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「エステス・エピック」独占レポート池田祐樹が米コロラド州のMTBレースで準優勝 オフロード下りで時速96.8km!

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 アメリカ・コロラド州で9月2日に開催された、エステスパーク史上初のマウンテンバイク(MTB)のレース「エステス・エピック」に、池田祐樹選手(トピークエルゴンチームUSA)が出場し、記念すべき第一回大会で準優勝を果たしました。その様子を池田選手本人によるレポートで紹介します。

ウォームアップ。気温は一桁だが、遠征最後のレースということで気合は十分。心も身体も熱い ©SayakoIKEDA

◇         ◇

 エステスパークはコロラド州ロッキーマウンテン国立公園の入り口の町として知られる美しいマウンテンタウン。その美しくも険しいロッキー山脈を舞台にマウンテンバイクとトレイルラン、2日間の山岳レースが開催された。

スタート地点。ダイナミックな岩山がバックグラウンドに広がる ©SayakoIKEDA
1周のコースプロファイル。これを2周。平均標高2615m、最高標高2845mの高地レースだ ©estesepic

 土曜日にマウンテンバイク(50マイル・25マイル)、日曜日にトレイルラン(50マイル・フルマラソン・ハーフマラソン)が行われる。私は、50マイルのMTBレースに参戦。コースは、25マイル(約40km)のループを2周、舗装路20%、未舗装路80%(ダブルトラック20%、シングルトラック50%)で構成されている。

スタート直前の主催者ケビン・ベネス氏からのアナウンス ©SayakoIKEDA

 スタート・フィニッシュ地点の標高は約2300m。スタート時の7時半の気温はまだ一桁だが、会場の熱気と興奮で少しのウォームアップですぐに体は熱くなり、汗ばみ始めた。私にとって今レースは約2カ月間のアメリカ遠征の最後のレース。気合が入らないわけがない。成長した力を全て出し、今夏の集大成として有終の美を飾りたい。

スタート。2カ月に渡る長期遠征最後のレース。やってきた全てを出し切る ©SayakoIKEDA

 スタートから6kmほどは舗装路メインのなだらかな上りだが、スタートの号砲とともに牽制もなく、いきなりアタック合戦が始まる。必死に先頭付近の位置をキープする。この区間が終わると、斜度が一気に上がり、長く険しい上りが続く。集団も一気に絞られていく。

 「今日はどうしても勝ちたい」

 その思いで先頭を引っ張った。上り中盤で後ろにはベン・アレン選手(オーストラリア)のみとなり、そこから2人での一騎打ちが早々と始まった。

アレン選手と1周目終えゲートをくぐる ©SayakoIKEDA

同志にして最強のライバルとの闘い

サポーターの清子から受け取ったドリンクとテープでくくりつけられたジェルフラスコ ©SayakoIKEDA

 上りでは若干彼に分があり、私は下りとテクニカルなセクションでリードを作った。ループの中盤はとにかく激しいアップダウンが続く。まだ1周目だが、お互いに惜しみなく全力でぶつかり合った。得意なセクションで少しの差はできるが、決定的な差は生まれない。延々と抜きつ抜かれつを繰り返し、1周目を終える。この時点で1時間42分が経過。

サポーター清子(手前右)から補給を受け取り、アレン選手と2周目に入る ©SayakoIKEDA

 サポーターである妻の清子からドリンクとジェルの補給を受け取る。日が昇り始め、一気に気温も上がり、高標高での乾燥に加え、日差しも非常に強いので水分補給はライフラインだ。アレン選手と同時に2周目へと突入。

 2周目の序盤は先頭交代をして牽制ムード。アレン選手はオーストラリアから来ているエクステラ(オフロード版トライアスロン)のプロ選手。世界選手権3位を3回獲得(2013、2014、2016)という世界トップクラスの実力者だ。私と同じでコロラドの環境に惚れ込み、高地トレーニング合宿を行っている最中とのこと。同志にして最強のライバルとの出会いにさらに闘志が湧き、興奮した。

未舗装路で出した自己最高スピード

 急斜度の長い上り区間で、アレン選手が強烈なアタックをかける。辛い場面でのスピードアップに身体の反応が遅れ、若干の差が生まれてしまった。

険しいコースだが、最高のロケーションにテンションは上がる ©SayakoIKEDA
ユニークなコースサイン。「キッツイ登りが待っているよ…」実際、このサインの通りの坂が待っていました ©SayakoIKEDA

 踏ん張るが、その数秒の差が詰め直せない。心肺も筋肉も破裂寸前。ジワリジワリとその差が開いていく。後姿が遠退いていくにつれ、私のエネルギーもしぼんでいく。ついには足も攣り始めてしまった。内腿から始まり、大腿四頭筋、ハムストリング、ほぼ足全体が攣り、顔が歪むほどの悶絶の痛みが襲う。

フィニッシュ直後。応援してくれた仲間とハイタッチ ©SayakoIKEDA

 しかし、足を止めるわけにはいかない。必死に足を回し続けながら、攣っている箇所を拳で思い切り殴り、なんとか痙攣を抑え込んで前へ進む。後半の長い下りまでに差を最小限に抑えていれば勝機はまだあるはずだ。最後まで何が起こるかわからないのがレース。絶対に諦めてはいけない。

 ネガティブな思考を排除し、自分を奮い立たせてアレン選手の見えない背中を追い続けた。最後のジープロードの高速のダウンヒルでは時速96.8kmをマーク。これは未舗装路での自己最高スピード記録かもしれない。リスクを負いながらも限界を攻め続けていた。しかし、フィニッシュゲートをくぐるまで彼の姿を捉えることはできなかった。タイムは3時間52分。2位でレースを終えた。

優勝したベン・アレン選手と ©SayakoIKEDA

 フィニッシュ後は立てる力すらも無く、持てる力を全て出し切った。アレン選手には完敗だ。悔しいが、彼が今日この場で一番強かった選手。心からおめでとう。

 長期遠征最後のレースで最高の勝負をして、表彰台で締めくくれたことはとても嬉しい。

自分の走りを未来のライダーへ

私はMTB総合2位、妻はトレイルハーフマラソンに出場し、年齢カテゴリー優勝。夫婦で表彰台に上った。特大メダルはなんとベルトバックル! ©SayakoIKEDA

 今回、私は大会アンバサダー選手としてレースと提携。エントリー時に私の名前“Yuki”をプロモーションコードとして入力するとディスカウントがもらえるシステムも用意された。私のようなインターナショナルな選手をアンバサダーとして迎え入れてくれることは非常に光栄で嬉しく思う。そして、これから大会を大きくし、国際的にしたいという意思が強く感じられた。

私のモットーである己を超える戦い「超戦」のオリジナルステッカーをトップチューブに貼って自分を鼓舞する ©SayakoIKEDA

 さらに、大会のエントリー費の一部はエステスパークの高校のMTBチームの育成・発展のために寄付されることとなっている。私も微力ながら、チームの力も借りてフロアポンプなどを高校MTBチームにプレゼントをした。

 このイベントが未来のライダー達の競技力の向上につながるきっかけとなり、皆がMTBでこの大自然を駆け抜ける楽しさをもっと感じてもらえたら最高だ。

コース上から見えるロッキー山脈の絶景 ©SayakoIKEDA
池田祐樹池田祐樹(いけだ・ゆうき)

1979年東京都生まれ。トピーク・エルゴンレーシングチームUSAに所属するプロMTBアスリート。MTBの長距離、耐久レースの国内第一人者とされる。7年連続でMTBマラソン世界選手権日本代表を務める。日本で開催されたシングルスピード世界選手権の親善大使を務め、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも多数出演。執筆や講演会も行い、マウンテンバイクの普及活動も積極的に行なっている。東京都青梅市在住

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MTB競技 マウンテンバイク

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