スマートフォン版はこちら

title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<219>UCIワールドツアーで好調続くサガン クリストフがヨーロッパチャンピオンに

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 8月に入り、UCI(国際自転車競技連合)ワールドツアーを中心にサイクルロードレースの開催が再び活発になっている。ツール・ド・フランスを走り終えた選手が休養を経て、再び戦線に復帰しつつあるほか、ツールを回避し調整に充てていた選手たちもいよいよ調子を上げてきた。このところの戦いは、シーズン後半のビッグレースを占ううえで重要な期間に位置付けられる。そこで、前回に引き続きUCIワールドツアーをはじめとする注目レースの結果をまとめていきたい。この先の活躍が見込まれる有力選手の動向をしっかりと押さえていこう。

8月7日に開幕したビンクバンクツアー第1ステージで優勝したペテル・サガン。リーダージャージに袖を通す Photo: Dion Kerckhoffs/Cor Vos © 2017

サガンがビンクバンクツアー開幕を飾る

 まずは、8月7日に開幕したビンクバンクツアーについてお届けしたい。

 昨年までは「エネコツアー」と呼ばれたステージレースは、スポンサーの変更にともない大会名を変更。オランダ・アムステルダムに本社を構えるオンライン証券会社「ビンクバンク」が新たにメインスポンサーとなった。

僅差のスプリント勝負はペテル・サガン(右端)に軍配 Photo: Davy Rietbergen/Cor Vos © 2017

 その第1ステージは、ほぼフラットなレイアウトで争われた。残り10kmを切って逃げグループが捕まり、勝負はスプリントへ。抜群の加速を見せたフィル・バウハウス(ドイツ、チーム サンウェブ)に、猛追したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が並んでフィニッシュラインを通過。5分以上にわたる写真判定の末、開幕ステージはサガンに軍配が上がった。

 これにより、サガンは今大会最初のリーダージャージ着用者となった。大会スポンサー変更に合わせて新調された、黒と緑のジャージに袖を通した。

 例年、隣国であるオランダとベルギーを行き来する形でステージ編成されるこの大会。今年も同様で、第1・第2・第5ステージをオランダで、第3・第4・第6・第7ステージをベルギーで走る。また、第2ステージは9kmの個人タイムトライアル、第4ステージ以降は春に行われるアルデンヌクラシックさながらの丘陵地帯をめぐる戦いが待ち受ける。

ビンクバンクツアーにはトム・デュムランも参戦。個人総合優勝を狙うと宣言した Photo: Dion Kerckhoffs/Cor Vos © 2017

 今大会にはサガンのほか、マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)やグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)、そして「総合優勝を目指す」と宣言したトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)らビッグネームが参戦。バーレーン・メリダからは、新城幸也がメンバー入り。得意とする大会で活躍するべく、第1ステージから元気な姿を見せている。

ビンクバンクツアー第1ステージ結果
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 3時間50分9秒
2 フィル・バウハウス(ドイツ、チーム サンウェブ) +0秒
3 マウヌスコー・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット) +0秒
17 新城幸也(バーレーン・メリダ) +0秒

激戦のポローニュは新鋭トゥーンスが初優勝

 前回第3ステージまでお伝えしたツール・ド・ポローニュは、8月4日に全7ステージを終えて閉幕。個人総合優勝争いは僅差の争いとなり、第3ステージでサガンを破るなど勢いに乗っていたディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)が優勝。UCIワールドツアーでは初めてとなるタイトルを獲得した。

全7ステージで争われたツール・ド・ポローニュはディラン・トゥーンスが初の総合優勝 Photo: Tour de Pologne

 スプリントで決した第4、第5ステージを経て、個人総合争いに大きな変動が起こったのが第6ステージ。丘陵地帯を進み、急坂が繰り返されるレイアウトに、それまでリーダージャージを着用していたサガンが脱落しチームメートのラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)に勝負を託す形となった。総合を賭けた争いはクライマーに絞られ、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)らが再三アタックを繰り返すも、総合2位でスタートしたトゥーンスが粘りを見せる。結果的に有力選手たちは同一集団でフィニッシュしたことにより、リーダージャージはトゥーンスへと渡った。

 前日遅れたサガンだったが、最終日の第7ステージで見せ場を作った。逃げに乗って前方でレースを進めると、終盤に独走態勢へと持ち込みラスト2.5kmまでリードを続けた。フィニッシュに向かう上りで力尽き、メイン集団に捕まってしまったが、逃げ切りまたはマイカのための前待ちどちらでも対応できる果敢な走りを見せた。

ツール・ド・ポローニュ第7ステージ終盤。逆転優勝を賭けてラファウ・マイカ(中央)が攻撃するも、ディラン・トゥーンス(右)がチェックする Photo: Tour de Pologne

 そして、運命の総合争い。リーダージャージを守りたいトゥーンスはマイカを徹底マーク。度重なるマイカのアタックをすべてチェックし、最終局面へと突入。上り基調のフィニッシュへは、総合上位陣が捨て身のスプリント。マイカは着順とタイム差次第でトゥーンスを逆転する可能性もあったがステージ3位に終わり、思うようにボーナスタイムを稼ぐことができず。同じ集団で終えたトゥーンスがわずか2秒差でマイカをかわし、個人総合優勝を決定させた。マイカは2位、このステージで優勝したヴァウテル・プールス(オランダ、チーム スカイ)が3位に続いた。

 なお、日本勢で唯一参戦していた別府史之(トレック・セガフレード)は、最終ステージで役割を終えたのちバイクを降り、リタイアしている。

ツール・ド・ポローニュ第4ステージ(238km)結果
1 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) 5時間38分49秒
2 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チーム スカイ) +0秒
3 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
22 別府史之(トレック・セガフレード) +0秒

同第5ステージ(130km)結果
1 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チーム スカイ) 2時間59分44秒
2 ルカ・メズゲッツ(スロベニア、オリカ・スコット) +0秒
3 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
76 別府史之(トレック・セガフレード) +1分39秒

同第6ステージ(189km)結果
1 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、オリカ・スコット) 4時間58分55秒
2 ヴァウテル・プールス(オランダ、チーム スカイ) +51秒
3 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ) +51秒
96 別府史之(トレック・セガフレード) +28分7秒

同第7ステージ(132.5km)結果
1 ヴァウテル・プールス(オランダ、チーム スカイ) 3時間26分20秒
2 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +0秒
3 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
DNF 別府史之(トレック・セガフレード)

同最終結果
1 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム) 27時間7分47秒
2 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +2秒
3 ヴァウテル・プールス(オランダ、チーム スカイ) +3秒
4 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +10秒
5 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット) +13秒
6 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール・ラモンディアル) +23秒

クリストフがヴィヴィアーニに勝利

 デンマークのヘアニングでは、8月2日から5日間の日程でヨーロッパ選手権ロードレースが開催された。最終日の6日には男子エリートロードレースが241.2kmで争われ、スプリントによる勝負をアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)が制しヨーロッパチャンピオンに輝いた。

ヨーロッパ選手権男子エリートロードレースを制したアレクサンドル・クリストフ Photo: UEC

 かつてはアンダー23(23歳未満)とジュニアに限定されていたヨーロッパ選手権ロードレースだが、昨年からエリート部門も設けられるようになった。“初代”ヨーロッパ王者となったのはサガン。2連覇がかかっていた今回は欠場となり、新たな勝者の誕生にも期待が膨らんだ。

 また、オリンピックや世界選手権同様に国別での戦いとなるが、UCIワールドツアーや同ヨーロッパツアーが同時期に開催されていることもあり、一線級を並べて臨む国と若手を優先してメンバー選出する国などとの差が大きいのもこの大会の特徴。やはり優勝争いは、トップ選手たちをそろえた国が中心となった。

 地元デンマークを筆頭に、ノルウェーやイタリアが主導権を握ったレースは、残り7kmでイェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・スコット)とエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)が集団から飛び出したことで、プロトンはフィニッシュに向かって急激にペースアップ。先行した2人にニコライ・トルソフ(ロシア、ガズプロム・ルスヴェロ)が加わり、集団との差を引き離しにかかった。

 残り1kmのフラムルージュを過ぎると、ボアッソンハーゲンが独走を開始。後方からは集団が迫ってくるが、独走を得意とするボアッソンハーゲンも粘る。しかし、残り300mで吸収。勝負はスプリントにゆだねられた。

 最終局面で冴えたのはクリストフ。チームメートであるボアッソンハーゲンの走りに応えるかのように、グングンと加速。その脇からはエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チーム スカイ)が迫ったが、わずかな差でクリストフが勝利。ヴィヴィアーニはフィニッシュ後、フェンスサイドに寄せられたとして、クリストフの斜行を主張したが認めらなかった。

 これによりクリストフは1年間、白地に2色の青と星が描かれるヨーロッパチャンピオンジャージを着用する。

 なお、3日に行われた個人タイムトライアル(46km)では、ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロットNL・ユンボ)が優勝した。

スプリント勝負はアレクサンドル・クリストフ(前列左から2人目)に軍配。エリア・ヴィヴィアーニ(左端)は2位だった Photo: UEC
男子エリート個人タイムトライアルはヴィクトール・カンペナールツ(中央)が優勝 Photo: UEC

ヨーロッパ選手権男子エリートロードレース結果
1 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 5時間41分10秒
2 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チーム スカイ) +0秒
3 モレノ・ホフラント(オランダ、ロット・ソウダル) +0秒
4 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
5 ルカ・メズゲッツ(スロベニア、オリカ・スコット) +0秒
6 エドワード・トゥーンス(ベルギー、トレック・セガフレード) +0秒

同男子個人タイムトライアル結果
1 ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロットNL・ユンボ) 53分12秒
2 マチェイ・ボドナル(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +2秒
3 ライアン・マレン(アイルランド、キャノンデール・ドラパック) +4秒
4 マティアス・ブランドレ(オーストリア、トレック・セガフレード) +9秒
5 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ロットNL・ユンボ) +21秒
6 マーティン・トフマドセン(デンマーク、BHS・アルメボー ボーンホルム) +44秒

今週の爆走ライダー−ジャック・ヘイグ(オーストラリア、オリカ・スコット)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 約1カ月ぶりのレースとなったツール・ド・ポローニュでは、チームから自由な走りを許されることが多かった。6月に出場したツアー・オブ・スロベニア(UCIヨーロッパツアー2.1)では大健闘の総合3位。総合力と登坂力が評価され、ポローニュでもチャンスが与えられた。

ツール・ド・ポローニュ第6ステージで独走するジャック・ヘイグ。そのまま逃げ切り勝利を収めた Photo: Tour de Pologne

 当初狙っていた第3ステージでのアクションは失敗に終わったが、3日後の第6ステージではラスト19kmを独走。さすがに最終盤の上りで苦しんだが、後続に自らの影を踏ませることはなかった。この走りによって総合順位をジャンプアップ。続く最終の第7ステージではアダム・イェーツのアシストを務めながら、自身も上位フィニッシュ。最終的に個人総合8位と大成功を収めた。

 身長190cmと大きな体躯が生み出すバランスのよい走りは、バックボーンであるマウンテンバイクで培ったもの。2013年にはアンダー23のオーストラリア王者になるなど、ロード以上に期待されていた時期もある。それでも、翌年からはロードに集中。ツアー・ダウンアンダーではヤングライダー賞に輝いている。

 ここ数カ月の活躍により、昨年に続く2度目のブエルタ・ア・エスパーニャ出場が濃厚となった。ハードな山岳にも対応できるよう、アンドラで個人キャンプも行った。総合を狙うエステバン・チャベス(コロンビア)やイェーツ兄弟を支える役割に名乗りを挙げる。

 右手を天に掲げた勝利のポーズは、早くに亡くした父親に捧げたもの。念願の初勝利をプレゼントできたとあって、本人は俄然やる気だ。いまの勢いなら、急峻なスペインの山岳でエースを勝利に導くという重責もきっと果たすことができるだろう。

プロ初勝利を挙げ、俄然やる気に満ちているジャック・ヘイグ。来たるブエルタ・ア・エスパーニャではアシストとしてチームに貢献する Photo: Tour de Pologne
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

UCIワールドツアー ロードレース 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

新春初夢プレゼント2018

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載