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福田萌子の「NEXT RIDE」<5>トラウマとなったライドを完走 福田萌子さんがホノルルセンチュリーライドにリベンジ

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 イベントの落車事故でけがを負い、心に大きなトラウマを負ったモデルの福田萌子さん。一時は自転車にまたがることにも恐怖心を覚えていたが、練習やイベント参加を重ね、自信を取り戻していった。萌子さんは事故が起こったホノルルセンチュリーライドのスタート地点に2年ぶりに立ち、不安を感じながらも160kmの長い長い道のりを走りきり、心身ともにリベンジの完走を果たした。

道路のすぐ横には青い海と白浜が広がっている Photo: Shusaku MATSUO

「ホノルルだけは別」

「きょうは小さなお守りを持参しました」 Photo: Shusaku MATSUO

 萌子さんはホノルルに到着すると「ホノルルだけは別」と繰り返し話した。再び自転車に乗り始めた当初は、時速10km/hでも、見通しが良いサイクリングロードでも「またタイヤが滑って転ぶかもしれない」という恐怖心から走ることができなかった。しかし、半年の間に努力を積み重ね、「サイクリングが大好き」と思えるまでに至った。「屋久島サイクリング」や「富士ヒルクライム」、「伊豆大島 御神火ライド」にも参加し、心から楽しみながら幾度となく完走を経験している。

大勢の参加者の中、スタートの時刻を待つ Photo: Shusaku MATSUO
スタート直後は日の出の時刻と重なり、海から昇る太陽が見える Photo: Shusaku MATSUO
各所のエイドステーションに置かれた「マラサダ」が人気 Photo: Shusaku MATSUO

 しかし、ホノルルセンチュリーライドのスタート地点に立つ萌子さんの表情は冴えない。大勢の参加者がこれから始まるライドに心躍らせ、会場のボルテージは上がっていく。日本からはライド仲間がイベントに参加し、スタートを共にしたが、萌子さんの口数は少ない。時折笑顔を見せるも「一瞬たりとも道路から目を離したくない。ホノルルの路面は道路の裂け目やマンホールが多いし、ガラスの破片もいたるところに散らばってる。何があっても再び落車はしたくない」と集中。今までのライドとは明らかに雰囲気が違う。

開けた景色だが、道には亀裂や凹凸が大く、恐怖心を感じながら進む Photo: Shusaku MATSUO
熱帯雨林のなか、真剣な表情で進む萌子さん Photo: Shusaku MATSUO

 朝日とともにイベントはスタート。レースではないため、ウェーブ式で参加者が出発していく。萌子さんもそれに紛れて走り始める。スタートから約20km地点の第1エイドステーションに到着しても「今はスムーズに走れているけど、ガタガタの道では怖くてスピードが落ちてしまいます。タイムリミットまでに完走したいから、補給時間ももったいない」とボトルに水を入れると足早にバイクの元へと戻り、コースへと再びペダルをこぎ始めた。

足切りタイムを見極めながら、遅くも速すぎもしないスピードで先へと進む Photo: Shusaku MATSUO

 走り方も日本でのライディングと全く異なった。グレーチングや路上のキャッツアイ(反射板を含む車向けの鋲)を全て避けようと全身に力が入る。ホノルルセンチュリーライドではオアフ島の素晴らしい景色を通過するが、萌子さんは脇目も振らない。

「この第2エイドのあとに落車しました」と思い出す Photo: Shusaku MATSUO
「ここだった!」と落車地点を止まることなく通過 Photo: Shusaku MATSUO

気にかけた落車地点を無事通過

後半から元気と自信が無くなっていった Photo: Shusaku MATSUO

 2つ目のエイドステーションを訪れた際、萌子さんの目からは涙が流れる。「この先のポイントにあったグレーチングで落車をしました。当時は雨が降りフロントタイヤから滑ったのは覚えていますが、気がついたらあたりは血の海でした」と落車当時を振り返る。骨折と顔を縫う怪我を負った大きな事故だった。気持ちは下がる一方だが、一緒に参加した仲間がサポートもあり、第2エイドステーションを出発した。

折り返し地点を前に、頻繁に休憩を入れ、立ち止まる萌子さん Photo: Shusaku MATSUO

 「あ、ここだ!」と差す地点の道路は綺麗にアスファルトが敷かれていた。以前はグレーチングが置かれ、道が悪かった場所だ。萌子さんは止まることなく、現場を通過。ようやく肩の力が抜けてきたようにも見えた。「大体この辺りだったということははっきりと覚えています」と思い出しながら、前へと進んだ。

 折り返し地点が近くなってくると、段々とスピードが落ちてくる。「ちょっと止まりたい」と言い、一時停止をして深呼吸を繰り返す。走り始めたあとも速度が乗らず、表情もスタート時よりもさらに曇り始めた。

100マイルコースの折り返しポイント。フォトスポットになっており、参加者が列を作って撮影していた Photo: Shusaku MATSUO

一言も発せずゴールを目指す

ディレーラーの不調に悩まされたが、エイドステーションにあるメカニカルブースですぐに直してもらった Photo: Shusaku MATSUO

 幾度か休憩でストップを挟んだが、ついに折り返し地点のエイドステーションへと到着。「リアディレーラーの調子が悪いみたい。。。カラカラとした音が鳴るし、ギアがうまく入りません」と訴えていた萌子さんだったが、80km地点の折り返しポイントではメカニックスペースも完備。大会のメカニカルスタッフ手によって、萌子号の電動コンポーネントは調子を取り戻した。カイルア地区では道路と海の距離が近く、白浜と青い海が目前に広がっている。しばらくの間、写真を撮ったり、海辺を眺めるなどリラックスし、復路に向けてペダルを漕ぎ始めた。

一言も発せず、ゴールすることだけを考えてペダルを漕いだ Photo: Shusaku MATSUO

 ゴールへ向かい、走り始めたが、萌子さんのスピードが全く乗らない。アスファルトはひび割れ、急な段差が多発する道路に最大限警戒しているのがわかる。確かに道端ではホイールを外し、パンク修理を行う参加者の姿がよく目に付いた。往路よりもさらに集中し、慎重に走る萌子さん。「全く楽しくない」と呟き、ただ距離を消化していく。「楽しむことが大事!」をモットーとするいつものスタイルとはまるで違う。

 声も発せず、とにかく無言で前へと進んだ。ペダルを踏まないとこの時間は終わらない。ようやくスタート地点となったカピオラニ公園が見えてくると、ゴールへの芝生を駆け抜け、見事大きなトラブルもなくホノルルセンチュリーライドを完走を果たした。

160kmを無事に走りきった Photo: Shusaku MATSUO

 萌子さんは「正直、最初から最後までライドを楽しめませんでした。綺麗な景色が広がっていたのは知っています。でも、全く走りながら眺めようとは思わなかった。お仕事ということもあり、とにかく無事に走り切ることだけ考えました。本当につらい時間だった。プライベートであれば途中でやめてしまったかもだけど、今回は絶対に途中でリタイアだけはしたくありませんでした」と振り返る。

不安と緊張から解かれ、涙を流した Photo: Shusaku MATSUO
100マイルを完走した萌子さん。フィニッシュ地点ですぐに完走証がもらえる Photo: Shusaku MATSUO

 トラウマを負った因縁の大会を完走したが、楽々と走りきったわけではない。今までのレッスンと自らが取り組んできた練習経験を生かし、人生最大の160kmという距離を走りきった。しかし、ホノルルは終わりではなく通過点。翌週には復興支援ライドイベント「ツール・ド・三陸」にゲストライダーとして出走し、走りきった。萌子さんは「これからもサイクリングを他のスポーツのように、ライフワークとして楽しんでいきたい」と力強く語った。

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福田萌子
福田萌子(ふくだ・もえこ)

沖縄県出身のモデル。身長176cmの日本人離れしたスタイルで、2010年ミス・ユニバース・ジャパンでは3位入賞。スポーツ用品ブランドのアンバサダーなどを務める。2015年ホノルルセンチュリーライドで落車し、その恐怖から自転車に乗れずにいたが、前連載でトラウマを克服しサイクリング屋久島を完走するまで成長した。

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