福田萌子の「NEXT RIDE」<6>「挑戦の先に見つけたもの」 福田萌子さん「ホノルルセンチュリーライド」完走手記
福田萌子さんが、落車のトラウマを抱えるきっかけとなった「ホノルルセンチュリーライド」でリベンジライドに臨み、見事160kmを走り切りました。最近は自転車にも慣れ、サドルの上でも笑顔を絶やすことのなかった萌子さんですが、この日のライドは、楽しむというよりは何かに挑戦しているような表情。何を思い出し、何を感じていたのか。ライド中の心境を萌子さん自身の手記でお届けします。
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生まれ育った沖縄と似たゆったりと流れる時間やアットホームな人たち。沖縄よりも自然が豊かで、気候もドライで過ごしやすいハワイ。島育ちの私にはとても居心地が良く、1年中いろんなアクティビティが楽しめるので年に何度も訪れています。
今回はそんなハワイで、自分の中の恐怖と戦った160km。『ホノルルセンチュリーライド』という場所へのトラウマとプレッシャーが入り交じり、緊張が解れない160kmでした。私が2年前、落車をしたのはサイクリングロードの印が無く、工事中の大きな鉄のプレートがある道でした。
今回の目標は絶対にけがなく『ホノルルセンチュリーライド』を完走すること!!!それだけに焦点を当てて、次々と目の前に現れるプレートや穴などの障害物を、まるでインベーダーゲームの様にクリアしていきました。
走っている最中は落車後、自転車がまた乗れるようになるまで学んだ事を、ずっと思い返していました。『Cyclist』の連載『福田萌子のもう一度、南の島を走りたい』で1番最初の先生だった元オリンピック代表選手の田代恭崇さんに教えてもらった、下りの時はペダルを平行にしてバランスを取る事。ブレーキは身体全体を使ってかけるとより安全だという事。

そしてキャノンデール・ジャパンのカズさん(山本和弘さん)が、障害物があってもペダルは回し続けた方が安定するけど、萌子さんが怖いと感じたら足を止めてスピードを落としても良いと言ってくれた事。障害物は避けるのかベストだけど、もしも避けられなかったら潔く真っ直ぐ入った方が安全だという事。
万が一前の人が急に止まったらどうするか。私も急に止まれば後ろから衝突され、左によれば車にぶつかる。一瞬の判断力は、その状況に陥った時に気持ちに準備ができているかどうか。
自転車に乗る知識と余裕がある事がどれだけ大切なのか、改めて感じました。自分の中ではひやっとする場面もありましたけど、今まで学んできた事があるし2年前よりも知識も実力も上がっているはず。もし落車した時と同じ場面に直面しても、今なら絶対に回避ができる。そう自分に言い聞かせながら、次に起こりうることを最大限予測し、神経を張り巡らせながら走っていました。
逃げないことが自分を作る

160kmという距離は私の今まで学んできた事を復習するのには長い距離ではなかったように感じます。私は速さや距離ではなく、大好きな自転車に乗っている時間を楽しむことを重視していますが、今回は”いつもの楽しさ”は感じられませんでした。じゃあ何故わざわざホノルルセンチュリーライドに出たのか。
答えは、自分に挑戦し続けたいから。2年前に道半ばで終わった160kmの旅を終わらせたい。トラウマを抱えた弱い自分を超える事でまた一つ成長できる。長い人生の中でたった一つの成長ですが、ここで逃げなかった事が次の私を創っていくのだと思います。何を経験するか、自分が何者であるのか、それを見つけられるのは自分だけ。

そしてホノルルセンチュリーライドを完走できたという事が私の自信になり、これからもっともっといろんな場所で自転車が楽しめるようになると思っています。
日本よりもエントリーがしやすいホノルルマラソンや、ホノルルトライアスロンも毎年参加しています。朝日を浴びながらダイアモンドヘッドを走る瞬間や、海を眺めながらのゴルフは勿論、サーフィンやトレッキング、雄大な自然を感じながら身体を動かす時間が何よりも大好き。
2年前、この最高のロケーションを自転車で楽しめる事に心を踊らせ、お友達と参加したホノルルセンチュリーライド。楽しかったサイクリングから一転、私だけではなく周りにいたお友達、家族を苦しませました。そして安全に自転車に乗っているサイクリストの方達にもご迷惑をかけたかと思います。
今回は自分自身への挑戦という、2年前とは全く違う気持ちで参加しましたが、もっと経験を重ね、いつかこんなトラウマを持っていた事が懐かしくなるぐらい成長して、またホノルルセンチュリーライドに戻ってきたいと思います。

沖縄県出身のモデル。身長176cmの日本人離れしたスタイルで、2010年ミス・ユニバース・ジャパンでは3位入賞。スポーツ用品ブランドのアンバサダーなどを務める。2015年ホノルルセンチュリーライドで落車し、その恐怖から自転車に乗れずにいたが、前連載でトラウマを克服しサイクリング屋久島を完走するまで成長した。