2日間の変則的なステージレース“女性版ツール”で與那嶺恵理が総合15位 トップレベルでつかんだ「戦える」自信

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 7月20日と22日の2日間で行われた“女性版ツール・ド・フランス”こと、ラ・コルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス(ラ・コルス)。本家ツールと併催されたこの大会で、日本女子のロード・個人タイムトライアルの現役チャンピオン、與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェル=アキテーヌ・フチュロスコープ)が快走した。山岳での第1ステージで11位となり、第2ステージでも粘りを見せ個人総合15位。レース後、筆者によるインタビューに応じてくれた與那嶺は、そこでつかんだ「こんなに戦えるんだ!」という手応えや、女子ロードレースのこれからについて語った。

ラ・コルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス第1ステージを前に、ステージで紹介を受ける與那嶺恵理(左) =2017年7月20日 © ASO

初のステージレース制開催

 ラ・コルスの初開催は2014年。この頃、マリアンヌ・フォス(オランダ、現WM3プロサイクリングチーム)ら、当時の女子ロードレース界のトップ選手たちが、男子と同様のレース環境の整備を求め立ち上がった。レース数の充実や、順位に応じて配分される賞金のアップ、チームや大会を支えるスポンサーの増加など、明確な差が表れていた男女差を是正すべく、選手自ら動きを起こしたのだった。

初めて開催された2014年は、大会創設に尽力したマリアンヌ・フォス(中央)が初代女王に輝いた =2014年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その一環として働きかけたのが“女性版ツール”だった。ツール主催者のA.S.O.はそれに応じ、大会の開催を決定。「ラ・コルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス」と命名し、将来的な規模拡大を目指してレース実施に至った。

 初開催から昨年までの3回は、ツール第21ステージに先立ってパリ・シャンゼリゼ通りでレースを行ってきた。おおむね主役となったのはスプリンター。大会創設に尽力したフォスは、初代女王となった。

 大成功を収めた3年間を経て、ついに今年、大会は新たな局面へと入った。2日間によるステージレース制へと様変わりしたのだ。この先1週間、さらに2週間、そして3週間と、限りなく本家ツールに近い大会とするための足掛かりとなる第4回大会となった。

個人総合はファンフルーテンが圧勝

 20日の行われた第1ステージは、同日行われたツール第18ステージと同じく、ブリアンソンから超級山岳イゾアールを目指すルート。距離こそ67.5kmとショートカットされているが、このステージのみUCIウィメンズワールドツアー公認のレースとして行われた。

第1ステージを制したアンネミーク・ファンフルーテン。イゾアールの頂上フィニッシュにトップで飛び込んだ © ASO/Bruno BADE

 個々の登坂力が試されたレースは、アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ、オリカ・スコット)が快勝。2位のエリザベス・ダイグナン(イギリス、ブールス・ドルマンス サイクリングチーム)に43秒差と、後続を引き離した。

 そして、日本勢唯一の参戦だった與那嶺が11位に入る好走。女子ロードレース界の名だたる選手たちを相手にまったく臆することなく、むしろ実力とこれまでの経験をしっかりと生かして結果に結びつけた。

118人が出走した第1ステージ。完走は46人、2日後の第2ステージに駒を進めたのは19選手に絞られた © ASO/Thomas MAHEUX

 2日後の第2ステージは、イゾアールでのステージで上位20位に入るか、トップから5分差以内にフィニッシュした選手のみが「進出」できるレギュレーション。第1ステージは118人が出走し、完走したのは46選手。トップから5分差以内という条件に当てはめると、19選手しか第2ステージへ駒を進めることができなかった。

 つまりは、この世界における真のオールラウンダーだけに絞り込まれたレースといえる。そして、“トップ19”に與那嶺が入っていることも、大きな価値があると言えるだろう。

 その第2ステージはマルセイユで行われ、同日実施されたツール第20ステージと同じ22.5kmのコースを使用。男子は個人TTで争われたが、女子は第1ステージのタイム差をもってスタートするパシュート形式。最終の着順で総合成績を競う変則ステージレースだった。そのため、第2ステージはUCI非公認レースの扱いとなった。

 勝負は、ファンフルーテンがトップを守り切り総合優勝。2番手でスタートしたダイグナンが後続の合流を待ち、複数人でファンフルーテンを追う選択をしたが、すでに今シーズン6勝し、現在の女子プロトンでは実力ナンバーワンの呼び声も高い相手には太刀打ちできなかった。

 11番手でスタートした與那嶺は、15位と最終順位こそ下げたものの、2日間を走り切りトップシーンで確かな足跡を残した。最終局面では、2014年の世界チャンピオンであるポーリン・フェラン・プレヴォ(フランス、キャニオン・スラムレーシング)ら、そうそうたる面々と着順を競った。

個人総合の表彰。左から3位エリサ・ロンゴボルギーニ、1位アンネミーク・ファンフルーテン、2位エリザベス・ダイグナン © ASO/Thomas MAHEUX

ラ・コルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス最終結果
1 アンネミーク・ファンフルーテン(オランダ、オリカ・スコット)
2 エリザベス・ダイグナン(イギリス、ブールスドルマンス サイクリングチーム)
3 エリサ・ロンゴボルギーニ(イタリア、ウィグル・ホンダ)
4 ミーガン・ガルニエ(アメリカ、ブールスドルマンス サイクリングチーム)
5 アマンダ・スプラット(オーストラリア、オリカ・スコット)
6 シャラ・ジロー(オーストラリア、エフデジ・ヌーヴェル=アキテーヌ・フチュロスコープ)
15 與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェル=アキテーヌ・フチュロスコープ)

躍進も「いきなり強くなったのではない」

 総合15位で2ステージにわたるレースを終えた與那嶺が、筆者によるインタビューに応じてくれた。

 今年は、シーズン当初からチーム拠点であるフランスをベースに活動。実質、年間を通して初めてとなる本場ヨーロッパでの取り組みを進めている。ここまで、チームのエースであるジローらと一緒に、アルデンヌクラシックやウィメンズツアー(イギリス)、ジロ・ローザ(イタリア)といったビッグレースに出場。そうして迎えたのが、ラ・コルスだった。

 これらを受けて、走り終えた感想や自身、そして女子レースの可能性について話してもらった。

――2ステージを走り終えての感想をお聞かせください

與那嶺:まず、UCIウィメンズワールドツアーで11位という結果と、トップ20選手が進めるマルセイユに駒を進めたこと。純粋にとても嬉しかったです。

――イゾアールでの第1ステージ、それを受けての第2ステージと、どのような作戦で臨んだのでしょうか? チームからの指示、パーソナルコーチである武井亨介コーチとのミーティングなど、可能な範囲で教えてください

與那嶺:最近は、チームで走ることもあり、(武井)コーチからレースに対しての指示はそこまでありません。「流れの中で普通に走れば、トップ20には残れるよ」とコーチからは言われてスタートしました。

 チームでは、やはりエフデジが冠スポンサーのレースということもあり、「逃げには絶対誰か乗ろう」「アタックしよう」というオーダーと、逃げに乗らなかった選手はシャラ(・ジロー)と私のフォローをできるところまでするというオーダーでした。

――第1ステージは11位、第2ステージ終えて総合15位と、世界のトップが見える位置を終始走り続けました。自身の走りへの手応えなど、どう捉えていますか?

マルセイユで行われた第2ステージ。與那嶺恵理もワールドクラスの一員として上位を目指した © ASO/Thomas MAHEUX

與那嶺:今回、私がいきなり強くなったのではなく、私に特にフィットしているコースで、それに上手くコンディションを合わせられたことと、試走などよい準備ができたことが大きかったと思っています。

 特別なことは相変わらずなくて、「しっかり合わせることができれば、こんなに戦えるんだ!」とよい意味で自信になりました。また自分の中で目標とするハードルを上げてしまいましたが(笑)。

――第2ステージは個人TTではなく、時差スタートのパシュートレースでした。日頃ではなかなかない形態のレース、その魅力や難しさなど、感じたことを教えてください

與那嶺:この点については選手側からも賛否両論ありましたが、実際UCIレースでもなかったので、私はショーレースだと割り切って、全力で踏んで、全力でちぎれて、全力で楽しみました(笑)。魅力という点では、正直「うーん…」という感じです。

――ラ・コルスは本格的な「女性版ツール」を目指し、着々と進歩しているように思います。実際に走る立場として、その可能性やこの先求めていきたい点など、どう感じていますか?

第1ステージでイゾアールを上るメイン集団。ラ・コルスは着実に大会のステータスを上げている © ASO/Thomas MAHEUX

與那嶺:男子のツールと同じ場所でせっかく開催されるのであれば、リアルな女子レースをしてほしいなと思います。その点、イゾアールのレース(第1ステージ)は、本当に良かったと思います。そのまま木曜から日曜までと4日間のステージレースに女子もなれば最高ですね!(今回は第1ステージを木曜、第2ステージを土曜に実施)

 同時に、(女子レースと比較し)男子のツールの観客、華やかさ、予算、何もかもが「ゼロのケタがいくつ違うんだ!?」と痛感しましたね。

◇         ◇

 ツール・ド・フランスに関しては、2018年の開幕がフランス・バンデ県になるなど一部確定し公式発表されているが、次回のラ・コルスに関しては主催者A.S.O.からの正式な発表がなされていない。この大会の発展が、女子のプロトン全体の底上げや盛り上がりにつながっていく可能性は大いにあるだけに、今後の展開を注視していきたい。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

UCI女子ワールドツアー 與那嶺恵理

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載