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マイヨジョーヌのベルナルが2連勝雨澤毅明は修羅場を生き残り総合25位キープ ツール・ド・ラヴニール第8ステージ

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 U23(19〜22歳)日本チームが出場している国別対抗のU23版ツール・ド・フランス「ツール・ド・ラヴニール」は8月26日、山岳3連戦の2日目となる第8ステージが開かれ、マイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア)が山頂ゴールを制し2連勝を飾った。日本チームは雨澤毅明がチーム最上位でゴールし総合25位をキープ。目標の総合20位以内を目指して翌日の最終ステージに挑む。(U23ジャパンナショナルチーム)

総合20位以内への目標達成に望みを繋いだ雨澤がゴール Photo: CyclismeJapon

前半から集団が崩壊

日本U23の総合リーダーを務める雨澤がアップする Photo: CyclismeJapon

 スタート直後から1600mも上り、120kmの距離で実に4000m以上の獲得標高となる本大会最難関ステージ。前日の山岳ステージ初日で優勝し、マイヨジョーヌも獲得したエガン・ベルナルを擁するコロンビアは、総合2位以下の総合成績ライバルたちを確実に「叩きのめす」ために、容赦ない総攻撃を仕掛けてくることが予想された。マイヨジョーヌから2分37秒差で総合25位につける雨澤毅明は、コロンビアによる攻撃を耐えしのぎ、総合20位以内へとジャンプアップすることが目標だ。

最難関ステージを前にアップする日本U23 Photo: CyclismeJapon
補給をする市川メカ Photo: CyclismeJapon

 スタート直後の上りで、チーム スカイへの移籍が噂されるロシアのパヴェル・シバコフら2人がアタック。すでに総合成績では6分以上遅れていたシバコフだったが、マイヨジョーヌを擁するコロンビアは大事をとって集団のペースアップを図る。結果、メイン集団はスタートからわずか15km程度で40人程に絞られ、日本チームから生き残れたのは雨澤毅明のみ。山本大喜は第2ステージの落車などによる負傷や疲労が限界に達し、早くも無念の途中棄権となった。

綺麗な風景も選手の目には入らないはず Photo: CyclismeJapon
30km付近の山頂湖でコロンビアが集団で牽引 Photo: le tour de l'avenir

 引き続き最初の1級山岳頂上に向けて容赦なくペースアップを計るコロンビア。凄まじいペースに雨澤毅明はとうとう耐えきれなくなり、頂上1km手前でメイン集団から脱落。そこからはマイヨジョーヌ集団から分裂した集団(逃げ2人を含むと第3集団にあたる)でゴールを目指すことになった。雨澤にとってはまだゴールまでは1級山岳と頂上ゴールの2級山岳を含む90kmの距離が残っており、少し気を抜けば一気に総合順位が大幅ダウンとなる苦しい展開。

マイヨジョーヌのベルナルが終始レースを揺さぶる Photo: le tour de l'avenir

 コロンビアが支配する先頭集団の約20人は、その後も人数を減らしながら2級山岳の頂上ゴールに向かう最後の上りに突入。最終局面では10人弱がステージ優勝を賭けて死闘を繰り広げた。しかしマイヨジョーヌを着るエガン・ベルナルの圧倒的な強さに最後まで立ち向かえたのは、「U23リエージュ=バストーニュ=リエージュ」を制したドイツのビョルグ・ランブレヒトのみ。結局ベルナルが山頂でのマッチスプリントを制してステージ2連勝、総合優勝に向けて王手をかけた。

ステージ2連勝のベルナル Photo: le tour de l'avenir

 なお、マイヨジョーヌを着るベルナルのチーム スカイ移籍はすでに5月から噂されていたが、レースに帯同していたコロンビアのメディアが第8ステージのゴール地点で「ベルナルのチーム スカイへの移籍がこの勝利で確定」との報を発信。まだ正式発表ではないが、勝てばプロに上がれるとされる「ツール・ド・ラブニール」会場ならではの光景だ。

 強豪国による戦いの後ろでは、雨澤毅明が総合成績20位以内を目指して、見えないライバルたちとの競争を繰り広げた。早い段階での先頭集団脱落で大幅な総合順位ダウンの心配もあったが、諦めずに気力で踏み続け、前日までの総合25位をキープしてフィニッシュ。チーム最終目標である総合20位圏内達成への望みを繋いだ。

■第8ステージ結果
1 エガン・ベルナル (コロンビア)3時間51分18秒
2 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー)+0秒
3 ニクラス・エグ EG Niklas(デンマーク)+3秒
30 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)+14分24秒
80 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)+33分42秒
102 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) +34分49秒
111 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)+42分45秒
DNF 山本大喜(鹿屋体育大学)

■個人総合
1 エガン・ベルナル(コロンビア)26時間50分5秒
2 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー)+1分9秒
3 ニクラス・エグ(デンマーク)+1分12秒
25 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン)+17分1秒
76 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)+45分9秒
85 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) +49分49秒
101 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)+59分1秒

第8ステージレース中撮影のビデオ

■上りでのコロンビアによる攻撃で集団が粉砕

■第8ステージ 雨澤を含む集団の下り&フランス人選手のパンクをサポート

監督・選手コメント

■U23ジャパンナショナルチーム浅田顕監督

 「第8ステージは1級山岳2つを越え2級山岳にゴールする最難関ステージ。日本チームは雨澤の個人総合順位の上昇を狙いスタートを切った。レースは序盤からの有力な少人数アタックに対しコロンビアがハイペースでコントロールし早々と脱落者が続出する。最初の一級山岳では先頭は吸収され50名以上がメイン集団で越える形となるが、チームからは雨澤のみがここに残る。次の1級山岳に差し掛かる前の登りで更にハイペースは続き、雨澤は20人ほどのグループで遅れてしまう。しかし2つ目の1級山岳では先頭のハイペースな展開で先頭から脱落する選手を次々と吸収し順位を上げて行く。最後のゴールの登りでもグループから少し飛び出した形でゴールするが、優勝者との差は大きく14分差の30位でのゴールとなった。総合順位では昨日までの上位者の多数の脱落があったため25位と同位に留まった。岡、石上、岡本は最初の1級山岳で遅れ各完走グループでのゴールとなった。明日は締めくくりの最終ステージ。雨澤の個人総合を目標の20位以内に上げるために戦い方を練ってスタートする」

■ビョルグ・ランブレヒト (ベルギー):第8ステージ2位/総合2位(+1分9秒)

 「最後はスプリントを早く仕掛けすぎたね。また2位だよ…もう20回ぐらい2位になっているかもしれない…ストレスが溜まるよ。でも良かったことと言えば、今日のレース中に調子が上がってきたことかな。第1ステージからあまり調子が良くなかったんだよ。脚の感触は徐々に良くなっているね。でも結果を見る限り、まだ十分調子が良いとは言えないよね。また明日も勝負を仕掛けるよ。エガン・ベルナルの強さが際立っているので、勝つのは難しいかもしれないが、挑んでいくよ」

■パヴェル・シバコフ(ロシア):第8ステージ35位/総合34位(+23分20秒差)

 「レースの初めに集団を破裂させたかったので、2人での逃げを打ったんだ。コロンビア人たちの戦術はよく分からなかった。彼らは僕を行かせたくなかったようだね。メイン集団とのタイム差は最大で1分10秒しか開かなかった。メイン集団からは何人かで集団を牽引して追い詰めてきたので、逃げることができなかったね。今シーズンのコンディションのピークはすでに終わってしまったようだ。今日は一日中苦しんだね。スタートから全開で入ったんだ。今考えるとバカげたことをしてしまったけど、何かしら挑戦してみたかったんだよ。でも、脚の調子は昨日よりも良かったので、もうちょっとレースが進んでからアタックしたほうがいい結果に繋がったかもしれない。いずれにせよ、今シーズンは好成績を残せてきたので、成功と言えるよ。今の目標はツール・ド・ラヴニールで完走をすることだね」

■雨澤毅明:第8ステージ30位/総合25位(+17分1秒)

第8ステージゴール後の雨澤「明日の最終ステージで総合20位を目指す」 Photo: CyclismeJapon

 「最初の山岳でロシアのシバコフがアタックし、マイヨ・ジョーヌを擁するコロンビアがメイン集団をハイペースで牽引したんです。非常に苦しめられてどうしても耐えきれず、とうとう頂上1km手前で千切れてしまった。本当に、本当に苦しくて、人生で一番きつい思いをした瞬間でした。若干諦め気味になった瞬間もあり、完走さえもできないんじゃないか!?と一時は思ってしまったんですが、気持ちを奮い立たせて弱い気持ちを吹っ切りました」

 「幸い、自分がいた集団の選手たちの士気は高く、先頭集団とのタイム差を最小限に抑えようと協力してペースを作っていました。先頭から千切れてきたシバコフや、オーストラリアのロバート・スタナードが非常にいいペースで走っていたので、ゴールに向けてむしろペースを上げることができました。最後の上りで浅田監督から『このまま行けば、目標の総合20位以内でゴールできるぞ!』と聞いて、さらに力が湧きましたね」

 「それにしても先頭で僕より15分程度前でゴールしている集団の強さは圧巻です。すぐにでもグランツアーで走れるレベルですよ。彼らの次元にはまだまだ距離がありますが、追いつくようにレベルアップを目指します」

U23ジャパンナショナルチーム選手ピックアップ!

山本大喜(鹿屋体育大学)

“ナチュラルボーンビッグマウス”(NBBM)山本大喜 Photo: CyclismeJapon

 兄はジロ・デ・イタリア2016出場中に、血で血を洗うような激戦の内側を、繊細かつ豊かな表現力を駆使して文字に綴った山本元喜(げんき)。山本元喜のお陰で、より自転車ロードレースの事が理解できたという自転車関係者や選手も多くいる。

 そんな自転車界で一目置かれる兄を持つ山本大喜(まさき)は、兄への尊敬を隠さない。

 『兄はブログばっかり書いてるブログオタクだと思いますよ。あれはブログ書くためにロードレースをやってますね。ロードレースやっててアウトドアぶってますけど、真性インドアくんですよ。そもそも兄貴(元喜)よりも僕のほうが肉体的ポテンシャルを持っています。生まれ持った才能というかなんというか。兄は僕に嫉妬していると思いますよ』

 かなりのビッグマウスくんである。こんな性格からか、ツール・ド・ラヴニール第2ステージでの落車で負傷した後であっても、ケロっとしている。「落車後はむしろ調子が上がってきたので、明日からのステージは全部逃げに乗れてしまうかも知れん」「今回はどっかのステージで勝てる気がして仕方がない」「さっきUCIワールドチームのスカウトが、レース中に俺のことを見ていたと思うわ」

 あまりにも性格が違うようなので、本当に兄弟なのか?ちょっと心配になってきたが、顔がそっくりなので多分間違いないだろう。

 兄の趣味がブログならば、山本大喜の趣味は海にいる魚を銛(もり)で突いて捕まえること。「大学がある鹿屋(鹿児島県)からクルマで海まで行って3~4mの深さを素潜りし、銛で魚を捕まえるのが楽しくて仕方がない。息を止めて海に潜るもんだから自転車の心肺トレーニングにも最適なんです。コロンビア人が山岳に住んでいるのと同じで、知らぬ間にもの凄く強くなってしまうんです。僕の強靭さはやっぱり銛での漁にありますね。このトレーニング方法は絶対にコロンビア人には漏らさないで下さい」

 そんな山本大喜の人生プランはこうだ。銛での漁で鍛えた強靭な肉体を武器に国際レースで勝ってしまい、ワールドチームとの契約を獲得。その後は順調にプロ優勝を量産してしまう。そして兄とは裏腹にレースブログは全く書かず、その時間は銛での漁に費やす。輝かしいプロ生活の後は…。

 「生まれつき狩ることが好きなため、その欲求を満たしてくれる自転車ロードレースが大学卒業後の天職だと思っていますね。でも基本は海や自然が大好きな『海人』(うみんちゅ)なので、自転車引退後は真面目に漁師になりたいと思っています。沖縄みたいに最高の海がある自然豊かな場所で、のびのび自然と戯れて行きていきたいですね」

 いつか20年後ぐらいには、元世界的プロロード選手だったマサキ・ヤマモトが、漁をする船からツール・ド・おきなわのプロトンに向かって手を振る光景が見られるかもしれない。

日本はここで好成績を収めることに集中すべき

「ツール・ド・ラヴニール」コミッセール・インストラクター ジャン=フランソワ・ペシュー

 1982年から2013年まで30年あまりの間、「ツール・ド・フランス」を主催するASOにてコース設定の最高責任者であるテクニカル・ディレクターとして大活躍。我々の世代が見てきたツール・ド・フランスの厳しい舞台の数々、例えば人間離れした山岳だらけのレイアウト、容赦ない石畳と横風区間、200km以上走った最後にやってくる上りスプリントは、全てペシュー氏が熟考して設定したものだ。そんな彼も2013年にこのツール・ド・フランスの要職を引退した。すでにご隠居生活をして、夏の今頃は地中海のビーチでくつろいでいでいるのかと思いきや、「ツール・ド・ラヴニール」の会場に当たり前のようにいるではないですか!そんなペシューさんには「なんでビーチじゃなくて、ここにいるんですか!?」と直球で聞いてみた。

ジャン=フランソワ・ペシュー氏 Photo: CyclismeJapon

 「なんでここにいるかって!?私は今、コミッセールたちに対するインストラクターとしてツール・ド・ラヴニールの運営実地監修をしているんだよ。私がツール・ド・フランスのテクニカル・ディレクターを引退してからは、後任のティエリー・グヴヌーがツール・ド・フランスをさらに進化させている。グヴヌーが手がけた今年のツール・ド・フランス第13ステージ、距離わずか101kmの超高速山岳ステージは非常に素晴らしい“作品”だったと思う」

 「自転車界ではまだまだ色々やることがあるんだ。私がツール・ド・フランスで得てきたノウハウを、若いコミッセールや運営スタッフにシェアするためにここにいるんだ。今回のコース設定も私がアドバイスをしたんだ。でも最終決定したのは若手(といっても40-50歳代)たちだ。全9ステージ中、始めの6ステージまでは平坦気味のレイアウトで、最後の3連戦はとてつもない山だ。U23選手はなかなかツール・ド・フランス規模の厳しいステージを経験できないものだから、ここで世界トップU23選手に対し“これがプロたちの戦う舞台だ。プロに上がる覚悟はできているかい?”って問いかけているんだ。このアルプスでは、自分が強いと思っている選手だって酷い目に遭うだろうね。君たちに日本の選手にとってもいい経験だと思う」

 「この大会は多くのUCIワールドチーム&プロコンチネンタルチームが注目している。よって、ここでの勝利はプロ契約に直接繋がる。ここまでわかりやすいプロへの上がり方は世界中どこを見ても他にはない。日本はようやく出場枠を自力で獲得し始められたのだから、ここで好成績を収めることにまずは集中したほうがいい。近年、ただ単にプロ選手になるには様々な近道もあるが、プロの世界で継続して生き延びるためには真の実力が必要だよ。そのための試金石がこのツール・ド・ラヴニールなんだ。ベラルーシが勝利した例もあるんだから、日本の勝利だってそう遠くはないと思っているよ」

「ツール・ド・ラヴニール」メディア責任者 フィリップ・ブヴェ

 フランスで有名な選手、アルベール・ブヴェが父という自転車家族で育ち、フランスを代表するスポーツ新聞「レキップ紙」に35年間勤め、同じくフランスNo.1自転車専門誌「ヴェロ」の編集長も務めたフィリップ・ブヴェ。彼にツール・ド・ラヴニールに出場し始めた日本について思うところを語ってもらった。

「ツール・ド・ラヴニール」メディア責任者のフィリップ・ブヴェ氏 Photo: CyclismeJapon

 「1990年の宇都宮世界選手権には記者として行ったことがあるよ。そうだねぇ、その頃の日本自転車ロードレース界は率直に言うとまだまだ黎明期だったようなので、記者の立場で言うと日本が欧州で戦えそうな気配は当時感じられなかった。それから20年近く経ってようやくアラシロやベップがツール・ド・フランスに出たよね。そのときに取材をしたんだけど、ようやく日本はここにたどり着いたな!と感慨深いものがあったよね。そして今回は君たちがツール・ド・ラヴニールに自力で出場。とはいえ、まだまだ日本がしっかりとした組織で欧州にやって来ているとは思えない。以前ノルマンディーで、単身フランス修行をしに来ている日本人の若者を見たんだ。はっきりいうと強くなかった。でも強くないからこそ、組織としての欧州遠征が必要だと思う。今は強くないとは言え、ポテンシャルのある選手だったら、手をかけてれば強くなるかもしれない。欧州の選手にだって同じことが言えるんだから、海外から来る日本人選手にとっては特に重要だね。そういう若い芽をしっかりと育ててゆくことが今の日本には必要なんじゃないかと思う。特に20歳前後の若者には組織的なサポートが『絶対』に必要だと思うよ。そういう基礎固めをした選手こそが、エリートに上がってからさらに伸びるんだ」

 「メディア的な観点でいうと、欧州人に見て日本人への目新しさは徐々になくなってきている。これは日本人が欧州に認められ始めたのと同時に、メディア的な注目度が減り始めたことを意味するんだ。よって、例えば選手が欧州チームに移籍するにあたっては、“日本人である”だけでメディアの注目度を集められた点が武器になったが、今は実力のみに焦点があたる。これからが日本の正念場だ。さらなる日本の進化を楽しみに見守っているよ」

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