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山口和幸の「ツールに乾杯! 2017」<7>最高峰のガリビエ峠も今年は無事通過 僅差の総合争いは大詰めに

by 山口和幸 / Kazuyuki YAMAGUCHI
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 アルプスのガリビエ峠は標高2642mで、ツール・ド・フランスがよく通過する峠の中では最高峰だ。南面からのアプローチではT字路のロータレ峠からさらに上を目指す。ロータレ峠までは緩斜面だが、そこからはセンターラインのない狭い道となり、森林限界の岩肌を突き進む。

ガリビエ峠の直下にあるロータレ峠 Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

最高峰にトラブルはつきもの

 ところでツール・ド・フランスの記録集を見るとガリビエ峠の標高は2642mと2556mの2つの表記がある。じつは現地に行ってみると分かるのだがトンネルがあるのだ。トンネルの入口には信号機があり、長い赤信号を待っていると青になるので一方通行の暗いトンネルに進入できる。今回はもちろん2642mのホンモノの峠を通過。アプローチは北面からだった。

わずかばかりの安定した土地に石造りの集落が形成される Photo: Kazuyuki YAMAGUCHI

 南面のトンネル出口にはツール・ド・フランス創始者アンリ・デグランジュの碑が建てられている。その年の最高標高の峠には「アンリ・デグランジュ記念賞」という特別の賞金が設定されるが、ガリビエ峠がコースに採用された年はこの峠に記念賞がかけられることがほとんど。2017年も特別賞がこのガリビエ峠に懸けられた。

 2015年のツール・ド・フランスでも最高峰としてコースに加えられたが、ラルプデュエズに向かうルート途中にあるシャンボントンネルが崩落により通行できなくなり、ガリビエ峠はカットされた。1年近く前の崩落が開催時期になっても復旧せず、まさかの迂回となったのだ。

ブリアンソンの旧市街は激坂を上った断崖の上にひっそりとたたずむ © Zoom
アルプス最奥部の過酷な峠道を進む選手団 Photo: ASO

5連覇の帝王を破った伏兵

 過去の大会でもガリビエ峠が通行不能となり、そしてそれが総合優勝の行方を左右したこともある。

 1996年のツール・ド・フランスはスペインのミゲール・インドゥラインが大会最多優勝記録を6に更新するかにすべての関心が集まっていた。伝説的存在であるアンクティル、メルクス、イノー、いわゆる「5勝クラブ」をスペインの心優しき闘牛士は超えることができるのか?

 また、この年はイタリアのポルティに所属する今中大介が日本人プロとして初出場を果たした。第14ステージの中央山塊で制限時間内にゴールできず、タイムオーバーとなって完走を果たすことはなかったが、世界最高峰の大会に日本選手が参加するというセンセーショナルな話題をさらった。

前人未到のツール6勝目を狙ったインドゥラインだがついに敗退。総合11位で完走したが、この年で現役を引退した Photo: Yuzuru SUNADA

 マイヨジョーヌをめぐる本格的な争いはアルプスの第7ステージで始まった。今中のチームエースであるフランスのリュック・ルブランが独走勝利したコースで、インドゥラインが大ブレーキを起こす。前年まで総合5連覇中、完全無欠の王者がここでまさかの遅れを取ったのだ。

 この日が終わってマイヨジョーヌはロシアの金狼エフゲニー・ベルツィンに。デンマークの伏兵ビャルネ・リースが8秒遅れの総合4位に浮上していた。ベルツィンは翌日の山岳タイムトライアルでトップタイムをたたき出し、総合優勝の最有力へと名乗りを挙げた。

 続く第9ステージは50年ぶりという寒波に襲われた。カテゴリー超級という最も厳しい山岳ポイントのイズラン峠が冠雪し、選手は関係車両に分乗してそれを越え、主催者は急きょ距離を短縮してスタートさせた。ところがその先のガリビエ峠も通行不能となり、選手は再び関係車両で移動。ゴールまでわずか46kmという地点からレースが正式スタートとなった。

 距離の短いレースは想定外の展開になりがちだ。この常識外れのステージで高速アタックを成功させたリースが後続のライバルたちに僅差をつけて優勝し、そのまま首位に立った。ベルツィンはその後、次第に体力を消耗して総合成績で後退。ピレネーに突入してリースが最難関のステージを制し、マイヨジョーヌを死守。思わぬ伏兵がインデュラインの連勝にストップをかけることになった。

 最終日前日のタイムトライアルでインドゥラインは花道を飾るべく激走したが、リースのアシスト役で東独出身のヤン・ウルリッヒに56秒届かなかった。ウルリッヒは大会初参加にもかかわらず総合2位と新人賞を獲得した。

コンタドール(先頭)の人気は依然高い。応援の声も最も大きくなる Photo: ASO

大接戦が続く2017ツール

 今年のガリビエ峠でも区間勝利を争う戦いと、総合優勝を争う戦いが同時進行で展開した。すでに総合成績では上位進出が苦しくなったアルベルト・コンタドールがアタックすると、沿道の大観衆の興奮は頂点に。しかしロットNLユンボのプリモシュ・ログリッチェがガリビエ峠から独走。「アンリ・デグランジュ記念賞」を獲得したのはもちろんのこと、ゴールまで逃げきってスロベニア選手として初優勝した。

第17ステージはエマニュエル・マクロン大統領が現地入りし、ロマン・バルデに声をかけた。バルデは翌第18ステージで再び総合2位に浮上 Photo: ASO

 総合優勝争いもし烈だった。首位のクリストファー・フルームは総合2位ファビオ・アルをふるい落とし、その差を広げて首位を守るのだが、区間2位のボーナスタイム6秒、3位の4秒を獲得しようとロマン・バルデ、リゴベルト・ウランらとともにフルームは壮絶なゴール勝負を見せた。それくらい今大会は大接戦なのだ。

 結果はウランが2位、フルームが3位。その結果、この日終わってウランが27秒遅れの総合2位に、バルデが同じタイムで3位になった。前日まで18秒遅れだったアルはフルームらから31秒遅れて総合4位に下降した。大会は最終日前日の個人タイムトライアルまで目が離せない。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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