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8月19日開幕「ブエルタ・ア・エスパーニャ」のガイドにグランツール観戦初心者におすすめ!選手の「脚質」を知る方法とは?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 3大グランツールのトリを飾る「ブエルタ・ア・エスパーニャ」が8月19日に開幕する。世界最大のサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」では、美しい風景の数々、エース同士の迫力あるスプリントバトル・山岳バトルに魅了され、レース観戦にハマった方も多いのではないかと思う。見れば見るほどにサイクルロードレースは面白くなるだろう。筆者が観戦初心者の頃は選手の脚質、特にアシスト選手について分からないことが多く、レース展開の理解が追いつかないことが多々あった。そこで、今回は選手の脚質について、改めて解説してみたいと思う。

ブエルタでは通算10勝と相性が良いジョン・デゲンコルプ Photo : Yuzuru SUNADA

基本的な6つの脚質パターンを覚えよう

 「脚質」とは、選手の得意分野の違いを表す言葉だ。「スプリンター」は集団スプリントを得意とし、「クライマー」は山岳での上りを得意とするように、その選手が最も活躍できる場面が異なってくる。逆に集団スプリントで活躍できる選手は「スプリンター」の能力が高いといえるし、山岳で活躍できる選手は「クライマー」の能力が高いといえる。その選手の活躍した場面・状況から脚質を知ることもできるのだ。

 脚質は大きく分けて6つのジャンルに分類できる。各脚質の特徴と、ブエルタのようなグランツールではどんな場面で活躍できるのか紹介してく。また、ブエルタに出場予定の注目選手を何名かピックアップしてみた。

※注目選手の☆印はエース級選手を表し、◎印はアシスト選手を表している

スプリンター

石畳のレースも得意で上りにも強いマッテオ・トレンティンはスプリントで勝利を狙う Photo : Yuzuru SUNADA

 瞬間的に、爆発的なスピードを出すことができる脚質のことをいう。エース級になると、スプリントで時速70キロ以上を出すこともあり、パワーの源となる筋肉が隆々としたゴツい身体つきであることが多い。

 エーススプリンターをアシストする選手もまた、脚質がスプリンターの選手だといえる。フィニッシュラインの寸前まで、エースの前を走り風よけとなるためには、エースに勝るとも劣らないスピードが要求されるからだ。つまり、フィニッシュまで残り数キロを切った区間が、スプリンターたちの戦いの場となる。縦一列となってエースを運ぶ「トレイン」、ここ一番のタイミングでエースを発射する「リードアウト」役のアシスト選手たちの働きにも注目してほしい。

ブエルタ出場予定の注目スプリンター

☆ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)
◎エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
☆マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップ・フロアーズ)
☆マグヌス・コルトニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)
☆サッシャ・モドロ(イタリア、UAE・チームエミレーツ)

クライマー

 上り坂を得意とする選手たちの脚質のことをいう。坂道は重力との戦いであるため、体重が軽い方が有利になりやすく、スリムな体型の選手が多い。また、一定ペースで上ることを得意とするタイプと、ダンシングとシッティングを併用しながらスピードに変化をつけて上ることを得意とするタイプがいる。山岳ステージの多いブエルタでは、高い登坂力を活かして総合優勝候補になり得る脚質だ。

 クライマーとしての力を測るには、総合争いを巡る山岳バトルを生き残る選手に注目すべきだ。また山岳アシストとして集団の先頭に立ってペースアップを図って、大きく集団の人数が減らすような動きを見せた選手も登坂力が高いと見ていいだろう。

ブエルタ出場予定の注目クライマー

◎ミケル・ニエベ(スペイン、チーム スカイ)
◎ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)
☆ワレン・バルギル(フランス、チーム・サンウェブ)
☆エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)
◎ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスターチーム)

ファビオ・アルのアシストとして出場するミゲルアンヘル・ロペスは、2016年ツール・ド・スイスの覇者だ。 Photo : Yuzuru SUNADA
昨年総合3位のエステバン・チャベス。怪我からの復帰戦となったツールでは本領発揮できなかった。 Photo : Yuzuru SUNADA

TTスペシャリスト

 タイムトライアルを最も得意とする選手の脚質のことをいう。一定ペースで高出力を維持する力に長けているため、結果的に上りが得意な選手も少なくない。

 TTスペシャリストは広い意味では後述のルーラーに分類されるが、ルーラーと比較すると巡航速度が高いことが特徴だ。トップクラスの選手だと、1時間にわたって時速50km以上を維持できる選手もいる。個人TTでのステージ勝利も狙える上に、長距離の逃げ切りを狙うこともできるため、エース級の選手に多い脚質だ。

ブエルタ出場予定の注目TTスペシャリスト

☆ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング チーム)
☆ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップ・フロアーズ)
◎ステフ・クレメント(オランダ、ロットNL・ユンボ)
◎トビアス・ルドヴィグソン(エフデジ、スウェーデン)

オーストラリアTT王者のローハン・デニスは、個人TTステージ優勝の最有力候補だ。 Photo : Yuzuru SUNADA
ボブ・ユンゲルスはTTだけでなく、総合成績も期待できる。 Photo : Yuzuru SUNADA

ルーラー

 長時間にわたって、平坦路を巡航する能力をもつ選手の脚質のことをいう。なかには、3時間ないし4時間以上にわたって平均時速40kmで走るような選手もいる。逆にいえば、ルーラーは時速40kmを長時間キープすることはできても、時速50kmを1時間キープすることは苦手な選手が多い。

 一番目立つのはメイン集団の先頭に立って風よけとなりつつ集団コントロールを担う時だ。数名でローテーションしながら時速40km以上のペースで200km近く走ることもある。

また、巡航能力を活かして逃げに乗ることも得意としているため、特に平坦ステージではルーラーが逃げることが多い。短時間であれば時速50km以上のスピードを出せる選手もいるため、平坦ステージの終盤においてトレインの一員を担うこともある。

ブエルタ出場予定の注目ルーラー

◎クリスチャン・クネース(イギリス、チーム スカイ)
◎イアン・スタナード(イギリス、チーム スカイ)
◎ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング チーム)
◎スヴェイン・タフト(カナダ、オリカ・スコット)
☆トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

ダニエル・オスは、パリ〜ルーベでエースを勝利に導く好アシストを見せていた。 Photo : Yuzuru SUNADA
トーマス・デヘントはツールで1000km以上逃げた世界屈指の逃げ屋だ。 Photo : Yuzuru SUNADA

パンチャー

 スプリント力も登坂力も兼ね備えた”パンチ力”のある選手の脚質のことをいう。パンチャーには大きく分けて、スプリンター型のパンチャーとクライマー型のパンチャーに分類できる。前者はいわゆる”上れるスプリンター”とも呼ばれ、集団スプリントで上位に食い込む力を持ちながらも、ある程度の上りもこなすことができる。後者は高い登坂力を活かして、アルデンヌクラシックに代表される起伏を富んだコースを得意としている。

 スプリンター型パンチャーのアシスト選手は、スプリンターやルーラーに近い役割を担い、クライマー型パンチャーのアシスト選手はクライマーに近い役割を担うことになる。つまり、パンチャーという脚質は、基本的にエースとして勝利を狙う際に使うことが多くなる。

ブエルタ出場予定の注目パンチャー

・スプリンター型
◎ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスターチーム)
☆イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
◎イヴァン・ガルシアコルティナ(スペイン、バーレーン・メリダ)
 
・クライマー型
◎ジャンニ・モスコン(イタリア、チーム スカイ)
☆ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・フロアーズ)
☆オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
☆ルイ・コスタ(ポルトガル、UAE・チームエミレーツ)

ジュリアン・アラフィリップは、上りでもスプリントでも強い選手だ。 Photo : Yuzuru SUNADA
オマール・フライレは3年連続の山岳賞獲得を狙う。 Photo : Yuzuru SUNADA

オールラウンダー

 クライマーとTTスペシャリスト、両方の能力が高い選手をオールラウンダーと呼ぶ。スプリント能力が高いかどうかは、あまり問われない。山岳ステージとTTステージでの結果は、そのまま総合成績に直結するため、総合優勝を狙う選手にはオールラウンダーが多い。

 オールラウンダー型のアシスト選手という意味では、クライマー、ルーラー、パンチャーそれぞれの資質を合わせ持つような、どんな場面でもアシスト選手としての仕事ができる選手だといえよう。1人でいくつもの役割を担うことができるため、オールラウンダー型のアシストがいるとチームの作戦の幅がとても広がる。

ブエルタ出場予定の注目オールラウンダー

☆クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)
◎ワウト・ポエルス(オランダ、チーム スカイ)
☆アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
◎ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)
☆ファビオ・アル(イタリア、アスタナ プロチーム)
◎ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ プロチーム)

昨年総合2位のクリストファー・フルームはダブルツールを狙う。 Photo : Yuzuru SUNADA
今大会限りで引退するアルベルト・コンタドール。お馴染みのバキューンポーズは見られるか。 Photo : Yuzuru SUNADA

活躍する場面に注目して観戦

 ここではTTスペシャリストに分類したユンゲルスは、オールラウンダーと言っても差し支えない能力を持っている。またパンチャーに分類したデブシェールは、スプリンターとしてエースのリードアウトを務める機会も多い。ルイ・コスタもステージレースで総合優勝を狙える力は持っているし、ポエルスはエースとしてワンデークラシックを制したこともある。

 オールラウンダーでなければ、総合優勝を狙えないということはないし、スプリンターでなければリードアウトができないわけでもない。脚質という言葉は便利ではあるが、スプリンターだから上りが苦手というような覚え方をすると、後々混乱することがあるかもしれない。選手の脚質をより詳しく、より正確に知るためには、実際にレース観戦するなかで、その選手がどんな場面で活躍するのか注目して見ることをおすすめしたい。

 集団スプリントで活躍しているならスプリンターといえる。さらに逃げに乗って、ある程度上りをこなしているのなら、「ルーラー能力も高い、スプリンター型のパンチャー」という評価ができる。単純に「スプリンター」「ルーラー」「パンチャー」と分類するよりも、正確にその選手の力を表現できるようになるだろう。

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