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門田基志の欧州XCマラソン遠征記2017<12>バッテリーを気にせずアタック! 電動アシストMTBで行き当たりばったりサイクリング

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 ヨーロッパ遠征の合間を縫い、レンタルEMTB(電動アシストMTB)を使ったドロミテツアーへ向かおうとしたマウンテンバイク(MTB)・クロスカントリー(XC)の門田基志選手(チームジャイアント)と、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)。しかしその矢先、西山選手がそれまでの疲労からか体調不良でダウン。当初2人で手分けするはずだった荷物を全て背負い、門田さんは急きょEMTB1人旅へと出発することになりました。

←<11>“向かうところ敵なし”の電動アシストMTB

ガルデーナ峠手前からジロデイタリアで使われたコースを見下ろす Photo: Motoshi KADOTA

◇         ◇

 まずは2000m越えの最初の林道を突破する。普通、先が長いとバッテリーを節約するものだが門田に「節約」の文字はない!スポーツモードでフルパワーで林道をもりもり上がると30%ほどバッテリーが減った(笑)。先を計算すると…うーん、まあ良いか!どうにかなるやろ!

ガルデーナ峠の反対方向。大会の象徴になっている岩山を見上げる Photo: Motoshi KADOTA
連なる山々を下に見ながら頂上を目指す Photo: Motoshi KADOTA

 フルパワーで進み続けていると、レース中には気付かない美しい景色に遭遇する。EMTBなら気持ちに余裕があるので景色も楽しめるということだろう。アシストしてもらっていながら申し訳ないが、達成感は自力で走るのと同じだけある。なんと便利で素晴らしい乗り物なんだろうか!!

 そういえば、ドリンクを持っていなかった。ボトルケージも無いし、どこかでペットボトルでも買おうと思って出たが、その「どこか」がないのがドロミテだ(笑)。

最初の峠の下り。右下に見えるのはジロ・デ・イタリアのコースで使われた峠 Photo: Motoshi KADOTA
最初の下りで牛に遭遇 Photo: Motoshi KADOTA
あちこちにあるゲートみたいな棒は電気ショックなので注意が必要 Photo: Motoshi KADOTA

 2つ目の峠を上り切るとカフェがあったはず、と思い行ってみると営業してない。そこまで喉も乾いてなかったので、次の町まで行ってみる事にする。ハンドルのインジケーターを見ると…残り15%(笑)。まだ半分も走ってないが、惜しげもないパワフル走行&2000m級山岳2つ&ライダー重量85kg(バック込み)ではやはり消耗も早い。

 下りた町は去年も食事をした町だった。去年訪れたサイクリストとバイク乗りが集う店に行ってみると、相変わらずたくさんの2輪車で賑わいを見せていた。

アラッパという街のレストランでEMTBのバッテリ―充電をさせてもらった Photo: Motoshi KADOTA
チャージしつつ自分の小腹も満たす Photo: Motoshi KADOTA

 色々注文したところで、バッテリーチャージができないか思いついた。バイクからバッテリーを外し、充電器を見せると「こっちにおいで」と手招きして普通にチャージをしてくれた。さすがはドロミテだ。

電力「節約」の文字は無い

 カミナリがゴロゴロガッコ〜ン!!標高が高いだけに近くで鳴り響き、雨が降り始めた。しかもわりと強い。しかし山の天気は変わりやすい。2杯目のカプチーノを注文し、しばらく雨宿りしていたら明るくなって来たので小雨のなか再スタート。普通なら舗装路を引き返すと近いが、その選択肢はない!

レースでは押してしまう人が続出する激坂 Photo: Motoshi KADOTA

 ここで新品の西山の“魂バッテリー”に交換!店で充電させてもらったバッテリーがどこまでチャージ出来たのかは知らない(笑)。

 次にやってくるのは、この大会コースの最高地点で激坂区間!だが、EMTBだから2400mの森林限界まで一気に上がる(実際は歩くようなペースでしか上れないが)。そしてここでも「節約」の文字はなし!フルパワーで進むのが門田流だ。

 途中、一番勾配がキツい所でカメラを出して水準器で平行を出して撮影してみると自転車の角度が変。いかに斜度がきついか道を進んでいるかがわかる。

激坂をカメラの水準器で水平を出して撮影してみて勾配に驚愕 Photo: Motoshi KADOTA

 そして再び乗り出すのが大変…。で少し押して上ることになったが押すことも想定されているのがこのバイクの凄いところ。アシストの制御モニターの側面に徒歩のマークがあり、これを押すとバイクを押す動作をアシストしてくれるのだ。押す行為すら電動とはなんて画期的なんだ!

大型の重機で道を造っていたセクション Photo: Motoshi KADOTA

 そしてしばらくく進むと、一度やってみたかった事態に遭遇!前を行く試走中のライダー2人を楽勝のハイペースで追い抜く!これよこれ!(笑)って事で激坂セクションでちょっと声を掛けたりして手を振って横を抜く!もちろん抜かれた選手も笑いながらチョッカイを出してくる!これがイタリアだ。

 ちょっと絡んで5km/hで走る2人を20km/hで置き去りにし、頂上付近の開けたエリアに来ると天気も回復していた。先に進むと大きな重機で道を整備しているレース関係の人を見かけた。陰で色々な人がレースを支えていることがよくわかる。

頼りになるカフェでの充電

 昨年は降雪量が多く、雪の壁の間を走った覚えのある山頂付近は、今年はほとんど雪がなかった。ヨーロッパも暖冬だったのか?夏が早いのか?と少し心配になるが、僕がいま心配しなければならないのはバッテリー残量だ。

今大会の最高標高地点。EMTBなら余裕で上れる Photo: Motoshi KADOTA
この時点でバッテリー残量20%… Photo: Motoshi KADOTA

 フルパワーで激坂をクリアし、走り回ると残量は20%程度(笑)。これ、次のカフェでチャージしないと試走でコースを完走するどころか、ホテルに帰る途中にある2000m超えの有名なセラ峠を超えられないぞ!(この時の経験から2000m級山岳を超えるのに30%必要という認識)。バッテリーが切れたら、背中の大荷物とEMTBを自力で峠越え…はしたくない。

ジロ・デ・イタリアで過去に幾度も名勝負が繰り広げられたボルドイ峠に向けての下り。ジロで使う峠のさらに上まで上がる Photo: Motoshi KADOTA
ボルドイ峠はここ! Photo: Motoshi KADOTA

 ボルドイ峠を下に見ながらシングルトラックに入ると楽し過ぎて、攻めまくる!3インチのタイヤは抜群の乗り味で安定して、さらにアシストがついて加速する!これは楽し過ぎる。

 ロックセクションもキャンバーも一気に走り抜けて舗装路に出た時にはバッテリー残量7%。ボルドイ峠のカフェに入り、前にチャージしたバッテリー残量を見てみると2つ合せて30%程度で帰れるか帰れないかギリギリのラインだ。

ボルドイ峠のカフェでチャージ Photo: Motoshi KADOTA

 このカフェでもオネーさんにチャージを頼んでみよう。注文を聞きに来てくれたオネーさんにバッテリーチャージのことを伝えると、店の中に来いというので行って指定された通りチャージを開始!ドロミテエリアはバッテリーチャージを普通にしてくれるようだ。

 ティラミスとカプチーノを楽しみながら、地図を見て先の予定を考える。計画性の無い大冒険は、行き当たりばったりのチャージと、夕方に予約しているマッサージの時間でタイムアウト。ボルドイ峠からはホテルへ直帰となったが、間にある2000m級山岳のセラ峠超えを含む直帰最短ルートを軽快に進む。ボルドイの下りでは舗装路を下るが、車も自転車もバイクもそれぞれが譲り合い存在を認め合うのですごくスムーズだ。

カプチーノとティラミスを楽しみながらバッテリーもチャージ中 Photo: Motoshi KADOTA
地図を見ながらこれからどう動くかを思案中 Photo: Motoshi KADOTA

フィールドの可能性を広げるEMTB

セラ峠への登坂。ここからインターバルトレーニング開始。標高2000m越えのきれいな地獄の世界 Photo: Motoshi KADOTA

 直帰ルートになったセラ峠の上りは大きな岩と森の間を縫って走るルートで、非現実な景色は驚きの連続だった。少し斜めに傾いた太陽が岩山を照らして神々しい世界を堪能しつつ、フルパワーのEMTBは息切れすることなく山岳ステージを攻略して行く。

 その途中、この日はレースを考えたら脚に刺激を入れるためにインターバルしないといけない日だという事を思い出した。2000m付近で恐怖のアシストオフ!鬼のような“特訓バイクと化したアシストなしEMTBでのインターバルは恐ろしくキツかった…(笑)。

セラ峠頂上付近からきれいな景色で一日の疲れを吹っ飛ばす Photo: Motoshi KADOTA
やっと辿り着いたセラ峠 Photo: Motoshi KADOTA

 セラの峠は太陽と陰、岩と緑の世界で日本にはない世界有数の景色。「ここを走れることは素晴らしい!」と思うと同時に、地元愛媛の「しまなみ海道」も世界のサイクリストにそう思われるよう景色も環境整備ももっとしっかりやっていかないと!と思った。

 快適で誰もがスポーツサイクルを最大限楽しめるEMTBは男女年齢問わず最高の経験を用意してくれる。今、進めている「四国一周1000km」も普通の自転車で回るとなるとそれなりのチャレンジだが、日本でもEMTBが使えるようになれば誰でも気軽に四国一周を楽しめるようになるだろう。

宿泊している町への下りでちょっと寄り道してダートへ!気持ちの良いコースが無数にあるドロミテは素晴らしい自転車天国だ Photo: Motoshi KADOTA
長い一日は終わり、マッサージの時間には間に合いそうだ。ここのホテルは最高の安息の地 Photo: Motoshi KADOTA

 バッテリーチャージも道の駅やホテル、レストランで完備すると集客にも繋がり人が集まるシステムを作れる。夢は広がり大きく膨らむが、そんなこと考えている間にもマッサージまで時間がもうわずかしかない…。

 太陽に反射する岩山を遠くに見ながら最高の峠道を下る楽しさを満喫しつつ、新たな可能性とともに冒険の一日を無事に終えることができた。ホテルについたら、羨ましそうな顔の西山が面白かった(笑)。来年は一緒に大冒険に行こうな!

<つづく>

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

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