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大国を出し抜きまさかの逃げ切り欧州の小国ベラルーシがサプライズ勝利 ツール・ド・ラヴニール第5ステージ

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 U23(19~22歳)日本チームが出場している国別対抗のU23版ツール・ド・フランス「ツール・ド・ラヴニール」第5ステージが8月22日に開かれ、日本は山本大喜が狙い通り逃げに乗ったが、レース前半で捕まり展開に恵まれなかった。その後に形成された3人の逃げに2人を送り込んだベラルーシの、ヴァジリ・ストロコウが逃げ切り優勝を飾った。(U23ジャパンナショナルチーム)

ダークホースであるベラルーシのストロコウがサプライズ勝利 Photo: le tour de l'avenir

スタートアタックを狙う山本大喜

 ワインと古城の地を、ロワール川に沿って東に移動する157.1kmの第5ステージは、選手たちの疲れも見え始めるタイミングのため、激しい展開が影を潜めることが予想された。このような“移動ステージ“では総合成績に関係のない選手がステージ勝利をもぎ取る絶好のチャンス。逃げに乗りたくてウズウズしている日本U23チームの山本大喜も、スタート地点でマイヨジョーヌら各賞ジャージの真後ろに陣取り、スタートアタックを虎視眈々と狙った。

スタート前にバイクを調整する高橋優平メカ Photo: CyclismeJapon
スタート地点に向かう選手たち Photo: le tour de l'avenir
スタート地点で山本大喜が3賞ジャージの後ろに陣取り、スタートアタックを狙う Photo: CyclismeJapon

 スタート直後、岡篤志が他選手との接触でメカトラブル。修理後に集団を追う間に、先頭では山本大喜を含む18人の逃げが形成された。しかし15km地点の踏切が電車通過で閉まり、レースが止まるというアクシデント。通常UCIルールでは30秒差以内の逃げが踏切で捕まった場合は「逃げ無効=集団と合流」となるが、コミッセール判断で逃げは「有効」に。よって、踏切が開いた時点で逃げ集団を先に行かせ、メイン集団は踏切停止時点でのタイム差の15秒待たされてから再スタート。その後は山本大喜を含む逃げと、メイン集団とのタイム差は最大40秒まで開いた。

 しかし逃げに乗れなかったポルトガル、スイス、ベルギーらが強力な牽引をし、タイム差はみるみるうちに縮小。その後メイン集団が逃げを吸収しレースは60km付近で振り出しに。

 その後、しばらく気が緩んだメイン集団を出し抜いて形成された3人の逃げが、大きなドラマを作る。

一時、7分以上のタイム差を広げた逃げの3人 Photo: le tour de l'avenir

 ヴァジリ・ストロコウとイリヤ・ヴォルカウ(ともにベラルーシ)、そしてパトリック・ギャンパー(オーストリア)による逃げは、ゴールまで残り50km時点で7分30秒まで一気に差を開いた。メイン集団による強力な牽引で捕まり集団スプリント勝負になると誰もが思ったが、タイムトライアルスペシャリストを含む3人が粘りに粘る。結局、ゴールの街アンボワーズでの周回コースに入り、残り距離20km時点でのタイム差が5分30秒と告げられた瞬間に3人の逃げ切りは決定的に。

 ベラルーシ2人vsオーストリア1人での勝負は定石通りベラルーシに有利に働き、最後は本大会のダークホースともいえるベラルーシのストロコウが、番狂わせのドラマに沸く観客の前でスプリント勝負を制した。

ゴールの街アンボワーズの周回コースを走るマイヨジョーヌら Photo: le tour de l'avenir
スプリントに敗れるもマイヨジョーヌを獲得したギャンパー Photo: le tour de l'avenir

■第5ステージ結果
1 ヴァジリ・ストロコウ(ベラルーシ) 3時間50分50秒
2 パトリック・ギャンパー(オーストリア) +0秒
3 イリヤ・ヴォルカウ(ベラルーシ) +13秒
22 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング) +3分49秒
43 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +3分49秒
70 山本大喜(鹿屋体育大学) +3分49秒
79 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +3分49秒
89 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) +3分49秒

■個人総合
1 パトリック・ギャンパー(オーストリア) 16時間39分50秒
2 イリヤ・ヴォルカウ(ベラルーシ) +1分23秒
3 キャスパー・アスグリーン(デンマーク) +3分45秒
33 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +3分49秒
40 岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング) +3分49秒
90 雨澤毅明(宇都宮ブリッツェン) +3分49秒
115 石上優大(EQADS/Amical Velo Club Aix en Provence) +7分22秒
131 山本大喜(鹿屋体育大学) +20分25秒

レース動画(U23ジャパンナショナルチーム撮影)

『スタート地点に集まる選手たち』

『日本チームのクルマからの補給』

監督・選手のコメント

■U23ジャパンナショナルチーム浅田顕監督

 「後半に追い上げの主導権を取るチームもなく各チームの息も合わず最後はこの3人の逃げ切りを許してしまった。4位以下の集団では岡本の22位の成績に留まった。勝ったストロコウは、国際大会ではジュニア以来の優勝と思われる。明日は最後のフラットステージ。山岳ステージを前にステージ上位入賞を狙う」

■ヴァジリ・ストロコウ(ベラルーシ):ステージ1位

 「とんでもない勝利だ!信じられないよ。ゴールまで60km地点でアタックし、ボクのチームメイトであるイリヤ・ヴォルカウと、オーストリアのパトリック・ギャンパー3人での逃げになったんだけど、非常にいい協調体制ができてみるみるうちにタイム差を広げられた。ギャンパーはゴール500m前でスプリントを仕掛けてきた。その後ボクはゴール200m前まで待って彼のことをまくったんだ。正直、彼のほうがスプリントは強いと思っていたので勝てたことに驚いている。自分の勝利確率はせいぜい50%ぐらいだとしか思っていなかったからね。チームメイトのヴォルカウが一緒に逃げに乗ってくれたのはラッキーだったね。彼はこの勝利を掴むための素晴らしい働きをたくさんしてくれたからね」

イリヤ・ヴォルカウ:ステージ2位

ストロコウの勝利に大いに貢献したベラルーシのヴォルカウ Photo: le tour de l'avenir

 「チームにとって素晴らしい日になったね。アタックを決めたときは正直勝てるなんて思ってなかった。タイム差が7分程度になってからしばらくして“もしかしたら勝てるかも!?”と思えてきた。3人の逃げにうちのチームが2人いたのは大きなアドバンテージだったね。作戦としてはボクが逃げからアタックしてギャンパー(オーストリア)に追わせ、ストロコウを有利にするというものだった。ストロコウが勝ってくれたので、今日の働きが報われたよ。今日のコースはそんなにきついものじゃなかったから、大集団が僕らを簡単に逃してくれたのは驚きだね。ゴールのアンボワーズの街での最終周回コースレイアウトが少々複雑だったため、メイン集団がリスクを追うような走りをしなかったのも僕らには有利に働いたね」

U23ジャパンナショナルチーム選手ピックアップ

岡本隼(日本大学/愛三工業レーシング)

“日本体育会系の寵児”岡本隼 Photo: CyclismeJapon

 2017年のアジア選手権のスプリントを制し、アジアU23チャンピオンとなった岡本隼。他の選手やスタッフによる彼への評価は「昭和体育会系の伝統を継ぐ自転車界最後の男」、「いつも静かで何を考えているのかが良く分からないが、何かすごいことを予想外のタイミングで成し遂げてしまうすごい男」ということらしい。

 フランスで宿泊していたホテルにて、遠目にこんな光景を目撃した。タトゥーをバリバリ入れた欧州人選手がホテルの廊下にある椅子に座り、廊下通行者の邪魔になるほど脚を無駄に広げてスマホをいじっている。そんなところに、純日本体育会系男児である岡本隼が通りかかる。その欧州人選手は『へっ、ジャパニーズなんかにスマホをいじっている俺様の邪魔なんかさせねぇぜ!通りたいなら金を置いてきなっ!』とか言っちゃいそうなほどイケイケ系だったのだが、岡本の堂々かつミステリアスな佇まいを見ると、彼は『すいませんっ!』とばかりに反射的に伸ばしていた脚を引っ込める。そして岡本が堂々とその欧州選手の前を通り過ぎる際に、『うっす!』と礼を言ったように筆者には見えたのだ!チャラいタトゥーの茶髪(生まれつきだと思われる)の欧州選手を、昭和のDNAを受け継ぐ日本体育会系男児が撃破した瞬間である。

 そんな凄い男に「趣味などは?」と聞いてみた。「クルマが趣味です。20歳になったらすぐにクルマを買おうと子供の頃から思っていて、ずっとお金を貯めていたんです。車種はトヨタのMR2ですね。自転車に乗らないときはずっと車に乗っています。いや、もちろん自転車も大好きですよ。なので、クルマの助手席にはいつも自転車を乗せています」てっきり『毎朝丸太を担いでお寺の階段を昇り降りすることです。うっす』とかいう答えが返ってくるかと思いきや、結構普通であった。あと、この返事から「彼女募集中なのではないか?」と読み取ったのは、私だけではないはずだ。

「日本だって絶対にやれる」

■ベラルーシナショナルチームメカニック アッリ

ベラルーシチームのメカニック、アッリ氏 Photo: CyclismeJapon

 アッリはベラルーシナショナルチームの名物メカニックとして知られている(恥ずかしながらうっかり「アッリ」のフルネームを聞き忘れてしまいました)。小国ながら欧州の国際大会を小さなバンで転戦し、大国のメカニックからもマスコットキャラクター的に愛されている陽気な男だ。第5ステージでは、人口1000万人未満、ロシアやポーランドに隣接する非EU加盟のヨーロッパ小国チームが、欧州の大国を出し抜いて衝撃的な勝利!今回の出場チームの中では、率直な所、日本と並んで「ナメられている」国であるベラルーシの勝利についてアッリに聞いてみた

 「欧州大国に対しては『ざまぁみろ!』と言いたいね!(笑)でかいチームバスやシマノのデュラエースをフル装備したようなXXXXチームたちを僕らみたいな小国がやっつけたんだから、これ以上気持ちのいいことはないよね。今回チームとしては“他チームに警戒されていない”ことを逆手に取って、どこかのステージで大逃げを仕掛けようとしていたんだ。今日優勝したストロコウは昨日のステージでも逃げに乗っていたけど、デンマークやノルウェーら強豪国に屈して吸収されてしまった。うちに残されたチャンスは比較的平坦路である第6ステージまでだ。今日は3人の逃げに、うちのチームが2人入ってしまったので、大国に警戒されちゃうかも?と思ったけど、タイム差が7分程度になるまで泳がされてたなんて、うちら相当ナメられているんだね(笑)」

ベラルーシのチームバン Photo: CyclismeJapon
予算が豊富なポーランドチームのチームバス Photo: CyclismeJapon

 「うちのチームは機材がかなり絞られている。コンポはトップクラスではなく、シマノのアルテグラクラス。パワーメーターは一人も付けていないんだ。パワーメーターなんて信じている選手はうちにはいない。ホントだよ。某パワーメーターメーカーから機材サポートの話もあったんだけど、選手の意見を聞いてあまり乗り気ではない様子なので断った。普段はイタリアで走っているんだけど、特にイタリアのレースで勝つには大胆さやレース展開を見極めてライバル出し抜くことが求められている点も、選手がパワーメーターに依存していない理由かもね。レースは機材で走るんじゃなくて、心と頭で走るもんだ。いくら機材が良くたって頭と精神力がなければロードレースでは勝てない。そんな考えの僕らが、僕らのやり方で勝った。日本だって絶対にやれると思うよ。警戒されていないことを利用したほうがいいよ」

■バイクによるレース情報収集スタッフ ブルーノ・ティブー

ブルーノ・ティブー氏 Photo: CyclismeJapon

 かつて名門プロチーム「カストラーマ」、「モトローラ」、「コフィディス」に所属し、全てのグランツールに出場した名アシスト選手であるブルーノ・ティブーが引退後に選んだ仕事は、レースをモーターバイクで追いかけ、審判やコミッセールにレースのリアルタイム情報を伝える「レースオフィシャル情報収集スタッフ」。ツール・ド・フランスを始め、A.S.O.が主催する全ての大会で働いているそうだ。「レースオフィシャル情報収集スタッフ」はそもそも何する仕事なのかをブルーノに聞いてみた。

 「レースでチームカーや審判に対して放送される“ラジオツール”は知っているよね?『現在先頭で3人が逃げていて、ゼッケン番号は18、109、115!』『集団後方で落車!メディカルカーが必要だ』『日本チームの選手がパンク、チームカー前方に上がって来い!』みたいなやつ。あの情報を収集しているのが私の仕事だよ。集団の先頭を走るチーフコミッセールカーからは、当然集団の中や後ろで起こっている細かい所は見えないんだ。だから私の様にバイクでレース情報を細かく収集するスタッフたちが、コミッセールたちに情報を伝えるんだ。それら複数の情報をコミッセールがまとめ、君たちチームに対してラジオツールで提供している。これはレース集団の動きが分かっていないと絶対にできない仕事だね。レース中に選手の邪魔にならない場所で、できる限りの細かいレースの現場情報を仕入れるんだよ。自由自在にレースを見守るので“鷲の目”ともあだ名されている仕事だ」

 「(集団後方を走るチームカーからは見えない)日本チーム選手のレース中の動きはどうかだって?君が思っているよりも遥かにいいと思うよ。名前もゼッケン番号も忘れちゃったけど(笑)大柄ではない日本の選手の2人が特によくアタックをかけているね。しっかりとレースに参加していると思うよ。彼らが逃げに乗れないのは、もちろん力不足なのは否めないけど、タイミングを見極める嗅覚がまだまだ未熟なんだと思う。この嗅覚ばかりはレベルの高いレースに出まくって経験を積むことでしか得られないだろうね。これからも欧州に来てたくさん経験を積んでいきなよ。レースまだまだ続くから、『日本選手が逃げている』という情報を私からコミッセールたちに伝えさせてくれよ」

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