工具はともだち<13>工具が出来るまで・パート2 ――最高900℃の熱処理工程を経て強靭な工具へ

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 前回に引き続き、工具がどのようにして作られるかを紹介します。パート1は、材料をカットして金属を鍛える工程でした。今回は、美しく強靭なボディが出来あがるまでを見ていきましょう。

「機械加工」

 「塑性(そせい)加工」で力強く鍛えられた材料ですが、不要な脂肪分を外部に出してしまい、残念ながらあまり美しい形ではありません。「たいやきが焼きあがった状態」をイメージしていただければよいかと思います。

「塑性(そせい)加工」を終えたスパナの原型「塑性(そせい)加工」を終えたスパナの原型
“みみ”を取り除く「バリ抜き」“みみ”を取り除く「バリ抜き」

 スパナの形は見えているものの、外周全体に余分な“みみ”の部分が残った状態になっています。この“みみ”の部分は、「バリ」呼ばれ、製品となっていくためには全く不要な部分なので、機械で取り除く必要があります。この工程を「バリ抜き」と呼んでいます。

 余分な部分を取り除かれたスパナ(仮の状態なので、“仮スパナ”)は、続いて、ボディに磨きをかけていきます。バリは取り除かれましたが、まだまだ表面(お肌の状態)は決して、完成された状態ではありません。

「ブローチ」と呼ばれる専用の刃物で口径を仕上げる「ブローチ」と呼ばれる専用の刃物で口径を仕上げる

 抜き取り損なった小さなバリが残っていては、使う際に手にキズをつけてしまいます。なので、サンドペーパーなどを使用して、肌表面をなめらかにしていきます。“あかすり”みたいなものでしょうか。

 さらにネジを回す部分(口径)は、表面の美しさに加え、精度が要求されますので、専用の刃物「ブローチ」で仕上げていきます。ここまでくれば、製品として販売されている状態に近づいてきて、工具らしくなってきました。

「熱処理」

 しかし、肝心なのはここから。形は整ったものの、まだ強さを兼ね備えている状態ではないからです。鉄の材料を鍛えて、狙ったボディに形状に変化させただけでは、工具として“一人前”ではありません。強度と粘りを持つ、優れた工具へ――それを実現するために、「熱処理」を施します。

 熱処理の方法は、製品に900℃の熱を入れて一旦冷まし、続いて450℃程度に温める…という作業を繰り返していきます。強靭なボディが出来あがるかどうかは、この工程にかかっているといっても過言ではありません。

温度が表示されるタイプの熱処理機械温度が表示されるタイプの熱処理機械
旧式の熱処理機械。奥に炎がちらっと見える旧式の熱処理機械。奥に炎がちらっと見える

 ちなみに現在の機械には、熱する温度を一定に保つように温度計なども設置されているのですが、それがなかった昔の職人さんたちは、機械の中で燃えている炎の色で、温度をほぼ正確に調整できたと言います。

「表面処理」「検査」

 さぁ、あとは美しく輝くボディに仕上げていきます。“スキンケア”ですね。工具の表面を輝かせているのは、鍍金(めっき)ですが、その“ノリ”をよくするために、まずは下地処理をします。

 専用の機械に、砥石と工具を投入し振動させることで、工具表面を滑らかに仕上げていきます。取り出した工具は、赤ちゃんのお肌のようにすべすべなんですよ。

 すべすべになった工具は、次の機械へと移され、鍍金という“お化粧”を施されます。鍍金は、電着鍍金といった方法を採用しています。専用の装置に取り付けられた工具類を、液体が入っている層へ投入し、電気を通すことで、表面に吸着させていきます。

 最後に検査。クリニックでは、想定した硬さ・表面の美しさ・寸法の精度などを抜き取り検査をしていきます。これで、完成です。

 どうでしたか? 簡単な形状でも、これだけの過程を経てやっと皆さんにお使い頂けるのです。KTCでは、実際に現場見学もできますので、京都にお越しの際は是非お立ち寄り下さいね。駐車スペースはたっぷりご用意させていただいていますが、サイクルスタンドも必要でしょうか?

小池覚(こいけ・さとる)
京都機械工具(KTC)へ入社後、販売企画や商品開発に携わる。学生時代から二輪、四輪が趣味で、整備経験が豊富。自転車は実は始めたばかりだが、工具のプロとして、サイクリストにも整備の“いろは”を伝えることに燃えている。

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