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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<218>「心機一転」のサガンや新鋭が活躍 UCIワールドツアー後半戦をチェック

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 シーズン最大のヤマとなったツール・ド・フランスが終わり、トップシーンにおけるレーススケジュールは一区切り。とはいえ、間髪入れずにシーズンは後半戦に位置付けられるレースが続々と行われている。ツールで活躍した選手が引き続き最前線に顔をのぞかせ、さらには新鋭の台頭も光っている。そこで、ツール後に開催されたUCIワールドツアーの結果を総まとめ。この先の戦いを占う意味でも、しっかりと押さえておこう。

ツール・ド・フランス失格から戦線復帰を果たしたペテル・サガン。ツール・ド・ポローニュ第1ステージで勝ち星を挙げた Photo: Tour de Pologne

クウィアトコウスキーが優勝 クラシカ・サン・セバスティアン

 ツール閉幕から1週間と経たずに行われたのが、クラシカ・サン・セバスティアン。スペイン・バスク地方を舞台とする夏のワンデーレースは、例年ツール明けの選手がコンディションそのままに参戦することでも知られる。それもあって、丘陵地帯のレースでありながらスピード感溢れるハイレベルの戦いが繰り広げられる。

クラシカ・サン・セバスティアン2017コースプロフィール ©︎ Clásica San Sebastian

 その趣きは、今年も同様。231kmのコースは1級から3級までのカテゴリー山岳が次々と登場。獲得標高は4000mを超える。ツールを終えた選手と、夏場の休養を経てフレッシュな状態で戦線復帰した選手とが入り混じり、実力者のみが上位争いに加わる資格を得た。

 レースは逃げを早くに吸収し、メイン集団ではチーム スカイを中心に人数を絞り込んでいく。残り30kmを切ったところで、チーム スカイはジャンニ・モズコン(イタリア)を単独で先頭に解き放ち、集団を活性化。モズコンは最後の上りで吸収されたが、代わって飛び出したのは、地元バスク出身のミケル・ランダ(スペイン)。そこにトニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)、前回覇者のバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が加わった。

 さらに、フィニッシュに向かってのダウンヒルでミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)とトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)が追いつき、5人による優勝争いとなった。

クラシカ・サン・セバスティアンはミカル・クフィアトコフスキーが5人によるスプリントを制し優勝 Photo: Clásica San Sebastian

 数的優位となったチーム スカイに対し、隙を見てアタックする他の3人。しかし決定打に欠け、最終局面は完全にチーム スカイ優勢に。ランダが小集団を牽引し、スプリント力の高いクウィアトコウスキーがライバルの様子を見ながら加速するタイミングを計った。

 最後は、クウィアトコウスキーが圧倒的なスピードでフィニッシュへ。ガロパンやモレマが追ったが届かなかった。ツールではクリストファー・フルーム(イギリス)の右腕として個人総合優勝に貢献したクウィアトコウスキーだったが、好コンディションを維持してビッグタイトルを獲得した。

 また、このレースには新城幸也(バーレーン・メリダ)も参戦。ツールからの連戦となったが、途中でバイクを降りリタイアとなっている。

クラシカ・サン・セバスティアン結果
1 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ) 5時間52分53秒
2 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル) +0秒
3 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +0秒
4 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +0秒
5 ミケル・ランダ(スペイン、チーム スカイ) +2秒
6 アルベルト・ベッティオール(イタリア、キャノンデール・ドラパック) +28秒
DNF 新城幸也(バーレーン・メリダ)

ライドロンドン・サリークラシックはクリストフが快勝

 7月30日にイギリス・ロンドンで開催されたプルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシックは、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)が優勝。今シーズン7勝目を挙げた。

ライドロンドン・サリークラシックはアレクサンドル・クリストフ(中央)がスプリントで勝利を挙げた Photo: Prudential RideLondon-Surrey Classic

 2012年に行われたロンドン五輪のプレレースとして、その前年に初開催。五輪開催を経て、2013年に復活。昨年までUCIヨーロッパツアーの1レースとして行われていたが、今年からは晴れてUCIワールドツアーに昇格。UCIワールドチームの出場義務はないものの、これまで以上にハイクオリティなレースとなった。

 細かなアップダウンこそあるものの、スプリントで決することの多かったこの大会。今回はレース後半に形成された逃げグループが健闘。逃げ切りが決まるか、というところまでメイン集団を焦らせた。

 長く逃げ続けたマッテーオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)とジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)だったが、残り1km手前で集団に吸収。あと一歩で逃げ切りを逃した。

 そしてスプリントにゆだねられた優勝争いは、クリストフが制覇。2位にはマグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)。ツールのポイント賞、マイヨヴェールを初受賞したばかりのマイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)は3位だった。

 今シーズン序盤は好調だったクリストフだが、5月以降は勝ち星を重ねられず。ツールでも第4ステージの2位が最高で、勝利を収められずに終わっていた。もっとも、体重増加を指摘するチーム首脳陣との確執が噂され、近いうちに移籍が決まるのではないかとも言われている。そんな中、しっかりとレースに集中。ロンドン五輪では銅メダルを獲得するなど、相性のよいこの地で実力を証明してみせた。

プルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシック結果
1 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 4時間5分41秒
2 マウヌスコー・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット) +0秒
3 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) +0秒
4 セップ・ヴァンマルク(ベルギー、キャノンデール・ドラパック) +0秒
5 ワウテル・ウィッペルト(オランダ、キャノンデール・ドラパック) +0秒
6 ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク、BMCレーシングチーム) +0秒

サガンが戦線復帰 ツール・ド・ポローニュ

 ポーランドで行われているツール・ド・ポローニュは、7月29日に開幕した。丘陵地帯の多い同国でのステージレースとあって、全7ステージいずれも大なり小なりアップダウンをこなしながらフィニッシュを目指す。第3、第7ステージは上りフィニッシュとなり、スプリント力だけでなく登坂力も必要となる。また、過去には個人タイムトライアルが総合成績を大きく左右することもあったが、今年はタイムトライアルが不採用。いずれもマスド・スタートのラインレースとなっている。

ペテル・サガンがツール・ド・ポローニュでレース復帰。ファンからの握手に応じる Photo: Tour de Pologne

 この大会には、ツール第4ステージでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)と接触し落車させたとして失格処分になった、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が参戦。ツールの一件では出場停止などの処分は下らなかったが、同期間中の他レースには出場できないとするUCI規定により、しばしシーンから離れていた。事実上の復帰レースとなったわけだが、そこへ現れた際の風貌はまさにサプライズ。このところトレードマークとなっていた長髪を剃り落とし、丸刈りとなって戦線へと戻ってきた。そのココロは「ツールのことは忘れ、気持ち新たにレースに臨みたい」というもの。

 そのサガンは、第1ステージ(130km)で華麗に“復活”。スプリント勝負を制し、ステージ優勝。同時にリーダージャージも獲得した。

 続く第2ステージ(142km)では、最終局面で進路をふさがれ8位に沈み、リーダージャージも手放す格好となったが、翌日の第3ステージ(161km)で“復権”。フィニッシュに向かう上りで猛然と前を追い上げ、トップには届かなかったものの同タイムでステージ2位。ボーナスタイムをゲットし、再びリーダージャージに袖を通した。

 ボーラ・ハンスグローエは、落車負傷によりツールを途中で去ったラファウ・マイカ(ポーランド)もメンバー入り。第3ステージではサガンに続く3位で終えており、ダブルエース体制で総合成績を狙う構えだ。

ツール・ド・ポローニュ第2ステージはサーシャ・モドロが優勝 Photo: Tour de Pologne

 なお、第2ステージはサーシャ・モドロ(イタリア、UAE チームエミレーツ)、第3ステージはディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)がそれぞれ優勝。トレック・セガフレードでは、別府史之がメンバー入り。アシストとしての役割を果たしつつ、ステージを進行している。

 なお、今大会は主催者決定により1チーム最大7選手でメンバーが編成されている。来シーズンから加速すると見られる出場人数を抑える動きを見据えたものとなっている。

ツール・ド・ポローニュ第1ステージ結果
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ ハンスグローエ) 2時間56分16秒
2 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) +0秒
3 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チーム スカイ) +0秒
121 別府史之(トレック・セガフレード) +0秒

同第2ステージ結果
1 サーシャ・モドロ(イタリア、UAE チームエミレーツ) 3時間15分21秒
2 ダニー・ファンポッペル(オランダ、チーム スカイ) +0秒
3 マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、チーム サンウェブ) +0秒
90 別府史之(トレック・セガフレード) +0秒

同第3ステージ結果
1 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム) 3時間51分41秒
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
3 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +0秒
88 別府史之(トレック・セガフレード) +13分40秒

個人総合時間賞(第3ステージ終了時)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 10時間3分2秒
2 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム) +6秒
3 ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +12秒
88 別府史之(トレック・セガフレード) +13分56秒

ストーブリーグが“開幕” 注目選手の移籍が次々発表か?

 8月に入り、いよいよ移籍市場が解禁となる。

 UCI規定により、チーム移籍にかかる正式契約や発表は、例年8月1日以降と決められている。実情としては、ターゲットとする選手の獲得を目指すチームが早くからオファーを出していたり、水面下での交渉を進めていたりするケースがほとんどで、なかには口頭での約束や仮契約を結んでいるものもあるとされる。特に、ツールで2回ある休息日がそれらに拍車をかけるとされ、交渉が一気に進展していることも。

 とはいえ、明確なルールがあることから、各チーム・選手はUCI規定にのっとって8月に入ってから正式なアナウンスを行う。

 そして、先陣を切って発表したのはボーラ・ハンスグローエとモビスター チーム。ボーラ・ハンスグローエは、チーム スカイからピーター・ケニャック(イギリス)、BMCレーシングチームからダニエル・オス(イタリア)の加入を発表。モビスター チームは、フォルトゥネオ・オスカロからエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン)が加入することを明らかにした。この記事をご覧いただく頃には、さらに数チーム・選手の移籍が発表されているかもしれない。

ボーラ・ハンスグローエ入りを発表したピーター・ケニャック =クリテリウム・デュ・ドーフィネ第7ステージ、2017年6月10日 Photo: Yuzuru SUNADA
同じくボーラ・ハンスグローエ入りが決まったダニエル・オス =ティレーノ〜アドリアティコ2016第1ステージ、2016年3月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年の移籍市場では、ランダ、クリストフを筆頭に、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)やマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)の名が挙がっている。選手がエース待遇を求めているものや、チームとの折り合いがよくないものなど、噂される理由はさまざま。実際に移籍するかどうかは今後はっきりするが、どんな結末となるか注目していきたい。

 一方で、所属チームとの契約が最終年となっていた中で、契約延長に合意した選手も。直近では、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)が現在所属するクイックステップフロアーズと3年の契約延長を発表。こうした選手たちは、先々に控えるレースに向けて集中できる環境を得たといえるだろう。

今週の爆走ライダー−ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 BMCレーシングチームが目下売り出し中の25歳。今シーズンは4月に行われたフレーシュ・ワロンヌで3位に入り、一躍注目を集めたが、その走りが偶然ではないことをここへきて証明し続けている。

 ツールは当初から予定に入っておらず、その時期は休養に充てたが、それを経て迎えたツール・ド・ワロニー(7月22~26日)で総合優勝。逃げ切りでステージ2勝を挙げ、完勝ともいえる鮮やかな勝ちっぷりを見せた。

ツール・ド・ポローニュ第3ステージで勝利し、ポディウムで勝ち名乗りを受けるディラン・トゥーンス Photo: Tour de Pologne

 現在はツール・ド・ポローニュに参戦中。第3ステージではサガンらを破り優勝。UCIワールドツアーで初勝利(チームTTでは2014年に1勝)を挙げたばかりか、リーダージャージも視野に入る位置を走る。

 2014年に現チームの下部組織にあたる育成チーム入り。いわば生え抜きのライダーだ。その頃に、「若手の登竜門」と呼ばれるレースで次々と上位入り。将来を約束される位置まで上り詰めてのプロ入りだけに、3年が経つ今の活躍は不思議ではない。

 その意味で重要となる今シーズン後半戦。できれば結果を残し続けて、チーム内でのレギュラー争いで優位に立ちたいところ。ステージレース、クラシックと、柱となる選手を複数そろえるチームにあって、台頭するのは並大抵の走りでは厳しい。キャリアにおけるヤマ場に差し掛かっているといえそうだ。

 とはいえ、7日間で4勝を挙げるのは、運だけでは成せない業。いま一番勢いに乗っているライダーは、彼かもしれない。その走りで近いうち、さらなる驚きをわれわれに与えてくれるに違いない。

7日間で4勝を挙げる快進撃。シーズン後半戦はディラン・トゥーンスの走りに注目しておきたい Photo: Tour de Pologne
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。自転車情報のFacebookページ「suke’scycling world」も充実。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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