の露天風呂「川湯温泉」がある。冨士屋の前を流れる大塔川の一角に、温泉が湧く場所が河原の石で囲われ、そこが浴場となっている。冨士屋では、河原の露天風呂で着用可能な和風水着を男女用ともに貸し出している。

川から湧き出す「川湯温泉」を楽しむ野口さん Photo: Naoi HIRASAWA
サイクリストに優しい宿の「川湯温泉 冨士屋」 Photo: Naoi HIRASAWA

 熊野古道を自転車で走って熊野本宮大社へ参拝でき、世界遺産を満喫できる熊野エリア。景色も素晴らしく“水の国”の魅力をたっぷりと味わえる。疲れた身体を癒せる温泉と合わせて、ゆっくりと時間をとって巡りたいルートだ。

熊野大社周辺は各所に川が流れる Photo: Naoi HIRASAWA

 今回巡った2つのルートは、走る前はどちらも「ちょっと短いな…」という印象だったが、いざ走り出してみると駆け抜けてしまうのは惜しくなり、「時間が足りない!」と思うほど魅力ある風景、スポットが凝縮されていた。ブルーラインに沿って和歌山県内を巡りながら、こうした名所が集まるエリアではたっぷりと時間を使いたい。サイクリストに優しい宿や各施設のサイクルラックは、そんな楽しみ方をしたいサイクリストにとっては心強い存在。ルートの整備だけに留まらない和歌山には「また来て走りたい」「今度はどこに行ってみようか」、そう思わせる魅力があった。

関連記事

この記事のタグ

サイクリングロード サイクルツーリズム 和歌山県

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載