スマートフォン版はこちら

門田基志の欧州XCマラソン遠征記2017<8>追い打ちをかける10km、1100mアップの超激坂 UCIレース「アルペンツアー」第3ステージ

  • 一覧

 マウンテンバイク(MTB)・クロスカントリー(XC)の門田基志選手(チームジャイアント)と、まな弟子の西山靖晃選手(焼鳥山鳥レーシング)が、6月8~11日の4日間にわたってオーストリアで開催されたUCIステージレース「アルペンツアー」に出走しました。2日間の過酷な戦いを経て迎えた第3ステージは53km、獲得標高2200mというコース。疲労が溜まった2人を10kmで1100m強アップの超激坂が待ち構えます。壮絶な走りを繰り広げながら冷静に状況を振り返る、門田選手の臨場感あるリポートです。

←<7>UCIステージレース「アルペンツアー」第2ステージ リポート

UCIステージレース「アルペンツアー」の第3ステージ ©AlpentourTrophy2017

◇         ◇

 疲労は思ったよりはひどくはないが、しんどくて目覚める朝は早い。時差ボケはほぼ解消されたと思うが、疲労感で体の置き場がなく目覚めてしまう。「あと1時間は寝た方が良い!」と体に言い聞かせ、横になりストレッチして、軽く二度寝して目覚めた。

 なぜか朝から肉が食べたくなる。が、ソーセージしかないのでボイルして、グラノーラとパンと食べたい物をとりあえず食べていると西山も起きて来て、よく食べる。呆れるほどに食べる(笑)。

第3ステージのコースプロフィール。53kmで獲得標高は2200m  ©AlpentourTrophy2017

 一段落して身支度。バイクを触ってみると、なぜか後輪のブレーキローターが歪んでいて擦っていた!調整してみたが、かなり歪んでいるのでスペアホイールと交換する事にした。朝まで降り続いた雨と重量の軽さを考えて前後のタイヤを「ロケットロン2.1」にし、サスペンションも昨日より少しエア圧を下げるなどバイクの微調整も進んだ。昨日のレースで大失速の原因となったアイテムも交換し、多分これで大丈夫。最後にタイヤのエア圧を調整して三度、メイン会場へと向かった。

疲労の中にも取り戻す感覚

 スタートはまた大混乱が予想されるが、毎日のランキングで招集されるから前に行きようがない。成り行きに任せてスタートを切った。大混戦でも全体がそれなりのレベルの選手なので落車がほとんどない。が、体を当てたり急ブレーキをかけたりと本当にポジション取りが難しい。

ポジション取りが難しいスタート直後 ©AlpentourTrophy2017

 スタートしてしばらくは昨日と同じコースなので知っていて走りやすく、微調整のおかげでかなり踏める感が出てきて徐々にポジションアップ。短い激坂ではダンシングを多用してサクサク進む感覚が戻って来た。それでも疲労が溜まっているのは事実…。普段は1日のレースを走るための練習しかしていなので、ステージレースは本当に疲労が蓄積してズンっと芯に残る重みを感じる。

©AlpentourTrophy2017

 滑りやすい林道の下りで前の集団に追い付き、下り切った平坦ではテクニカルなセクションが序盤にある。すると、やはり前が詰まって大混雑になり、僕も含め前を走る集団も振り出しに戻る。今日のステージは最初の23m地点あたりのエイドステーションまでは平坦基調で、上ったり下ったりを小刻みにするコースなので集団が有利だ。運良く足の合う集団が形成していて8人程度の集団でレースが進んだ。

自分の限界と勝負する坂

 同じ位置にいる選手でも得手不得手があり、集団内でしばらく走るとそれが見えてきて面白い。下りが遅い選手は下りの前でポジションを譲るし、平坦の速い選手はそこそこ前を引く。登坂が速い選手はその後の平坦を考えて集団がバラけないギリギリの範囲で踏む、という協調体制でエイドステーションまで辿り着いた。

 僕以外の選手はプライベート(自分のチームのスタッフ)でスタッフから走りながら補給をもらっているが、僕はオフィシャルで取るしかなく、停車してボトルと食べ物を補給し集団から遅れてしまう。一度遅れると戻れないのが自転車の集団。前に見えているが追い付けない。差が縮まっても詰め切れないまま今日の最難関1900m近くまで上る10km以上の登坂に突入した。先の先まで見渡せて、後ろも良く見える坂道。頑張ってペダルを回しても前には追い付けず、後ろからは迫ってくる感覚は、まるで精神修行でもある。

©AlpentourTrophy2017

 股関節に軽く違和感を感じながらも、踏める最大限を維持してペダルを効率良く回すことに専念する。この時、パイオニアのペダリングモニターは本当に役立つ。一定ペースを維持し、普段のトレーニング時に維持出来る出力を見ておくと苦しくても我慢出来るのだ。

 あと10km、あと標高500m…とまるでメーターと睨めっこ。ペダリング効率も見ながら、他の選手と戦うというよりは自分の限界との勝負になる坂道だ。標高が上がるとともにキツくなる呼吸。筋肉も限界に来ていた。次第に呼吸が落ち着くも、脚の筋肉は乳酸でパンパン。ペダルを踏めない地獄のような時間が続いたが、しばらくして賑やかなエリアに突入すると、ようやく山頂のエイドステーションに到着!岩山のオアシスに感じた瞬間だった。

 オバちゃん…いや、おねーさんがボトルを補充してくれて、パウンドケーキやシリアルバーのような物も勧められるがままに口にして再スタートを切る。フレームに貼付けたコースプロフィールを見て、やっと下りだ!と思ったら、よくみると山頂付近で一度下って上っている…気持ちが少し折れそうになった。

飛ばし過ぎてまさかのコースアウト!

 フラフラで入った激坂を、渾身の力を振絞ってダンシングでクリア。その先にはまた、ダラダラと長い坂道が見えた(苦笑)。ペースを落とさず、前を行く選手を見て追って(気持ちだけは)、やっとの思いで下りに突入した。あとは10km程度を一気に下り、最後に3〜4km程度上ってMTBパークを下ったらゴールだ。気持ちを取り直し、攻めて下った。

©AlpentourTrophy2017

 後でメーターをみたら70km程度のスピードで下っていたようで、途中のコーナーがハイサイドになってバイクが宙に浮いた瞬間は落車を覚悟した。が、ジャイアントの「ANTHEM」のマエストロリンクのおかげでなんとか持ちこたえて復帰。このレースの中で最も危ない瞬間だった。

 下り切り、最後の数キロの上り坂が長い。あと3km、あと2km…カウントダウンするも辿り着かない頂上。周りの選手がなぜかダンシングして無理し始める。つられて僕も何となくペースアップしてみると、すぐに頂上に到達。その後はパークを一気に下るのみだった。きれいに作られたMTBパークの下りはバンクにジャンプ、ラダーまであり、ご機嫌で楽し過ぎる!

 調整したサスペンションもバランスが取れているので攻め込めて気持ちがいい! 前を行く選手も気持ちよく道を譲ってくれてかっ飛ばす!そしてコースミス…。本当は林道に戻るところを、気持ち良過ぎてなんとそのままダウンヒルコースへ!止まれないタイミングで看板が視界に入って急ブレーキ!…しても遅かった。

 バイクを押して戻ってコースイン。最終的に5人以上に抜かれてしまう失態は反省してもしきれない。試走は入念に!と自分を戒めつつ、先の下りで2人ほどパスしてゴールした。

レース後に見た「EMTB」

 ゴール後暫く休んでいると西山もゴール。2人とも超過酷なアルペンツアー3日目を無事にゴール出来た。洗車してホテルに戻ってまずすることはヘルメットとシューズ、ボトルやサングラスを洗う。

食欲旺盛な西山。この胃の強さは若さなのか?? Photo: Motoshi KADOTA

 そして食べ物の補給だ。僕は「スーパーメダリスト9000」とプロテインを補給したら、何となく食べる気がせずプチトマトを口に入れる。が、一方でなんと西山はかなりヘビーにパスタを作っていた!この食べ物の差は胃の強さなのか?それとも若さ?どっちなんだ??

 後始末と補給を済ませたら、いつものアロママッサージサロンに向かう。3日連続で来てるので勝手も分かるし、マッサージャーのオバちゃんともすっかり仲良し!

3日間通い続けたアロママッサージ Photo: Motoshi KADOTA
マッサージャーのおばちゃんともすっかり仲良しに Photo: Motoshi KADOTA

 2人ともケアを済ませて記念撮影をしていると、隣の家に住むオバちゃんが出て来て、急きょ自慢のバイクコレクションを見せてもらう事に。「良いバイクがあるのよ」と見せてもらったのは電動アシスト付MTB、通称「EMTB」だ。驚いたことにヨーロッパでは当たり前に使われているという。日本でも是非使えるようになって、多くの人に自転車の楽しみを体験してもらいたいと思った。

見せてもらった電動アシスト付MTB。日本でも将来普及してほしい Photo: Motoshi KADOTA

 さて明日が最終の第4ステージ。距離14km獲得標高1300mのヒルクライムタイムトライアルだ!最後も張り切って行ってみよう!!──と書いている間にも外の空がきれい過ぎて、移り変わる雲と太陽に見入ってしまった。本当にきれいなところだ。

⇒<9>過酷さと楽しさが背中合わせの「アルペンツアートロフィー」

門田 基志門田 基志(かどた・もとし)

1976年、愛媛県今治市生まれ。世界最大の自転車メーカー、ジャイアント所属のMTBプロライダー。選手として国内外のレースに参戦する一方、レース以外のサイクリングツアーも展開。石鎚山ヒルクライム、サイクリングしまなみなど数多くの自転車イベントを提案し、安全教室の講師やアドバイザーも務めるなど、自転車文化の発展に奔走している。

関連記事

この記事のタグ

門田基志の欧州クロスカントリーマラソン遠征記

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載