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山口和幸の「ツールに乾杯! 2017」<8・終>偉大なる夏祭りの終わり パリの街、シャンゼリゼをツールの風が吹き抜けて

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 2024年にパリ五輪、2028年に米国ロサンゼルス五輪になる方向で最終調整に入ったことが大会期間中に報じられ、ツール・ド・フランスの現場でもその話題で持ちきりになった。パリはこれまで1900年と1924年に五輪を開催した実績があり、順当にいけば100年ぶりの悲願を達成する。正式には9月13日のIOC(国際オリンピック委員会)総会で決定する。

ツール・ド・フランスで4度目の総合優勝を飾ったクリストファー・フルーム(中央) Photo: ASO

パリ万博のレガシーを通り抜けるツール

 2008五輪が北京に決まったときも、2012五輪でパリがロンドンに敗北したときも、ちょうどIOC総会がツール・ド・フランス期間中だったので、現地でフランス人の落胆ぶりを目撃している。パリの関係者は本当にホッとしているだろう。

 今年のツール・ド・フランス最終日、最終ステージはパリにある壮麗なグランパレの中を通過した。全長240m、高さ45mの規模を誇るグランパレは、1900年、パリ万国博覧会のメイン会場としてシャンゼリゼ大通りとセーヌ川の間に建設された。一部は国立博物館に改装されていて、ボクの仕事場となるサルドプレスもこの中に設営された。

1900年に建造されたグランパレ Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI
荘厳なグランパレの中をコースが突っ切る Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 選手が到着する4時間前には、大会協賛社の1つであるエフデジと2024パリ五輪招致委員会が、女性サイクリストばかりを招いてグランパレを通り抜けるサイクリング大会を実施した。このグランパレをツール・ド・フランスが通過するという企画そのものが、2024パリ五輪招致運動の一環なのである。

ど真ん中でパリを味わいながら

グランパレの中をサイクリングするイベントも開催された Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 そして大歓声とともに選手団がグランパレを通過し、シャンゼリゼのサーキットコースに突入していった。32年ぶりのフランス選手優勝は果たせなかったが、それでもお祭りの最後を飾る楽しさに満ちあふれている。この世界で最も美しい並木道を8周半してフィナーレへ。沿道の興奮は頂点に達し、そしてその後は夏の花火大会のようにだれもが空虚感を味わう。夏祭りは終わったのだ。

 パリを何度か訪問しているうちに、その景観について驚くべき事実があることに気づいた。パリのすべての歴史的建造物は車道を走っているときの目線で眺めると、常に視線のど真ん中に配置されているのである。徒歩で観光する人たちはどちらかの歩道で写真を撮ったりするのだが、おそらく交通規制されたシャンゼリゼ通りを疾駆する選手たちは歴史的景観を目撃しながら、無事にパリにゴールする喜びを感じているに違いない。

パリの象徴であるエトワール凱旋門もこの日はアクセス不可 Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 シャンゼリゼのど真ん中を自転車で走るのは生き残ったプロレーサーだけの権利だったが、近年は一般サイクリストにもそのチャンスが与えられた。パリでは毎月第1日曜日が、多くの美術館で入場無料になる日だが、2016年5月8日(日)に初めてシャンゼリゼ大通りが歩行者&自転車天国デーになった。翌月からは第1日曜日に固定し、だれでも世界一華やかな大通りを歩いたりサイクリングしたりできるようになった。

7回目のツール、7回目の完走

 ゴール後は表彰式に登壇しない選手たちが真っ先にやってくるコンコルド広場で新城幸也を待った。

7度目の完走を果たした新城幸也 Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 「やれるだけのことはやったので不完全燃焼では全くないです。逃げに乗るつもりでアタックをしたし、常に全力でゴールを目指した。ただし今年はボクが勝つツール・ド・フランスではなかったですね」と新城。

 「ツール・ド・フランスは出場全選手が100%に仕上げて乗り込んでくるから、もちろんボクもスイッチが入るのは間違いないが、ごまかしがきかない。このレースが大好きなのは生きているって感じがするから。自転車を始めたときのことを思い出すことが多い」

 新城にとって7回目のツール・ド・フランスは満足のいく結果ではなかったかも知れない。ただし無駄な体力を消耗したり、危険なラインをこじ開けるように前に出ようとすれば完走さえ果たせない。そういった意味で最低限の目標である完走を見事に果たした。簡単に連日ゴールラインを通過していくのがどれほど大変なことか。出場7回にして全完走という偉業も輝かしい記録である。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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